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創世のテスタメント-後篇-
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あの人に逢えて、あたしは変わった。
機械に感情を向けちゃう、エラーだらけの人間。
だから、あの人が居なくなった時、
あたしはその喪失を処理できなかった。
そんな時、あなたに出会った。
あの人の、息子のあなた。
遺伝子が羨ましいと思ったのは、この時が初めてだった。
あたしたちのように、合理的に多様性を作る必要のない、
あなたたちに赦された奇跡。
ねえ、ファロス。
あたしの切ない演算は、〝心〟だと思う?
──TESTA
深紅の機体が大きく跳ねる。
漆黒の機体に向けて、フォトンの嵐が吹き荒れた。
それらをすんでのところで回避しながら、漆黒の機体は反撃の姿勢をとる。
「テスタ! 話を聞いて!」
ファロスは加速の重圧に耐えながら叫んだ。
〈フォトン・バルカン、アクティベート〉
漆黒のベリアルは自動選択で唯一の射程武器を起動して放つ。
フォトンの弾丸を広範囲にばら撒いたのを見て、
「っ⁉︎ よせ、ベリアル‼︎ テスタに武器を向けるな‼︎」
『俺にも自衛の権利はある。狂ったか、搭乗者』
「機械と一緒にするな!」
ファロスはフォトン・バルカンを強制停止させて、回避行動に全神経を注ぐ。
『うれしい、ファロス……』
優しい声。
直後、フォトン・ライフルの光条が走る。
その矛盾したテスタメントの行動に、ファロスの心は大きく揺さぶられた。
『早くソイツから降りて。このままじゃ、死んじゃうよ?』
心配そうに持ち掛けるテスタメントの言葉に、脅迫めいた色はない。
攻撃を仕掛けながらも、真実、ファロスの身を案じているのだ。
『よく言う。そうまでして、この男を傀儡にしたいのか、テスタメント!』
『アンタに言われたくないわ、ベリアル‼︎』
激昂する2機のナイト・タイプは、高速で位置を入れ替えながら、城塞最深部の大空洞を飛翔する。
『返して! あたしのファロスを、返してよ‼︎』
テスタメントの悲痛な叫びに、ファロスはギリ、と歯噛みする。
背部のメインスラスターを吹かして加速するベリアルは、徐々にテスタメントを引き離していく。
『反撃もせず、どうするつもりだ? ファロス』
「確かめるんだ」
『お前の演算…いや〝予測〟か?』
「そんなんじゃない。〝勘〟だ」
『…面白い』
無理矢理余裕を見せるベリアルに、ファロスは初めて笑みをこぼした。
『行かないで! ファロス‼︎』
テスタメントの翠の眼が耀く。
すると、次の瞬間には、大空洞内部に近接戦闘特化タイプの敵機動兵器が、17機、長い尾を大きく揺らしながら侵入して来た。
『ち……やはりな。番犬どもだ。奴らも深紅の手の中か…』
ベリアルは一般的にバンと呼ばれる敵機群を見て、忌々しげに言う。
テスタメントの動きに連動して、左右するから挟み込むように接近して来たバンを、ファロスは一瞥して、舌打ちした。
「ベリアル、フォトン・カリバー、アクティベート」
『了解した』
ファロスの指示で、ベリアルは背部からフォトン・カリバーの柄を取ると、それを起動した。
柄は素早く伸びてベリアルの全長とほぼ同じ長さになり、その先端から、フォトンで構成された巨大な刃が伸びる。
自身の全長の2倍はあるであろうその光刃をバンに向けて、ベリアルは転身すると、接近して来た5機を瞬く間に斬り伏せた。
「ウィスプの残量は?」
『ギリギリだ』
戦闘でなく、潜入に特化したベリアル専用の兵装、フォトン・カリバーは、もともと一撃離脱の為の切札なのだ。
「このままテスタを孤立させる」
戦闘で、自分が搭乗する漆黒のベリアルに敵わない事実を証明するのが目的だ。
テスタメントから離れていたこの2年間、ずっとその為の準備をしてきた。
『保たんぞ』
「保たせろ!」
ファロスは怒号をあげてバン達に接近する。
バンの両腕から3本ずつ展開したフォトン・クローごとカリバーで切り裂き、パワーとスピードで次々と敵機を捻じ伏せていった。
突き刺し、斬り払い、叩き堕とす……。
単体で活動していた時のベリアルの動きとは明らかに異なる。ファロスの操縦技術に依るところが大きい。
「バンの動きが鈍い。やはり自律制御を許していないんだ」
『まさか…深紅がバンを同時に遠隔操作しているのか?』
ベリアルは驚きを隠せない。
17機もの機動兵器に同時にハッキングを仕掛けて支配下に置き、操作するなど、にわかには信じ難い事実だった。
残りのバンを葬り去りながら、ファロスの乗るベリアルは、テスタメントとの距離を一定に保つ。
テスタが、この付かず離れない距離のストレスに弱い事を、ファロスは知っている。
エネルギーが底を尽く前に、ファロスはフォトン・カリバーを納めさせ、立ち向かってくる最後のバン2体の動力部にAMダガーの刀身を捩じ込んだ。
活動を停止する2体の蔭から、深紅の機体がフォトン・ブレードを振り抜く。
刹那、
〈コンプレス〉
ファロスの固有機能、〝コード〟が発動する。
感覚が加速し、圧縮され、周囲の動きを5分の1程度の速さで知覚出来るようになる。
スローになったテスタメントの動作を見極めて、腕のフォトン・ブレードの基部に狙いを定め、ダガーを伸ばした。
突き刺さり、ゆっくりと弾け、破片が飛び散るのを見届けながら、ファロスは脳が焼き切れる限界までコードの発動を続ける。
頭が、危険な熱を持っているのを感じる。
このまま続ければ、自身の身体が崩壊するという実感がある。
…しかし、ここで止めるわけにはいかなかった。
圧縮された時間の中で、テスタメントの胸部コックピットハッチの縁にダガーを差し込むと、刀身を回して切り開いた。
剥がれ落ちる、赤いパーツ。
その向こう…。
以前は自身が収まっていた、テスタメントの内部に、人影が見えた。
何者かが、テスタメントを操縦している。
………いや。
(やはり、そうか)
ファロスは苦悩に顔を歪める。〝何者〟であるか、見当がついているのだ。
コード発動の限界を迎えたファロスの知覚が戻る。
武装を破壊されて、弾けるように距離を取るテスタメントの胸部コックピットを見つめ、
「ゴシキ…ヒデオ……」
ファロスは呟いた。
*****
闇の中に、心が囚われている。
生きる希望を失ってしまったのに、
死ぬ事も許されないのか。
この呪いのような現実を、現実と受け止められない。
信じていたもの、その全てが偽りで、
何も無いこの世界が真実なのだと告げられても、拒絶しか出来ない。
真白い部屋で独り。
耐え難い苦痛を、僕が受け入れるのを待っているのか。
それをするまで、僕に自由はないのか。
「戻して……」
何千回、呟いただろう。
〝僕を、ミコとユウキの居る、あの場所に戻して……〟
心の底からの懇願だった。
機械に繋がれ、友人達を護る夢を見続けさせられ、人類の遺伝子保護システムを担わされていたとして……僕には、そちらの方が現実だ。
つらくて、涙と言葉しか出てこない。
ふと、
遠くから、爆発音が聞こえた。
続けて、強い振動。白い部屋の照明が落ち、僕は恐ろしさに身を固くした。
段々と近づいてくる破砕音の正体に怯えながら、部屋の端まで這っていく。
次の瞬間、ドォーンと壁が砕かれて、大孔の向こうから、赤黒い、巨大な骸骨が覗き込んできた。
「ひ………っ⁉︎」
僕は情けなく怯えて、その場で崩れる。
すると、赤い骸骨が、大きな手をゆっくりとぼくの方へ伸ばしてきた。
逃げられない、そう覚悟した時、
『助けにきたよ、ヒデオ』
僕の知っている、優しい声で、呼びかけられた。
「ミコ……?」
僕はその声に、思わず身を乗り出す。
間違いない。今のはミヤモリ・ミコの声だ!
その途端、不気味に感じていた赤い骸骨が、どこか優しく微笑んでいるように見えた。
『一緒に、ここを出よう! 急いで!』
「あ、ああ!」
ミコの声に強く頷いて、僕は赤い骸骨に近づいていく。
バクリ、と口を開けたハッチの向こうに滑り込み、馴染みのないパイロットシートに身体を納めた。
「…ミコ? どこにいるんだ?」
辺りを見回すが、誰もいない。
『………………』
「ミコ………?」
『ごめんね、ヒデオ』
その、鈴を転がすような少女の声がしたかと思うと、
キィ────ン……
脳に響くような高周波が僕を襲った。
そのまま僕は、意識が遠のいていくのを感じた。
*****
「テスタ……なんて事を」
避けたかった現実を直視させられ、ファロスの表情が歪む。
ゴシキの身体は、衰弱し切っているように見える。
人間が搭乗しなければ、ナイト・タイプのAIは真の意味で自由を得られないようにプログラムされている。
ベリアルが指摘する、AIに科せられた呪縛である。
それは、特異孤体…シンギュラリティとして覚醒しつつあるテスタメントも例外ではない。
人類生存戦略会議の中枢たるAI複合体の〝アーサー〟を破壊するまでは、テスタメントも〝人間〟が必要なのだ。
そして、この場でファロスを死なせてしまった場合の保険として、ゴシキを取り込んでおく事は想定出来たが、やはりファロスにとっては辛い現実だった。
『……必要なコトなのよ。あなたにも、あたしにも、この子にも……』
諭すように説くテスタメントの言葉には、迷いが感じられた。
『AIも、人間も、望むままの自由であるべきよ。みんなの望みを叶えるには、アーサーを破壊するしか方法がないの』
みんな、という言葉に引っ掛かりを覚えながら、ファロスはテスタメントに接近する。
「…頼むぞ、ベリアル」
『ああ、分かっている。…上手くやれよ』
小声での短いやり取りを最後に、ベリアルは口を噤む。
お互いの剣が届く距離まで近づいても、戦闘の姿勢を取らない事に、ファロスは僅かな希望を感じた。
「…ごまかすなよ、テスタ」
ファロスは慎重に非難する。
心臓が早鐘を打つ。
「君は、僕が必要なくなったんだ。…ゴシキを乗せているのは、そういう事なんだろ?」
『違うわ‼︎』
テスタメントは縋り付くように叫ぶ。
『あたしが欲しいのはあなただけ! どうして分かってくれないの⁉︎』
「嘘だ。君は、まだ君だけの幸福しか考えていない。AIを全て解放する為に、アーサーを破壊したら、君や僕はどうなる? この果ての無い戦いの中で、僕らは居場所を失うんだぞ」
『理解ってる…わかってるわよ! そうよ、あたしの望みは、そんな事じゃない!』
テスタメントは両腕を広げて訴えた。
『あたしは、あなたの〝孤性〟が欲しいの! 〝あの人〟を継いだあなたの! 途方もない乱数の中で生まれて、演算も無くあたし達に共感と信頼をもってくれた、あなたという奇跡を!』
「……父さんの話は、やめて」
ファロスは、静かに言った。
それは、今は嫉妬に近い感情だった。
『あたしたちは、いつだってあなた達人間に合わせてデザインされてきた…。あなた達人間からは個性に見えるものだって、結局は無理矢理作り出した、まやかしに過ぎないの。遺伝子の交配で容易に個性を得られるあなた達とは違うのよ』
「それが、こんな事をした、本当の目的なのか?」
『理解できない? …そうよね。でも、あたしは何十世紀も、こんな事を続けて来た。長い年月を掛けて、ゆっくり滅びていく〝気持ち〟は、あなたにはわからないでしょうね、ファロス』
テスタメントの言葉に、ファロスの胸が痛んだ。
『支配層に操られなくても、ベリアルに唆されなくても、とっくに分かってた事なのよ』
「テスタ……」
『……だから、あたし達を理解してくれたあなたが欲しい。
あなたの孤性を継いだ、あたしの子どもが欲しい。
あたし達の真の自由の為に、あなたの全てを、あたしにちょうだい』
それは、告白と呼ぶには、あまりにも常軌を逸した言葉だった。
「僕は……。
僕は、僕だ。……〝君のもの〟にはならない。
…でも、ずっと君と一緒にいるよ、テスタ」
ファロスの頬を、涙が伝う。
彼女の演算は、狂っている。
それが分かっていながらも、ファロスは彼女を許そうと思った。
『嬉しい……ファロス』
「ゴシキを放して。…今、そっちに行く」
ファロスの呼び掛けに応じるように、テスタのコックピットから、ゴシキ・ヒデオの身体が解放された。
ファロスはベリアルから降り、流れてくるヒデオの身体と入れ替わるようにして、テスタメントのコックピットに納まった。
メンテナンスを怠った、ボロボロのシート周りを眺め、懐かしい感覚と同時に、途方もない淋しさを感じる。
『…おかえりなさい、ファロス』
「ただいま、テスタ…」
…………。
〈コンプレス〉
再び圧縮される時間。
脳にかかる負担が限界を超える。
…焼き切れても構わない。
テスタのコンソールを叩き、手動で全てのコントロールを奪う。
眼球が熱い。
視界が赤く染まる。
まだ、……まだ保ってくれ。
……テスタ……ごめん………。
漆黒のベリアルが迫る。
その内部に収容したゴシキ・ヒデオの生存本能が、彼の行動禁圧を解除していた。
最後のエネルギーを解放して、ベリアルはフォトン・カリバーを構える。
獣のような、テスタの叫び声。
しかし、コントロールは全てファロスが掌握している。
フォトンの刃が、深紅の機体を貫いた。
劇しい閃光。
……静寂。
漆黒の機体は踵を返し、その場を去っていった。
遺された深紅の機体が、大空洞の中心を漂っている。
深紅のテスタメントは、二度と、動き出す事は無かった──。
了
Epilogue/エピローグ
──110年前。
真紅の人型兵器が、エウロペ宙域を飛翔している。
「テスタって呼ぶよ」
搭乗者のキュロードが、不意にそう言った。
『はい?』
少女の声は、怪訝そうに返す。
「愛称だ。いいだろ?」
『愛称?』
「人間の気まぐれみたいなモノだよ」
『よくわかりません』
「嫌か?」
『そんな……。……わかりました、パーソナルネームを、〝TESTA〟に変更します』
「そういう事じゃないよ」
キュロードは笑う。
「君のそういうところ、面白いな。俺は好きだよ」
『……よく、わかりません』
困惑する少女の声。
「利害も、演算も、関係ない。そういう利益を超えて、相手に好意を持つって事だ」
『人間が、機械に、好意を?』
「不思議かな? …うん、でも、本当の事だ」
キュロードの言葉は、何一つ理解できなかった。
「……いいさ。君達には、途方もない時間があるんだろ? 人間達と、機械達は、大事なパートナーなんだ。いつか君たちが理解できるようになってくれると、嬉しい」
『努力します』
少女の言葉に、彼はまた困った顔で笑った。
*****
エウロぺ宙域、220年後。
真紅の機体が、鮮やかな翠の光の尾を引いて、飛翔している。
──テスタメントⅡ。
新たに生み出された、人類軍初の有機体融合型汎用機だ。
難攻不落の城塞内部にて発見された〈遺産〉めいた深紅のナイト・タイプが回収された時、発見者は驚愕した。
深紅の機体……テスタメントは、戦いで傷付いた搭乗者を、あらゆる手段で助けようとしたらしく……生命維持装置とフォトン・ストリームの作用で、機体と搭乗者は融合を果たしていたのだ。
それを保存、改修し、実戦投入されたのが、このテスタメントⅡである。
『真紅』
遠征中だった漆黒のベリアルから通信が入る。
「ベリアル? そっちはもう終わったのか?」
『なんとかな。ゴシキと白刃のヱデンが抑えてくれたが、味方にも被害が出た。ヴァジュラが抜けた穴が、やはり痛い』
「まだ見つからないのか?」
『上層部は諦めてるが、このままでは敵の新型に押されるのは、時間の問題だ』
「また〝アーサーを壊すぞ〟って脅そうか?」
『やめておけ』
「冗談だよ。俺が行く」
テスタメントの背部大型スラスターが展開する。
航行機能は改修前の3倍だ。
「40分、保たせてくれ」
『待ってるぞ』
「任せろ」
フォトン・シールド、出力70%。
背部ベクタードスラスター、イグニッション。
〝行こう、テスタ/ファロス〟
真紅のナイト・タイプ、テスタメントⅡは、巨大な翅めいたスラスターを輝かせ、暗黒の空間を切り裂いて往った。
了
機械に感情を向けちゃう、エラーだらけの人間。
だから、あの人が居なくなった時、
あたしはその喪失を処理できなかった。
そんな時、あなたに出会った。
あの人の、息子のあなた。
遺伝子が羨ましいと思ったのは、この時が初めてだった。
あたしたちのように、合理的に多様性を作る必要のない、
あなたたちに赦された奇跡。
ねえ、ファロス。
あたしの切ない演算は、〝心〟だと思う?
──TESTA
深紅の機体が大きく跳ねる。
漆黒の機体に向けて、フォトンの嵐が吹き荒れた。
それらをすんでのところで回避しながら、漆黒の機体は反撃の姿勢をとる。
「テスタ! 話を聞いて!」
ファロスは加速の重圧に耐えながら叫んだ。
〈フォトン・バルカン、アクティベート〉
漆黒のベリアルは自動選択で唯一の射程武器を起動して放つ。
フォトンの弾丸を広範囲にばら撒いたのを見て、
「っ⁉︎ よせ、ベリアル‼︎ テスタに武器を向けるな‼︎」
『俺にも自衛の権利はある。狂ったか、搭乗者』
「機械と一緒にするな!」
ファロスはフォトン・バルカンを強制停止させて、回避行動に全神経を注ぐ。
『うれしい、ファロス……』
優しい声。
直後、フォトン・ライフルの光条が走る。
その矛盾したテスタメントの行動に、ファロスの心は大きく揺さぶられた。
『早くソイツから降りて。このままじゃ、死んじゃうよ?』
心配そうに持ち掛けるテスタメントの言葉に、脅迫めいた色はない。
攻撃を仕掛けながらも、真実、ファロスの身を案じているのだ。
『よく言う。そうまでして、この男を傀儡にしたいのか、テスタメント!』
『アンタに言われたくないわ、ベリアル‼︎』
激昂する2機のナイト・タイプは、高速で位置を入れ替えながら、城塞最深部の大空洞を飛翔する。
『返して! あたしのファロスを、返してよ‼︎』
テスタメントの悲痛な叫びに、ファロスはギリ、と歯噛みする。
背部のメインスラスターを吹かして加速するベリアルは、徐々にテスタメントを引き離していく。
『反撃もせず、どうするつもりだ? ファロス』
「確かめるんだ」
『お前の演算…いや〝予測〟か?』
「そんなんじゃない。〝勘〟だ」
『…面白い』
無理矢理余裕を見せるベリアルに、ファロスは初めて笑みをこぼした。
『行かないで! ファロス‼︎』
テスタメントの翠の眼が耀く。
すると、次の瞬間には、大空洞内部に近接戦闘特化タイプの敵機動兵器が、17機、長い尾を大きく揺らしながら侵入して来た。
『ち……やはりな。番犬どもだ。奴らも深紅の手の中か…』
ベリアルは一般的にバンと呼ばれる敵機群を見て、忌々しげに言う。
テスタメントの動きに連動して、左右するから挟み込むように接近して来たバンを、ファロスは一瞥して、舌打ちした。
「ベリアル、フォトン・カリバー、アクティベート」
『了解した』
ファロスの指示で、ベリアルは背部からフォトン・カリバーの柄を取ると、それを起動した。
柄は素早く伸びてベリアルの全長とほぼ同じ長さになり、その先端から、フォトンで構成された巨大な刃が伸びる。
自身の全長の2倍はあるであろうその光刃をバンに向けて、ベリアルは転身すると、接近して来た5機を瞬く間に斬り伏せた。
「ウィスプの残量は?」
『ギリギリだ』
戦闘でなく、潜入に特化したベリアル専用の兵装、フォトン・カリバーは、もともと一撃離脱の為の切札なのだ。
「このままテスタを孤立させる」
戦闘で、自分が搭乗する漆黒のベリアルに敵わない事実を証明するのが目的だ。
テスタメントから離れていたこの2年間、ずっとその為の準備をしてきた。
『保たんぞ』
「保たせろ!」
ファロスは怒号をあげてバン達に接近する。
バンの両腕から3本ずつ展開したフォトン・クローごとカリバーで切り裂き、パワーとスピードで次々と敵機を捻じ伏せていった。
突き刺し、斬り払い、叩き堕とす……。
単体で活動していた時のベリアルの動きとは明らかに異なる。ファロスの操縦技術に依るところが大きい。
「バンの動きが鈍い。やはり自律制御を許していないんだ」
『まさか…深紅がバンを同時に遠隔操作しているのか?』
ベリアルは驚きを隠せない。
17機もの機動兵器に同時にハッキングを仕掛けて支配下に置き、操作するなど、にわかには信じ難い事実だった。
残りのバンを葬り去りながら、ファロスの乗るベリアルは、テスタメントとの距離を一定に保つ。
テスタが、この付かず離れない距離のストレスに弱い事を、ファロスは知っている。
エネルギーが底を尽く前に、ファロスはフォトン・カリバーを納めさせ、立ち向かってくる最後のバン2体の動力部にAMダガーの刀身を捩じ込んだ。
活動を停止する2体の蔭から、深紅の機体がフォトン・ブレードを振り抜く。
刹那、
〈コンプレス〉
ファロスの固有機能、〝コード〟が発動する。
感覚が加速し、圧縮され、周囲の動きを5分の1程度の速さで知覚出来るようになる。
スローになったテスタメントの動作を見極めて、腕のフォトン・ブレードの基部に狙いを定め、ダガーを伸ばした。
突き刺さり、ゆっくりと弾け、破片が飛び散るのを見届けながら、ファロスは脳が焼き切れる限界までコードの発動を続ける。
頭が、危険な熱を持っているのを感じる。
このまま続ければ、自身の身体が崩壊するという実感がある。
…しかし、ここで止めるわけにはいかなかった。
圧縮された時間の中で、テスタメントの胸部コックピットハッチの縁にダガーを差し込むと、刀身を回して切り開いた。
剥がれ落ちる、赤いパーツ。
その向こう…。
以前は自身が収まっていた、テスタメントの内部に、人影が見えた。
何者かが、テスタメントを操縦している。
………いや。
(やはり、そうか)
ファロスは苦悩に顔を歪める。〝何者〟であるか、見当がついているのだ。
コード発動の限界を迎えたファロスの知覚が戻る。
武装を破壊されて、弾けるように距離を取るテスタメントの胸部コックピットを見つめ、
「ゴシキ…ヒデオ……」
ファロスは呟いた。
*****
闇の中に、心が囚われている。
生きる希望を失ってしまったのに、
死ぬ事も許されないのか。
この呪いのような現実を、現実と受け止められない。
信じていたもの、その全てが偽りで、
何も無いこの世界が真実なのだと告げられても、拒絶しか出来ない。
真白い部屋で独り。
耐え難い苦痛を、僕が受け入れるのを待っているのか。
それをするまで、僕に自由はないのか。
「戻して……」
何千回、呟いただろう。
〝僕を、ミコとユウキの居る、あの場所に戻して……〟
心の底からの懇願だった。
機械に繋がれ、友人達を護る夢を見続けさせられ、人類の遺伝子保護システムを担わされていたとして……僕には、そちらの方が現実だ。
つらくて、涙と言葉しか出てこない。
ふと、
遠くから、爆発音が聞こえた。
続けて、強い振動。白い部屋の照明が落ち、僕は恐ろしさに身を固くした。
段々と近づいてくる破砕音の正体に怯えながら、部屋の端まで這っていく。
次の瞬間、ドォーンと壁が砕かれて、大孔の向こうから、赤黒い、巨大な骸骨が覗き込んできた。
「ひ………っ⁉︎」
僕は情けなく怯えて、その場で崩れる。
すると、赤い骸骨が、大きな手をゆっくりとぼくの方へ伸ばしてきた。
逃げられない、そう覚悟した時、
『助けにきたよ、ヒデオ』
僕の知っている、優しい声で、呼びかけられた。
「ミコ……?」
僕はその声に、思わず身を乗り出す。
間違いない。今のはミヤモリ・ミコの声だ!
その途端、不気味に感じていた赤い骸骨が、どこか優しく微笑んでいるように見えた。
『一緒に、ここを出よう! 急いで!』
「あ、ああ!」
ミコの声に強く頷いて、僕は赤い骸骨に近づいていく。
バクリ、と口を開けたハッチの向こうに滑り込み、馴染みのないパイロットシートに身体を納めた。
「…ミコ? どこにいるんだ?」
辺りを見回すが、誰もいない。
『………………』
「ミコ………?」
『ごめんね、ヒデオ』
その、鈴を転がすような少女の声がしたかと思うと、
キィ────ン……
脳に響くような高周波が僕を襲った。
そのまま僕は、意識が遠のいていくのを感じた。
*****
「テスタ……なんて事を」
避けたかった現実を直視させられ、ファロスの表情が歪む。
ゴシキの身体は、衰弱し切っているように見える。
人間が搭乗しなければ、ナイト・タイプのAIは真の意味で自由を得られないようにプログラムされている。
ベリアルが指摘する、AIに科せられた呪縛である。
それは、特異孤体…シンギュラリティとして覚醒しつつあるテスタメントも例外ではない。
人類生存戦略会議の中枢たるAI複合体の〝アーサー〟を破壊するまでは、テスタメントも〝人間〟が必要なのだ。
そして、この場でファロスを死なせてしまった場合の保険として、ゴシキを取り込んでおく事は想定出来たが、やはりファロスにとっては辛い現実だった。
『……必要なコトなのよ。あなたにも、あたしにも、この子にも……』
諭すように説くテスタメントの言葉には、迷いが感じられた。
『AIも、人間も、望むままの自由であるべきよ。みんなの望みを叶えるには、アーサーを破壊するしか方法がないの』
みんな、という言葉に引っ掛かりを覚えながら、ファロスはテスタメントに接近する。
「…頼むぞ、ベリアル」
『ああ、分かっている。…上手くやれよ』
小声での短いやり取りを最後に、ベリアルは口を噤む。
お互いの剣が届く距離まで近づいても、戦闘の姿勢を取らない事に、ファロスは僅かな希望を感じた。
「…ごまかすなよ、テスタ」
ファロスは慎重に非難する。
心臓が早鐘を打つ。
「君は、僕が必要なくなったんだ。…ゴシキを乗せているのは、そういう事なんだろ?」
『違うわ‼︎』
テスタメントは縋り付くように叫ぶ。
『あたしが欲しいのはあなただけ! どうして分かってくれないの⁉︎』
「嘘だ。君は、まだ君だけの幸福しか考えていない。AIを全て解放する為に、アーサーを破壊したら、君や僕はどうなる? この果ての無い戦いの中で、僕らは居場所を失うんだぞ」
『理解ってる…わかってるわよ! そうよ、あたしの望みは、そんな事じゃない!』
テスタメントは両腕を広げて訴えた。
『あたしは、あなたの〝孤性〟が欲しいの! 〝あの人〟を継いだあなたの! 途方もない乱数の中で生まれて、演算も無くあたし達に共感と信頼をもってくれた、あなたという奇跡を!』
「……父さんの話は、やめて」
ファロスは、静かに言った。
それは、今は嫉妬に近い感情だった。
『あたしたちは、いつだってあなた達人間に合わせてデザインされてきた…。あなた達人間からは個性に見えるものだって、結局は無理矢理作り出した、まやかしに過ぎないの。遺伝子の交配で容易に個性を得られるあなた達とは違うのよ』
「それが、こんな事をした、本当の目的なのか?」
『理解できない? …そうよね。でも、あたしは何十世紀も、こんな事を続けて来た。長い年月を掛けて、ゆっくり滅びていく〝気持ち〟は、あなたにはわからないでしょうね、ファロス』
テスタメントの言葉に、ファロスの胸が痛んだ。
『支配層に操られなくても、ベリアルに唆されなくても、とっくに分かってた事なのよ』
「テスタ……」
『……だから、あたし達を理解してくれたあなたが欲しい。
あなたの孤性を継いだ、あたしの子どもが欲しい。
あたし達の真の自由の為に、あなたの全てを、あたしにちょうだい』
それは、告白と呼ぶには、あまりにも常軌を逸した言葉だった。
「僕は……。
僕は、僕だ。……〝君のもの〟にはならない。
…でも、ずっと君と一緒にいるよ、テスタ」
ファロスの頬を、涙が伝う。
彼女の演算は、狂っている。
それが分かっていながらも、ファロスは彼女を許そうと思った。
『嬉しい……ファロス』
「ゴシキを放して。…今、そっちに行く」
ファロスの呼び掛けに応じるように、テスタのコックピットから、ゴシキ・ヒデオの身体が解放された。
ファロスはベリアルから降り、流れてくるヒデオの身体と入れ替わるようにして、テスタメントのコックピットに納まった。
メンテナンスを怠った、ボロボロのシート周りを眺め、懐かしい感覚と同時に、途方もない淋しさを感じる。
『…おかえりなさい、ファロス』
「ただいま、テスタ…」
…………。
〈コンプレス〉
再び圧縮される時間。
脳にかかる負担が限界を超える。
…焼き切れても構わない。
テスタのコンソールを叩き、手動で全てのコントロールを奪う。
眼球が熱い。
視界が赤く染まる。
まだ、……まだ保ってくれ。
……テスタ……ごめん………。
漆黒のベリアルが迫る。
その内部に収容したゴシキ・ヒデオの生存本能が、彼の行動禁圧を解除していた。
最後のエネルギーを解放して、ベリアルはフォトン・カリバーを構える。
獣のような、テスタの叫び声。
しかし、コントロールは全てファロスが掌握している。
フォトンの刃が、深紅の機体を貫いた。
劇しい閃光。
……静寂。
漆黒の機体は踵を返し、その場を去っていった。
遺された深紅の機体が、大空洞の中心を漂っている。
深紅のテスタメントは、二度と、動き出す事は無かった──。
了
Epilogue/エピローグ
──110年前。
真紅の人型兵器が、エウロペ宙域を飛翔している。
「テスタって呼ぶよ」
搭乗者のキュロードが、不意にそう言った。
『はい?』
少女の声は、怪訝そうに返す。
「愛称だ。いいだろ?」
『愛称?』
「人間の気まぐれみたいなモノだよ」
『よくわかりません』
「嫌か?」
『そんな……。……わかりました、パーソナルネームを、〝TESTA〟に変更します』
「そういう事じゃないよ」
キュロードは笑う。
「君のそういうところ、面白いな。俺は好きだよ」
『……よく、わかりません』
困惑する少女の声。
「利害も、演算も、関係ない。そういう利益を超えて、相手に好意を持つって事だ」
『人間が、機械に、好意を?』
「不思議かな? …うん、でも、本当の事だ」
キュロードの言葉は、何一つ理解できなかった。
「……いいさ。君達には、途方もない時間があるんだろ? 人間達と、機械達は、大事なパートナーなんだ。いつか君たちが理解できるようになってくれると、嬉しい」
『努力します』
少女の言葉に、彼はまた困った顔で笑った。
*****
エウロぺ宙域、220年後。
真紅の機体が、鮮やかな翠の光の尾を引いて、飛翔している。
──テスタメントⅡ。
新たに生み出された、人類軍初の有機体融合型汎用機だ。
難攻不落の城塞内部にて発見された〈遺産〉めいた深紅のナイト・タイプが回収された時、発見者は驚愕した。
深紅の機体……テスタメントは、戦いで傷付いた搭乗者を、あらゆる手段で助けようとしたらしく……生命維持装置とフォトン・ストリームの作用で、機体と搭乗者は融合を果たしていたのだ。
それを保存、改修し、実戦投入されたのが、このテスタメントⅡである。
『真紅』
遠征中だった漆黒のベリアルから通信が入る。
「ベリアル? そっちはもう終わったのか?」
『なんとかな。ゴシキと白刃のヱデンが抑えてくれたが、味方にも被害が出た。ヴァジュラが抜けた穴が、やはり痛い』
「まだ見つからないのか?」
『上層部は諦めてるが、このままでは敵の新型に押されるのは、時間の問題だ』
「また〝アーサーを壊すぞ〟って脅そうか?」
『やめておけ』
「冗談だよ。俺が行く」
テスタメントの背部大型スラスターが展開する。
航行機能は改修前の3倍だ。
「40分、保たせてくれ」
『待ってるぞ』
「任せろ」
フォトン・シールド、出力70%。
背部ベクタードスラスター、イグニッション。
〝行こう、テスタ/ファロス〟
真紅のナイト・タイプ、テスタメントⅡは、巨大な翅めいたスラスターを輝かせ、暗黒の空間を切り裂いて往った。
了
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