観客席の、わたし

笹 司

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第二章

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空気を読んでくれなくとも、こちらが正直に話さなければいいだけのこと。

「…感慨深くて」

「…何が?」

「琥珀が、あんなに大きな舞台に出て。」

そして話の矛先を変える。

「獅音さんも、そうでしょう?」

「…そうだね。」

「…」

「…」

獅音さんはそれ以上、何も聞かなかった。











「あの、やっぱり払います。」

「女の子に払わせるわけにはいかないでしょ。」

食事の時間は思ったよりも長引いてしまった。
半分は沈黙が流れていたと思うが。
そして、この人はいつの間にかお会計を終えていた。
加えてこの台詞。相当慣れている。
…まぁ、今度琥珀に返せばいいか。

「…ご馳走さまでした。」

「いえいえ~」

獅音さんは満足そうに笑った。

「奏ちゃん、家どこ?」

「え?」

「送るよ。」

「え、いいです。」

しまった、食いぎみに断ってしまった。
獅音さんを見る。
獅音さんは目を見開いてこちらを見ていた。
怒らせたかな…
目を泳がせていると、

「ふふふ…」

え、笑ってる…

「送らせてよ。
琥珀の大事な友達を夜に一人で帰らせるなんて、琥珀に怒られる。」

あぁ、そういうことか。
もう今日は奢って貰ったし、十分だと思うけど。

「…でも、ご馳走して貰いましたし、」

「それとこれとは別。」

…この人、こんな感じだったんだ。
物腰柔らかなのに、頑固。
琥珀に似てる。

「…送らせてくれる?」

まぁ今日かぎりのこと。

「…わかりました。」












「もうここで…」

「いやいや、家まで送るよ。」

それから、最寄り駅で一悶着。




「あの角を曲がったらすぐなので…」

「まぁまぁ。家まで、ね。」

家の近くで、もう一悶着。




「ここ、です。」

結局住んでいるマンションの前まで送ってもらってしまった。

「…すみません。」

「なんで謝るの。」

「えっと…色々と、気を遣っていただいて…?」

「気を遣ったわけじゃないよ。」

「また、改めてお礼を、」

「お礼してくれるの?」

意外、お礼に食いつくとは。

「えぇ、琥珀に渡しておきますね。
何か、お好きなものはありますか?」

「奏ちゃん」

「はい、なんですか?」

「だから、奏ちゃん。」

「…はい?」

「好きなもの、奏ちゃん。
…付き合って。」














「…なんで?」
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