乙女の憧れ、つまっています ~平凡OLは非凡な日常~

らがまふぃん

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プロローグ

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 新しい話始めました。舞台は地球と似て非なる場所です。現代と似ている場所など出てくるかもしれませんが、まったくの別物であり、実際の場所、モノ、人などとは一切関係がありません。



*∽*∽*∽*∽*



 昔々、とある科学者が、究極の生物を造ろうと腐心ふしんしておりました。
 何が究極か。あらゆる攻撃に耐えうることか。傷の再生能力が異常なまでに高いことか。不死であることか。そのすべてか。

 科学者もわかりませんでした。だから造りました。造って造って造り続けました。結局科学者は、生涯をかけても自分の理想がわからないまま、死んでしまいました。大量に造られたキメラを残したまま。

 キメラは科学者の研究所から逃げ出し、人間の脅威きょういとなりました。独自に進化し、自然界のものと交わり、その数は減ることはありません。世界は人々を守るため、人の住む場所をシールドで囲いました。

 各国の軍隊が、定期的にシールド外のキメラを討伐とうばつするので、人々は再び安心して暮らせるようになりました。


 -出典:科学者の過ちとシールドの成り立ち-



*~*~*~*~*



 可もなく不可もなく。いたって普通の外見、普通のどこにでもいるような、派遣のOL。日向透子ひむかいとうこは、そんな女性だった。仕事もすごく出来るわけではないが、そつなくこなし、誰かとトラブルを起こすこともない。口数が少なく大人しいが、誰とでも普通に会話はする。ここ火の本国ひのもとこくではありふれた黒髪黒目の外見。だが、その黒髪はとてもつややかで美しいことは、誰もが認めるだろう。背は少々低めで少々やせ気味。

 だが、ふとしたときに、彼女から目が離せなくなることがある。窓の外を見つめているときだ。時々、ジッと窓の外を見つめることがある。その姿を見た者は、かすかな違和感があるのだ。いつも通りに見える。ただ窓の外を見ているだけ。そう思うのだが、何かが違う。言葉では表せない何かに、微かな引っかかりを覚えるのだ。けれど、彼女が窓から目を離すとその雰囲気も霧散むさんする。気のせいだと思う程度の、違和感。

 そんな彼女に、まさかこれほどまで驚かされるとは、誰も予想だにしなかった。



*~*~*~*~*



 世界には四大財閥ざいばつと言われている財閥が存在する。

 ファブリティッシュ王国のロベロニア財閥、ラフランス国のミュゲル財閥、ドイツェルン国のヴァンタイン財閥、リタイア国のアスカーノ財閥。

 そんな四大財閥が、密かに一つの協定を結んでいた。

 「秘宝は今、火の本国だろう」

 ヴァンタインがそう言うと、その場の全員が頷く。

 「約束の期限まで三ヶ月を切りましたね」

 「一年は長いよね。やっと四分の三消化か」

 ミュゲルの言葉に、ロベロニアは苦笑してそう続けた。

 「みんな諦めていいんだよ。秘宝は私が貰い受けるからさ」

 アスカーノが人懐っこい笑みを浮かべながらそう言うと、他の三人から冷たい視線を受けた。

 「協定を破棄することはない。秘宝は私が貰い受けるよ」

 ロベロニアが冷たい笑みを浮かべた。

 「諦めが肝心だよ?」
 「ではあなたが諦めるとよろしい」

 アスカーノにすかさずミュゲルが冷たく言い放つ。アスカーノはおどけたように肩をすくめた。

 「簡単に諦められるものなら、最初から協定など結ばないよ」

 あの美しさ、一度でも目にしたら手放せない。ロベロニアは憂えるように溜め息をいた。

 「とにかく、あと少しだ。全力で取りに行く」

 ギラギラとした目で、ヴァンタインは獰猛どうもうな笑みを浮かべた。




*つづく*
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