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裁判っぽいものが終わり、とりあえず昨日に続き、今日も王城に泊まることになった。明日、神殿に行くとのこと。
「影艶と散歩に行ってきてもよろしいでしょうか」
部屋付きのメイドさんに聞く。少々お待ちください、と出て行った。出掛けるのにもいちいち許可がいるとか何の拷問だちくしょう。いつもよりだいぶ小さい影艶をもふりながら、ささくれていく心を宥める。床に転がりながら、自分のお腹の上に影艶を乗せる。いつもよりずっと小さいが、私よりやや大きい。お布団を掛けているようだ。
「あー、影艶さんや、温いのぅ」
私の胸に顎乗せをしている影艶が、そのままベロンと私の顎を舐めた。その頭を抱き締めながら、ぼんやりと天井を眺める。ズリズリと影艶が這ってきて、顔を私の頬に擦り寄せる。
「ふふ。影艶、甘えているの?」
横を向いて、くちづける。影艶はご機嫌に喉を鳴らした。
すると。
ゴン、と入り口の方で音がした。転がったまま首を上に向けると、兄が顔を片手で押さえて苦悶している。扉に頭でも打ったのだろうか。ククク。愚か者め。私たちをこんなところに連れて来た罰が当たったのじゃ。その良すぎる頭が凡人並みになるが良い。そんな呪いがかかるように祈っていると、ふと気付く。兄の顔がめっちゃ赤い。
「え。王太子殿下、熱でもあるんですか」
耳どころか、首まで赤いぞ。
「い、や」
口元を押さえながら、視線を逸らしてもごもごと否定する兄。
「そうですか。うつさないでくださいね」
そう言えば私、風邪とかひかないな。ナントカは風邪をひかないって?あーナントカで良かった。風邪ひくとしんどいからね。つらい目には遭いとうございませんからな。そうなると、兄は病弱だか虚弱でなくてはならない。いや、頭良すぎてぶっ飛んでいるからある意味バカなのか。チッ。
「風邪をひいているとしたら、治癒魔法をかけてはくれないの?」
微笑んで首を傾げると、綺麗な金色の髪がサラリと揺れた。うむ。見てくれだけは誠に良き。苦しゅうない。だが近くには寄るな。
「何でも魔法に頼ってはいけません」
シャットアウトして差し上げる。
「ふふ、つれないなあ」
「散歩、行ってきていいですか」
話をぶった切る。兄は楽しそうに目を細めた。
「いいよ。私も一緒なら」
「ありがとうございます。ではついて来てください」
影艶をポンポンすると、私の上から離れる。よっこらせ、と起き上がった。そう。私は王太子殿下であらせられる方と、寝転がりながら話をしていたのだ。不敬だろう?追い出していいんだぜ?期待はしていないが。
「わかった。シラユキについて行くよ」
やはり不敬だと言って追い出してくれないか。まあいい。ちゃんとついて来てね、王太子殿下。ククククク。
城の敷地にある森の中。人目がなくなると、影艶を元の大きさに戻す。私はニヤリとした。影艶さんに跨がります。さあついて来いよ、王太子殿下!ふははははは!
「わかりやすくていいよ、シラユキ」
振り返ると、兄が私の背中にピタリとくっついて共に影艶さんに跨がっております。私の腰はガッチリホールドされております。
お互い見つめ合ってしばし。
「どうしたの、シラユキ?ちゃんとついているでしょう?」
ついて来いと言ったのはシラユキじゃないか、と爽やかな笑顔をいただきました。
うん。
なぜ私は兄を撒けると思ったのだろう。
何の魔法だ、これ。マジでくっついて離れないんですけど。
影艶と二人きりの散歩は諦めました。
*つづく*
兄がくっついているのは魔法ではありません。白雪の動きに合わせて動いているという、神憑り的な身体能力の成せる業です。
「影艶と散歩に行ってきてもよろしいでしょうか」
部屋付きのメイドさんに聞く。少々お待ちください、と出て行った。出掛けるのにもいちいち許可がいるとか何の拷問だちくしょう。いつもよりだいぶ小さい影艶をもふりながら、ささくれていく心を宥める。床に転がりながら、自分のお腹の上に影艶を乗せる。いつもよりずっと小さいが、私よりやや大きい。お布団を掛けているようだ。
「あー、影艶さんや、温いのぅ」
私の胸に顎乗せをしている影艶が、そのままベロンと私の顎を舐めた。その頭を抱き締めながら、ぼんやりと天井を眺める。ズリズリと影艶が這ってきて、顔を私の頬に擦り寄せる。
「ふふ。影艶、甘えているの?」
横を向いて、くちづける。影艶はご機嫌に喉を鳴らした。
すると。
ゴン、と入り口の方で音がした。転がったまま首を上に向けると、兄が顔を片手で押さえて苦悶している。扉に頭でも打ったのだろうか。ククク。愚か者め。私たちをこんなところに連れて来た罰が当たったのじゃ。その良すぎる頭が凡人並みになるが良い。そんな呪いがかかるように祈っていると、ふと気付く。兄の顔がめっちゃ赤い。
「え。王太子殿下、熱でもあるんですか」
耳どころか、首まで赤いぞ。
「い、や」
口元を押さえながら、視線を逸らしてもごもごと否定する兄。
「そうですか。うつさないでくださいね」
そう言えば私、風邪とかひかないな。ナントカは風邪をひかないって?あーナントカで良かった。風邪ひくとしんどいからね。つらい目には遭いとうございませんからな。そうなると、兄は病弱だか虚弱でなくてはならない。いや、頭良すぎてぶっ飛んでいるからある意味バカなのか。チッ。
「風邪をひいているとしたら、治癒魔法をかけてはくれないの?」
微笑んで首を傾げると、綺麗な金色の髪がサラリと揺れた。うむ。見てくれだけは誠に良き。苦しゅうない。だが近くには寄るな。
「何でも魔法に頼ってはいけません」
シャットアウトして差し上げる。
「ふふ、つれないなあ」
「散歩、行ってきていいですか」
話をぶった切る。兄は楽しそうに目を細めた。
「いいよ。私も一緒なら」
「ありがとうございます。ではついて来てください」
影艶をポンポンすると、私の上から離れる。よっこらせ、と起き上がった。そう。私は王太子殿下であらせられる方と、寝転がりながら話をしていたのだ。不敬だろう?追い出していいんだぜ?期待はしていないが。
「わかった。シラユキについて行くよ」
やはり不敬だと言って追い出してくれないか。まあいい。ちゃんとついて来てね、王太子殿下。ククククク。
城の敷地にある森の中。人目がなくなると、影艶を元の大きさに戻す。私はニヤリとした。影艶さんに跨がります。さあついて来いよ、王太子殿下!ふははははは!
「わかりやすくていいよ、シラユキ」
振り返ると、兄が私の背中にピタリとくっついて共に影艶さんに跨がっております。私の腰はガッチリホールドされております。
お互い見つめ合ってしばし。
「どうしたの、シラユキ?ちゃんとついているでしょう?」
ついて来いと言ったのはシラユキじゃないか、と爽やかな笑顔をいただきました。
うん。
なぜ私は兄を撒けると思ったのだろう。
何の魔法だ、これ。マジでくっついて離れないんですけど。
影艶と二人きりの散歩は諦めました。
*つづく*
兄がくっついているのは魔法ではありません。白雪の動きに合わせて動いているという、神憑り的な身体能力の成せる業です。
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