毒薔薇姫は運命を変える?!

刹那

文字の大きさ
上 下
41 / 48
四章

月夜

しおりを挟む
黒髪の美し青年は月を眺めながらただ1人のことを思う。
離れていても忘れることの出来なかった人をただただ思うその姿はとても危うくて触れてしまったら消えてしまいそうで怖くて少女は声をかけるのを戸惑う。
青年はこちらに気づいたのか月の結晶のような瞳に自分が写り少女は頬を染める。

「ガイ、こんな所にいたら風邪ひくよ?」

「そうですね。でも、もう少しだけここにいます。今日はこんなにも月が綺麗ですから。」

その横顔が余りにも儚く愛おしそうに月を見つめるものだから少女は無意識にガイの手を掴む。

「……私もここにいるわ!」

「そうですね、でもお嬢様に風邪をひかれてしまっては旦那様も心配いたします。」

「…も、……する?」

「お嬢様?」

「ガ、ガイも心配する?」

ガイは目を見開いた後すぐに微笑み少女の頭を撫でる。

「はい。もちろん、ここに住まうみんなが心配致します。」

少女は回答が気に入らなかったのか頬を膨らませる。

「明日はパーティーがあるのですから、早く寝ましょう。」

「わかったわよ!ガイも風邪ひいたら許さないからね!お休みなさいガイ。」

「はい。お嬢様。」

ガイは少女の後ろ姿を見ながらポツリと呟く。

「……お嬢様…か。どうしたら忘れられるんだろうな。」

お嬢様と呼ぶたび。ふとした時、月を見たときすら、あなたの顔が浮かぶ。

ガイは自傷気味に笑う。

「ガイアス様。」

「ノアか、どうだった?」

ノアはどこからともなく現れ、ガイに近づき耳打ちをする。

「……そうか。」

ガイはカトレアの元を離れて4年間、ここローズ公爵家の親友である。ダヴィド伯爵のご令嬢、アミ様の執事として働きそして、情報を集めていた。
今までなんの動きもなかった。あの女が、やっと動き出したのだ。
その場所は王宮で16歳から18歳飲みが参加するパーティーだ。

誰も考えもしないからこそその場所にしたのだろうが、他にもパーティーはある筈なのに何故その日を選んだのか疑問が残るが行かない訳にはいかない。

「ノア。ご苦労だったな。」

「いえ。…………。」

何時もならバレ内容に話したらすぐ消えるのに今日のノアは伺うようにこちらを見ている。

「どうした?他にも報告があるのか?」

「…大丈夫ですか?」

「何がだ?」

「そのパーティーは16歳から18歳が出席いらします。ですから……きっとカト……。」

「ノア。」

「…………。」

「もう、俺とあの方は関係ない。」

「……かしこまりました。」

 ノアはまた暗闇の中に消えていった。
そして、ガイはもう1度月を眺める。

「関係ない。」

今度は自分に言い聞かせるように呟いた言葉は暗闇に溶けていった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

処理中です...