悪役令嬢 VS 悪役令嬢

らがまふぃん

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 自分とは正反対の主人公。自分にはないものを持つ人々。自分は決してその人たちのようにはなれない。人を信じ、人を愛し、人に愛される。
 私は何かが欠けている。
 憧れるのに。眩しいと思うのに。羨ましいと、焦がれるのに。
 現実を見ると、急に冷める。
 心がスウッと冷めていく。
 誰にも興味を持てない自分は、
 きっと、淋しい、
 欠陥品に
 違いない。



 ――ちゃんのうそつき!だいっきらい!
 あのねえ、そういうのが人と違ってカッコイイとか思うかも知れないけど、目立ちたいっていうだけで、和を乱すのはやめて欲しいの。
 何それ。知識ひけらかして何なの?――ってホント感じ悪い。
 ――さん。何度言えばわかるのかしら。あなたこの仕事向いてないんじゃない?
 ホント何考えているかわからない。気持ち悪いのよあんた。
 「うるせぇバーカ」
 何をやっても裏目に出る人生だった。良かれと思ってやれば嫌われ、考えずにやれば疎まれる。やれと言われてやれば嗤われ、やらなければ罵倒される。聞かれたことに答えれば文句を言われ、答えなければ馬鹿にされる。表情がないと怒られ、何を考えているかわからないと呆れられ、それだから親しい友人一人いないと、すべてを否定され続けた。
 何が悪いのかわからない。みんなと同じようにやっても、自分だけがみんなと違うと言われる。異端だと非難される。小さい頃は、そんなことはなかった。むしろ好かれていたように思う。けれど成長するにつれ、徐々にそうなっていった。
 いつしか私は人に対して何の感情も持てなくなった。
 でも動物は違う。全身で感情を表わしてくれる。何をすれば喜び、何をすると嫌がるのか。好きも嫌いもわかり易い。だから一緒にいると、とても心が安らいだ。ペット禁止のアパートだったため、一緒に暮らすことは出来なかった。そのため、犬カフェや猫カフェ、動物園などに、よく行った。
 ある日のことだ。男の子が子犬を散歩中、その子犬のリードが手から離れてしまったのだろう。子犬は走り出した。慌てて追いかける男の子。子犬が道路に飛び出した。何も考えず、咄嗟にその子犬を助けに体が動くくらいには、動物が好きだった。あの子犬はどうなっただろう。私は、助けることが出来たのだろうか。助けられていたらいいな。
 諦めて、すべてが面倒になった。だから、もし生まれ変われるのなら、言葉を必要としない動物に生まれたかった。それが叶わないなら、もう生まれ変わらなくて良かったのに。
 「どうして私はまた、人に生まれたんだろう」
 憧れの転生ライフ。誰からも愛されて幸せいっぱいです、という様相をしていたら、異世界転生ひゃっほう、となっていたはず、なんて。本当はわかっている。そんな問題ではない。心の問題なのだ。
 影艶かげつやに守るように包まれていた私は、その首筋に顔をうずめながら呟く。影艶が鼻先で頭を撫でてくれる。その行為に、どうしようもなく満たされる。
 淋しい。
 確かに私は淋しいのだ。
 けれど、人に温もりを求めていない。
 それも、確かだった。
 「影艶。ずっと、一緒にいてね」
 首に抱きつき、より顔を埋めながら願う。
 影艶は、当然だと言うように、その頬を頭に擦り寄せた。
 そのまま眠りについた私の顔を、慈しむように舌先で舐めてくれていたことに気付かなかった私は、幸せな夢を見たように思う。


*つづく*
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