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番外編 狂愛3
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「では、誓いの証として、その目を私に捧げよ」
「何という誉れ。喜んで奉ります」
元よりすべてをジュエルにもらってもらうのだ。躊躇いなく、喜々として己の目に爪を立てようとすると、ジュエルが止めた。
「待て待て。何だか危ない手つきだな。折角の目に傷がついてしまう。それは私のモノだ。粗雑に扱うことは許さん。ここへ」
差し伸べられた手に誘われ、恍惚とカインはジュエルの側に跪く。ジュエルの手が、カインの顎に添えられ上向かせられる。それだけで、カインの全身が快感に支配された。その美しい指が、カインの目に手をかける。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ」
痛みはもちろんある。だが、それ以上の凄まじい快感に、はしたない声を上げてしまう。ビクビクと跳ねる体を止められない。
「ククッ。感じているのか」
血に塗れた指先が、カインの眼球を翳している。何度かふにふにと弄ぶと、見せつけるようにそれにくちづけた。カインは、あまりのことに気を失った。
人生で、間違いなく一番幸せだった。
………
……
…
目覚めたカインは、ベッドに寝かされていた。ジュエルが側にいることに気付き、慌てて起き上がると、床に平伏した。
「よい。顔を上げよ」
側に跪かれ、スルリと頬を撫でられる。
「あ、あ、覇王、様、私如きのために、その尊き御御足をつかれるなど、あってはなりません」
側にいる至福よりも、頬を撫でられた得も言われぬ快感よりも、敬愛して止まない覇王ジュエルが、自分如きのために膝をついていることに、全身を震わせる。
その尊い体に触れて良いはずもなく、カインは立ち上がるよう懇願する。
「わかったわかった。これで良いな」
なんとジュエルは、カインを抱き上げベッドに腰をかけると、さらにあろうことか、自身の膝にカインを横抱きに座らせたのだ。
カインはあまりのことに声を失い、顔色も失う。パクパクと口を開けるが、空気しか出て来ない。
「落ち着け。いいからこのまま大人しくしていろ。命令だ」
わかったな、とカインの頬を軽く引っ張る。声が出せず、全力で頷く。不敬だとわかっていても、キャパオーバーすぎて何も出来ない。
ジュエルは楽しそうにカインを見て目を細めると、その顔を近付ける。
「逃げるなよ」
言いつつ、逃がす気もないと、カインの後頭部をガッチリ押さえる。
唇が、重なった。
カインはすべての音がなくなったように感じた。
啄むようなキスは、少しずつ深くなる。気付けば舌が絡まり、互いの唾液を交わらせ、飲み込んでいた。
何が何だかわからないまま、カインはジュエルとのくちづけに翻弄された。
どのくらいそうしていただろう。
ようやく離れた頃には、カインの唇は真っ赤に熟れていた。
息の仕方もわからなくなるほどの熱に、くったりとその身をジュエルに寄りかからせていた。不敬も何も考えられない。
ふと、気付く。
涙と言い知れぬ快感に蕩ける片目が、ジュエルの左耳を飾る黒い五ミリほどの宝石が付いたピアスを捉えた。
それに気付いたジュエルは、笑う。
「ああ。私は物質を宝石に創り替えることが得意でな。故にジュエルと名乗っている」
愛おしそうな手つきで、左耳の宝石をスルリと撫でた。
「そうだ、おまえの目だ」
自分の眼球が、ジュエルの身を飾っている。ジュエルが、肌身離さず自分を身に付けている。
あまりの幸せに、眩暈がした。
*最終話へつづく*
「何という誉れ。喜んで奉ります」
元よりすべてをジュエルにもらってもらうのだ。躊躇いなく、喜々として己の目に爪を立てようとすると、ジュエルが止めた。
「待て待て。何だか危ない手つきだな。折角の目に傷がついてしまう。それは私のモノだ。粗雑に扱うことは許さん。ここへ」
差し伸べられた手に誘われ、恍惚とカインはジュエルの側に跪く。ジュエルの手が、カインの顎に添えられ上向かせられる。それだけで、カインの全身が快感に支配された。その美しい指が、カインの目に手をかける。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ」
痛みはもちろんある。だが、それ以上の凄まじい快感に、はしたない声を上げてしまう。ビクビクと跳ねる体を止められない。
「ククッ。感じているのか」
血に塗れた指先が、カインの眼球を翳している。何度かふにふにと弄ぶと、見せつけるようにそれにくちづけた。カインは、あまりのことに気を失った。
人生で、間違いなく一番幸せだった。
………
……
…
目覚めたカインは、ベッドに寝かされていた。ジュエルが側にいることに気付き、慌てて起き上がると、床に平伏した。
「よい。顔を上げよ」
側に跪かれ、スルリと頬を撫でられる。
「あ、あ、覇王、様、私如きのために、その尊き御御足をつかれるなど、あってはなりません」
側にいる至福よりも、頬を撫でられた得も言われぬ快感よりも、敬愛して止まない覇王ジュエルが、自分如きのために膝をついていることに、全身を震わせる。
その尊い体に触れて良いはずもなく、カインは立ち上がるよう懇願する。
「わかったわかった。これで良いな」
なんとジュエルは、カインを抱き上げベッドに腰をかけると、さらにあろうことか、自身の膝にカインを横抱きに座らせたのだ。
カインはあまりのことに声を失い、顔色も失う。パクパクと口を開けるが、空気しか出て来ない。
「落ち着け。いいからこのまま大人しくしていろ。命令だ」
わかったな、とカインの頬を軽く引っ張る。声が出せず、全力で頷く。不敬だとわかっていても、キャパオーバーすぎて何も出来ない。
ジュエルは楽しそうにカインを見て目を細めると、その顔を近付ける。
「逃げるなよ」
言いつつ、逃がす気もないと、カインの後頭部をガッチリ押さえる。
唇が、重なった。
カインはすべての音がなくなったように感じた。
啄むようなキスは、少しずつ深くなる。気付けば舌が絡まり、互いの唾液を交わらせ、飲み込んでいた。
何が何だかわからないまま、カインはジュエルとのくちづけに翻弄された。
どのくらいそうしていただろう。
ようやく離れた頃には、カインの唇は真っ赤に熟れていた。
息の仕方もわからなくなるほどの熱に、くったりとその身をジュエルに寄りかからせていた。不敬も何も考えられない。
ふと、気付く。
涙と言い知れぬ快感に蕩ける片目が、ジュエルの左耳を飾る黒い五ミリほどの宝石が付いたピアスを捉えた。
それに気付いたジュエルは、笑う。
「ああ。私は物質を宝石に創り替えることが得意でな。故にジュエルと名乗っている」
愛おしそうな手つきで、左耳の宝石をスルリと撫でた。
「そうだ、おまえの目だ」
自分の眼球が、ジュエルの身を飾っている。ジュエルが、肌身離さず自分を身に付けている。
あまりの幸せに、眩暈がした。
*最終話へつづく*
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