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そのいち
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新しい話始めました。
カオスな感じかと思いますが、何卒お付き合いくださいませ。
後半あたりで残酷な感じを醸し出すかと思いますので、苦手な方はご注意下さい。
*~*~*~*~*
悲鳴が響く。
「ど、どうしたっ。大丈夫かっ」
一人の女子生徒が突然倒れた。側の男子生徒が慌てて膝をつき、倒れた女子生徒を覗き込む。突然のことに驚き悲鳴を上げた生徒たちは、倒れた女子生徒から少し離れて見つめている。
「ダメだな。これはいかん」
倒れた女子生徒は遠い目をしながらそう言った。
「なっ、し、しっかりしろっ」
男子生徒がオロオロと声をかけるが、女子生徒は仰向けに倒れたまま首を振った。
この突然の出来事が、国の行く末を左右する始まりになるとは、誰にも予想出来なかった。
*~*~*~*~*
プロムナード。
誰もが楽しみにしていたその催しの席。
そのはずなのに。
魔力を持つ者たちが、その力を正しく使うために集められる学園。七歳から十二歳まで初等部で基礎をみっちり学び、十三歳から十六歳まで中等部で応用を学んで社会へと巣立つ。さらに進学を望むなら、十七歳から十八歳までは高等部で適性に応じた専門を学ぶことが出来る。高等部卒業者は即戦力となるため、あらゆるところから引く手数多となる。特に貴族は、高等部卒業を当たり前としていた。
そんな十二年間の集大成。
無事卒業を迎え、最後のイベントをみんなが楽しんでいる。
その中で、一人、浮かない顔をした女子生徒がいた。
オーレイル侯爵令嬢ミレイ。
淡い栗色の髪に、翡翠のように美しい緑色の瞳。肌は抜けるように白く滑らかで。少々頭の足りない第二王子を支えてくれと、王家から望まれた婚約者でもあり、非常に優秀な魔法の使い手でもあった。
見た目も頭脳も魔法の練度も抜きん出ていたミレイ。侯爵令嬢で王子の婚約者で王家からの信望も厚い。本気で憧れる者も多かったが、嫉妬をする者も少なからずいた。表ではミレイを褒め称え、裏ではどう蹴落としてやろうかと画策していた。
ある日、一人の女子生徒が中途入学してきた。
通常魔力の有無は五歳までに決まるが、時々それを超えて発現する者もいる。年に一人二人確認されることがあるので、珍しいことではない。中途入学者も、きちんと一から基礎を学ぶので、七歳の子たちに交じって学ぶ。但し、年齢が高ければ高いほど理解力に差があるので、数年で同い年の子や近い学年にまで到達する。
のだが。
その女子生徒は、十七歳になる今まで魔力がなかったことが信じられないほど、異例のスピードで魔力の扱いに慣れ、魔法の使い方が上手かった。
ロナ・マルアレア男爵令嬢。
彼女は魔法の天才だった。
高等部に望まれ、学園に入学して一年足らずで最高学年へと編入してきたロナは、確かに魔法は天才だった。
ロナは、生まれたときから貴族。最下位とは言え、間違いなく男爵令嬢であったはずなのだが。ロナは貴族のマナーがまったく身についていなかった。とてもとても好意的に言えば、天真爛漫。
学園は、貴族と平民で校舎が違う。平民と交流があれば、多少なりとも何かが違ったのかもしれないが、生粋の貴族たちの中、ロナの素行は新鮮に映った。特に、高位貴族の爵位を継げない男たちの目に。
ロナの見た目は庇護欲をそそる愛くるしいものだ。蜂蜜を溶かしたような輝く金の髪に、晴れ渡った夏空のように真っ青な瞳。少したれ気味な大きなその目は、いつも少し潤んでいる。平均より少し小さなロナ。くるくると表情の変わるロナに、男たちは、少しでも自分を見て欲しくて彼女の周りをうろつく。その中に、ミレイの婚約者であり、この国の第二王子であるギャレットもいた。
どんな偶然が働いたのか。
ギャレットの目の前で躓いたロナが、ギャレットの胸に飛び込む形となった。咄嗟に抱き締めてしまったギャレットは、その華奢でいて柔らかなロナに驚く。腕の中から見上げるロナの潤んだ瞳に、完全にギャレットは虜となった。
それが、ロナとギャレットの出会いだった。
*つづく*
カオスな感じかと思いますが、何卒お付き合いくださいませ。
後半あたりで残酷な感じを醸し出すかと思いますので、苦手な方はご注意下さい。
*~*~*~*~*
悲鳴が響く。
「ど、どうしたっ。大丈夫かっ」
一人の女子生徒が突然倒れた。側の男子生徒が慌てて膝をつき、倒れた女子生徒を覗き込む。突然のことに驚き悲鳴を上げた生徒たちは、倒れた女子生徒から少し離れて見つめている。
「ダメだな。これはいかん」
倒れた女子生徒は遠い目をしながらそう言った。
「なっ、し、しっかりしろっ」
男子生徒がオロオロと声をかけるが、女子生徒は仰向けに倒れたまま首を振った。
この突然の出来事が、国の行く末を左右する始まりになるとは、誰にも予想出来なかった。
*~*~*~*~*
プロムナード。
誰もが楽しみにしていたその催しの席。
そのはずなのに。
魔力を持つ者たちが、その力を正しく使うために集められる学園。七歳から十二歳まで初等部で基礎をみっちり学び、十三歳から十六歳まで中等部で応用を学んで社会へと巣立つ。さらに進学を望むなら、十七歳から十八歳までは高等部で適性に応じた専門を学ぶことが出来る。高等部卒業者は即戦力となるため、あらゆるところから引く手数多となる。特に貴族は、高等部卒業を当たり前としていた。
そんな十二年間の集大成。
無事卒業を迎え、最後のイベントをみんなが楽しんでいる。
その中で、一人、浮かない顔をした女子生徒がいた。
オーレイル侯爵令嬢ミレイ。
淡い栗色の髪に、翡翠のように美しい緑色の瞳。肌は抜けるように白く滑らかで。少々頭の足りない第二王子を支えてくれと、王家から望まれた婚約者でもあり、非常に優秀な魔法の使い手でもあった。
見た目も頭脳も魔法の練度も抜きん出ていたミレイ。侯爵令嬢で王子の婚約者で王家からの信望も厚い。本気で憧れる者も多かったが、嫉妬をする者も少なからずいた。表ではミレイを褒め称え、裏ではどう蹴落としてやろうかと画策していた。
ある日、一人の女子生徒が中途入学してきた。
通常魔力の有無は五歳までに決まるが、時々それを超えて発現する者もいる。年に一人二人確認されることがあるので、珍しいことではない。中途入学者も、きちんと一から基礎を学ぶので、七歳の子たちに交じって学ぶ。但し、年齢が高ければ高いほど理解力に差があるので、数年で同い年の子や近い学年にまで到達する。
のだが。
その女子生徒は、十七歳になる今まで魔力がなかったことが信じられないほど、異例のスピードで魔力の扱いに慣れ、魔法の使い方が上手かった。
ロナ・マルアレア男爵令嬢。
彼女は魔法の天才だった。
高等部に望まれ、学園に入学して一年足らずで最高学年へと編入してきたロナは、確かに魔法は天才だった。
ロナは、生まれたときから貴族。最下位とは言え、間違いなく男爵令嬢であったはずなのだが。ロナは貴族のマナーがまったく身についていなかった。とてもとても好意的に言えば、天真爛漫。
学園は、貴族と平民で校舎が違う。平民と交流があれば、多少なりとも何かが違ったのかもしれないが、生粋の貴族たちの中、ロナの素行は新鮮に映った。特に、高位貴族の爵位を継げない男たちの目に。
ロナの見た目は庇護欲をそそる愛くるしいものだ。蜂蜜を溶かしたような輝く金の髪に、晴れ渡った夏空のように真っ青な瞳。少したれ気味な大きなその目は、いつも少し潤んでいる。平均より少し小さなロナ。くるくると表情の変わるロナに、男たちは、少しでも自分を見て欲しくて彼女の周りをうろつく。その中に、ミレイの婚約者であり、この国の第二王子であるギャレットもいた。
どんな偶然が働いたのか。
ギャレットの目の前で躓いたロナが、ギャレットの胸に飛び込む形となった。咄嗟に抱き締めてしまったギャレットは、その華奢でいて柔らかなロナに驚く。腕の中から見上げるロナの潤んだ瞳に、完全にギャレットは虜となった。
それが、ロナとギャレットの出会いだった。
*つづく*
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