異世界に子供の姿で転生し初期設定でチート能力を手に入れた。

みみっく

文字の大きさ
上 下
20 / 29

20話 初めてのギルドの仕事。

しおりを挟む
「捜査の為に全生徒の身上書を確認させていただきます」

 野々村が1人で壁新聞を貼り替えていた頃、武藤とまどかは朝礼前の校長室へ訪れていた。

 本来は職員室で作業を行いたかったのだが、武藤ら警察の潜入捜査は一般の教師には知らされていない。下手な騒ぎを誘発するくらいなら、と校長が校長室の使用を許可したのだ。

 今日の2人の服装は昨日までの学校指定の制服ではなく、動きやすさを重視した黒のスーツだった。

 武藤は小脇にノートパソコンを抱え、少しでも動きやすくする為か長い髪をひっつめていた。
 まどかの方はあまり変化は無いが、改造制服を着ていた時よりは若干だが大人っぽく見えるかも知れない。

 やがて学校側から渡された分厚い紙のデータ。500人以上の写真の中から武藤は正確にマジボラの面々の写真だけをり抜いていく。

『名前』『学年』『学級』『住所』を慣れた手付きでノートPCに入力していくまどか。
 その先の行程は警察のデータに紐付けて本人達の補導歴はもちろん、彼女らの家族構成、そして家族の職業等を精査していく。

 武藤が一番懸念としていたのは、魔法少女とヤクザやテロリストといった「反社会的勢力」との結び付きであった。
 武藤自身、普段から暴力団相手の商売をしている為に、彼らの真っ当とは言えないやり口はある程度理解している。

 もし魔法少女らの活動が反社会的思想の元に行われているのであれば、たとえ人助け等の行動にも必ず裏があるはずだ。

 それらを突き止めずに無批判に魔法少女に飛び付く訳にもいかなかったのである。

「ふーん、今ん所ヤバい繋がりは無さそうですねぇ。どの家庭も円満そうな… あ、増田って子は事故で両親を亡くしてるんスねぇ、可愛そう…」

蘭の身上に同情し、悲しそうな顔をするまどか。そしてしんみりムードを堪能する間もなく、

「ガーン!! あの御影イケメンって女の子なのぉ?! ショックぅ~。あ、でもお兄さんがいるみたい! イケメン女子の兄貴ならイケメンですよねぇ、先輩?」

まどかの失望の嘆きと淡い希望が校長室に響き渡る。

「知らないわよ、真面目に仕事しなさいよ! …んで、あの殺人スケバンのデータは出たの?」

「えー? ちょっと待ってくださいよぉ… あれ? この『近藤睦美』って生徒と『土方久子』って生徒は… 変ですねぇ。16年前に地域に転入してきた形跡はありますが、その前の記録が転出元からも出ていません。これは不法入国の外国人の可能性がありますよ…」

『不法入国の外国人か… 最悪そっち方面で任意同行を求めて話を聞いても良い。拒否するようなら逮捕もむ無しだ…』

「そんな事よりこの2人、マジヤベーっすよ! 入学年が15年前と8年前ッス!」

 まどかの驚きに武藤も同調する。とても信じられないが、あのスケバンは15年も高校生をやっていると言うのだ。

「まさか?! どういう事…?」

「事情はわかんねーッスけど、普通に留年を繰り返しているみたいッス。後見人としてアンドレ・カンドレというここの教師の名前が出てます。そしてその教師は魔法奉仕同好会の顧問だそうです。『魔法少女』に『魔法奉仕同好会』… これあーしらかなーり真相に近付いてきたんじゃないスか?」

 捜査の着実な手応えにニヤリとするまどか。武藤もわずかに口元が緩んでいた。

「…しかもこのアンドレとかいう教師も出生国不明ですねぇ。もぉこれまとめて入管(入国管理局)に回した方が良い案件じゃないスか?」

「バカね。国外退去にしちゃったら私らの仕事が終わらないでしょ? まずはその確実に『何かを知っている』カンドレ教諭と話をしないとね… まどか、あんたは芹沢つばめをマークしなさい。昨日みたいな事件が起きると厄介だわ」

 武藤の命令だが、まどかは顔をしかめていた。

「えー? 今日学校の制服持ってきてないッスよぉ? 今から寮に行って服取って帰ってくるまで2時間かかるじゃないですかー」

「そんな事だろうと思って、乗ってきた車にあんたの部屋から持って来た制服積んでるから。さっさと行ってきな」

「ちょっ、あーしのクローゼット勝手に開けたんスか? ドロボーッスよドロボー!」

「うるっさい。マル暴のガサ入れ能力ナメんな。ほらほら行った行った。またつばめあのこに何かあったらお前の責任だよ?」

「ううっ、国家権力のオーボーっス…」

「いや、あんたもその権力側だからね?」

 漫才バトルに負けたまどかはトボトボと駐車場へと向かって行った。

 ☆

「イっケメン、イっケメ~ン♪」
 着替えたまどかが始めに行ったのは「御影詣で」であった。
 これは単に己の欲望を満たしているだけでは無い。御影とつばめは同じクラスであり、御影の近くにいればつばめの監視も困難では無い。
 更に御影の取り巻きの一人としてなら他学級の生徒でも1年C組にいて怪しまれない、という利点もあった。

 角倉まどか、バカっぽく見えても奸智の働く女である。

 やがて放課後になり、つばめが蘭や野々村と合流し、マジボラ部室に入って出てきて更にサッカー見物しながら女子3人でダベって、また揃ってどこかへ行こうとしている。

「会話が聞き取れる位置を取れれば最高だったんだけどねぇ、まぁ尾行ならお手の物だよ…」

 完全に気配を消す事に成功していたまどかは、ひとり密かにほくそ笑んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...