悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん

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18 ~魔族side~

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 事情を聞いてみてから、ダリアンに報告するかどうか決めることにしたアールグレイ。アッサムにも知らぬ振りをしていて欲しいとお願いをした。
 「どんな事情があるんだろうね、シラユキには」
 アールグレイが執務机に頬杖をつき、窓の外を見ながらそう呟いた。
 「非公式とは言え、国が探しているとなると、何らかの罪を犯したか、何かに巻き込まれて迷子状態か、でしょうか」
 側近のセイロンが書類を整理しながらそう答えた。
 「迷子状態なら連れて行って差し上げないとですが、助けを求めている風ではなかったのですよね、我が王」
 もう一人の側近オレンジペコが首をかしげる。
 「そうなんだよ。もし罪を犯しているとしたら、あまりにも堂々としていたからなあ。それだけ捕まらない自信があるのか、怪しまれないようえて堂々としていたのか」
 アールグレイも首を傾げる。
 「聖女殿は、また来てくれるのでしょうか」
 セイロンが尋ねると、アールグレイは首を振った。
 「わからない。だが、可能性はある」
 「と、申しますと」
 「魔法にかなり興味を持っている」
 なるほど、とセイロンは頷く。
 「では、機会があればお招きしてみましょう。少なくとも為人ひととなりはわかりましょう」



 鮮やかなオレンジの髪にオレンジの瞳の女性が、オレンジペコ。ダークブルーの髪に深い緑の瞳の男性が、セイロン。そう王様が紹介してくれた。この二人が王様の側近なんだって。やっぱりどっちもものすごく美形だ。
 小銭を稼いだので、魔族の本屋に立ち寄ろうと再び街を歩いていると、またもアッサムに出会った。そうしてあれよあれよと王城に連行されて今に至る。
 三人の美人に囲まれながら、王城のサロンでティータイム。みんな食べ方もキレイ。ごらんよ私の食べ方を。手掴みで豪快にひとくちだぜよ。食べカスもボロボロ落ちておるよ。汚かろう?それなのに、あらあらこの子ったら、うふふ、くらいに微笑みながら、時々そっとハンカチで口元を拭ってくれるんだぜ?神か。
 「ではシラユキ殿は聖女ではないのですか?」
 世間話をしていると、そんな流れになった。きっとそれが聞きたかったんだろうな。直球で聞いてくれてもいいのに。
 「聖女の認定はされていません。聖女の魔法が使える時点で聖女だというなら聖女なのでしょうけれど」
 なるほど、とオレンジペコは頷く。
 「それでシラユキ殿は国を行き来出来るわけですね」
 意味がわからない。首を傾げると、三人は驚いた顔をする。
 「ご存じないのですか?聖女は国の許可なく国を出ることは許されていません」
 知らなかった。認定されてなくて良かった。自由で良かった。
 「そうですか。では認定されないよう気を付けたいと思います」
 そんな話をしつつ、そろそろお暇しようとすると、
 「いつでも遊びに来るといい。門番には話をしておく。どこの図書館よりも本が充実しているから、シラユキの魔法の勉強の足しになると思うよ」
 そう王様が言ってくれた。
 椅子から下りて、ありがとうございます、ごちそうさまでした、と頭を下げて王城を後にした。
 社交辞令なんて知らないよ。本当に図書館に入り浸るからね。

 シラユキと話をして、三人の結論は、見なかったことにしよう、だった。
 「まあ、我々が匿っているわけではないし、もしダリアンから抗議されても、向こうも非公式でのことだ。強くは言えない。ダリアンには悪いが、シラユキの、うぐ、境遇が」
 話をしていると、シラユキの幼少期の扱いがチラ、と垣間見えた。
 「それで、あのように表情が乏しいのだとしたら、うう」
 「自由を、少しでも、世界を、知っていただきたい、です、ぐすっ」
 魔族は情に厚い。長命故、あまり子どもは生まれない。だからこそ、子どもはみんなで育てるし、大事に扱う。甘やかすのではない。間違った方向に進まないよう、厳しくも愛ある子育てを、社会全体で行うのだ。
 「何がシラユキにとって良いか。今は、彼女の自由を妨げないことだと判断する」
 セイロンもオレンジペコも頷いた。


*つづく*
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