悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん

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 「ちょっと、あんた!」
 「はい、何でしょうか、千年聖女様」
 「何余計なコトしてんのよ!あんたが出て行けば済む話でしょ!それを必死になって逃れようと画策するなんて!」
 「余計、ですか」
 「そうよ!出て行かないあんたのせいであの町は大惨事に見舞われたかも知れないの。そうしたら、あの町の人たちはどう思ったかしらねぇ」
 何言ってんだ、コイツ。
 「市井しせいから慕われている千年聖女様の言葉とは思えませんね」
 殺意の籠もった目が私を睨みつける。おお怖。
 「普通に考えて、私のせいだというのは無理があります。市井の方々は、千年聖女様の力を知っている。どんな理由があって自分たちの町は見捨てられたんだろう、そう思うのが普通ではありませんか」
 ギリリと歯を食いしばるバカサリュア。おまえの中では私のせいなのだろうが、市井の人は何も知らないんだよ。おまえの性格も、私の存在も。存在さえ知られていない私のせいで千年聖女が動かなかった、なんて、どんな理由をつけてそういう状況になったと説明する気だバカ。
 「違いますか。たかが私一人を追い出すのにたくさんの命を天秤にかける千年聖女様」
 正直他人の生死に興味はない。町が滅びようが国が滅びようが、ご愁傷様、で終わりだ。だけど、私のせいだと言われる要因で、となると、腹立たしい。私のせいではない、クソ女のただの癇癪、我儘、駄々である。我を押し通すために天秤にかけるものがイカレている。いくら私でも、そんな寝覚めの悪いことはしない。
 「ホントに嫌味ったらしい生意気なガキだわっ」
 二つしか違いませんが。ガキにさとされているおまえを恥じろ。そんなことを思っていると、パンッと乾いた音がした。左の頬がジンジンと熱を持つ。影艶かげつやが唸っているが、手で制する。
 「サ、サリュア様っ、それはいけませんっ」
 「何よ!コイツが悪いんじゃないっ」
 叩かれるのはわかったけど、敢えて避けなかっただけだから大丈夫だよ、影艶。千年聖女にというか、人間に手を出してはいけない、と言ってある。人は人に危害を加えるものに容赦しないからだ。いくら神獣とはいえ、どこまで赦されるかわからないから。
 怒りが収まらないようで、再び手を振り上げる暴力女サリュアを、神官が抑える。
 「サリュア様、どうか、どうかご容赦くださいっ、サリュア様っ」
 「ぅるっさいのよ!」
 あーあ、神官たちかわいそ。バッチバチ叩かれてる。私を庇うから余計しゃくさわるんだよ。私を巻き込んだのはキミたちだ。甘んじて受け入れるが良い。ふはははははは。
 「シラユキさん、どちらへ?」
 まさかこんなカオス状態の中、引き金を引いたかどうかわからないが、一因である私が立ち去ろうとするとは思わなかったのだろう。候補の一人が困惑気味に声をかけてきた。
 「頬を冷やしてこようかと」
 立ち去る口実に使ってやった。
 「では、わたくし、タオルをご用意いたします」
 コルシュもついて来た。こんなカオスの中、いたくないよね。


*つづく*
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