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15 真相2
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“新しく出来た角の雑貨屋さん、もう行きましたか?”
“ああ、行ったよ。妹に連れて行けってせがまれてね”
“そうなんですね。私も行きましたけど、もう色々目移りして選べないくらい素敵でした”
“女の子が好きそうなものが、たくさん置いてあったよね”
この会話のあとに、
“はい。あの雑貨屋さん、可愛いものいっぱいでしたよね。また行きたいです”
となる。ノヴァはこの会話を聞き取れていたが、他にも近くで聞いていた者たちは、そうはいかなかったようだ。スウィーディーは誤解させる部分だけを強調して話す。
その結果、先のセリフしか聞こえなかった者たちは、しっかり誤解してスウィーディーを悪し様に罵ることとなる。
こんな感じのことが、この短期間でよく起こっていた。
リスランたちとの直近のことであれば、コノアとしてノヴァが学園に来る前、
“いえいえ、何でもないですよー。あ、そうだ。来週の観劇、楽しみです!ずうっと観たかったんです!本当に嬉しい!”
と、言っていたのだが、これは、ただのスウィーディーの予定だ。あたかもリスランたちと約束をしているかのようだが、数日前に、“楽しみにしていた観劇がある、今度行く”と話していただけ。その会話があっての先の発言、ということだ。
このように、リスランたちとの仲を誤解させる言動を繰り返す。
今回のパーティーで言えば、今日スウィーディーが身につけているものすべて、リスランが贈ったことになっている。
スウィーディーに贈りたがった子息たちに断った際の言い方が、やはり勘違いを助長させるものだった。
“あの、私、その、身につけるもの一式、リスラン様から”
と言って、その後はもごもご。子息たちは、普段からリスランたちとの噂も聞いているため、そういうことであれば仕方がないね、とそう言って引いてしまった。
この後に続くべき言葉をきちんと聞いておくべきだった。
“贈って欲しいと思っているけどムリだからもう用意してあるの“
などと続いたはずだから。
何故なら、リスランがスウィーディーに何かを贈ったという事実は、ない。
贈ってもらうの?贈ってもらう予定があるの?贈ってもらいたいだけなの?としっかり確認をしなかったことは、子息たちの落ち度だ。
ここまで言うと、スウィーディーが肩を震わせ、顔を上げた。
「ひ、ひどいよ、ノヴァ。私、嘘なんか、ついてないのに。誤解されるなんて、思いもしなかったのに」
美しい顔が、涙に濡れている。
「そう。確かにキミは、嘘を言っていない」
「だったらっ」
「けれど、本当に誤解をされると思わなかったのか?」
「本当よ!だって、本当にそんなつもりなかったもの。誤解させていたなんて、今言われるまで気付かなかったくらいよ」
ノヴァはスウィーディーをジッと見た。
「それなら、どうしてきちんと確かめなかったの?私、本当にそんなつもりじゃなかったのよ?」
「誤解する方が悪いと?」
「違うの?だってきちんと聞いてくれれば、私はきちんと答えたわ。みんな、勝手に誤解したんじゃない」
ポロポロと美しく涙を流すスウィーディーに、彼女に懸想する者たちは、彼女を守ろうとその周りを囲み、キッと睨むようにノヴァを強く見た。
「なるほど。キミの考えはわかった」
酷く冷めた目でその光景を見やり、呆れたようにひとつ、息を吐いた。
「そんなキミだから、キミは、気付けるチャンスがいくらでもあったのに、それを都合の良い解釈しかしなかったのだな」
時々顔を逸らすのは何故だろう。何度も同じ質問を繰り返すのは何故だろう。そう言えば体に触れてこないのは、名前で呼ばないのは、よく考えたら笑顔を見たことがないのは、何故だろう。
そう思えていたら。
*つづく*
“ああ、行ったよ。妹に連れて行けってせがまれてね”
“そうなんですね。私も行きましたけど、もう色々目移りして選べないくらい素敵でした”
“女の子が好きそうなものが、たくさん置いてあったよね”
この会話のあとに、
“はい。あの雑貨屋さん、可愛いものいっぱいでしたよね。また行きたいです”
となる。ノヴァはこの会話を聞き取れていたが、他にも近くで聞いていた者たちは、そうはいかなかったようだ。スウィーディーは誤解させる部分だけを強調して話す。
その結果、先のセリフしか聞こえなかった者たちは、しっかり誤解してスウィーディーを悪し様に罵ることとなる。
こんな感じのことが、この短期間でよく起こっていた。
リスランたちとの直近のことであれば、コノアとしてノヴァが学園に来る前、
“いえいえ、何でもないですよー。あ、そうだ。来週の観劇、楽しみです!ずうっと観たかったんです!本当に嬉しい!”
と、言っていたのだが、これは、ただのスウィーディーの予定だ。あたかもリスランたちと約束をしているかのようだが、数日前に、“楽しみにしていた観劇がある、今度行く”と話していただけ。その会話があっての先の発言、ということだ。
このように、リスランたちとの仲を誤解させる言動を繰り返す。
今回のパーティーで言えば、今日スウィーディーが身につけているものすべて、リスランが贈ったことになっている。
スウィーディーに贈りたがった子息たちに断った際の言い方が、やはり勘違いを助長させるものだった。
“あの、私、その、身につけるもの一式、リスラン様から”
と言って、その後はもごもご。子息たちは、普段からリスランたちとの噂も聞いているため、そういうことであれば仕方がないね、とそう言って引いてしまった。
この後に続くべき言葉をきちんと聞いておくべきだった。
“贈って欲しいと思っているけどムリだからもう用意してあるの“
などと続いたはずだから。
何故なら、リスランがスウィーディーに何かを贈ったという事実は、ない。
贈ってもらうの?贈ってもらう予定があるの?贈ってもらいたいだけなの?としっかり確認をしなかったことは、子息たちの落ち度だ。
ここまで言うと、スウィーディーが肩を震わせ、顔を上げた。
「ひ、ひどいよ、ノヴァ。私、嘘なんか、ついてないのに。誤解されるなんて、思いもしなかったのに」
美しい顔が、涙に濡れている。
「そう。確かにキミは、嘘を言っていない」
「だったらっ」
「けれど、本当に誤解をされると思わなかったのか?」
「本当よ!だって、本当にそんなつもりなかったもの。誤解させていたなんて、今言われるまで気付かなかったくらいよ」
ノヴァはスウィーディーをジッと見た。
「それなら、どうしてきちんと確かめなかったの?私、本当にそんなつもりじゃなかったのよ?」
「誤解する方が悪いと?」
「違うの?だってきちんと聞いてくれれば、私はきちんと答えたわ。みんな、勝手に誤解したんじゃない」
ポロポロと美しく涙を流すスウィーディーに、彼女に懸想する者たちは、彼女を守ろうとその周りを囲み、キッと睨むようにノヴァを強く見た。
「なるほど。キミの考えはわかった」
酷く冷めた目でその光景を見やり、呆れたようにひとつ、息を吐いた。
「そんなキミだから、キミは、気付けるチャンスがいくらでもあったのに、それを都合の良い解釈しかしなかったのだな」
時々顔を逸らすのは何故だろう。何度も同じ質問を繰り返すのは何故だろう。そう言えば体に触れてこないのは、名前で呼ばないのは、よく考えたら笑顔を見たことがないのは、何故だろう。
そう思えていたら。
*つづく*
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