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学園編
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公爵家三男のやらかしから一月も経たず、その公爵家は伯爵位へ降格された。公爵家の降格など、恥曝しもいいところであった。更に三男は貴族位剥奪の上、強制労働所へ収監された。
学園側は、コトの顛末を見ていた学生たちから聴取し、包み隠さず両家へ伝えた。
三男はアリスを侮辱した。エリアストを貶めるためだけに、アリスを侮辱したのだ。
筆頭公爵家は使用人も含むすべてが、アリスを崇拝している。問題児のエリアストを人にしてくれた、ひいては筆頭公爵家を守ってくれた大恩ある令嬢なのだ。そのアリス嬢を!筆頭公爵家一同、腕によりをかけて潰しましょう。エリアストの行動は正しい。やり過ぎだって?命がある時点で御の字だろう。その命だって誰のおかげであると思っている。アリス嬢に感謝しろ崇拝しろ崇め奉れ。三男に非があるだけで、公爵家は関係ないなんて考えるなよ。止められなかった時点で家の責任だ。貴族の爵位を残してやっただけありがたいと思え。という筆頭公爵家一同の全勢力を傾けた結果が、降格であった。
アリスがあの日学園前にいたのは、本当に偶然だった。エリアストにも説明した通り、孤児院の帰りだった。学園側では止められないと判断した教師たちが、急ぎディレイガルド公爵家へ向かおうと、馬を走らせたところ、門前にファナトラタ伯爵家の家紋付き馬車が止まっていることに気付いた。エリアストの婚約者の噂を聞いていた教師は、急ぎその馬車に声をかけたのだ。結果、噂は事実であり、アリスはエリアストの元へ駆けつけてくれたのだ。
いくら筆頭公爵家の嫡男とは言え、さすがに公衆の面前で人を殺めてお咎めナシとはいかない。況して貴族が犠牲者であれば、相手の家だって黙っていない。今までの過剰な行為が見過ごされていたのは、爵位に守られたものであることは間違いない。相手が訴えなければ、それはなかったこととして処理される。筆頭公爵家にケンカを売る貴族など、無いに等しい。
この出来事から、アリス・コーサ・ファナトラタは、禁忌とされる。災いを招く厄災の意味と、災いを退ける神の如くという相反する二つの意味で。エリアストを魔王にするも人にするも、アリスの意思とは関係なく彼女次第である、と。
*小話を挟んで7へつづく*
ディレイガルドは人を殺めることも実は容認されています。ですが、表立ってやってしまうと、表向きは罰せざるを得ません。過剰な行為が見過ごされていた、筆頭公爵家にケンカは売れない、というのは、世間一般の意見です。ディレイガルドの実態を知るのは王家のみです。
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