悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん

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最終話

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 随分贅沢になったものだと思う。
 影艶が側にいてくれるだけで良かった。
 それなのに。
 兄が、そこに入り込むようになった。
 飄々としているのに、いざという時、全力で助けてくれる。それと気付かないほど、当然のように。私の思いを掬い上げて、願いを叶えようとしてくれる。
 一歩間違えれば、自分の立場を危うくするようなことも、何でもないことのようにやってのける。私のためとは言わず、自分の欲望のためだと笑う。
 なぜ、そこまでしてくれるのだろう。
 私には、そこまでしてもらう価値などない。何も返すことが出来ないのに。
 弟も、私のために一生懸命になってくれる。
 価値観のまったく合わない人間だというのに、放っておくこともせず、懸命に言葉を重ねる。私にそこまでする価値はない。それなのに弟は、それはシラユキの価値観であり、自分の価値観とは違うから、と、シラユキと関われないことの方がツラいから覚悟して、と言った。弟の強さが、とても羨ましい。
 兄が側にいることが、当たり前に思えるようになった。時々そこに、弟が交じることも。コルシュや神殿の人たちも、生活の一部になった。それが、日常だと思っている自分がいる。それを、大切だと感じている自分がいる。
 失いたくないと、願う自分がいる。
 どうせ生まれ変わるなら、人間ではないものが良かった。
 言葉を話さず、ただ全身で思いを伝える動物になりたかった。
 言葉を話さない。
 それは嘘をつかないということ。
 騙さないということ。
 傷つけないということ。
 安心出来る、ということ。
 兄は嘘つきで、騙し討ちばかりしてくる。
 弟は優しくて、傷つけないように慎重に言葉を選ぶのに、私をイラつかせる。
 コルシュは欲望に忠実で、自分の妄想がどこまで現実になったかを、下手な言い訳をしながら興奮を隠しきれない様子でグイグイ踏み込んでくる。
 神殿のみんなは打算的で、調子のいいことを言いながらも私を気遣う。
 ままならない言葉たち。
 悪いことばかりではないと知ることが出来た。
 優しい嘘があると知った。
 笑顔のために騙すこともあると知った。
 守るもののために、傷つけることがあると知った。
 言葉に安心している自分が、いた。
 この毎日が、続いて欲しいと、願っている。そんな、自分がいる。


~?side~

 真白は寂しがりだから、おまえが死ぬのを私が見届けてあげるよ。
 そしておまえが旅立ったなら、すぐに私も後を追う。
 決しておまえをひとりにしない。
 もうおまえは、望んでもひとりにはなれないよ、真白。




*おしまい*

 長々とお付き合いくださり、本当にありがとうございました。ここまで続けられたのも、お読みくださるみなさまがいてくださったからです。お気に入り登録、しおりを挟んでくださった方々、エールをくださったたくさんのみなさまに、深く感謝申し上げます。
 恋愛要素もファンタジー要素も薄めの作品でしたが、いかがでしたでしょうか。一人と結ばれるのではなく、ハーレムエンドっぽい終わり方ですみません。不幸な少女がたくさんの人に愛されるお話しにしたかったのですが、真白がコメディ要素強くてあまり不幸に感じられなかったかも知れません。これからもっともっと幸せになる子です。
 最後の真白視点ではない台詞は、誰のものか。みなさまのご想像にお任せいたします。一人のものとは限らないかも知れません。
 この後、裏話含む没になった案を箇条書き程度に投稿しています。よろしかったら、作者の葛藤にお付き合いください。


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