66 / 72
番外編
失えないもの3
しおりを挟む
目覚めるとそこは、真っ白な空間だった。壁も床も天井も、すべてが白い。窓もなく、あるのは扉ひとつ。床に転がされていたエリアストは、起き上がることもせず、虚空を見つめた。手足を縛られ、猿轡を噛まされ、自由のない体を極限まで縮める。
アリスを、守れなかった。
何が起きたのかを考えるより、真っ先に頭に浮かんだのはそのことだった。そしてその事実に、ひどく打ちのめされる。
アリス、を、守れなかったっ。
アリスがここに、自分の側にいない。
アリス、が、いない。
アリスッ。
どうか、どうか、無事でいてくれ、アリスッ。
………
……
…
「目が覚めたかい」
暫くして扉が開く。
「手荒な真似をしてすまなかったね」
あの群れの頭と思われる男が、エリアストを覗き込む。
「あれ程までに強いとは思わなかった。だいぶ仲間を失った。恐ろしい子どもだ」
男はエリアストの胸ぐらを掴んで起き上がらせる。
「キミは頭も良さそうだ。洗脳には骨が折れるだろうけど、充分に価値がある。その容姿だけで、大半の者が平伏すだろう」
胸ぐらを掴んでいた手を乱暴に放すと、エリアストは再び床に転がる。
エリアストを連れ去ったのは、ディレイガルドを裏から牛耳ろうとする隣国アーリオーリの者たちだった。ルドワーカ、という組織のようだ。まだ子どもであるエリアストを傀儡にし、世界を手に入れたいらしい。
男を、エリアストはジッと見た。男が片眉を上げる。
「何だ。何か言いたそうだな。舌を噛まないなら猿轡、外してやるぞ」
その言葉に頷くこともせず見続けるエリアストに、男は肩を竦めて口を自由にした。すると、エリアストは男に言った。
「洗脳など不要だ。世界が欲しいならくれてやる。その代わり」
無機質な、ガラス玉のような目は動かない。
「アーリオーリ国を消してくれ」
表情一つ変えることなくそう言ったエリアストに、男は口角を上げた。
「おーおー、怖いねぇ。何だってこの国を?」
「貴様らのようなクズがいるからだ」
男は腹を抱えて笑った。
「いいね、いいよ、おまえ。下手なヤツより余程信用出来る」
肩を叩く男に、エリアストは無表情のままだった。
エリアストを拘束していたものをすべて外し、大層ご機嫌に部屋を出る男の後ろ姿を見る。
なんてくだらない。
そんなくだらないことで、自分はアリスを危険な目に遭わせ、離れることになったというのか。
エリアストは自嘲する。
くだらないのは自分も同じか。
一番守りたい人を、守れなかった。何度か攫われたり攫われかけたりした。その度に、自分自身で解決してきたのだ。子どもでありながら、大人と同等、それ以上に渡り合ってきた。それが、慢心へと繋がった。絶対なんて、どこにも存在しないのに。
肝心なときに、何の役にも立たなかった。
「ありす」
喉の奥でポツリと零れた言葉に、涙も零れる。かみ殺しきれない嗚咽が部屋に響く。
アリス、アリスアリスアリスアリスアリス!!
自身の体を抱き締め、床に蹲る。
心が、叫び続ける。愛しい人の名を。ただ、名だけを。
-三年前-
エリアストと手を組んで五年、男の野心は崩れ去る。男の仲間たちは、男以外全員死んだ。男は何が起きているのか、理解出来なかった。わからないまま、男は自身のアジトの地下牢で、手足に杭を打たれ、磔にされている。
「生きたままネズミに喰われて死んでいけ」
「クソガキがあああああっ」
コイツを、この組織をどうこうしたところで、アリスが見つかるわけではない。自己満足でしかない。
「アリス」
涙が一筋、零れた。
*~*~*~*~*
ルドワーカの男が地下牢に磔にされる少し前。
不穏な噂が流れ始める。
隣国ブロウガンと、戦争になるのではないか。
少しずつ濃くなる戦争色に、国民たちは不安を隠せない。いつ開戦の号令がかかるのだろう。そんな国民の不安と緊張が高まる。
そんな噂が流れ出して数ヶ月後。一人の少年の拘束が報じられた。
名も絵姿も公表はされなかったが、その罪名に、国中が震撼する。
外患誘致罪。
他国と共謀して自国に対し武力を行使させるという罪。今回未遂ではあったが、行使させたことと同等と見做された。
一人の少年が行うには、あまりにも規模が大きい話のため、国民は懐疑的であった。ただ、拘束の報道をきっかけに、戦争の気運が収まったことは事実。
”実際は何人もの犯行グループがいるのではないか。そのグループに怒りをぶつけられたら反乱などが起きてしまい、今回の件の真相がわからなくなってしまう。それらを危惧した中枢が、少年の犯行ということにすれば、国民も振り上げた拳を収めるしかないのではとの判断をしたのではないか。”
そんな憶測が、国中を飛び交った。
真実を公表しても、国民は信じなかったのだ。それこそが、国の狙いであったのかも知れない。
ただ、公表はされていない、いや、出来なかったことがある。それは、拘束された少年が、他国の少年であったことだ。それが問題視された。今回戦争になりかけたブロウガンと反対隣、レイガード国出身、それも、五年程前に誘拐された、ディレイガルドの令息だったのだ。
複雑に絡み合うこの事件、とりあえずアーリオーリで取り調べをしている。折を見てレイガードに強制送還させるが、罪状の確認後どうするのかを、レイガード、アーリオーリ、ブロウガンの三国は長期間に渡って話し合いの席を設けることとなった。そうして二年がかりで、外患誘致罪は通常死刑以外あり得ないのだが、レイガード国で刑期付きの服役、と決定したのだった。
*~*~*~*~*
「何故、こんなことを」
美しい少年エリアストは、両手を拘束する手錠を見つめたまま答えた。
「アーリオーリなど、滅びればいい」
弱冠十五歳の少年は、何に絶望したのか。
「ルドワーカ」
唐突にエリアストはそう口にした。その名前に、取調官は目を見開く。
「少し前に潰してやった」
「は?」
アーリオーリが手を出し倦ねていた裏組織。どこまで触手を伸ばしているのかわからない、全体像が掴みきれない組織だった。潜入、囮、買収など、あらゆる手段を講じても、拘束出来るのはトカゲの尻尾ばかり。この騒動、実はその組織が黒だと思っていたのだが。
「キミは、いや、それは、本当か」
狼狽える取調官に、エリアストは変わらず手錠を見つめたまま、淡々と答える。
「さあ。アイツらがそう名乗っていただけだ」
取調官は額の汗を拭う。
「では、トップは。トップの名前は」
「知らん」
心底興味がなさそうにそう言った。
「場所を教えてやる。自分で調べろ」
詳細に語られた地理に、取調官が側のもう一人と情報を擦り合わせる。
「地下牢にあるものがその男だ。逃げ出していなければそこにあるはずだ」
そこにあるとしたら、もう判別などつかないだろうがな。
取調官が扉の外に声をかけ、入ってきた者に、慌ただしく指示を出す。
「次はこの国だと思ったんだけどな」
それを見ながら、エリアストはそう自嘲する。
「あんな輩を放置しているこんな国など滅んでしまえ」
その呟きを聞いた取調官は、痛ましいものを見るような目を向けた。
「何が、キミをそこまで」
エリアストはそれ以上何も答えなかった。
*つづく*
アリスを、守れなかった。
何が起きたのかを考えるより、真っ先に頭に浮かんだのはそのことだった。そしてその事実に、ひどく打ちのめされる。
アリス、を、守れなかったっ。
アリスがここに、自分の側にいない。
アリス、が、いない。
アリスッ。
どうか、どうか、無事でいてくれ、アリスッ。
………
……
…
「目が覚めたかい」
暫くして扉が開く。
「手荒な真似をしてすまなかったね」
あの群れの頭と思われる男が、エリアストを覗き込む。
「あれ程までに強いとは思わなかった。だいぶ仲間を失った。恐ろしい子どもだ」
男はエリアストの胸ぐらを掴んで起き上がらせる。
「キミは頭も良さそうだ。洗脳には骨が折れるだろうけど、充分に価値がある。その容姿だけで、大半の者が平伏すだろう」
胸ぐらを掴んでいた手を乱暴に放すと、エリアストは再び床に転がる。
エリアストを連れ去ったのは、ディレイガルドを裏から牛耳ろうとする隣国アーリオーリの者たちだった。ルドワーカ、という組織のようだ。まだ子どもであるエリアストを傀儡にし、世界を手に入れたいらしい。
男を、エリアストはジッと見た。男が片眉を上げる。
「何だ。何か言いたそうだな。舌を噛まないなら猿轡、外してやるぞ」
その言葉に頷くこともせず見続けるエリアストに、男は肩を竦めて口を自由にした。すると、エリアストは男に言った。
「洗脳など不要だ。世界が欲しいならくれてやる。その代わり」
無機質な、ガラス玉のような目は動かない。
「アーリオーリ国を消してくれ」
表情一つ変えることなくそう言ったエリアストに、男は口角を上げた。
「おーおー、怖いねぇ。何だってこの国を?」
「貴様らのようなクズがいるからだ」
男は腹を抱えて笑った。
「いいね、いいよ、おまえ。下手なヤツより余程信用出来る」
肩を叩く男に、エリアストは無表情のままだった。
エリアストを拘束していたものをすべて外し、大層ご機嫌に部屋を出る男の後ろ姿を見る。
なんてくだらない。
そんなくだらないことで、自分はアリスを危険な目に遭わせ、離れることになったというのか。
エリアストは自嘲する。
くだらないのは自分も同じか。
一番守りたい人を、守れなかった。何度か攫われたり攫われかけたりした。その度に、自分自身で解決してきたのだ。子どもでありながら、大人と同等、それ以上に渡り合ってきた。それが、慢心へと繋がった。絶対なんて、どこにも存在しないのに。
肝心なときに、何の役にも立たなかった。
「ありす」
喉の奥でポツリと零れた言葉に、涙も零れる。かみ殺しきれない嗚咽が部屋に響く。
アリス、アリスアリスアリスアリスアリス!!
自身の体を抱き締め、床に蹲る。
心が、叫び続ける。愛しい人の名を。ただ、名だけを。
-三年前-
エリアストと手を組んで五年、男の野心は崩れ去る。男の仲間たちは、男以外全員死んだ。男は何が起きているのか、理解出来なかった。わからないまま、男は自身のアジトの地下牢で、手足に杭を打たれ、磔にされている。
「生きたままネズミに喰われて死んでいけ」
「クソガキがあああああっ」
コイツを、この組織をどうこうしたところで、アリスが見つかるわけではない。自己満足でしかない。
「アリス」
涙が一筋、零れた。
*~*~*~*~*
ルドワーカの男が地下牢に磔にされる少し前。
不穏な噂が流れ始める。
隣国ブロウガンと、戦争になるのではないか。
少しずつ濃くなる戦争色に、国民たちは不安を隠せない。いつ開戦の号令がかかるのだろう。そんな国民の不安と緊張が高まる。
そんな噂が流れ出して数ヶ月後。一人の少年の拘束が報じられた。
名も絵姿も公表はされなかったが、その罪名に、国中が震撼する。
外患誘致罪。
他国と共謀して自国に対し武力を行使させるという罪。今回未遂ではあったが、行使させたことと同等と見做された。
一人の少年が行うには、あまりにも規模が大きい話のため、国民は懐疑的であった。ただ、拘束の報道をきっかけに、戦争の気運が収まったことは事実。
”実際は何人もの犯行グループがいるのではないか。そのグループに怒りをぶつけられたら反乱などが起きてしまい、今回の件の真相がわからなくなってしまう。それらを危惧した中枢が、少年の犯行ということにすれば、国民も振り上げた拳を収めるしかないのではとの判断をしたのではないか。”
そんな憶測が、国中を飛び交った。
真実を公表しても、国民は信じなかったのだ。それこそが、国の狙いであったのかも知れない。
ただ、公表はされていない、いや、出来なかったことがある。それは、拘束された少年が、他国の少年であったことだ。それが問題視された。今回戦争になりかけたブロウガンと反対隣、レイガード国出身、それも、五年程前に誘拐された、ディレイガルドの令息だったのだ。
複雑に絡み合うこの事件、とりあえずアーリオーリで取り調べをしている。折を見てレイガードに強制送還させるが、罪状の確認後どうするのかを、レイガード、アーリオーリ、ブロウガンの三国は長期間に渡って話し合いの席を設けることとなった。そうして二年がかりで、外患誘致罪は通常死刑以外あり得ないのだが、レイガード国で刑期付きの服役、と決定したのだった。
*~*~*~*~*
「何故、こんなことを」
美しい少年エリアストは、両手を拘束する手錠を見つめたまま答えた。
「アーリオーリなど、滅びればいい」
弱冠十五歳の少年は、何に絶望したのか。
「ルドワーカ」
唐突にエリアストはそう口にした。その名前に、取調官は目を見開く。
「少し前に潰してやった」
「は?」
アーリオーリが手を出し倦ねていた裏組織。どこまで触手を伸ばしているのかわからない、全体像が掴みきれない組織だった。潜入、囮、買収など、あらゆる手段を講じても、拘束出来るのはトカゲの尻尾ばかり。この騒動、実はその組織が黒だと思っていたのだが。
「キミは、いや、それは、本当か」
狼狽える取調官に、エリアストは変わらず手錠を見つめたまま、淡々と答える。
「さあ。アイツらがそう名乗っていただけだ」
取調官は額の汗を拭う。
「では、トップは。トップの名前は」
「知らん」
心底興味がなさそうにそう言った。
「場所を教えてやる。自分で調べろ」
詳細に語られた地理に、取調官が側のもう一人と情報を擦り合わせる。
「地下牢にあるものがその男だ。逃げ出していなければそこにあるはずだ」
そこにあるとしたら、もう判別などつかないだろうがな。
取調官が扉の外に声をかけ、入ってきた者に、慌ただしく指示を出す。
「次はこの国だと思ったんだけどな」
それを見ながら、エリアストはそう自嘲する。
「あんな輩を放置しているこんな国など滅んでしまえ」
その呟きを聞いた取調官は、痛ましいものを見るような目を向けた。
「何が、キミをそこまで」
エリアストはそれ以上何も答えなかった。
*つづく*
25
お気に入りに追加
327
あなたにおすすめの小説

お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる