悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん

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 王妃様の隣にいるお陰で、ほぼ話しかけられることはない。挨拶に来る貴族たちも、世間話をして立ち止まるのは高位貴族くらい。私の存在が気になるようで、でも話しかけられずに去って行く者ばかり。中には話しかけてくる勇者もいたが、無言でジッと見つめていると、顔を真っ赤にして去って行く。折角話しかけたのに、まったく反応がないことに恥ずかしくなったのだろう。ククククク。貴族という立場故、こんな反応されたことなかろう。おまえたちが平民にしてるんだよ、こういう対応を。よく本で読むぞ。無視されるって悲しいだろ?恥ずかしいだろ?よく心に戒めるが良い。この世界の貴族たちが実際そうしているかどうか知らんけど。
 そう言えば今更だが、何のパーティーだ、これ。そして本当に私が出席する意味がわからん。
 影艶かげつやの姿は見えないが、近くにいて見守ってくれているのはわかる。早く影艶をもふもふしたい。大きな影艶に埋もれたい。帰っていいかな。
 「ね、シラユキちゃん。どっちと結婚するか決めた?」
 だから名を呼ぶな。周りに誰もいないからいいけど。そしてその話、諦めてなかったんかい。
 「私はどっちでもいいけど、どちらかと言えばウェルがお勧めよ。ソフィは優しすぎて、いざという時にシラユキちゃんを守れないかも知れない。その点、ウェルは容赦ないから、何があってもシラユキちゃんだけは守るわよ」
 何だろう。的確な評価とでも言えばいいのかな。だけどそれでいったら、兄、私にも容赦ないのではなかろうか。なぜ私を守ると思っているのだろう。
 「私は守られるような存在ではありません。どうぞ、お二人のお気に召した方とのご結婚を望んで差し上げてください」
 王妃様の目が落ちそうだ。
 「これは、あの子たち、苦労するわね」
 気に入る人がなかなか現れないんだね。選り好みが激しいのかな。それは苦労することだろう。だからと言って、王妃様のお気に入りを勧めるのは違うよ。王妃様に気に入られている自覚はあります。
 「ま、あの子たちに頑張って貰うしかないわね。ね、もうソフィには声をかけた?」
 「殿下に、ですか?いいえ」
 「あら?もしかして、何も聞いていない?」
 「このパーティーのことでしたら、昨日王太子殿下に突然同伴するよう言われただけです。それ以外は何も伺っておりません」
 「もう、ウェルったらイジワルなんだから。今日はね、ソフィのお誕生日なの。声をかけてやってちょうだいな」
 誕生日だったのか。声かけろと言われてもな。どこにいるんだ。あの人だかりの中かな。あれに突っ込んでいくのはイヤだなあ。こっちに来てくれないかなあ。そもそも関わるなって弟に言ったんだけど、声かけていいものか。そう思っていると、兄がやって来た。
 「王妃陛下、ありがとうございます。少し疲れたので休ませてください」
 「まあ、ウェル。丁度良かったわ。ソフィを呼んで来てちょうだい」
 「何故です」
 「ウェル」
 「わかりました。わかりましたよ。ちょっと待っててね」
 私の頬をするりと撫でると、少しして二人で戻って来た。ふおおおお。弟の正装姿もやべえ。二人並べて写真を。生涯大事にするから写真をくれ。なんて考えていると。
 「クサッ」
 王子たちが三メートル手前で止まる。
 「ちょ、二人とも、こっち来ないでください。クサイ」
 何これ何これ。いろんな香水が混ざって鼻がやべえ。あの集団、確かにご令嬢たちの塊だったけど。よく耐えたな、弟。兄もよく突っ込んだ。
 「うおおお、目に染みるっ。王妃様、戻りましょう。ここは危険です」
 王子二人、目が点になっとる。王妃様、何爆笑してるの。これ、影艶大丈夫なの?嗅覚イカレちゃったよ、絶対。


*つづく*
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