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アーリオーリ王国編

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 短いやり取りを終えると、ディアンとカルセドがやって来た。
 「ディレイガルドの。何やらおかしなことになっていると聞いた」
 「う、す、すまない。息子のことで、何やら巻き込んでしまった」
 エリアストは二人を見た後、
 「形はどうあれ結果は変わらないでしょう」
 そう言ってアリスを連れて近くのベンチに座った。
 「アーリオーリの王女よ。貴殿の望むようセドニアとの席を設けたはずだが、どういうことか、これは」
 腰を抜かして座り込むアフロディーテに手を差し伸べることなく、ディアンは冷たく見下ろした。
 「あ、あたくしは、出会うべく人に出会ったまでですわ。運命ですもの、仕方ないではありませんの」
 悪びれた様子もなく言ってのけるアフロディーテに、予想していたこととは言え腹の底が冷えていくのがわかる。こんな人間にどう思われても構わないが、外交というものをあまりにも軽んじていないだろうか。これをよくこの国に送り出せたものだ。自分たちとて、あのサーフィアを政略に使おうなどと思わなかった。本性を知る前でさえ。国内でさえそう思えるほどだったのだ。外交になんてもってのほか。国の恥を晒すことになる。それだけならまだしも、何で足下を掬われるかわからない。不安のある者を外になんて出せるはずもないというのに。
 アーリオーリ国は、レイガード国を舐めている。
 ディアンは嗤った。
 「も、も、申し訳ございません、国王陛下。殿下は、しょ、少々混乱しておられる様子。レイガード王弟殿下におかれましても、大変ご不快かと存じます。こ、この罰は、如何様いかようにもお受けいたします」
 女官長と護衛隊長は必死に頭を下げる。
 「レイガード王弟令息様、誠に申し訳ございません。わたくし共の命でご容赦くださるならば、僥倖ぎょうこうにございます」
 無能なあるじに仕えるという事は、本当に哀れだ。こんな無能のために、どれだけの犠牲を払ってきたのだろう。上に立つ人間として、自戒せねば。こういう者を、生み出してはいけないのだ。
 「顔を上げよ。沙汰は追って伝える。今は、行く末を見守ろうではないか」
 エリアストたちの側に用意された椅子に、三人は座った。
 「ディ、ディレイガルド殿」
 カルセドがエリアストに勇気を振り絞って話しかけた。
 「迷惑、かけて、本当に、すまない」
 エリアストはカルセドを見る。顔色が悪く、汗が酷い。
 「結果は変わらないと言ったでしょう」
 何度も同じことを言わせるな、と言外に言われ、カルセドは縮こまる。
 「旦那様」
 そこへ、穏やかな声がした。アリスが優しく微笑みながら、エリアストを見つめている。エリアストは困ったように眉を下げ、アリスの頭にくちづけた。
 「謝罪は受け取りました、王弟殿下」
 アリスの頭にくちづけたまま、エリアストは言った。カルセドは目を丸くしてエリアストを見る。こちらを一切見てはいないが、その言葉は確かにカルセドの心を軽くした。
 「あ、ああ、ああ。ありがとう、ディレイガルド殿」


*つづく*
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