15 / 68
学園編
6
しおりを挟む
公爵家三男のやらかしから一月も経たず、その公爵家は伯爵位へ降格された。公爵家の降格など、恥曝しもいいところであった。更に三男は貴族位剥奪の上、強制労働所へ収監された。
学園側は、コトの顛末を見ていた学生たちから聴取し、包み隠さず両家へ伝えた。
三男はアリスを侮辱した。エリアストを貶めるためだけに、アリスを侮辱したのだ。
筆頭公爵家は使用人も含むすべてが、アリスを崇拝している。問題児のエリアストを人にしてくれた、ひいては筆頭公爵家を守ってくれた大恩ある令嬢なのだ。そのアリス嬢を!筆頭公爵家一同、腕によりをかけて潰しましょう。エリアストの行動は正しい。やり過ぎだって?命がある時点で御の字だろう。その命だって誰のおかげであると思っている。アリス嬢に感謝しろ崇拝しろ崇め奉れ。三男に非があるだけで、公爵家は関係ないなんて考えるなよ。止められなかった時点で家の責任だ。貴族の爵位を残してやっただけありがたいと思え。という筆頭公爵家一同の全勢力を傾けた結果が、降格であった。
アリスがあの日学園前にいたのは、本当に偶然だった。エリアストにも説明した通り、孤児院の帰りだった。学園側では止められないと判断した教師たちが、急ぎディレイガルド公爵家へ向かおうと、馬を走らせたところ、門前にファナトラタ伯爵家の家紋付き馬車が止まっていることに気付いた。エリアストの婚約者の噂を聞いていた教師は、急ぎその馬車に声をかけたのだ。結果、噂は事実であり、アリスはエリアストの元へ駆けつけてくれたのだ。
いくら筆頭公爵家の嫡男とは言え、さすがに公衆の面前で人を殺めてお咎めナシとはいかない。況して貴族が犠牲者であれば、相手の家だって黙っていない。今までの過剰な行為が見過ごされていたのは、爵位に守られたものであることは間違いない。相手が訴えなければ、それはなかったこととして処理される。筆頭公爵家にケンカを売る貴族など、無いに等しい。
この出来事から、アリス・コーサ・ファナトラタは、禁忌とされる。災いを招く厄災の意味と、災いを退ける神の如くという相反する二つの意味で。エリアストを魔王にするも人にするも、アリスの意思とは関係なく彼女次第である、と。
*小話を挟んで7へつづく*
ディレイガルドは人を殺めることも実は容認されています。ですが、表立ってやってしまうと、表向きは罰せざるを得ません。過剰な行為が見過ごされていた、筆頭公爵家にケンカは売れない、というのは、世間一般の意見です。ディレイガルドの実態を知るのは王家のみです。
学園側は、コトの顛末を見ていた学生たちから聴取し、包み隠さず両家へ伝えた。
三男はアリスを侮辱した。エリアストを貶めるためだけに、アリスを侮辱したのだ。
筆頭公爵家は使用人も含むすべてが、アリスを崇拝している。問題児のエリアストを人にしてくれた、ひいては筆頭公爵家を守ってくれた大恩ある令嬢なのだ。そのアリス嬢を!筆頭公爵家一同、腕によりをかけて潰しましょう。エリアストの行動は正しい。やり過ぎだって?命がある時点で御の字だろう。その命だって誰のおかげであると思っている。アリス嬢に感謝しろ崇拝しろ崇め奉れ。三男に非があるだけで、公爵家は関係ないなんて考えるなよ。止められなかった時点で家の責任だ。貴族の爵位を残してやっただけありがたいと思え。という筆頭公爵家一同の全勢力を傾けた結果が、降格であった。
アリスがあの日学園前にいたのは、本当に偶然だった。エリアストにも説明した通り、孤児院の帰りだった。学園側では止められないと判断した教師たちが、急ぎディレイガルド公爵家へ向かおうと、馬を走らせたところ、門前にファナトラタ伯爵家の家紋付き馬車が止まっていることに気付いた。エリアストの婚約者の噂を聞いていた教師は、急ぎその馬車に声をかけたのだ。結果、噂は事実であり、アリスはエリアストの元へ駆けつけてくれたのだ。
いくら筆頭公爵家の嫡男とは言え、さすがに公衆の面前で人を殺めてお咎めナシとはいかない。況して貴族が犠牲者であれば、相手の家だって黙っていない。今までの過剰な行為が見過ごされていたのは、爵位に守られたものであることは間違いない。相手が訴えなければ、それはなかったこととして処理される。筆頭公爵家にケンカを売る貴族など、無いに等しい。
この出来事から、アリス・コーサ・ファナトラタは、禁忌とされる。災いを招く厄災の意味と、災いを退ける神の如くという相反する二つの意味で。エリアストを魔王にするも人にするも、アリスの意思とは関係なく彼女次第である、と。
*小話を挟んで7へつづく*
ディレイガルドは人を殺めることも実は容認されています。ですが、表立ってやってしまうと、表向きは罰せざるを得ません。過剰な行為が見過ごされていた、筆頭公爵家にケンカは売れない、というのは、世間一般の意見です。ディレイガルドの実態を知るのは王家のみです。
109
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
貧乏伯爵令嬢は従姉に代わって公爵令嬢として結婚します。
しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ソレーユは伯父であるタフレット公爵の温情により、公爵家から学園に通っていた。
ソレーユは結婚を諦めて王宮で侍女になるために学園を卒業することは必須であった。
同い年の従姉であるローザリンデは、王宮で侍女になるよりも公爵家に嫁ぐ自分の侍女になればいいと嫌がらせのように侍女の仕事を与えようとする。
しかし、家族や人前では従妹に優しい令嬢を演じているため、横暴なことはしてこなかった。
だが、侍女になるつもりのソレーユに王太子の側妃になる話が上がったことを知ったローザリンデは自分よりも上の立場になるソレーユが許せなくて。
立場を入れ替えようと画策したローザリンデよりソレーユの方が幸せになるお話です。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる