57 / 68
番外編
体育祭
しおりを挟む
同じ学園に通っていたら、というどうしようもないアホなお話です。
なにも考えずにお読みください。
*~*~*~*~*
「さあ今年もやって参りました体育祭!実況を務めますのは私、ディレイガルド公爵家当主です!たくさんの血と汗を流してくださいねー!」
良く晴れた秋空の下、紅白対抗体育祭が幕を開けた。
「最初の種目はお馴染み玉入れ!最初に持ってくる種目じゃないなあ。さあ張り切って詰め込んでね!」
ボソリと呟かれたものも、マイクを持っていれば拾ってしまう。とりあえずみんな気にせず配置につく。
審判のかけ声と共に、一斉に競技が開始された。
「ディレイガルド!この勝負は私がもらったよ!これでMVP取ってアリス嬢に褒めてもらうんだから!」
「おおーっと、大量の玉を抱えたララ殿下!凄まじいスピードで籠に目がけて投げています!だが残念!コントロールが悪すぎる!」
「殿下!もういいから玉拾って!オレがやった方がマシ!」
「ここで見かねたシャール隊長からのストップがかかる!さあ、対する紅組はー?!」
「面倒だな。もっと低ければ楽なんだがな」
決して大きくはないエリアストの声に、籠を支える二人の肩が揺れた。そーっと籠が斜めになっていく。
「あーっ!ずるいぞ、卑怯者め!」
ララがエリアストに向かって玉を投げる。ノーコンなので当たらない。手当たり次第投げるララに、シャールの罵声が飛ぶ。
「殿下バカなの?!玉なくなっちゃうじゃん!次やったらバリカンで逆モヒカンにするから!」
ちなみに逆モヒカンとは、モヒカンは頭の真ん中の髪を残すのに対し、その反対、真ん中のみを剃る。落ち武者っぽくなる。
そうして無情にも終了の笛が鳴った。
「あっはっはっは!数えるまでもなく紅の勝ちだねえ。籠いっぱいだ。さあ、どっちが勝ったかな?!」
だから聞こえてるって。というみんなの心のツッコミは置いておく。当然軍配は紅。
「さあお次は綱引きだよ!甘やかされたお貴族様には縄を持つことすら出来ないよね!平民たちの独壇場だ!普段見せ場なんてないから今回ばかりは輝いちゃうよ!準備はいいかな?!」
余計な言葉だらけだ。競技に入る前から意気消沈しちゃってるよ。何とか気を取り直してスタート。
エリアストが玉入れを口実に、疲れたとアリスに抱きついて英気を養っている間に、綱引きはまたも紅に軍配が上がる。
「次は障害物競走だよ!なんと今回この種目!我らがアリス嬢が出場です!まさかアリス嬢が怪我をするようなことはないよね?絶対安全だよねぇ?」
まさかの実況からの脅し。アリスのコースから障害物が取り除かれていく。ディレイガルド家の使用人や護衛という名の影たちが、アリスのコースを花道のように囲っていく。エリアストがアリスの手を取るエスコート付だ。そして謎の拍手喝采。白組の一部からブーイング。
「なんでだよー!アリス嬢はいいとしてこれじゃあ競技にならないじゃないかー!」
「殿下。世は無常なのです」
「今そんな話してないよ、レンフィ!」
「殿下ー、無駄無駄無駄無駄。目の前のことを粛々と熟しましょーや。応援です。レンフィー殿がんばー」
「まあまー、ぱあぱー」
「ここで白組サイドから紅組へのエールが送られたぞー!」
「マアル!私も!私も頑張るから!私にも!」
ヨシュアが懸命にアピールする。
「まあまー、ぱあぱー、にーたまー」
「ふぐうっ、ついでのようだがいい!頑張る!マアルに勝利を!ぎゃわー!」
ネットの下をくぐり抜けるところで、ヨシュアの悲鳴。
「おお、これはヨシュア殿下大変だー!地面には撒き菱が敷き詰められているぞ!さあ、たくさんの血を流すがいい!」
「なんで私のところだけー?!」
何と言うことはない。先に辿り着いた者たちが、撒き菱を空いているコースへ追いやった結果だ。つまりヨシュアはビリ。
「まあ、公の場で大きく口を開けるなどはしたない。ナイフとフォークをお持ちなさい」
パンがぶら下がっているゾーンで、レンフィは顔を顰める。手でパンを外すと、椅子とテーブルも用意させ、優雅に食す。
「さすが王女付きの女官!所作が美しいですね。そういう競技ではありませんが、淑女の鑑ということで認めましょう」
レンフィの行動に、他の競技者も、食べなきゃダメ?かな?と席についてお口をもぐもぐ。やっと辿り着いたヨシュアもさすが王族。美しく食した。
ちなみにアリスとエリアストはとっくにゴールをして、優雅にティータイム中だ。
最後の障害は紙に書かれたお題のものを持ってゴールだ。
「殿下、共にいらしてください」
ララを連れてゴールをしたレンフィのお題は、大切な人、だった。
他の者たちもわらわらとお題を求めて散っていく。ヨシュアのお題は。
「ファナトラタ嬢、一緒に」
「貴様の国はこの国との戦争を希望か」
ブリザードが吹き荒れた。
「ひえええええ、だ、だって、お題、当てはまる、知らない」
泣きながらヨシュアは片言で伝える。
お題を見て、エリアストは考える。
「では私が行こう」
「え゛?!」
ヨシュアはエリアストを連れてゴールをした。お題を審判に見せると、審判は何度かエリアストとお題を見てしまう。
「ご、ゴール、です」
認められた。認めないわけにはいかないだろう。認めたくなくとも。
穏やかな人
お題にはそう書かれていた。
着々と競技は進む。
「なんか血に塗れなくてつまらないなあ。次はもっと刺激的な、あ、私がプロデュースしよう。そうすれば血湧き肉躍る体育祭になるな」
マイクを切ろう。マイクを切ろう、ディレイガルド公爵よ。そして血湧き肉躍るのは恐らくあなただけでしょう。やる側はやべーことにしかならない。絶対。
そして最後の種目となった。
「泣いても笑っても最後だよー!種目はカクテルリレー!男女混合四人一組のリレーだよ!このリレーは特別仕様!一位を取ったチームには女神からの祝福が待っている!女神はもちろん、我らがアリス嬢!!さあ、女神の祝福を受け取れる幸運の持ち主は誰だ?!」
紅白各二チームずつのカクテルリレー。白組の一組、アンカーはエリアスト。
ゆったり歩くエリアストを追い抜くことを誰が出来よう。いいや、誰にも出来はしない。もしもエリアストのチームより順位が上だった場合、アンカーは全力で逆走しなくては。
ゴクリ。
最早リレーをやる意味がわからない。
「さあ女神から出場選手にひと言!アリス嬢、お願いします!」
「エル様、がんばってください」
「はーい、ありがとうございましたー!」
ファナトラタ嬢…。
いろいろ複雑だった。
「アリス嬢!私にも!私にもー!」
ララがブンブンと手を振る。アリスはその手にそっと振り返した。
「わーい!これでディレイガルドをこてんぱんだよ!」
最後の競技が始まった。
実質エリアストとララの一騎打ち。二人は同時にバトンを受け取る。しかしエリアストはバトンの受け渡しがわからず立ち止まったまま受け取る。
「あ、あの、お願いいたします」
第三走者が捧げるようにエリアストに渡した。
「ははーん、お先だよー、ディレイガルドー!」
「ふむ。これを持って走れば良いのだな」
「はい、お願いいたします」
エリアストは前を行くララを見た。
「何人たりとも私の前は走らせん!」
ギラリと目を光らせたエリアスト。信じられない速度でララに迫る。
「ひぎゃっ?!怖あっ!」
ララが涙目で飛び上がる。
「エルシィは誰にも渡さん!!」
そのままゴールをぶっちぎり、実況席のアリスのところに突っ込んだ。
ひとつも息切れをしていないエリアストがアリスを抱きしめながらゆらりとディレイガルド公爵の前に立つ。
「父上。アリスの隣に座っているのは感心しませんね」
「ええ?隣もダメなの?」
「出来れば視界に入らないでください」
「ひどいな、この息子」
紅組の圧勝で、体育祭は幕を閉じた。
*おしまい*
次話は 江戸時代風 のパロディーになります。
よろしかったらお付き合いください。
ちなみにパンを食べるマナーとして、ナイフとフォークは使いません。
なにも考えずにお読みください。
*~*~*~*~*
「さあ今年もやって参りました体育祭!実況を務めますのは私、ディレイガルド公爵家当主です!たくさんの血と汗を流してくださいねー!」
良く晴れた秋空の下、紅白対抗体育祭が幕を開けた。
「最初の種目はお馴染み玉入れ!最初に持ってくる種目じゃないなあ。さあ張り切って詰め込んでね!」
ボソリと呟かれたものも、マイクを持っていれば拾ってしまう。とりあえずみんな気にせず配置につく。
審判のかけ声と共に、一斉に競技が開始された。
「ディレイガルド!この勝負は私がもらったよ!これでMVP取ってアリス嬢に褒めてもらうんだから!」
「おおーっと、大量の玉を抱えたララ殿下!凄まじいスピードで籠に目がけて投げています!だが残念!コントロールが悪すぎる!」
「殿下!もういいから玉拾って!オレがやった方がマシ!」
「ここで見かねたシャール隊長からのストップがかかる!さあ、対する紅組はー?!」
「面倒だな。もっと低ければ楽なんだがな」
決して大きくはないエリアストの声に、籠を支える二人の肩が揺れた。そーっと籠が斜めになっていく。
「あーっ!ずるいぞ、卑怯者め!」
ララがエリアストに向かって玉を投げる。ノーコンなので当たらない。手当たり次第投げるララに、シャールの罵声が飛ぶ。
「殿下バカなの?!玉なくなっちゃうじゃん!次やったらバリカンで逆モヒカンにするから!」
ちなみに逆モヒカンとは、モヒカンは頭の真ん中の髪を残すのに対し、その反対、真ん中のみを剃る。落ち武者っぽくなる。
そうして無情にも終了の笛が鳴った。
「あっはっはっは!数えるまでもなく紅の勝ちだねえ。籠いっぱいだ。さあ、どっちが勝ったかな?!」
だから聞こえてるって。というみんなの心のツッコミは置いておく。当然軍配は紅。
「さあお次は綱引きだよ!甘やかされたお貴族様には縄を持つことすら出来ないよね!平民たちの独壇場だ!普段見せ場なんてないから今回ばかりは輝いちゃうよ!準備はいいかな?!」
余計な言葉だらけだ。競技に入る前から意気消沈しちゃってるよ。何とか気を取り直してスタート。
エリアストが玉入れを口実に、疲れたとアリスに抱きついて英気を養っている間に、綱引きはまたも紅に軍配が上がる。
「次は障害物競走だよ!なんと今回この種目!我らがアリス嬢が出場です!まさかアリス嬢が怪我をするようなことはないよね?絶対安全だよねぇ?」
まさかの実況からの脅し。アリスのコースから障害物が取り除かれていく。ディレイガルド家の使用人や護衛という名の影たちが、アリスのコースを花道のように囲っていく。エリアストがアリスの手を取るエスコート付だ。そして謎の拍手喝采。白組の一部からブーイング。
「なんでだよー!アリス嬢はいいとしてこれじゃあ競技にならないじゃないかー!」
「殿下。世は無常なのです」
「今そんな話してないよ、レンフィ!」
「殿下ー、無駄無駄無駄無駄。目の前のことを粛々と熟しましょーや。応援です。レンフィー殿がんばー」
「まあまー、ぱあぱー」
「ここで白組サイドから紅組へのエールが送られたぞー!」
「マアル!私も!私も頑張るから!私にも!」
ヨシュアが懸命にアピールする。
「まあまー、ぱあぱー、にーたまー」
「ふぐうっ、ついでのようだがいい!頑張る!マアルに勝利を!ぎゃわー!」
ネットの下をくぐり抜けるところで、ヨシュアの悲鳴。
「おお、これはヨシュア殿下大変だー!地面には撒き菱が敷き詰められているぞ!さあ、たくさんの血を流すがいい!」
「なんで私のところだけー?!」
何と言うことはない。先に辿り着いた者たちが、撒き菱を空いているコースへ追いやった結果だ。つまりヨシュアはビリ。
「まあ、公の場で大きく口を開けるなどはしたない。ナイフとフォークをお持ちなさい」
パンがぶら下がっているゾーンで、レンフィは顔を顰める。手でパンを外すと、椅子とテーブルも用意させ、優雅に食す。
「さすが王女付きの女官!所作が美しいですね。そういう競技ではありませんが、淑女の鑑ということで認めましょう」
レンフィの行動に、他の競技者も、食べなきゃダメ?かな?と席についてお口をもぐもぐ。やっと辿り着いたヨシュアもさすが王族。美しく食した。
ちなみにアリスとエリアストはとっくにゴールをして、優雅にティータイム中だ。
最後の障害は紙に書かれたお題のものを持ってゴールだ。
「殿下、共にいらしてください」
ララを連れてゴールをしたレンフィのお題は、大切な人、だった。
他の者たちもわらわらとお題を求めて散っていく。ヨシュアのお題は。
「ファナトラタ嬢、一緒に」
「貴様の国はこの国との戦争を希望か」
ブリザードが吹き荒れた。
「ひえええええ、だ、だって、お題、当てはまる、知らない」
泣きながらヨシュアは片言で伝える。
お題を見て、エリアストは考える。
「では私が行こう」
「え゛?!」
ヨシュアはエリアストを連れてゴールをした。お題を審判に見せると、審判は何度かエリアストとお題を見てしまう。
「ご、ゴール、です」
認められた。認めないわけにはいかないだろう。認めたくなくとも。
穏やかな人
お題にはそう書かれていた。
着々と競技は進む。
「なんか血に塗れなくてつまらないなあ。次はもっと刺激的な、あ、私がプロデュースしよう。そうすれば血湧き肉躍る体育祭になるな」
マイクを切ろう。マイクを切ろう、ディレイガルド公爵よ。そして血湧き肉躍るのは恐らくあなただけでしょう。やる側はやべーことにしかならない。絶対。
そして最後の種目となった。
「泣いても笑っても最後だよー!種目はカクテルリレー!男女混合四人一組のリレーだよ!このリレーは特別仕様!一位を取ったチームには女神からの祝福が待っている!女神はもちろん、我らがアリス嬢!!さあ、女神の祝福を受け取れる幸運の持ち主は誰だ?!」
紅白各二チームずつのカクテルリレー。白組の一組、アンカーはエリアスト。
ゆったり歩くエリアストを追い抜くことを誰が出来よう。いいや、誰にも出来はしない。もしもエリアストのチームより順位が上だった場合、アンカーは全力で逆走しなくては。
ゴクリ。
最早リレーをやる意味がわからない。
「さあ女神から出場選手にひと言!アリス嬢、お願いします!」
「エル様、がんばってください」
「はーい、ありがとうございましたー!」
ファナトラタ嬢…。
いろいろ複雑だった。
「アリス嬢!私にも!私にもー!」
ララがブンブンと手を振る。アリスはその手にそっと振り返した。
「わーい!これでディレイガルドをこてんぱんだよ!」
最後の競技が始まった。
実質エリアストとララの一騎打ち。二人は同時にバトンを受け取る。しかしエリアストはバトンの受け渡しがわからず立ち止まったまま受け取る。
「あ、あの、お願いいたします」
第三走者が捧げるようにエリアストに渡した。
「ははーん、お先だよー、ディレイガルドー!」
「ふむ。これを持って走れば良いのだな」
「はい、お願いいたします」
エリアストは前を行くララを見た。
「何人たりとも私の前は走らせん!」
ギラリと目を光らせたエリアスト。信じられない速度でララに迫る。
「ひぎゃっ?!怖あっ!」
ララが涙目で飛び上がる。
「エルシィは誰にも渡さん!!」
そのままゴールをぶっちぎり、実況席のアリスのところに突っ込んだ。
ひとつも息切れをしていないエリアストがアリスを抱きしめながらゆらりとディレイガルド公爵の前に立つ。
「父上。アリスの隣に座っているのは感心しませんね」
「ええ?隣もダメなの?」
「出来れば視界に入らないでください」
「ひどいな、この息子」
紅組の圧勝で、体育祭は幕を閉じた。
*おしまい*
次話は 江戸時代風 のパロディーになります。
よろしかったらお付き合いください。
ちなみにパンを食べるマナーとして、ナイフとフォークは使いません。
31
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
【完結】溺愛婚約者の裏の顔 ~そろそろ婚約破棄してくれませんか~
瀬里
恋愛
(なろうの異世界恋愛ジャンルで日刊7位頂きました)
ニナには、幼い頃からの婚約者がいる。
3歳年下のティーノ様だ。
本人に「お前が行き遅れになった頃に終わりだ」と宣言されるような、典型的な「婚約破棄前提の格差婚約」だ。
行き遅れになる前に何とか婚約破棄できないかと頑張ってはみるが、うまくいかず、最近ではもうそれもいいか、と半ばあきらめている。
なぜなら、現在16歳のティーノ様は、匂いたつような色香と初々しさとを併せ持つ、美青年へと成長してしまったのだ。おまけに人前では、誰もがうらやむような溺愛ぶりだ。それが偽物だったとしても、こんな風に夢を見させてもらえる体験なんて、そうそうできやしない。
もちろん人前でだけで、裏ではひどいものだけど。
そんな中、第三王女殿下が、ティーノ様をお気に召したらしいという噂が飛び込んできて、あきらめかけていた婚約破棄がかなうかもしれないと、ニナは行動を起こすことにするのだが――。
全7話の短編です 完結確約です。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる