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ラフランス国 後編
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フワリと甲板に降り立ったのは。
「「「トーコ!!」」」
三人の声に透子はひとつ頷くと、背負っていた大型の銃を下ろす。深海生物の頭の煙は、どうやらコレのようだ。そしてシューズタイプのエアー以外の装備を素早く外し、剣一本だけを持って飛び出した。僅か数秒の早業だ。
そして、飛び出してからも一瞬だった。
護衛たちが避難を促すも、残っている者たちは透子が特S級と知っている者たちなのだろう。安心感と、その戦い振りを見たくて、なかなか避難をしてくれない。かく言う護衛たちも、透子の、特S級の戦闘を間近で見られることに、誘導もどこか気もそぞろだ。護衛にあるまじきことだが、特S級とは、それほどまでに圧倒的だった。
透子は無数の触手を難なくかいくぐり、無数にある目の中の、頭頂部にある目に迷うことなく剣を突き刺した。深海生物の断末魔が響き渡ると、力を失った触手たちが重力に逆らうことなく海へと落ちていく。
呆気ない討伐に、護衛たちは唸る。透子は簡単そうに討伐をしたが、自分たちでは討伐はおろか、救助をするだけで何人犠牲にしたことだろう。
これが、特S。
護衛たちが魅入る中、拘束力のなくなった触手から落ちかけるノーマを、危うげなく透子はキャッチする。捕まった護衛たちは、自力で何とか出来るので放置だ。
「すぐに船へお連れします。もう少しだけご辛抱を」
お姫様抱っこされているノーマは、紅潮する頬とうるさい心臓と共に、返り血に濡れた透子を、ジッと見つめた。
「ミュゲル様、申し訳ありません」
甲板に降り立つと、散乱したカフェの椅子で無事なものを見つけ、そこにノーマを座らせる。
「どこか痛いところや違和感のあるところはありませんか?」
手袋を脱ぎ、服の上から体を確かめる。
「い、いえ、どこも、何とも、ありません」
ノーマの言葉に頷きつつ、
「すぐに医者の手配をいたします。向こうに着いたら、念のため診てもらってください」
そう透子は言った。
「は、はい」
目的地の島は目前だ。三十分もせず到着する。
「ミュゲル様、本当に、お詫びのしようもございません」
護衛隊長が頭を下げる。
「今回が無事であったからいいとは言いません。ですが、あなた方が遊んでいたわけではないことも充分理解しております。不問とは言えませんが、事を荒立てるようなことはしませんよ」
ノーマの言葉に、護衛隊長はさらに深く頭を下げる。
「お心遣いに感謝いたします。残りの船旅、引き続き警戒して参りますので、今暫く、隊長の務めを果たさせていただきます」
ノーマが頷くと、護衛隊長は任務に戻って行った。
「ではミュゲル様、参りましょう」
透子の言葉に、ノーマは首を傾げた。どこへ行くというのだろう。
「このままお運びします。船より速いです」
そう言うと、透子はノーマを再びお姫様抱っこをすると、後ろ向きで船を飛び出した。
「しっかり掴まってください。五分ほどで到着します。風圧で息がしづらいかと思いますので、私の体に出来る限り顔を近付けていてください」
風除けとなるため、後ろ向き飛行をしてくれている。ノーマは透子の首に回した手にギュッと力を入れ、顔を寄せる。それを確認すると、透子はさらに速度を上げた。
ノーマの心臓は、破裂するかと思うほど速かった。
どうしよう。可愛いのに、こんなに可愛いのに、こんなにカッコイイなんて!
男前すぎる透子に、ますます傾倒していくノーマだった。
*つづく*
「「「トーコ!!」」」
三人の声に透子はひとつ頷くと、背負っていた大型の銃を下ろす。深海生物の頭の煙は、どうやらコレのようだ。そしてシューズタイプのエアー以外の装備を素早く外し、剣一本だけを持って飛び出した。僅か数秒の早業だ。
そして、飛び出してからも一瞬だった。
護衛たちが避難を促すも、残っている者たちは透子が特S級と知っている者たちなのだろう。安心感と、その戦い振りを見たくて、なかなか避難をしてくれない。かく言う護衛たちも、透子の、特S級の戦闘を間近で見られることに、誘導もどこか気もそぞろだ。護衛にあるまじきことだが、特S級とは、それほどまでに圧倒的だった。
透子は無数の触手を難なくかいくぐり、無数にある目の中の、頭頂部にある目に迷うことなく剣を突き刺した。深海生物の断末魔が響き渡ると、力を失った触手たちが重力に逆らうことなく海へと落ちていく。
呆気ない討伐に、護衛たちは唸る。透子は簡単そうに討伐をしたが、自分たちでは討伐はおろか、救助をするだけで何人犠牲にしたことだろう。
これが、特S。
護衛たちが魅入る中、拘束力のなくなった触手から落ちかけるノーマを、危うげなく透子はキャッチする。捕まった護衛たちは、自力で何とか出来るので放置だ。
「すぐに船へお連れします。もう少しだけご辛抱を」
お姫様抱っこされているノーマは、紅潮する頬とうるさい心臓と共に、返り血に濡れた透子を、ジッと見つめた。
「ミュゲル様、申し訳ありません」
甲板に降り立つと、散乱したカフェの椅子で無事なものを見つけ、そこにノーマを座らせる。
「どこか痛いところや違和感のあるところはありませんか?」
手袋を脱ぎ、服の上から体を確かめる。
「い、いえ、どこも、何とも、ありません」
ノーマの言葉に頷きつつ、
「すぐに医者の手配をいたします。向こうに着いたら、念のため診てもらってください」
そう透子は言った。
「は、はい」
目的地の島は目前だ。三十分もせず到着する。
「ミュゲル様、本当に、お詫びのしようもございません」
護衛隊長が頭を下げる。
「今回が無事であったからいいとは言いません。ですが、あなた方が遊んでいたわけではないことも充分理解しております。不問とは言えませんが、事を荒立てるようなことはしませんよ」
ノーマの言葉に、護衛隊長はさらに深く頭を下げる。
「お心遣いに感謝いたします。残りの船旅、引き続き警戒して参りますので、今暫く、隊長の務めを果たさせていただきます」
ノーマが頷くと、護衛隊長は任務に戻って行った。
「ではミュゲル様、参りましょう」
透子の言葉に、ノーマは首を傾げた。どこへ行くというのだろう。
「このままお運びします。船より速いです」
そう言うと、透子はノーマを再びお姫様抱っこをすると、後ろ向きで船を飛び出した。
「しっかり掴まってください。五分ほどで到着します。風圧で息がしづらいかと思いますので、私の体に出来る限り顔を近付けていてください」
風除けとなるため、後ろ向き飛行をしてくれている。ノーマは透子の首に回した手にギュッと力を入れ、顔を寄せる。それを確認すると、透子はさらに速度を上げた。
ノーマの心臓は、破裂するかと思うほど速かった。
どうしよう。可愛いのに、こんなに可愛いのに、こんなにカッコイイなんて!
男前すぎる透子に、ますます傾倒していくノーマだった。
*つづく*
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