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フルシュターゼの町編
16
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「貴様の認識は間違っている。国への貢献も財の潤沢さも、ディレイガルドは他の追随を許さん。単純に財だけで言えば、この国の国家予算の五年分は優に超える」
アルシレイスの目が落ちそうだ。自分たちの調べでは、国家予算の半分程度の財だったからだ。それが、五年分だと?単純計算で?
「目に見えるものをすべてだと思うな。この国の最高位にいてそんなこともわからんとは、実に嘆かわしい」
ディアンはアルシレイスを睨む。
「おまえたちの処遇が決まった。アルシレイス」
アルシレイスの肩が揺れた。
「おまえの家は取り潰しだ」
アルシレイスが、意味がわからない、という目を向ける。
「は、な、何ですと?と、とり、取り、潰し?」
ディアンは、同じことを言わせるなと言うように冷たい目で肯定した。そして固まっている子女たちに向かって、
「おまえたちの家は全員降格」
そう沙汰を下す。子女たちも明らかに動揺している。公爵家に逆らえず、ただついて来ただけだというのに、あんまりではないか。口には出さないが、態度がそう言っている。ディアンは鼻で嗤う。軽薄な気持ちでくっついて来たくせに被害者気取りとは。ディレイガルドを見たい、あわよくばお近づきに、なんて魂胆が透けて見える。もう話は終わりだとばかりに立ち去ろうとしたディアンを止めたのは、もちろんアルシレイス。
「いや、待て、何故だ、何故」
体を怒りに震わせるアルシレイスに、ディアンは溜め息を吐いた。
「ディレイガルドを怒らせるからだ。私は言った。手を出すなと」
「ふざけるな!そんなこと認めん!認めんぞ!」
アルシレイスは真っ赤な顔をして、怒りを全身から迸らせた。
「貴様が認めようが認めまいが決定事項。覆らん」
子どもをあしらうような態度に、ますますアルシレイスは憤慨する。
「ふざけるなふざけるなふざけるな!この犬めが!貴様はディレイガルドの犬だ!何が王族!何が王家!ディレイガルドに尻尾を振る、ただの薄汚い犬ではないか!」
「最期にひとつ、この国の実態を教えてやろう」
不敬どころではないアルシレイスの言葉に、ディアンは静かに言った。見る者が見ればわかる。誰がこの国の主なのか。
「我々王族は、ディレイガルドの駒だよ」
その場の全員がキョトンとした。言っている意味がわからない。アルシレイスなど、王家はディレイガルドの犬だとまで言ったにも拘わらず、だ。頭が、理解しようとしない。何を言われたのだろう。そんな困惑を余所に、ディアンは嗤う。
「不敬罪には問わないよ。なぜならおまえたちの運命は、もう決まっている」
*~*~*~*~*
ディアンがアルシレイスたちと話をしている頃。
「今夜護送が到着するだろう。おまえたちで対応をしろ」
畏まりました、と双子は頭を下げる。ディレイガルドを名乗る者として、このくらいの対応はそつなく熟せなくてはならない。エリアストとアリスは出掛けるため留守にする、という意味であることも同時に理解している。
エリアストは、初めてのことはすべてアリスと二人きりで思い出を共有する。それを邪魔する無粋な輩はここにはいない。二人の子どもとは言え、いや、二人の子どもだからこそ、両親の時間の邪魔をしない。不可侵の領域を、間違えたりしない。
エリアストはそれだけ言うと、席を立った。湯浴みをしているアリスがもうすぐ戻ってくる。その前にエリアストも湯浴みを済ませるためだ。
エリアストが部屋を出ると、双子は話し始めた。
「たくさん実験体が手に入った」
ノアリアストが薄く笑う。
「あの部屋、暫く賑やかになる」
王城の地下部屋を思い、ダリアも薄く笑う。
「リカリエットのあの二人、まだ壊れてないんでしょ」
「壊れてないよ。さすがお父様だ」
「昔やり過ぎて早々に壊したって聞いた。その女が弱すぎたっていうのもあるみたいだけど」
「学園に通っていた頃、お母様を攫ったっていうゴミの」
「拷問にかけて正気を取り戻させたって言うのも凄い」
「私にも出来るかな」
「やってみよう、ディア」
「そうだね。たくさん実験体、いるからね、ノア」
「今日はとても天気がいい。エルシィ、夜は星を見に行こう」
アリスにそう伝えていたので、早めの入浴となった。伝えたときのアリスの反応が可愛すぎた。
「まあっ。はい、はい。参りましょう、参りましょう、エル様」
アリスがキラキラと輝く瞳で喜んでくれた。あまりの可愛さに、エリアストは自身の顔を押さえる。
このまま部屋に閉じ込めてしまいたい。
そんな欲望と葛藤する羽目になった。
*最終話へつづく*
アルシレイスの目が落ちそうだ。自分たちの調べでは、国家予算の半分程度の財だったからだ。それが、五年分だと?単純計算で?
「目に見えるものをすべてだと思うな。この国の最高位にいてそんなこともわからんとは、実に嘆かわしい」
ディアンはアルシレイスを睨む。
「おまえたちの処遇が決まった。アルシレイス」
アルシレイスの肩が揺れた。
「おまえの家は取り潰しだ」
アルシレイスが、意味がわからない、という目を向ける。
「は、な、何ですと?と、とり、取り、潰し?」
ディアンは、同じことを言わせるなと言うように冷たい目で肯定した。そして固まっている子女たちに向かって、
「おまえたちの家は全員降格」
そう沙汰を下す。子女たちも明らかに動揺している。公爵家に逆らえず、ただついて来ただけだというのに、あんまりではないか。口には出さないが、態度がそう言っている。ディアンは鼻で嗤う。軽薄な気持ちでくっついて来たくせに被害者気取りとは。ディレイガルドを見たい、あわよくばお近づきに、なんて魂胆が透けて見える。もう話は終わりだとばかりに立ち去ろうとしたディアンを止めたのは、もちろんアルシレイス。
「いや、待て、何故だ、何故」
体を怒りに震わせるアルシレイスに、ディアンは溜め息を吐いた。
「ディレイガルドを怒らせるからだ。私は言った。手を出すなと」
「ふざけるな!そんなこと認めん!認めんぞ!」
アルシレイスは真っ赤な顔をして、怒りを全身から迸らせた。
「貴様が認めようが認めまいが決定事項。覆らん」
子どもをあしらうような態度に、ますますアルシレイスは憤慨する。
「ふざけるなふざけるなふざけるな!この犬めが!貴様はディレイガルドの犬だ!何が王族!何が王家!ディレイガルドに尻尾を振る、ただの薄汚い犬ではないか!」
「最期にひとつ、この国の実態を教えてやろう」
不敬どころではないアルシレイスの言葉に、ディアンは静かに言った。見る者が見ればわかる。誰がこの国の主なのか。
「我々王族は、ディレイガルドの駒だよ」
その場の全員がキョトンとした。言っている意味がわからない。アルシレイスなど、王家はディレイガルドの犬だとまで言ったにも拘わらず、だ。頭が、理解しようとしない。何を言われたのだろう。そんな困惑を余所に、ディアンは嗤う。
「不敬罪には問わないよ。なぜならおまえたちの運命は、もう決まっている」
*~*~*~*~*
ディアンがアルシレイスたちと話をしている頃。
「今夜護送が到着するだろう。おまえたちで対応をしろ」
畏まりました、と双子は頭を下げる。ディレイガルドを名乗る者として、このくらいの対応はそつなく熟せなくてはならない。エリアストとアリスは出掛けるため留守にする、という意味であることも同時に理解している。
エリアストは、初めてのことはすべてアリスと二人きりで思い出を共有する。それを邪魔する無粋な輩はここにはいない。二人の子どもとは言え、いや、二人の子どもだからこそ、両親の時間の邪魔をしない。不可侵の領域を、間違えたりしない。
エリアストはそれだけ言うと、席を立った。湯浴みをしているアリスがもうすぐ戻ってくる。その前にエリアストも湯浴みを済ませるためだ。
エリアストが部屋を出ると、双子は話し始めた。
「たくさん実験体が手に入った」
ノアリアストが薄く笑う。
「あの部屋、暫く賑やかになる」
王城の地下部屋を思い、ダリアも薄く笑う。
「リカリエットのあの二人、まだ壊れてないんでしょ」
「壊れてないよ。さすがお父様だ」
「昔やり過ぎて早々に壊したって聞いた。その女が弱すぎたっていうのもあるみたいだけど」
「学園に通っていた頃、お母様を攫ったっていうゴミの」
「拷問にかけて正気を取り戻させたって言うのも凄い」
「私にも出来るかな」
「やってみよう、ディア」
「そうだね。たくさん実験体、いるからね、ノア」
「今日はとても天気がいい。エルシィ、夜は星を見に行こう」
アリスにそう伝えていたので、早めの入浴となった。伝えたときのアリスの反応が可愛すぎた。
「まあっ。はい、はい。参りましょう、参りましょう、エル様」
アリスがキラキラと輝く瞳で喜んでくれた。あまりの可愛さに、エリアストは自身の顔を押さえる。
このまま部屋に閉じ込めてしまいたい。
そんな欲望と葛藤する羽目になった。
*最終話へつづく*
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