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リカリエット王国編

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 残酷な表現があります。ご注意ください。

*~*~*~*~*

 品行方正、立場をわきまえた大人しく穏やかな王子。リカリエットの第四王子シャルアは、そう周囲から評価をされていた。しかし幼馴染みであるミカレイラは知っている。シャルアの奥底に眠る狂気を。
 「そこまでしなくてもいいんじゃないの」
 最初は虫だった。それがだんだん大きなものになっていく。鳥や小動物、愛玩動物、狩りの獣。エスカレートしていく欲求は抑えられない。
 「どこまで耐えられるか知りたいじゃないか」
 シャルアは嗜虐嗜好の持ち主だった。
 「怯える目が堪らない。断末魔の叫び、何よりも美しい子守歌のようじゃないか」
 足下には、光を失った目をした人であったもの。
 「でももう飽きてきたな。やっぱり平民は程度が知れている。貴族。貴族はどんな声でなくのかな」
 「さすがに貴族は無理じゃないかしら」
 口のきけない奴隷が遺体の処理に動く。
 「だよねぇ」
 残念そうに溜め息をく。
 「だから、ね。どこにでもいるのよ」
 ミカレイラの言葉にシャルアは首をかしげる。
 「貴族は、何もこの国だけじゃないのよ、シャル」
 妖しく唇をつり上げるミカレイラに、シャルアは笑った。
 「ホント、最高だよ、ミカ」
 シャルアはミカレイラの唇に口づけた。

*~*~*~*~*

 「天上の歌声のようじゃないか。なんて素晴らしい」
 「ええ?あれは無理じゃないかしら。ディレイガルドの逆鱗っていう女よ」
 今まで攫ってきた周辺国の貴族たちとは訳が違う。帝国の貴族を攫うときよりも骨が折れそうだ。
 「でも、あの声がどんな風に絶望の旋律しらべを奏でるのか。想像しただけでイキそうだよ」
 シャルアの半身が反応しかけていることに、ミカレイラは呆れたように溜め息をく。
 「もう、シャルアったら。まあ、でも、噂はあてにならないか。ディレイガルド当主自身、怖そうではあるけど、そこまで警戒に値しないかな」
 昼間の様子を思い出す。片時も妻から離れないディレイガルド。随分妻にご執心のようだ。
 「そこまで大した国じゃないしね。アーリオーリが属国になったようだけど、アーリオーリ如き、何の足しにもならないよね。帝国が警戒しているようだけど、ディレイガルドの噂に踊らされすぎって感じがする」
 ミカレイラの腰を引き寄せ、ゆるゆると撫でる。
 「そうね。じゃあ、女をシャルが手に入れるなら、私は当主が欲しいわ。あそこまでの美貌の男をひざまずかせるなんて、最高だわ。試したい薬もいろいろあるの」
 二人はゆっくり顔を近付ける。
 「でも、警戒心だけは強いみたい。あなたのお兄様の子どもを使いましょう」
 「兄上の?リーナに、何をさせるの?」
 「ベッドでゆっくり説明してあげるわ」
 ミカレイラは艶然と微笑み、シャルアに甘えるように抱きつく。
 「夜会に遅れるよ」
 シャルアはクスクスと笑う。
 「少しくらい大丈夫よ」
 互いの唇が重なった。


*つづく*
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