美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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ばんがいへん

ほろよい

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本編完結と、お気に入り登録数3桁になりましたありがとうございます記念といたしまして、多大なる感謝を込めて、こちらの作品をお届けいたします。
結婚初期の出来事です。お楽しみいただけると嬉しいです。
本当にありがとうございます。


*~*~*~*~*


 これはいかん。
 「ふふ」
 あどけなく笑う、少女のような愛らしい顔。
 これは、私は何を試されているのだろう。
 「えゆしゃま」
 肩に擦り寄り甘えてくる愛しい妻。頬はほんのり染まり、黎明の瞳が潤んでいる。舌っ足らずな話し方は、もうどうしていいかわからないほど可愛らしい。

 カラフスト国の第三王子ヨシュアから、国で評判だというワインが送られてきた。
 そう言えばアリスと飲んだことがない。
 「エルシィ、ワインは大丈夫か」
 寝室に用意されたボトルを手に取り、そうアリスに聞いてみる。
 「そう言えば、お酒を口にしたことがございませんねえ。エル様がお酒を嗜んでいるのも見かけませんわ。エル様はお酒はお好きですか?」
 可愛らしく首を傾げるアリスに、つい押し倒しそうになる。
 「私は酒に酔うことがないんだ、エルシィ。あれば飲むという程度だ」
 好きでも嫌いでもないようだ。
 「そうですか。では折角なのでいただいてみましょう、エル様」
 「そうだな。だが、エルシィの初めてが他人からのモノだというのはいただけない。少し待っていてくれ、エルシィ」
 相変わらずの独占欲を発揮するエリアスト。扉外に控える護衛に用を言いつける。少しして扉がノックされた。戻った護衛が手にしていた物を受け取ると、今日はもう下がるよう言った。
 「エルシィ、これはどうだろう。飲みやすいはずだ」
 そう言ってエリアストはボトルを開けた。
 爽やかな香りが部屋に広がる。
 「爽やかな香りですね。お酒とは思えませんね、エル様」
 アリスの言葉にエリアストは微笑んだ。
 先にエリアストが口に含む。何の問題もない。
 アリスの初めてのお酒。苦手かも知れないと、エリアストが試飲程度にグラスに注ぐ。
 「果実水のように飲みやすいが、どうだろう。エルシィの好みだと良いのだが」
 差し出されたグラスを、アリスはお礼と共に受け取ると、そっと口に運んだ。
 「まあ。お酒独特の香りがないからでしょうか。本当に果実水のようですわ、エル様。とてもおいしいです」
 微笑むアリスに、エリアストも微笑む。
 「口に合ったなら何よりだ。もっと飲むか、エルシィ」
 「あい」
 エリアストが止まった。
 「エルシィ?」
 「あい、もっとのみたいれす、えるさま」
 少し、舌っ足らずに聞こえるのは気のせいだろうか。一口しか飲んでいないはずだ。見ていると、アリスはグラスに残った分をコクリと飲んだ。からになったグラスをエリアストに差し出す。
 「もっと、のみたいれす。くらしゃい、えゆしゃま」
 気のせいではなかった。
 どうしよう。
 「ふふ。えゆしゃま」
 肩に擦り寄り甘えてくる愛しい妻。エリアストは自身の口を押さえる。
 なんだ、この可愛い生き物は。試されているのか、私は。何を。
 「えゆしゃまは、わたくしの、だんにゃしゃまれす。うらやましぃれすか?」
 エリアストが旦那で羨ましいかとエリアストに聞かれても困る。だが、にこにこと、とても嬉しそうにしているアリスに、答えないわけにはいかない。エリアストは、頷いてみた。すると、アリスは両手で自分の口を押さえて、足をぱたぱたと動かした。
 「ふふふ。そうれしょうそうれしょう。ふふふふ」
 可愛すぎて直視できないエリアストに、更なる追撃が。
 「えゆしゃま、ぎゅって、して?」
 両手を広げて、抱っこのおねだり。
 なけなしの理性が吹っ飛んだ。
 アリスを抱き締め、ベッドへ直行。アリスに覆い被さったときだ。
 「なん、だと」
 お約束だ。アリスは安らかな寝息を立てていた。
 弱いなんてものではない。今まで夜会でも何でも飲んでいなくて良かった。酒でこうなるとは。知っていれば注意喚起出来たのだが。無知とは罪だ。エルシィを知らず危険に晒していた。きっと今まで無事だったのは、エルシィが初めては私と、と考えて自重してくれていたのだ。
 愛しすぎるアリスの頬をそっと撫でる。ふにゃりと笑みを零し、その手に擦り寄った。
 「エルシィ」
 何て愛おしい。
 深くくちづける。酒の味などしない。それなのにこれ程の変化を見せるとは。ぶっ飛んだ理性を何とか呼び戻し、アリスを抱き締め、眠れぬままに目を閉じた。
 
 ぱち、と大きな目が開く。黎明の瞳が辺りを見回す。
 「おはよう、エルシィ。体調は大丈夫か」
 「あ、おはよう、ございます、エル様。わたくし、昨夜、その」
 エリアストの姿を認めて、恥ずかしそうに頬を染める。
 「覚えているのか、エルシィ」
 その言葉に、アリスはエリアストの胸に顔を隠してしまった。エリアストは優しく頭を撫でる。
 「は、はい。すみません、エル様。ご迷惑をおかけしました」
 「とても、愛らしかった、エルシィ」
 耳元で囁かれ、アリスは耳まで真っ赤になった。
 「ひ、ひとくち、飲んだだけで、寝入ってしまうとは、思いませんでした。ベッドに、運んでくださって、ありがとうございました」
 ん?
 「ひとくち?」
 「あ、ふたくち、でしたかしら。お酒は、やめておきます、エル様」
 覚えていない、だと?あの愛らしすぎるすべて、無意識?
 「そう、だな。それがいい、エルシィ」
 エリアストは考える。
 ふたくちであれだ。ひとくちで止めておいたら。
 ニヤリと笑った。
 「だが、おいしかっただろう。私の前でだけなら許可しよう、エルシィ」
 ただし、ひとくちだけだ、そう囁かれ、アリスはますます真っ赤になってエリアストにしがみついた。
 「か、からかわないでくださいませ、エル様」
 本気だ。


*おしまい*

次話は子どもを授かる話です。
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