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夢幻の住人編
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この章は、エル様がただでさえあまり社交に顔を出させないアリスを、さらに出させなくさせる元凶のお話しです。
*∽*∽*∽*∽*
可哀相に 可哀相に
酷い 本当に酷い
僕ならあなたにそんなことをしない あなたの自由を奪ったりしない
悪魔だ アイツは悪魔 天使の羽をむしり取る 最悪の悪魔
あなたを助ける 今度は僕が助けるから
その羽で 自由に飛べるようにしてあげる
待っていて 僕の天使
*~*~*~*~*
大きめの体を丸めて、出来るだけ目立たないように隅に寄っている。本当はこんな隅に縮こまっているような、縮こまっていていい人間じゃないけれど、優秀な人間というのは妬まれる。自分たちのデキが悪いことが悪いのに、集団になっていることで心が大きくなるのか、得意気に優秀な者をいたぶる。
「っと、すみません。って、なんだ、おまえか」
「まあ。そんな言い方悪いわよ」
「だって、なあ?」
「はは。まあかかわるなよ。行こう」
「兄上は優秀なのに、何でアイツってああなんだろうな」
「ご両親の苦労が目に見えるようだ」
何も反論をしないのは、今はその時ではないから。機を見ているだけだというのに、何を勘違いしているのか、怯えて何も言えない臆病者だと嗤う。だけど、本当は僕に認めて欲しいから、そうやっていつも突っかかってくることを僕は知っている。
今の内に、精々笑っていればいい。僕が動くとき、必ず後悔するんだ。僕のことを、誰もが羨むだろう。だって僕は特別なんだ。僕は特別だから、特別な出会いをして、特別な人生を歩む。
今はまだ誰も気付いていないだけ。
特別な人が僕を見れば、特別だとわかる。だからそれまでの辛抱だ。蛹の期間が長ければ長いほど、羽化したとき、それは筆舌に尽くせない特別となる。
ああ、ほら。
見つけた。
僕が、特別を見つけた。だから、あとはあなたが僕を見つけてくれれば、僕は特別の中の特別になれる。
「――ということがございましたの」
「まあ。大丈夫ですか?お体、おつらくはないのでしょうか」
僕は言葉を失った。もしかして、あなたは僕に気付いているの?
「ええ、旦那様が、選んでくださって。あの、恥ずかしいですわ」
「ふふ。とても素敵ですね。とてもよくお似合いです」
ああ。そう。そうか。あなたはやはり僕に気付いている。
「念願叶いまして、一週間後には」
「まあ。おめでとうございます。素晴らしいですわ。その努力が認められたのですね。本当に素晴らしいですわ」
だから、だからこんなにも僕の側に来てくれたんだね。
僕の存在に気付いているよ、とアピールしている。その小さな体で、僕を守ってくれている。
ああ、ああ、なんて、なんてことだ!
今すぐにでもあなたの手を握りたい。その小さな体を包み込んであげたい。でもダメだ。今は、あなたに贈るための物を何一つ持っていない。贈り物一つ出来ない男だと呆れられてしまう。
待っていて。あなたのその手を彩る指輪を。あなたのその首を飾るネックレスを。あなたのその髪を輝かせる髪飾りを。あなたを一層引き立てるドレスを。あなたの心の美しさを永遠に守るための誓いを。
すべてを持って、あなたの前に立つから。
待っていて。
あなたに羽を取り戻してあげる。
待っていて。
僕の天使。
*つづく*
表現や思考が拙いのは、”僕”の仕様です。
*∽*∽*∽*∽*
可哀相に 可哀相に
酷い 本当に酷い
僕ならあなたにそんなことをしない あなたの自由を奪ったりしない
悪魔だ アイツは悪魔 天使の羽をむしり取る 最悪の悪魔
あなたを助ける 今度は僕が助けるから
その羽で 自由に飛べるようにしてあげる
待っていて 僕の天使
*~*~*~*~*
大きめの体を丸めて、出来るだけ目立たないように隅に寄っている。本当はこんな隅に縮こまっているような、縮こまっていていい人間じゃないけれど、優秀な人間というのは妬まれる。自分たちのデキが悪いことが悪いのに、集団になっていることで心が大きくなるのか、得意気に優秀な者をいたぶる。
「っと、すみません。って、なんだ、おまえか」
「まあ。そんな言い方悪いわよ」
「だって、なあ?」
「はは。まあかかわるなよ。行こう」
「兄上は優秀なのに、何でアイツってああなんだろうな」
「ご両親の苦労が目に見えるようだ」
何も反論をしないのは、今はその時ではないから。機を見ているだけだというのに、何を勘違いしているのか、怯えて何も言えない臆病者だと嗤う。だけど、本当は僕に認めて欲しいから、そうやっていつも突っかかってくることを僕は知っている。
今の内に、精々笑っていればいい。僕が動くとき、必ず後悔するんだ。僕のことを、誰もが羨むだろう。だって僕は特別なんだ。僕は特別だから、特別な出会いをして、特別な人生を歩む。
今はまだ誰も気付いていないだけ。
特別な人が僕を見れば、特別だとわかる。だからそれまでの辛抱だ。蛹の期間が長ければ長いほど、羽化したとき、それは筆舌に尽くせない特別となる。
ああ、ほら。
見つけた。
僕が、特別を見つけた。だから、あとはあなたが僕を見つけてくれれば、僕は特別の中の特別になれる。
「――ということがございましたの」
「まあ。大丈夫ですか?お体、おつらくはないのでしょうか」
僕は言葉を失った。もしかして、あなたは僕に気付いているの?
「ええ、旦那様が、選んでくださって。あの、恥ずかしいですわ」
「ふふ。とても素敵ですね。とてもよくお似合いです」
ああ。そう。そうか。あなたはやはり僕に気付いている。
「念願叶いまして、一週間後には」
「まあ。おめでとうございます。素晴らしいですわ。その努力が認められたのですね。本当に素晴らしいですわ」
だから、だからこんなにも僕の側に来てくれたんだね。
僕の存在に気付いているよ、とアピールしている。その小さな体で、僕を守ってくれている。
ああ、ああ、なんて、なんてことだ!
今すぐにでもあなたの手を握りたい。その小さな体を包み込んであげたい。でもダメだ。今は、あなたに贈るための物を何一つ持っていない。贈り物一つ出来ない男だと呆れられてしまう。
待っていて。あなたのその手を彩る指輪を。あなたのその首を飾るネックレスを。あなたのその髪を輝かせる髪飾りを。あなたを一層引き立てるドレスを。あなたの心の美しさを永遠に守るための誓いを。
すべてを持って、あなたの前に立つから。
待っていて。
あなたに羽を取り戻してあげる。
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