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番外編
小さな恋の物語と言うにはいささか疑問が生じる物語
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お気に入り登録200を超えたことに、多大なる感謝を込めて、一話お届けいたします。
鼻の奥が痛いです。目頭が熱いです。頑張って良かった。本当にありがとうございます。
本編とはまったく関係のない話としてお読みください。
*~*~*~*~*
目覚めて違和感。
エリアストは、ベッドから起き上がって辺りを見回した。
隣には半分布団に潜った最愛のアリスがいる。部屋も、変わった様子がない。
髪をかき上げようとして、また違和感。
「どういうことだ」
夜着の袖が、やたらと長い。袖をたくし上げて見たその手に、エリアストは思わず声を出した。その声に、布団に潜っていたアリスが身動ぎ、顔を出した。その姿に、エリアストは声を失う。
「えるさま、おはようございまふ」
少しぼんやりしながら微笑むアリス。驚いた顔をしているエリアストを少し見つめて、アリスが珍しくガバリと起き上がった。
「え、え、エル様?」
驚くアリスの声に、エリアストはゆっくり頷いた。
「何が起きているかわからないが」
エリアストはアリスにそっと手を伸ばすと、ゆるゆると柔らかな頬を撫でた。
「神の粋な計らいだと思っておこう、エルシィ」
なんと二人は、子どもの姿になっていたのだ。
「およそ、十年程若返った感じだな、エルシィ」
「そ、の、よう、ですわね、エル様」
信じられないと言うように、アリスはマジマジとエリアストを見つめる。
「ふ、エルシィ。私だけではないぞ。エルシィも、子どもだ」
「えっ」
「こんなにも小さなエルシィに会えるなんて、夢のようだ」
八歳頃と言えば、実際二人が出会う五年前だ。出会った頃も可愛らしかったが、それよりもさらに小さいアリス。
「エルシィ、夜着が、あまり役に立っていないな」
十八のアリスが着ていた物だ。八歳のアリスには大きすぎて、両肩がずり落ちていた。あまりのことに、アリスは真っ赤になって慌てて夜着を上げようと動くも、両手をエリアストに掴まれた。そしてそのままベッドに倒される。
「イケナイコトをしているみたいだな?エルシィ」
首筋に顔を埋めながら、吐息混じりにエリアストが言った。アリスは全身を赤く染める。
「可愛い、エルシィ。エルシィ可愛い」
顔中にキスの雨が降る。
「私が出会えなかった頃のアリス。見せて。全部、見せて、アリス」
いつの間にか夜着は脱がされ、全身にくちづけられる。
「さすがにこの体では最後までは出来ないな」
ボソリと呟き舌打ちをするエリアスト。アリスだけが小さくなっていたらどうなっていたのだろう。犯罪のニオイがした。
ひとしきりアリスを堪能したエリアストは、アリスの夜着を整える。リボンを使って首元を締め、夜着が落ちないようにする。裾は引きずってしまうので、こちらもリボンを腰に巻いて調節した。エリアストはシャツだけ着て腕まくりをすると、部屋の扉を開けて護衛に声をかけた。
驚きに身を固くする護衛に、絶対零度の眼差しが、間違いなくエリアストであると認識出来た。
「すぐに、奥方様をお呼びいたします」
慌ただしくやって来たアイリッシュは、二人を見るなり歓喜の声を上げた。
「まあああ!なんて、なんて可愛らしい!まああ!まああ!」
二人をぎゅうぎゅうと抱き締める。
「母上。わかりましたから落ち着いてください。それからエルシィに触らないでください」
通常運転の息子に、アイリッシュは苦笑した。
「もう、こんなことになっても相変わらずなんだから。それにしても、本当に可愛いわねぇ。アリスちゃん、お人形さんみたいだわぁ」
変わらずぎゅうぎゅうし続けるアイリッシュに、アリスは照れながらお礼を言い、エリアストは極寒のオーラを放つ。
「母上」
「もーう、わかったわよぅ、ケチ。それで、とりあえず服を用意すればいいかしら」
渋々離れてアイリッシュはそう言った。エリアストは頷く。
「いつ戻れるかわかりませんが、戻れなかった場合どうするか、父上が戻ったら相談します」
「わかったわ。じゃ、服を用意してくるわね」
アイリッシュの用意した服を着ると、使用人たちは歓喜の声を上げる。エリアストが着ていた服だ。アリスは男装となるが、もの凄く似合っている。照れてエリアストの陰に隠れる姿も尊い。アリスの服を急ぎ用意しているが、これはこれでありではないか、とみんなの心は一つであった。
周りが騒がしいので、エリアストはアリスを連れて温室へ行く。温室のベンチで膝の上にアリスを横抱きにして、愛おしくて堪らないと、ギュッと抱き締めながらアリスの顔中にキスをする。
「会ったことのない、見ることの叶わなかった時間のエルシィ。可愛い。嬉しい」
「え、エル様、ふふ、くすぐったい、です」
頬を染めてクスクスと笑うアリスが、可愛くて仕方がない。
「エル様は、いつも素敵です。ですが、お小さいエル様、とても可愛らしいです」
そんなことをアリスが言うものだから、エリアストは複雑な気持ちになる。
「可愛いという言葉は、エルシィのためにあるのだが、まあいい。エルシィ、このまま戻れなかったとしたら、どうする」
アリスは首を傾げた。
「どうするか、ですか。わたくしはエル様が側にいてくださるなら、他のことは何とでもなると思っておりますが、思考の放棄ですか、これんんっ」
唇が塞がれた。
「嬉しいことを言ってくれるな、エルシィ」
絡めた舌を、銀の糸が繋ぐ。くったりと力の抜けたアリスが愛おしい。
エリアストが側にいてくれさえすれば、他のことなど、どんなことでも些末なことだと笑ってくれた。
ああ、本当に。アリスさえいれば、どんなことも、どうでもいい。
中庭で花を摘み、小さな花束を作ってアリスに持たせる。花冠を編んで、アリスに乗せると、小さな花嫁のようだ、とまたエリアストの熱い抱擁が始まる。
部屋に戻ってアリスをソファに座らせると、アイリッシュから差し入れされた大きなうさぎのぬいぐるみを持たせる。アリスとあまり変わらない大きさのうさぎを落とさないよう、一生懸命抱き締める姿の尊さに、エリアストは理性を失いかける。
昼食が終わり、部屋で二人本を読んでいると、エリアストの肩に、アリスの頭が寄りかかる。子どもの体のせいか、お腹が満たされ眠くなったのだろう。あまりの可愛さに、エリアストはその頭に、顔中に、キスの雨を降らせる。そうこうしている内に、エリアストもアリスに寄り添い眠っていた。
ソファで互いに寄り添いながら眠る姿に、アイリッシュ始め、使用人から護衛に至るまで、キャッキャキャッキャと大興奮であったことを、二人は知らない。
こうして不思議な一日は過ぎて行く。
「いい眺めだな、エルシィ」
破れた夜着をかき集めるように、自身を両腕で抱き締めるアリス。エリアストは羞恥に震えるアリスの肩に、背中にくちづけを落とす。
寝て、目覚めたら、元に戻っていた。まだ明け方。夜着の破れる音で目が覚めた。何事かと起き上がった二人。はらりとアリスの夜着がはだけると、アリスは慌てて夜着を押さえる。羞恥にエリアストに背を向けると、エリアストの吐息が背中にかかった。
「誘っているのか、エルシィ」
意地悪なエリアストが、アリスの髪を除け、項に舌を這わせる。
「たった一日とは言え、幼いエルシィが見られたことに感謝しよう」
耳を舐り、吐息を注ぎ込む。アリスの体が震える。
「だが、いつまでもアリスを味わえないのは、なかなかの拷問だ」
クルリとアリスの体をエリアストに向け、ベッドに沈める。
「遠慮なく、いただこう、アリス」
*おしまい*
幼い頃のお互いに会わせてあげようと出来た作品です。小さくなっても中身はそのままなので、ちょっとオトナな作品になりました。見た目は子ども、頭脳は大人、です。小さい二人の可愛らしい恋、みたいなものにしたかったのですが、エル様には逆らえませんでした。
アリスだけが小さくなっていたら犯罪のニオイ、と書きましたが、さすがにそんな無体はいたしませんよ。アリス至上主義のエル様ですからね。
鼻の奥が痛いです。目頭が熱いです。頑張って良かった。本当にありがとうございます。
本編とはまったく関係のない話としてお読みください。
*~*~*~*~*
目覚めて違和感。
エリアストは、ベッドから起き上がって辺りを見回した。
隣には半分布団に潜った最愛のアリスがいる。部屋も、変わった様子がない。
髪をかき上げようとして、また違和感。
「どういうことだ」
夜着の袖が、やたらと長い。袖をたくし上げて見たその手に、エリアストは思わず声を出した。その声に、布団に潜っていたアリスが身動ぎ、顔を出した。その姿に、エリアストは声を失う。
「えるさま、おはようございまふ」
少しぼんやりしながら微笑むアリス。驚いた顔をしているエリアストを少し見つめて、アリスが珍しくガバリと起き上がった。
「え、え、エル様?」
驚くアリスの声に、エリアストはゆっくり頷いた。
「何が起きているかわからないが」
エリアストはアリスにそっと手を伸ばすと、ゆるゆると柔らかな頬を撫でた。
「神の粋な計らいだと思っておこう、エルシィ」
なんと二人は、子どもの姿になっていたのだ。
「およそ、十年程若返った感じだな、エルシィ」
「そ、の、よう、ですわね、エル様」
信じられないと言うように、アリスはマジマジとエリアストを見つめる。
「ふ、エルシィ。私だけではないぞ。エルシィも、子どもだ」
「えっ」
「こんなにも小さなエルシィに会えるなんて、夢のようだ」
八歳頃と言えば、実際二人が出会う五年前だ。出会った頃も可愛らしかったが、それよりもさらに小さいアリス。
「エルシィ、夜着が、あまり役に立っていないな」
十八のアリスが着ていた物だ。八歳のアリスには大きすぎて、両肩がずり落ちていた。あまりのことに、アリスは真っ赤になって慌てて夜着を上げようと動くも、両手をエリアストに掴まれた。そしてそのままベッドに倒される。
「イケナイコトをしているみたいだな?エルシィ」
首筋に顔を埋めながら、吐息混じりにエリアストが言った。アリスは全身を赤く染める。
「可愛い、エルシィ。エルシィ可愛い」
顔中にキスの雨が降る。
「私が出会えなかった頃のアリス。見せて。全部、見せて、アリス」
いつの間にか夜着は脱がされ、全身にくちづけられる。
「さすがにこの体では最後までは出来ないな」
ボソリと呟き舌打ちをするエリアスト。アリスだけが小さくなっていたらどうなっていたのだろう。犯罪のニオイがした。
ひとしきりアリスを堪能したエリアストは、アリスの夜着を整える。リボンを使って首元を締め、夜着が落ちないようにする。裾は引きずってしまうので、こちらもリボンを腰に巻いて調節した。エリアストはシャツだけ着て腕まくりをすると、部屋の扉を開けて護衛に声をかけた。
驚きに身を固くする護衛に、絶対零度の眼差しが、間違いなくエリアストであると認識出来た。
「すぐに、奥方様をお呼びいたします」
慌ただしくやって来たアイリッシュは、二人を見るなり歓喜の声を上げた。
「まあああ!なんて、なんて可愛らしい!まああ!まああ!」
二人をぎゅうぎゅうと抱き締める。
「母上。わかりましたから落ち着いてください。それからエルシィに触らないでください」
通常運転の息子に、アイリッシュは苦笑した。
「もう、こんなことになっても相変わらずなんだから。それにしても、本当に可愛いわねぇ。アリスちゃん、お人形さんみたいだわぁ」
変わらずぎゅうぎゅうし続けるアイリッシュに、アリスは照れながらお礼を言い、エリアストは極寒のオーラを放つ。
「母上」
「もーう、わかったわよぅ、ケチ。それで、とりあえず服を用意すればいいかしら」
渋々離れてアイリッシュはそう言った。エリアストは頷く。
「いつ戻れるかわかりませんが、戻れなかった場合どうするか、父上が戻ったら相談します」
「わかったわ。じゃ、服を用意してくるわね」
アイリッシュの用意した服を着ると、使用人たちは歓喜の声を上げる。エリアストが着ていた服だ。アリスは男装となるが、もの凄く似合っている。照れてエリアストの陰に隠れる姿も尊い。アリスの服を急ぎ用意しているが、これはこれでありではないか、とみんなの心は一つであった。
周りが騒がしいので、エリアストはアリスを連れて温室へ行く。温室のベンチで膝の上にアリスを横抱きにして、愛おしくて堪らないと、ギュッと抱き締めながらアリスの顔中にキスをする。
「会ったことのない、見ることの叶わなかった時間のエルシィ。可愛い。嬉しい」
「え、エル様、ふふ、くすぐったい、です」
頬を染めてクスクスと笑うアリスが、可愛くて仕方がない。
「エル様は、いつも素敵です。ですが、お小さいエル様、とても可愛らしいです」
そんなことをアリスが言うものだから、エリアストは複雑な気持ちになる。
「可愛いという言葉は、エルシィのためにあるのだが、まあいい。エルシィ、このまま戻れなかったとしたら、どうする」
アリスは首を傾げた。
「どうするか、ですか。わたくしはエル様が側にいてくださるなら、他のことは何とでもなると思っておりますが、思考の放棄ですか、これんんっ」
唇が塞がれた。
「嬉しいことを言ってくれるな、エルシィ」
絡めた舌を、銀の糸が繋ぐ。くったりと力の抜けたアリスが愛おしい。
エリアストが側にいてくれさえすれば、他のことなど、どんなことでも些末なことだと笑ってくれた。
ああ、本当に。アリスさえいれば、どんなことも、どうでもいい。
中庭で花を摘み、小さな花束を作ってアリスに持たせる。花冠を編んで、アリスに乗せると、小さな花嫁のようだ、とまたエリアストの熱い抱擁が始まる。
部屋に戻ってアリスをソファに座らせると、アイリッシュから差し入れされた大きなうさぎのぬいぐるみを持たせる。アリスとあまり変わらない大きさのうさぎを落とさないよう、一生懸命抱き締める姿の尊さに、エリアストは理性を失いかける。
昼食が終わり、部屋で二人本を読んでいると、エリアストの肩に、アリスの頭が寄りかかる。子どもの体のせいか、お腹が満たされ眠くなったのだろう。あまりの可愛さに、エリアストはその頭に、顔中に、キスの雨を降らせる。そうこうしている内に、エリアストもアリスに寄り添い眠っていた。
ソファで互いに寄り添いながら眠る姿に、アイリッシュ始め、使用人から護衛に至るまで、キャッキャキャッキャと大興奮であったことを、二人は知らない。
こうして不思議な一日は過ぎて行く。
「いい眺めだな、エルシィ」
破れた夜着をかき集めるように、自身を両腕で抱き締めるアリス。エリアストは羞恥に震えるアリスの肩に、背中にくちづけを落とす。
寝て、目覚めたら、元に戻っていた。まだ明け方。夜着の破れる音で目が覚めた。何事かと起き上がった二人。はらりとアリスの夜着がはだけると、アリスは慌てて夜着を押さえる。羞恥にエリアストに背を向けると、エリアストの吐息が背中にかかった。
「誘っているのか、エルシィ」
意地悪なエリアストが、アリスの髪を除け、項に舌を這わせる。
「たった一日とは言え、幼いエルシィが見られたことに感謝しよう」
耳を舐り、吐息を注ぎ込む。アリスの体が震える。
「だが、いつまでもアリスを味わえないのは、なかなかの拷問だ」
クルリとアリスの体をエリアストに向け、ベッドに沈める。
「遠慮なく、いただこう、アリス」
*おしまい*
幼い頃のお互いに会わせてあげようと出来た作品です。小さくなっても中身はそのままなので、ちょっとオトナな作品になりました。見た目は子ども、頭脳は大人、です。小さい二人の可愛らしい恋、みたいなものにしたかったのですが、エル様には逆らえませんでした。
アリスだけが小さくなっていたら犯罪のニオイ、と書きましたが、さすがにそんな無体はいたしませんよ。アリス至上主義のエル様ですからね。
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