15 / 17
番外編 狂愛3
しおりを挟む
「では、誓いの証として、その目を私に捧げよ」
「何という誉れ。喜んで奉ります」
元よりすべてをジュエルにもらってもらうのだ。躊躇いなく、喜々として己の目に爪を立てようとすると、ジュエルが止めた。
「待て待て。何だか危ない手つきだな。折角の目に傷がついてしまう。それは私のモノだ。粗雑に扱うことは許さん。ここへ」
差し伸べられた手に誘われ、恍惚とカインはジュエルの側に跪く。ジュエルの手が、カインの顎に添えられ上向かせられる。それだけで、カインの全身が快感に支配された。その美しい指が、カインの目に手をかける。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ」
痛みはもちろんある。だが、それ以上の凄まじい快感に、はしたない声を上げてしまう。ビクビクと跳ねる体を止められない。
「ククッ。感じているのか」
血に塗れた指先が、カインの眼球を翳している。何度かふにふにと弄ぶと、見せつけるようにそれにくちづけた。カインは、あまりのことに気を失った。
人生で、間違いなく一番幸せだった。
………
……
…
目覚めたカインは、ベッドに寝かされていた。ジュエルが側にいることに気付き、慌てて起き上がると、床に平伏した。
「よい。顔を上げよ」
側に跪かれ、スルリと頬を撫でられる。
「あ、あ、覇王、様、私如きのために、その尊き御御足をつかれるなど、あってはなりません」
側にいる至福よりも、頬を撫でられた得も言われぬ快感よりも、敬愛して止まない覇王ジュエルが、自分如きのために膝をついていることに、全身を震わせる。
その尊い体に触れて良いはずもなく、カインは立ち上がるよう懇願する。
「わかったわかった。これで良いな」
なんとジュエルは、カインを抱き上げベッドに腰をかけると、さらにあろうことか、自身の膝にカインを横抱きに座らせたのだ。
カインはあまりのことに声を失い、顔色も失う。パクパクと口を開けるが、空気しか出て来ない。
「落ち着け。いいからこのまま大人しくしていろ。命令だ」
わかったな、とカインの頬を軽く引っ張る。声が出せず、全力で頷く。不敬だとわかっていても、キャパオーバーすぎて何も出来ない。
ジュエルは楽しそうにカインを見て目を細めると、その顔を近付ける。
「逃げるなよ」
言いつつ、逃がす気もないと、カインの後頭部をガッチリ押さえる。
唇が、重なった。
カインはすべての音がなくなったように感じた。
啄むようなキスは、少しずつ深くなる。気付けば舌が絡まり、互いの唾液を交わらせ、飲み込んでいた。
何が何だかわからないまま、カインはジュエルとのくちづけに翻弄された。
どのくらいそうしていただろう。
ようやく離れた頃には、カインの唇は真っ赤に熟れていた。
息の仕方もわからなくなるほどの熱に、くったりとその身をジュエルに寄りかからせていた。不敬も何も考えられない。
ふと、気付く。
涙と言い知れぬ快感に蕩ける片目が、ジュエルの左耳を飾る黒い五ミリほどの宝石が付いたピアスを捉えた。
それに気付いたジュエルは、笑う。
「ああ。私は物質を宝石に創り替えることが得意でな。故にジュエルと名乗っている」
愛おしそうな手つきで、左耳の宝石をスルリと撫でた。
「そうだ、おまえの目だ」
自分の眼球が、ジュエルの身を飾っている。ジュエルが、肌身離さず自分を身に付けている。
あまりの幸せに、眩暈がした。
*最終話へつづく*
「何という誉れ。喜んで奉ります」
元よりすべてをジュエルにもらってもらうのだ。躊躇いなく、喜々として己の目に爪を立てようとすると、ジュエルが止めた。
「待て待て。何だか危ない手つきだな。折角の目に傷がついてしまう。それは私のモノだ。粗雑に扱うことは許さん。ここへ」
差し伸べられた手に誘われ、恍惚とカインはジュエルの側に跪く。ジュエルの手が、カインの顎に添えられ上向かせられる。それだけで、カインの全身が快感に支配された。その美しい指が、カインの目に手をかける。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ」
痛みはもちろんある。だが、それ以上の凄まじい快感に、はしたない声を上げてしまう。ビクビクと跳ねる体を止められない。
「ククッ。感じているのか」
血に塗れた指先が、カインの眼球を翳している。何度かふにふにと弄ぶと、見せつけるようにそれにくちづけた。カインは、あまりのことに気を失った。
人生で、間違いなく一番幸せだった。
………
……
…
目覚めたカインは、ベッドに寝かされていた。ジュエルが側にいることに気付き、慌てて起き上がると、床に平伏した。
「よい。顔を上げよ」
側に跪かれ、スルリと頬を撫でられる。
「あ、あ、覇王、様、私如きのために、その尊き御御足をつかれるなど、あってはなりません」
側にいる至福よりも、頬を撫でられた得も言われぬ快感よりも、敬愛して止まない覇王ジュエルが、自分如きのために膝をついていることに、全身を震わせる。
その尊い体に触れて良いはずもなく、カインは立ち上がるよう懇願する。
「わかったわかった。これで良いな」
なんとジュエルは、カインを抱き上げベッドに腰をかけると、さらにあろうことか、自身の膝にカインを横抱きに座らせたのだ。
カインはあまりのことに声を失い、顔色も失う。パクパクと口を開けるが、空気しか出て来ない。
「落ち着け。いいからこのまま大人しくしていろ。命令だ」
わかったな、とカインの頬を軽く引っ張る。声が出せず、全力で頷く。不敬だとわかっていても、キャパオーバーすぎて何も出来ない。
ジュエルは楽しそうにカインを見て目を細めると、その顔を近付ける。
「逃げるなよ」
言いつつ、逃がす気もないと、カインの後頭部をガッチリ押さえる。
唇が、重なった。
カインはすべての音がなくなったように感じた。
啄むようなキスは、少しずつ深くなる。気付けば舌が絡まり、互いの唾液を交わらせ、飲み込んでいた。
何が何だかわからないまま、カインはジュエルとのくちづけに翻弄された。
どのくらいそうしていただろう。
ようやく離れた頃には、カインの唇は真っ赤に熟れていた。
息の仕方もわからなくなるほどの熱に、くったりとその身をジュエルに寄りかからせていた。不敬も何も考えられない。
ふと、気付く。
涙と言い知れぬ快感に蕩ける片目が、ジュエルの左耳を飾る黒い五ミリほどの宝石が付いたピアスを捉えた。
それに気付いたジュエルは、笑う。
「ああ。私は物質を宝石に創り替えることが得意でな。故にジュエルと名乗っている」
愛おしそうな手つきで、左耳の宝石をスルリと撫でた。
「そうだ、おまえの目だ」
自分の眼球が、ジュエルの身を飾っている。ジュエルが、肌身離さず自分を身に付けている。
あまりの幸せに、眩暈がした。
*最終話へつづく*
3
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」
ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」
美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。
夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。
さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。
政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。
「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」
果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?

王女を好きだと思ったら
夏笆(なつは)
恋愛
「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。
デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。
「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」
エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。
だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。
「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」
ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。
ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。
と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。
「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」
そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。
小説家になろうにも、掲載しています。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから
水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」
「……はい?」
子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。
だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。
「エリオット様と別れろって言っているの!」
彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。
そのせいで、私は怪我をしてしまった。
いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。
だって、彼は──。
そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

愛しているのは王女でなくて幼馴染
岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる