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番外編
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らがまふぃん投稿開始二周年記念 第四弾
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して二年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。
本編とは関係ない話になります。ご了承ください。
*∽*∽*∽*∽*
エリアストは流れ者だった。
お忍びで城下町に遊びに来ていた王女に目を付けられたことが、運命を決定づけた。
美しいエリアストに夢中になった王女だったが、身分のことから周囲が許さないし、何よりエリアスト本人が、王女に何の興味も持たなかった。
しかし周囲は、許さないのに、王女への態度が不敬だと喚き散らす。どうせ優しくしたら、気を持たせるな、王族に取り入ってどうするつもりだ、と喚くであろうに。無理矢理王城に連れて来られたエリアストは、すぐにうんざりした。逃げることは出来たが、追っ手を向けられることも面倒。エリアストの態度から、すぐに飽きて放り出されるだろうと目論見、とりあえずおとなしくついて来たが、あまりにもくだらなすぎた。これでは、王女は自分を放そうとはしないだろうと、最初の目論見が甘かったと反省する。もう、追っ手を向けられることは仕方がないので、逃げるための時間を稼ぐことに頭を切り換えた。
けれど、存外早く、好機が訪れる。
あまりにも靡かないエリアストに、我が儘すぎる王女はすぐに痺れを切らした。
「わたくしのものになると言うまで、地下牢で反省なさい!!」
連れて来られたその日の夜のことだった。
………
……
…
そこには、ひとり、住人がいた。
「何故こんなところにいる」
この地下牢は、隣同士が壁ではなく、鉄格子で仕切られていた。そのため、隣の牢に蹲る人影を見つけたエリアストは、何となく興味を引かれて声をかけた。
隣の住人は、驚いたように顔を上げた。
その瞬間、エリアストの時は止まったように思えた。
痩せ細った子どもから、目が離せない。
美しい、黎明の瞳に囚われた。
どのくらいそうしていただろう。
エリアストは、ゆっくり少女の牢へと近付く。
「おまえは、いつから、何故、こんなところにいる」
少女もまた、少し躊躇った後に、少しだけエリアストに近付く。
「わたくしは、物心ついたときには、ここにおりました」
あまりにも美しい少女の声に、エリアストは息をのむ。もっと近付きたくて、鉄格子に縋るようにしがみつく。少女は、尚も言葉を続けた。
「この国は、黒髪は不吉だと言われております。そして、紫の目は、魔に魅入られた者と。王家にそんな色が生まれてしまっては、信用がなくなってしまいますから」
二つの禁忌を持つ王女。それでもこうして隠されながらも生かされているのは、どんな理由であれ、子殺しはこの国の禁忌だからだ。子を殺した者は、神の御許に行けないと言われている。禁忌の存在のために、さらなる禁忌を犯すことはしない。それ故、こうして生かされているだけだった。
「くだらん」
エリアストは、一蹴した。所変われば、紫の瞳は高貴な者として敬われ、黒髪は尊い者として崇められることを知っている故。そんなことで、この尊い存在をこんな所に追いやったのかと思うと、この国を滅ぼしてやろうかと考えるほどだった。
「こっちへ来い。俺の手の届くところへ」
鉄格子に阻まれながら伸ばされた手に、少女は戸惑いつつも、恐る恐るその手に近付いた。
エリアストは、側に来た少女の頬に触れた。
少女は一瞬、ビクリと肩を震わせたかと思うと、驚いたように目を見開き、エリアストを見た。
「あたた、かい」
今度はエリアストが目を見開く。
「ああ、そう、ですか。これが、あたたかい、ということなのですね」
とても、とても嬉しそうに、少女は笑った。
少女は、誰かに触れてもらった記憶がなかった。
ガシャン
エリアストは、二人を隔てていた鉄格子をひしゃげた。
隔てる物のなくなったエリアストは、少女の手を掴むと、そのまま自身へと引き寄せ抱き締めた。少女は驚いてエリアストを見上げる。間近に美しい顔を見た。その顔は、どこか悲しそうに見えた。
少女は、そっとエリアストの頬に手を添える。エリアストはその手に、自身の手を重ねた。
「俺の名は、エリアスト。エル、と呼べ」
「エリアスト、エル、様」
少女が名を呼ぶだけで、心が満たされた。
「エル様、とても、暖かいです」
誰かに抱き締められることも、もちろん初めてで。エリアストのぬくもりが、心の底から安心出来た。
胸に擦り寄る少女の頭にくちづけるエリアストも、ひどく満ち足りていた。
「おまえ、名は」
少女の名前を呼びたくてそう尋ねたが、少女は困ったように眉を下げて、ゆるく首を左右に振った。
「与えられておりません。ですから、お好きなようにお呼びくださいませ」
名がないとは、どれだけ少女を蔑ろにしているのか、とかなり憤るも、少女に名付けられるということに、言い知れぬ幸福感に満たされたことも事実だ。
「ふむ」
憤りを抑え、エリアストは考えた。
「アリス」
何故か、そう思った。ふと頭に浮かんだ。とてもピッタリだと感じた。
「おまえは、アリスだ」
「はいっ。ありがとうございます、エル様っ」
嬉しそうな、けれど泣きそうな、そんな、胸が詰まるような笑顔。
堪らずエリアストは、より強く抱き締めた。
それから暫く、ふたりは今までのことを話した。
アリスの世界は、この牢の中だけ。
「エル様は、何故わざわざ囚われたのでしょうか」
話を聞く限り、エリアストは自ら囚われたように感じた。彼ならきっと、すぐにでも逃げ出せたであろうに。今だって、鉄格子なんて簡単に抜け出せるはずだ。
「どうせ追われるなら、時間稼ぎでもするかと」
牢にいると油断させておいて、この国から逃げる時間を稼ごうとしたのだという。
ああ、行ってしまうのか。
アリスは悲しそうな目を向けた。
エリアストは、両手でアリスの頬を包む。
「何故そんな顔をする」
「さみ、しい、です」
くちびるが、重なった。
驚き、真っ赤に染まるアリスに、エリアストは当然のように言った。
「おまえを置いていくはずがないだろう」
再びアリスを抱き締め、そのまま抱き上げた。
「俺と来い、アリス」
アリスの目が、大きく見開かれる。
「おまえに、空を見せてやる」
………
……
…
「見ろ、アリス」
エリアストの指の先には、星が輝く夜空があった。
「おまえの髪と、同じ色だ」
「っ」
不吉だと言われ、ない者として扱われてきた自分を、こんなにも美しいものにたとえるものだから。アリスは言葉を詰まらせる。
そしてエリアストは、反対の空を指す。
「おまえの目と、同じ色だ」
黎明の空が、あまりにも美しく。
アリスの目から、涙がこぼれ落ちる。
エリアストは、躊躇いもなくその涙を飲み干す。
「アリス」
名を囁かれ、熱く見つめられ、ゆっくりと唇が重なった。
美しい、空を、手に入れた。
*おしまい*
らがまふぃん二周年記念にお付き合いくださり、ありがとうございます。
誰がアリスに言葉を教えたんだろう、などのツッコミは受け付けておりません(笑)
牢番は気絶させられ、交代の牢番が来るまで寝てました。目覚めてびっくり。鉄格子がひしゃげているではありませんか。隣の牢との境の分も。さて、気付いた頃には、ふたりはどこにいたのでしょうね。もちろん、捕まるはずがないのでご安心を。
今後の二周年記念といたしまして、
第一弾 R6.10/29 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 公開中
第二弾 R6.10/30 あなたは一体誰ですか? 公開中
第三弾 R6.10/31 自分がされて嫌なことは、人にしてはいけません。と、言うことは、だ。 公開中
第五弾 R6.11/2 精霊の使い?いいえ違います。
第六弾 R6.11/3 では、復讐するか
第七弾 R6.11/4 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
以上のスケジュールでお届け予定です。
お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
アルファポリス様にて投稿させていただき、みなさまに支えられながら活動して二年が経ちました。いつも楽しく活動出来ているのは、優しく見守ってくださるみなさまのおかげです。これからもほそぼそ頑張って参りますので、これまで同様、温かい目で見守って、お付き合いくださいませ。
本編とは関係ない話になります。ご了承ください。
*∽*∽*∽*∽*
エリアストは流れ者だった。
お忍びで城下町に遊びに来ていた王女に目を付けられたことが、運命を決定づけた。
美しいエリアストに夢中になった王女だったが、身分のことから周囲が許さないし、何よりエリアスト本人が、王女に何の興味も持たなかった。
しかし周囲は、許さないのに、王女への態度が不敬だと喚き散らす。どうせ優しくしたら、気を持たせるな、王族に取り入ってどうするつもりだ、と喚くであろうに。無理矢理王城に連れて来られたエリアストは、すぐにうんざりした。逃げることは出来たが、追っ手を向けられることも面倒。エリアストの態度から、すぐに飽きて放り出されるだろうと目論見、とりあえずおとなしくついて来たが、あまりにもくだらなすぎた。これでは、王女は自分を放そうとはしないだろうと、最初の目論見が甘かったと反省する。もう、追っ手を向けられることは仕方がないので、逃げるための時間を稼ぐことに頭を切り換えた。
けれど、存外早く、好機が訪れる。
あまりにも靡かないエリアストに、我が儘すぎる王女はすぐに痺れを切らした。
「わたくしのものになると言うまで、地下牢で反省なさい!!」
連れて来られたその日の夜のことだった。
………
……
…
そこには、ひとり、住人がいた。
「何故こんなところにいる」
この地下牢は、隣同士が壁ではなく、鉄格子で仕切られていた。そのため、隣の牢に蹲る人影を見つけたエリアストは、何となく興味を引かれて声をかけた。
隣の住人は、驚いたように顔を上げた。
その瞬間、エリアストの時は止まったように思えた。
痩せ細った子どもから、目が離せない。
美しい、黎明の瞳に囚われた。
どのくらいそうしていただろう。
エリアストは、ゆっくり少女の牢へと近付く。
「おまえは、いつから、何故、こんなところにいる」
少女もまた、少し躊躇った後に、少しだけエリアストに近付く。
「わたくしは、物心ついたときには、ここにおりました」
あまりにも美しい少女の声に、エリアストは息をのむ。もっと近付きたくて、鉄格子に縋るようにしがみつく。少女は、尚も言葉を続けた。
「この国は、黒髪は不吉だと言われております。そして、紫の目は、魔に魅入られた者と。王家にそんな色が生まれてしまっては、信用がなくなってしまいますから」
二つの禁忌を持つ王女。それでもこうして隠されながらも生かされているのは、どんな理由であれ、子殺しはこの国の禁忌だからだ。子を殺した者は、神の御許に行けないと言われている。禁忌の存在のために、さらなる禁忌を犯すことはしない。それ故、こうして生かされているだけだった。
「くだらん」
エリアストは、一蹴した。所変われば、紫の瞳は高貴な者として敬われ、黒髪は尊い者として崇められることを知っている故。そんなことで、この尊い存在をこんな所に追いやったのかと思うと、この国を滅ぼしてやろうかと考えるほどだった。
「こっちへ来い。俺の手の届くところへ」
鉄格子に阻まれながら伸ばされた手に、少女は戸惑いつつも、恐る恐るその手に近付いた。
エリアストは、側に来た少女の頬に触れた。
少女は一瞬、ビクリと肩を震わせたかと思うと、驚いたように目を見開き、エリアストを見た。
「あたた、かい」
今度はエリアストが目を見開く。
「ああ、そう、ですか。これが、あたたかい、ということなのですね」
とても、とても嬉しそうに、少女は笑った。
少女は、誰かに触れてもらった記憶がなかった。
ガシャン
エリアストは、二人を隔てていた鉄格子をひしゃげた。
隔てる物のなくなったエリアストは、少女の手を掴むと、そのまま自身へと引き寄せ抱き締めた。少女は驚いてエリアストを見上げる。間近に美しい顔を見た。その顔は、どこか悲しそうに見えた。
少女は、そっとエリアストの頬に手を添える。エリアストはその手に、自身の手を重ねた。
「俺の名は、エリアスト。エル、と呼べ」
「エリアスト、エル、様」
少女が名を呼ぶだけで、心が満たされた。
「エル様、とても、暖かいです」
誰かに抱き締められることも、もちろん初めてで。エリアストのぬくもりが、心の底から安心出来た。
胸に擦り寄る少女の頭にくちづけるエリアストも、ひどく満ち足りていた。
「おまえ、名は」
少女の名前を呼びたくてそう尋ねたが、少女は困ったように眉を下げて、ゆるく首を左右に振った。
「与えられておりません。ですから、お好きなようにお呼びくださいませ」
名がないとは、どれだけ少女を蔑ろにしているのか、とかなり憤るも、少女に名付けられるということに、言い知れぬ幸福感に満たされたことも事実だ。
「ふむ」
憤りを抑え、エリアストは考えた。
「アリス」
何故か、そう思った。ふと頭に浮かんだ。とてもピッタリだと感じた。
「おまえは、アリスだ」
「はいっ。ありがとうございます、エル様っ」
嬉しそうな、けれど泣きそうな、そんな、胸が詰まるような笑顔。
堪らずエリアストは、より強く抱き締めた。
それから暫く、ふたりは今までのことを話した。
アリスの世界は、この牢の中だけ。
「エル様は、何故わざわざ囚われたのでしょうか」
話を聞く限り、エリアストは自ら囚われたように感じた。彼ならきっと、すぐにでも逃げ出せたであろうに。今だって、鉄格子なんて簡単に抜け出せるはずだ。
「どうせ追われるなら、時間稼ぎでもするかと」
牢にいると油断させておいて、この国から逃げる時間を稼ごうとしたのだという。
ああ、行ってしまうのか。
アリスは悲しそうな目を向けた。
エリアストは、両手でアリスの頬を包む。
「何故そんな顔をする」
「さみ、しい、です」
くちびるが、重なった。
驚き、真っ赤に染まるアリスに、エリアストは当然のように言った。
「おまえを置いていくはずがないだろう」
再びアリスを抱き締め、そのまま抱き上げた。
「俺と来い、アリス」
アリスの目が、大きく見開かれる。
「おまえに、空を見せてやる」
………
……
…
「見ろ、アリス」
エリアストの指の先には、星が輝く夜空があった。
「おまえの髪と、同じ色だ」
「っ」
不吉だと言われ、ない者として扱われてきた自分を、こんなにも美しいものにたとえるものだから。アリスは言葉を詰まらせる。
そしてエリアストは、反対の空を指す。
「おまえの目と、同じ色だ」
黎明の空が、あまりにも美しく。
アリスの目から、涙がこぼれ落ちる。
エリアストは、躊躇いもなくその涙を飲み干す。
「アリス」
名を囁かれ、熱く見つめられ、ゆっくりと唇が重なった。
美しい、空を、手に入れた。
*おしまい*
らがまふぃん二周年記念にお付き合いくださり、ありがとうございます。
誰がアリスに言葉を教えたんだろう、などのツッコミは受け付けておりません(笑)
牢番は気絶させられ、交代の牢番が来るまで寝てました。目覚めてびっくり。鉄格子がひしゃげているではありませんか。隣の牢との境の分も。さて、気付いた頃には、ふたりはどこにいたのでしょうね。もちろん、捕まるはずがないのでご安心を。
今後の二周年記念といたしまして、
第一弾 R6.10/29 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 公開中
第二弾 R6.10/30 あなたは一体誰ですか? 公開中
第三弾 R6.10/31 自分がされて嫌なことは、人にしてはいけません。と、言うことは、だ。 公開中
第五弾 R6.11/2 精霊の使い?いいえ違います。
第六弾 R6.11/3 では、復讐するか
第七弾 R6.11/4 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
以上のスケジュールでお届け予定です。
お時間の都合のつく方は、是非のぞいていただけると嬉しいです。
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