悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん

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70 ~影艶side~

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 性的表現含みます。苦手な方はご注意ください。


*~*~*~*~*


 神獣とは言え、所詮は獣。人間よりも、本能に忠実だ。
 人間の作り出した強烈なニオイに、目と鼻が刺激された。イカレる前に、風魔法で自分の周囲の空気を循環させたが、最初の刺激が強くて涙と鼻水が止まらない。微かなニオイの内に風魔法を使うべきだったが、扉を開けた瞬間、大変なことになった。離れてはいたが、狼の嗅覚を侮ってはいけない。立ち去りたいが、シラユキを置いていけるはずがない。数時間の辛抱だ。そう思っていたら、一時間もせず、シラユキが部屋を出た。シラユキも、ニオイに耐えかねたようだ。
 助かった、と思った。この時は。
 ぐちゃぐちゃの顔を、シラユキが丁寧に洗ってくれる。いつもなら浄化魔法や水浴びで済ませるが、今回は湯で洗い流したい気分だったのでありがたかった。
 「影艶かげつや、よく耐えたね。先に部屋に戻って良かったのに」
 そんなこと出来るわけないだろう。あんな有象無象の中、シラユキを置いて行けって?バカを言うな。鼻先でシラユキの頭を小突いて気付く。私を洗ってくれたシラユキ。下着同然ではないか。おまけに、濡れて肌に張り付いている。体のラインが、はっきりわかる。
 シラユキはそんなことに気付くことなく、タオルで私の毛の水分を拭き取ってくれている。動けない。ダメだ。見るな。目を瞑っても、シラユキの艶めかしい姿が焼き付いている。何の拷問だ。愛する者のこんな姿を見ても、交わることなど出来ないというのに。普段の妄想など目ではない。シラユキのあの姿に、本能が目覚める。獣は本能を抑制することが非常に難しい。あの強烈なニオイの方がまだマシだ。
 シラユキが湯浴みをするとき、結界を張る。無防備な姿の時に襲撃されたくないと言っていた。その時なら抜け出せる。結界がシラユキを守っているから。抜け出して、この昂ぶりを静めてこなくては。さあ、今だ。窓を開けて外へ飛び出した。
 走りながら、欲望が止まらない。ダメだと、妄想を振り払うように頭を振るが、上手くいかない。すまない、シラユキ。いつもより凶悪で淫らな想像が、シラユキを穢していく。
 あの服を引き裂いて、その白い肌に甘く牙を立てる。甘い吐息を貪るように、その赤い舌を絡め取ると、歓喜に震える肢体が私に絡みつく。甘えた声で私を呼び、私を求める。私を受け入れ、悦びの声をあげる。シラユキの望むままに、その体を揺さぶり続ける。寝食も忘れ、まさに獣のように求め合う。
 はっ、シラユキッ。
 触れたい、そう、強く、思った。笑顔を、自分に向けて欲しい。その手で自分を撫でて欲しい。その体を、抱き締めたい。
 側にいられるだけで良かったのに。
 共に生きたい。シラユキと共に生き、共に死ねたら。シラユキと、番えたなら。欲深い私のこの願い。きっと叶わないこの願い。
 本当に欲深くなったものだ。
 妄想だけで放ったモノを見つめる。
 シラユキと交わりたい。シラユキ、シラユキッ。
 ああ、獣の姿が呪わしい。


*つづく*
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