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番外編
おふぃすらぶ
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みんな社会人という設定です。なにも考えずにお読みください。
エル様がちょっと残念です。
そんなエル様を見たくないという人はこのまま閉じてください。
*~*~*~*~*
大手企業の本社ビル。一階では二人の受付嬢が出迎えてくれる。
「おはよう、ファナトラタ嬢、クロバレイス嬢。今日もよろしくね」
「おはようございます。よろしくお願いいたします、カラフスト社長」
「おはようございまーす、ヨシュアしゃちょー」
「今日はね、あのディレイガルドの御曹司が視察に来るんだ。失礼のないようにね。とくにクロバレイス嬢」
「泥船に乗った気持ちで任せてくださーい」
「不安しかないよ」
ディレイガルド。多岐に渡る事業を手掛け、世界屈指の業績を誇る。そこの御曹司が、この会社のとある部門に視察に来る。うまくすれば、提携も夢ではない。この会社自体も大手だが、この国で、だ。世界を相手取るにはまだまだ小さい。これを足掛かりに、世界へと躍進できればと考えていた。
「アリスアリス、世界のディレイガルドだって。その御曹司。どうする?見初められちゃったら。ディレイガルドの一員だよ?」
アリスはフフ、と優しく笑った。
「ララさんでしたら充分可能性がありますね。そうなったら、こうしてお話も出来なくなってしまうのでしょうか。それは寂しいですね」
「かーわーいーいー!やっぱり結婚しよ?幸せにするよ!」
「うふふ、ララさんたら」
「っていうか、アリスの方がその可能性高いよ。だってアリスだよ?惚れないなんてあり得ない!めっちゃ声かけられるじゃん。お誘いがすごいじゃん。引く手数多じゃん」
「まあ、ララさんたら。私だってお世辞か本気かくらいわかりますよ。みなさん、気遣い屋さんですから」
わかってないよアリス、とすかさず心で突っ込む。口に出したところでアリスは本気にしないことをわかっている。アリスは自己評価が低すぎるのだ。
業務をこなしながら、合間にそんな雑談をしていた。
お昼も近くなった頃。急激に周囲の音がなくなった。アリスたちはその原因となる人物の方を見た。
ダイヤモンドのように輝く銀髪に、アクアマリンのように美しい双眸。均等の取れた肢体に、神憑り的な配置の顔は、誰もが息を忘れるほどだった。
「いらっしゃいませ。どなたに御用でしょうか」
そんな中、アリスは通常通りの対応だ。柔らかな笑顔に優しい声で出迎える。美しすぎる男は息をのんだ。
「おまえの名は何と言う」
「あ、あの?」
男はその美しい顔をアリスに近づける。
「名を、教えてはくれないだろうか」
熱のこもった瞳がアリスを見つめている。
「あ、アリス、と申します。アリス・コーサ・ファナトラタにございます」
「アリス」
男は微笑んだ。
「私はエリアスト。エリアスト・カーサ・ディレイガルド」
ディレイガルドの名に驚く。
「まあ、お話は伺っております、ディレイガルド様。社長のカラフストが」
「エル、と。エルと呼んでくれないか、アリス」
アリスの手を取り、その甲にくちづける。周囲はその色気にあてられ、バタバタと倒れる者が続出する。
「あ、の?」
「アリス、私たちの結婚式はいつにしようか」
「ふえ?」
「子どもは何人欲しい」
「あ、あの」
「ああ、そうだ。ご両親への挨拶が先だな。そちらの都合に合わせよう。何なら今からでも構わない」
「ストーップ!」
見かねて止めたのはララだ。
「なんだ。不躾な女だな。私とアリスの邪魔をするのか。殺されても文句は言えんぞ」
「いや、文句しか出ないよ。何してんのさ。アリスが怯えてるじゃん。空気の読めない男って最悪」
「いい根性しているな。私にくってかかるとは」
「あんたが誰だろうと、アリスを怖がらせるのは許さない。まあアリスを見初めたのは見る目があるからそこは認めるけど」
「む」
「とりあえず今日は視察でしょ?今社長呼ぶから。アリスと話したいならやることやってから。ちゃんとしていない男にウチのアリスは任せられないなあ」
「む、わかった。アリス、では仕事が終わったら食事に行こう。何時に終わる」
「えっと、五時です」
「わかった。待っていてくれ。すぐに終わらせてくる。必ず迎えに来るから」
「は、はい、かしこまりました」
握られた手を離そうとやんわり引こうとするが、微動だにしない。すぐに終わらせて迎えに来ると言っていたはずだが。熱のこもった目がアリスを捉えて離さない。アリスは困ったように笑う。
「そんな愛らしく笑うな。心配で離れられなくなるだろう」
手の甲に、指先に、手首に何度もキスを落とす。
「もう早く行きなよ。アリスを困らせるなって言ったばっかじゃん」
「アリス。アリスはいつからここで受付をしているんだ」
「もう直三年になります」
「その間この愛らしい顔を有象無象に見せていたわけか。この会社潰すか」
「はあ?そのお陰でディレイガルドはアリスに会えたんでしょ?感謝こそすれ、怒るのは違うでしょ。バカなの?」
「む。確かに。では潰すのは止めよう。だがもうここで働かせるわけにはいかん。危険すぎる」
「ねー。ディレイガルドみたいなストーカーが今まで出没しなくて良かったよ。でもアリスと働けなくなるのは許可できないなー。アリスも私と一緒にいたいよね?」
「アリスは私といるからおまえはいらん。今まで守ってくれたことには感謝する」
「勝手が過ぎるよ!そういうのアリス嫌いだから!ディレイガルド嫌われるから!」
「何だと!アリス、私が嫌いか?私は私のすべてでアリスを愛している。頼む、嫌いだなどと言わないでくれ。望むものはすべてアリスの手に」
「重い重い重いよ!」
「これはディレイガルド様。お待ちしておりました」
エリアストがララとバトルしていると、ヨシュアが迎えに降りてきた。
「我が社の受付が、何か失礼を?」
顔色の悪くなるヨシュアに、エリアストは冷たい目を向けた。
「アリスを受付嬢にしたのはおまえか」
何かをするならララだと思っていたヨシュアは、アリスの名前に酷く驚く。
「はい、左様でございます。何か問題がございましたか?」
「問題しかない」
ヨシュアは硬直した。何をしてしまったのか。続くエリアストの言葉に、さらにヨシュアは混乱した。
「こんなにも愛らしいアリスを衆目に晒すなど、気がふれているのか。今までよく無事だったものだ。私と出会わせてくれたことは僥倖であったが、正気の沙汰とは思えん人事だ。よってアリスは私の専属とする。いついかなる時も私の隣にいれば間違いない。なあ、そうだろう、アリス」
「え、あ、はい」
「ちょっと、アリス!よくわからないままに返事しちゃダメだよ!ディレイガルドなんてその最たるものじゃん!」
「え?え?」
「良かった。アリスも同じ気持ちでいてくれた。新婚旅行はどこがいい」
「え?え?」
「そうだ、エルシィ、なんてどうだ。私だけのアリスの愛称だ」
「だーかーらー!勝手に話を進めるなって!」
「だがおまえならわかるだろう。この愛らしさは罪だ。どこかに閉じ込めないと危険で仕方がない」
「それには同意だけど!」
同意なんだ。どんどん収集がつかなくなっている。周囲はどうしていいかわからず見守るしかできない。そんなカオスに舞い降りた天使。
「あの、そろそろお昼休憩です。みなさんでお昼を食べながらお話しませんか」
マイペースアリス嬢、グッジョブ。
*おしまい*
次話はディレイガルド現当主と夫人の馴れ初めのお話しです。
3話続きますが、よろしかったらお付き合いください。
エル様がちょっと残念です。
そんなエル様を見たくないという人はこのまま閉じてください。
*~*~*~*~*
大手企業の本社ビル。一階では二人の受付嬢が出迎えてくれる。
「おはよう、ファナトラタ嬢、クロバレイス嬢。今日もよろしくね」
「おはようございます。よろしくお願いいたします、カラフスト社長」
「おはようございまーす、ヨシュアしゃちょー」
「今日はね、あのディレイガルドの御曹司が視察に来るんだ。失礼のないようにね。とくにクロバレイス嬢」
「泥船に乗った気持ちで任せてくださーい」
「不安しかないよ」
ディレイガルド。多岐に渡る事業を手掛け、世界屈指の業績を誇る。そこの御曹司が、この会社のとある部門に視察に来る。うまくすれば、提携も夢ではない。この会社自体も大手だが、この国で、だ。世界を相手取るにはまだまだ小さい。これを足掛かりに、世界へと躍進できればと考えていた。
「アリスアリス、世界のディレイガルドだって。その御曹司。どうする?見初められちゃったら。ディレイガルドの一員だよ?」
アリスはフフ、と優しく笑った。
「ララさんでしたら充分可能性がありますね。そうなったら、こうしてお話も出来なくなってしまうのでしょうか。それは寂しいですね」
「かーわーいーいー!やっぱり結婚しよ?幸せにするよ!」
「うふふ、ララさんたら」
「っていうか、アリスの方がその可能性高いよ。だってアリスだよ?惚れないなんてあり得ない!めっちゃ声かけられるじゃん。お誘いがすごいじゃん。引く手数多じゃん」
「まあ、ララさんたら。私だってお世辞か本気かくらいわかりますよ。みなさん、気遣い屋さんですから」
わかってないよアリス、とすかさず心で突っ込む。口に出したところでアリスは本気にしないことをわかっている。アリスは自己評価が低すぎるのだ。
業務をこなしながら、合間にそんな雑談をしていた。
お昼も近くなった頃。急激に周囲の音がなくなった。アリスたちはその原因となる人物の方を見た。
ダイヤモンドのように輝く銀髪に、アクアマリンのように美しい双眸。均等の取れた肢体に、神憑り的な配置の顔は、誰もが息を忘れるほどだった。
「いらっしゃいませ。どなたに御用でしょうか」
そんな中、アリスは通常通りの対応だ。柔らかな笑顔に優しい声で出迎える。美しすぎる男は息をのんだ。
「おまえの名は何と言う」
「あ、あの?」
男はその美しい顔をアリスに近づける。
「名を、教えてはくれないだろうか」
熱のこもった瞳がアリスを見つめている。
「あ、アリス、と申します。アリス・コーサ・ファナトラタにございます」
「アリス」
男は微笑んだ。
「私はエリアスト。エリアスト・カーサ・ディレイガルド」
ディレイガルドの名に驚く。
「まあ、お話は伺っております、ディレイガルド様。社長のカラフストが」
「エル、と。エルと呼んでくれないか、アリス」
アリスの手を取り、その甲にくちづける。周囲はその色気にあてられ、バタバタと倒れる者が続出する。
「あ、の?」
「アリス、私たちの結婚式はいつにしようか」
「ふえ?」
「子どもは何人欲しい」
「あ、あの」
「ああ、そうだ。ご両親への挨拶が先だな。そちらの都合に合わせよう。何なら今からでも構わない」
「ストーップ!」
見かねて止めたのはララだ。
「なんだ。不躾な女だな。私とアリスの邪魔をするのか。殺されても文句は言えんぞ」
「いや、文句しか出ないよ。何してんのさ。アリスが怯えてるじゃん。空気の読めない男って最悪」
「いい根性しているな。私にくってかかるとは」
「あんたが誰だろうと、アリスを怖がらせるのは許さない。まあアリスを見初めたのは見る目があるからそこは認めるけど」
「む」
「とりあえず今日は視察でしょ?今社長呼ぶから。アリスと話したいならやることやってから。ちゃんとしていない男にウチのアリスは任せられないなあ」
「む、わかった。アリス、では仕事が終わったら食事に行こう。何時に終わる」
「えっと、五時です」
「わかった。待っていてくれ。すぐに終わらせてくる。必ず迎えに来るから」
「は、はい、かしこまりました」
握られた手を離そうとやんわり引こうとするが、微動だにしない。すぐに終わらせて迎えに来ると言っていたはずだが。熱のこもった目がアリスを捉えて離さない。アリスは困ったように笑う。
「そんな愛らしく笑うな。心配で離れられなくなるだろう」
手の甲に、指先に、手首に何度もキスを落とす。
「もう早く行きなよ。アリスを困らせるなって言ったばっかじゃん」
「アリス。アリスはいつからここで受付をしているんだ」
「もう直三年になります」
「その間この愛らしい顔を有象無象に見せていたわけか。この会社潰すか」
「はあ?そのお陰でディレイガルドはアリスに会えたんでしょ?感謝こそすれ、怒るのは違うでしょ。バカなの?」
「む。確かに。では潰すのは止めよう。だがもうここで働かせるわけにはいかん。危険すぎる」
「ねー。ディレイガルドみたいなストーカーが今まで出没しなくて良かったよ。でもアリスと働けなくなるのは許可できないなー。アリスも私と一緒にいたいよね?」
「アリスは私といるからおまえはいらん。今まで守ってくれたことには感謝する」
「勝手が過ぎるよ!そういうのアリス嫌いだから!ディレイガルド嫌われるから!」
「何だと!アリス、私が嫌いか?私は私のすべてでアリスを愛している。頼む、嫌いだなどと言わないでくれ。望むものはすべてアリスの手に」
「重い重い重いよ!」
「これはディレイガルド様。お待ちしておりました」
エリアストがララとバトルしていると、ヨシュアが迎えに降りてきた。
「我が社の受付が、何か失礼を?」
顔色の悪くなるヨシュアに、エリアストは冷たい目を向けた。
「アリスを受付嬢にしたのはおまえか」
何かをするならララだと思っていたヨシュアは、アリスの名前に酷く驚く。
「はい、左様でございます。何か問題がございましたか?」
「問題しかない」
ヨシュアは硬直した。何をしてしまったのか。続くエリアストの言葉に、さらにヨシュアは混乱した。
「こんなにも愛らしいアリスを衆目に晒すなど、気がふれているのか。今までよく無事だったものだ。私と出会わせてくれたことは僥倖であったが、正気の沙汰とは思えん人事だ。よってアリスは私の専属とする。いついかなる時も私の隣にいれば間違いない。なあ、そうだろう、アリス」
「え、あ、はい」
「ちょっと、アリス!よくわからないままに返事しちゃダメだよ!ディレイガルドなんてその最たるものじゃん!」
「え?え?」
「良かった。アリスも同じ気持ちでいてくれた。新婚旅行はどこがいい」
「え?え?」
「そうだ、エルシィ、なんてどうだ。私だけのアリスの愛称だ」
「だーかーらー!勝手に話を進めるなって!」
「だがおまえならわかるだろう。この愛らしさは罪だ。どこかに閉じ込めないと危険で仕方がない」
「それには同意だけど!」
同意なんだ。どんどん収集がつかなくなっている。周囲はどうしていいかわからず見守るしかできない。そんなカオスに舞い降りた天使。
「あの、そろそろお昼休憩です。みなさんでお昼を食べながらお話しませんか」
マイペースアリス嬢、グッジョブ。
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