悪役令嬢 VS 悪役令嬢

４９ ～コルシュside～

　素敵素敵素敵素敵素敵！なんて素敵なのでしょう！
　殿下が以前にも増して神殿にお見えになるので、もしやと思っておりました。他の方たちともそんなお話しをしておりました。
　殿下はきっとシラユキさんを想っていらっしゃる。
　サリュア様のことを、なんて思っていたのがまったくの勘違いであることがわかるほどに、殿下の表情がお優しいのです。
　ですが、あのシラユキさんです。共に生活をしていて気付きましたが、シラユキさんは見た目こそ儚げですが、そのお心内に、獰猛な番犬を飼っていらっしゃいます。誰にでも牙を剥くわけではございませんが、誰に対しても対応が素っ気ないのです。唯一お心を開いていらっしゃると感じるのが、神獣様に対してのみ。神官長様であろうとサリュア様であろうと王太子殿下であろうとも、シラユキさんの態度はぶれません。なんて凄い方なのでしょう。そんなシラユキさんを、神獣様のようにお心を開かせるのは、至難の業です。
　今も、殿下に抱き上げられても顔色一つ、表情一つ変えません。わたくしでしたら気を失いますわ。ですが、殿下のお気持ち、わかります。わたくし如きが殿下のお気持ちを推し量るなど、不敬もいいところ。ですが、わかってしまうのです。
　あの、精巧な人形のように動かない表情が動いたら。
　はうっ。いけませんっ。これ以上想像をしてしまったら、はしたなくも鼻血と涎を流してしまいそうですっ。
　サリュア様のお気持ちは、明らかに殿下に向いていらっしゃる。その殿下のお気持ちは、シラユキさんに。サリュア様の癇癪に怯える聖女様方は、複雑そうです。聖女様方は、いざという時サリュア様にご助力いただくため、どうしても顔色を窺うことになってしまいます。そのため、どうしても忖度そんたくをしないシラユキさんを敬遠しがちです。本音は嬉しいのです。サリュア様にも物怖じせずに向かってくださるその姿が。その後、サリュア様の癇癪に付き合わされなくてはならないとわかっていても。表立って喜ぶことが出来ませんが、それでも少しずつ、シラユキさんに傾倒してきていることがわかります。
　ああ、それにしても、本当になんて眼福なのでしょう。シラユキさんと殿下、お二人の並ぶ姿。手を合わせて拝みたいですわ。
　神殿に戻れと言われたときは、目の前が真っ暗になりましたが、今は戻ることが出来て良かったと感謝しております。同じ目に遭った仲間たちがいてくださったことももちろんですが、シラユキさんが来てくださって、毎日がハラハラしながらも充実した日々を送ることが出来ているからです。
　今日はシラユキさんがお出かけでいらっしゃらないことは淋しいですが、どうぞ存分に殿下と楽しんでいらしてくださいましね。是非是非お二人の仲が進展することを祈っておりますわ。お仲間方と、妄想して楽しませていただきます。
　でも、き、き、キス、くらいは、していただきたいですわ！


＊つづく＊