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デビュタント編
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新章開始です。相変わらず残酷な表現があります。苦手な方はこのまま閉じてください。
ご都合主義に進みますので、笑って許して下さるとありがたいです。
*~*~*~*~*
この国には王子が三人、王女が一人いる。
王太子ディアンは現在二十五歳。結婚をして子どもが三人。第二王子メラルディは現在二十三歳。こちらも結婚をして双子の子どもがいる。第三王子カルセドは現在二十二歳。妻は現在妊娠八ヶ月だ。王女サーフィアは少し年が離れ、現在十四歳。婚約者はまだいない。
王太子と第二王子は正妃の子であったが、第三王子と王女は側妃の子であった。
少し遅くに出来たことと、唯一の王女だったため、王はいたく可愛がっていた。
「父上、今年のデビュタント、少々懸念がございます」
晩餐の時間、家族が集まる中、ディアンが言った。
「ディレイガルドか」
王の言葉に、みんなの動きが止まる。
ディレイガルド。この国最古の貴族であり、最も権威ある貴族。裏と表、どちらの顔も、この国になくてはならない最重要貴族。国への貢献は計り知れず、王家との婚姻すら霞んでしまうほどの、陰の支配者であった。王家に取って代わらないのは、ディレイガルドは国に興味がないからだ。内政も外交も守護も、趣味の範疇。国は遊び場。その遊び場で、楽しく心地よく遊びたいから、その地位を守っているに過ぎない。
「ファナトラタ家の娘と婚約を結んで、だいぶ大人しくなったと聞いていますが」
学園でのことが耳に入っている王家。メラルディがそう言うと、王が頷いた。
「うむ。その者にしっかり手綱を握っていてもらえば問題あるまい」
王家はディレイガルド公爵家のことは知っていた。
だが、エリアストのことは知らなかった。
「ねぇ、マージ。今日の晩餐で話のあったディレイガルド家って、そんなにすごい貴族なの?」
「そうですよ、サーフィア殿下。この国で一番偉い貴族です」
サーフィアは、マナーやダンスは及第点だが、あまり勉強が出来る方ではなかった。苦手故、勉強の時間になるとよく逃げ出していた。そのためますます苦手になっていく。三人の兄たちも、あの手この手で克服させようとするが、効果がない。
「歴代の宰相、法相、外相などには、いずれかに必ず名を連ねています。宰相とは国民をより良く導くためにどうするのかを考える一番偉い人です。法相とは国民に困ったことや災いが降りかからないようルールを考える一番偉い人です。外相とは国民とこの国以外の人間が仲良くなれるよう考える一番偉い人です」
そんなサーフィアに、女官マージは根気よく付き合っていた。
「そう。その息子の、何が問題なの?」
「とても冷たい人だと伺っております」
「冷たい?」
「はい。ディレイガルド公爵令息様に触れられるのは、触れていいのは、ご婚約者様のみと伺っております。それ以外の者が触れようとすると、首を切られるとか」
「ひえっ」
「実際にそのようなことで首を切ったら大変なことになりますので、誇張、大袈裟に言っているだけでしょう。ですが、そういう噂が流れるほどには冷酷な方だと」
マージの説明に、サーフィアは震える。
「そんな方の婚約者だなんて、その婚約者は大丈夫なのかしら?」
「うまくやっているようですよ」
「そう。何だかお気の毒ね。わたくしだったら、そんな怖い方は嫌だわ。とっても優しくて、とっても紳士で、とーっても素敵な方がいいわ」
サーフィアは夢見る少女であった。
*つづく*
ご都合主義に進みますので、笑って許して下さるとありがたいです。
*~*~*~*~*
この国には王子が三人、王女が一人いる。
王太子ディアンは現在二十五歳。結婚をして子どもが三人。第二王子メラルディは現在二十三歳。こちらも結婚をして双子の子どもがいる。第三王子カルセドは現在二十二歳。妻は現在妊娠八ヶ月だ。王女サーフィアは少し年が離れ、現在十四歳。婚約者はまだいない。
王太子と第二王子は正妃の子であったが、第三王子と王女は側妃の子であった。
少し遅くに出来たことと、唯一の王女だったため、王はいたく可愛がっていた。
「父上、今年のデビュタント、少々懸念がございます」
晩餐の時間、家族が集まる中、ディアンが言った。
「ディレイガルドか」
王の言葉に、みんなの動きが止まる。
ディレイガルド。この国最古の貴族であり、最も権威ある貴族。裏と表、どちらの顔も、この国になくてはならない最重要貴族。国への貢献は計り知れず、王家との婚姻すら霞んでしまうほどの、陰の支配者であった。王家に取って代わらないのは、ディレイガルドは国に興味がないからだ。内政も外交も守護も、趣味の範疇。国は遊び場。その遊び場で、楽しく心地よく遊びたいから、その地位を守っているに過ぎない。
「ファナトラタ家の娘と婚約を結んで、だいぶ大人しくなったと聞いていますが」
学園でのことが耳に入っている王家。メラルディがそう言うと、王が頷いた。
「うむ。その者にしっかり手綱を握っていてもらえば問題あるまい」
王家はディレイガルド公爵家のことは知っていた。
だが、エリアストのことは知らなかった。
「ねぇ、マージ。今日の晩餐で話のあったディレイガルド家って、そんなにすごい貴族なの?」
「そうですよ、サーフィア殿下。この国で一番偉い貴族です」
サーフィアは、マナーやダンスは及第点だが、あまり勉強が出来る方ではなかった。苦手故、勉強の時間になるとよく逃げ出していた。そのためますます苦手になっていく。三人の兄たちも、あの手この手で克服させようとするが、効果がない。
「歴代の宰相、法相、外相などには、いずれかに必ず名を連ねています。宰相とは国民をより良く導くためにどうするのかを考える一番偉い人です。法相とは国民に困ったことや災いが降りかからないようルールを考える一番偉い人です。外相とは国民とこの国以外の人間が仲良くなれるよう考える一番偉い人です」
そんなサーフィアに、女官マージは根気よく付き合っていた。
「そう。その息子の、何が問題なの?」
「とても冷たい人だと伺っております」
「冷たい?」
「はい。ディレイガルド公爵令息様に触れられるのは、触れていいのは、ご婚約者様のみと伺っております。それ以外の者が触れようとすると、首を切られるとか」
「ひえっ」
「実際にそのようなことで首を切ったら大変なことになりますので、誇張、大袈裟に言っているだけでしょう。ですが、そういう噂が流れるほどには冷酷な方だと」
マージの説明に、サーフィアは震える。
「そんな方の婚約者だなんて、その婚約者は大丈夫なのかしら?」
「うまくやっているようですよ」
「そう。何だかお気の毒ね。わたくしだったら、そんな怖い方は嫌だわ。とっても優しくて、とっても紳士で、とーっても素敵な方がいいわ」
サーフィアは夢見る少女であった。
*つづく*
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