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序章 ある研究員の記録『ZERO』IS SLEEPING
第24話 初めての雨
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「で、他には何かあったか?」
「いえ、特には。ああ、タリさんが作ったレーダー、あれ凄いですよ。半径十五キロメートルの目標を正確に判別できるんです」
「半径十五キロをか? それはすごいな」
レーダー関係強いって本当だったのか・・・
「分かった。コンデンサーの件だけど、もう少し待つように言ってくれないか? 改良したいところがある」
「分かりました。ナーバルさんにはそう伝えておきます。では先輩」
「ああ、わざわざありがとうな。帰り道気をつけろよ・・・俺が言えた事じゃあないが」
「まったくそうですよ・・・先輩の方こそ気をつけてください」
そう言って、交野は格納庫から出て行った。
それを見届けた後、俺は格納庫で作業している人たちと、横たわっている灰色の巨人を見た。
巨人、というよりか、鉄でできた騎士と表現する方が合っている。
全高約三十メートル。騎士の甲冑に似た装甲を持ち、背中に二対の、羽のような機構を持った、交野の『ミュートゥス・ギア』
『ヴィントシュトース』
(やっぱり、なんか似ているんだよな・・・モーターヘッドに)
5月15日 水曜日 山城基地Gプラント 戦技研特別格納庫 15時33分
俺は、戦技研の研究を手伝っていた。研究のサンプルが『ヴィントシュトース』であるため、交野も協力したが。その研究内容は。
(『ミュートゥス・ギア』の解析か・・・)
この世界の魔法技術の水準は高いと、改めて実感した。歴史研究部では絶対にできなかったことだ。
それでも、
「分からないことだらけ、か・・・」
いや、ほとんど分かっていないと言った方が正しい。この世界の技術でも、これの解析は容易ではない。
「おう、ここにいたか朽木研究員」
そう言うのは、
「局長、どうしましたか?」
「いや何も。解析班へのデータ転送が終わったので実物の姿を拝見しようと。後でこれはまた地下に封印されるからな」
「そうでしたね」
封印の理由は『明らかにヤバイ物だから』だ。 まあ、あながち間違ってはいないけどさ・・・
「しかし、こいつは一体なんだ? 装甲の材質、駆動系、操作系、何もかも分からん!!」
「やっぱり分からないんですか?」
「いや、用途は分かるんだ。ただその仕組みが分からない・・・僅かだが、フレーム内に術式らしきものがあることが確認された」
「術式が!?」
「ああ。だが、組み方が根本的に違うんだ。少なくとも過去四千年間の物ではない。もっとそれ以前の物だ。おかげで用途がさっぱり分からん」
「四千年以上昔・・・聖暦以前の物って事ですか」
「ああ、もっとも。君の元居た『世界』ではどうかは知らんが」
「!!!」
エルメス局長は『ヴィントシュトース』を見ながら言った。
「君が元居た『世界』ではどうか分からないが・・・少なくともこいつは、建造から五千年は経過している」
「五千年・・・」
いや、それ以前に、
「どうして俺がこの『世界』の人間で無いと?」
俺が、この『人間界が、西暦2016年に滅ばない世界』ではなく、『人間界が、西暦2016年に滅ぶ世界』の人間だと、いつ気づいた?
「・・・レオスは君の情報、いや、君達の情報が人間界に無い時点で、君達を別の『人間界と亜界(人間界とこの世界を対比する時に使われる、この世界の事)が繋がっていない世界』からきた人間達だと気づいていたよ。なかなか複雑な事になっているらしいな。まあ、この『世界』もこの『世界』で、人間界と、人間界の人間に言わせてみれば異世界か? それが繋がっていて、お互い大陸の形や地形、大きさがまったく同じという複雑な世界だが」
「それは同意します」
複雑ったらありゃしない…というか、
「君達?」
「そう、君達。つまり君と茜研究員。そして浅葱君と交野君。君達がこの『世界』の人間でない事は、とっくの昔にレオスが見抜いていたよ」
「……」
あの人、本当に何者だ? 俺だけならまだしも、他の面子の事まで見抜くって。
「まあ、詳しくは聞かない。色々と事情があるようだしな」
「…助かります」
まあでも、と、局長は話し出した。
「やっぱり何か関係しているんだろうな、君が元居た『世界』とこの『世界』は」
「? というと」
「あの『ミュートゥス・ギア』は、我々が、古代文明の遺跡で発掘してきた物と、多くの共通点がある」
「共通点、ですか?」
「ああ。『ミュートゥス・ギア』は君達の世界の物なんだろう?」
「ええ。そうですよ」
「そんな異世界の物が、この世界の古代文明の遺跡で発掘してきた物と多くの共通点がある。何か、この『世界』と、君の元居た『世界』は、何か関係しているとしか思えん」
「・・・そうですか」
この『世界』と、俺が元居た『世界』の関係。
それは恐らく、
(俺達がこの『世界』に来た理由)
「まあ、それはいいとして…この『ミュートゥス・ギア』、やはり交野の個人携帯型古代兵装と関連性があるな」
「局長も、『神の力』をそう思っているんですか」
「ああ。君達が『神の力』と呼称している物。あれは個人携帯型古代兵装も一種だ。聞けばその数は十三で、また『ミュートゥス・ギア』の数も十三だと」
「はい。最初は『ミュートゥス・ギア』も『神の力』の一つの形態なのかと思っていたんですけど…」
「どうも違うと」
「はい。『神の力』で具現化する武具とは何か違っているんです」
「それに関しては同意見だ。『ミュートゥス・ギア』は『神の力』の一形態ではない。別の物だ。ただし、関連性がある」
「さっきも言いましたけど。具体的にそれってどういう意味ですか?」
局長は仮想ディスプレイ型端末を起動し、図を出す。
「交野君の個人携帯型古代兵装。『ソニックブラスト』だったか? それに組み込まれた術式と、同じく交野君の『ミュートゥス・ギア』に組み込まれた術式だ」
俺は表示された術式を見た。確かに、今のような魔方陣などでは無く、平行線とそれを斜めに横断する斜線との組み合わせだった。今の術式は絶対に彫れない。組み方が違う術式だから『彫って』、『保存』ができるのだろう。
そして、気がついた。
「同じ?」
「そう、同じだ。ここで一つ聞くが、『ミュートゥス・ギア』は、『神の力』を使用できる『特定の個人』のみ使えるんだな?」
「はい。同じ『神の力』を使える人でも、自分の『ミュートゥス・ギア』にしか乗れませんでした」
「そうか…」
局長は、言った。
「仮説だが、『神の力』は『ミュートゥス・ギア』の起動キーではないだろうか?」
「起動キー?」
「ああ。もしくは制御するための物なのかもしれん」
「制御…」
まてよ、
「もしかしかしたら…それは『ミュートゥス・ギア』の力を封印するための物かもしれません」
「封印?」
「『ミュートゥス・ギア』の力は絶大です。その力をしっかりと制御する事を考えていたはずなんです」
「それが、封印?」
「はい・・・実際に俺は、封印を解かれた『ミュートゥス・ギア』を見た事があります」
「封印が解かれた!? 一体それはどういう物だ?」
「それは…」
炎。
叫び声。
破壊。
死。
そして、
「『神』」
「? それはどういう」
「そのままの意味ですよ…だから、『神の力』で封印し、制御した」
「もっと大きな力を出せるというのか?」
「その認識であっていますよ」
そこまでの説明しか俺はしなかった。が、それで局長は察したらしい。
「詳しい事は聞かないでおこう」
「そうしてくれると助かります」
でも、しかし、だからこそ、思う。
「どうして、こんなものを作ったんでしょうか?」
「どうして?」
「どうしてこんな、破壊兵器を」
俺は再び『ヴィントシュトース』に視線を向けた。
「一体、何をするつもりで、何と戦う目的で、こんなものを作ったんでしょうか・・・」
一体、なんのために。
「―――『七つの目を持った化け物』」
局長が、何か遠い昔の事を思い出すように、言った。
「『七つの目を持った化け物』?」
「ああ。一部では『セヴンズアイ』とも言われている。かつて、世界を壊した何か…私の叔母から聞いた話だ。もう何年も前の昔の話だ」
「おとぎ話ですか?」
「似たような物だな。いや、別に関係があるとは思ってないが…、ふと思い出したよ」
「そうですか…」
『セヴンズアイ』か、
(こんど調べてみるか)
「ああそうだ。ガサイにコレ届けてくれないか? 今の時間帯はオフィスに居るはずだ」
そう言って局長が渡してくれたのは、上に『極秘』と掛かれ、幾重にも呪符が貼られた封筒だった。
「これ、何ですか?」
「いやー、ちょっとヤバイ事について書かれたレポートだ」
「ストレートに言ってくれますね…まあ、いいですよ」
俺は言った。
「俺も、ガサイ先生に用があるんです」
「……」
「よ、よう朽木…なんでここに?」
「それは俺のセリフだザーフ。それも…」
俺は大声でツッコんだ。
「なんで大怪我負っているのかなあ!?」
Cプラント、医療棟。ガサイ局長のオフィス。
入ってみると、そこはオフィス…と言うより診療室だった。
狭い部屋にはベッドが一床とキャスター付きのイス。机の上にはパソコンとファイルが五個ほど。
プラント表層にあるため窓がある。が、今日はあいにくの雨だった。
そのベッドに右腕を血で真っ赤に染め、左足にギブスをして、ジャージ姿のザーフが寝ていて、学校の制服の上から白衣を羽織ったラビラトスがキャスター付きのイスに座っていた。
「…ラビラトス。お前がここに居る理由は知らんがまともそうだ。状況を説明してくれ」
「…筋トレ中に無理したらしい」
「オケ、把握した」
要はこの馬鹿がドジったんだろ。
「お前、今俺のこと馬鹿って思ったろ!!」
「ああ、思ったよ。それが何か?」
「くっ、アヴェントといい、なんでみんな俺の事馬鹿呼ばわりする!?」
「『三毛猫』の件忘れたとは言わせんぞ!!」
お前だったよなあ、『三毛猫』に大量の魔力ブチこんで爆発させたの。
「あれは実験だって言ってんだろ!!」
「ほう…じゃあなんでやったか言ってみろ」
「ええっと…なんだっけ」
「……」
もう慣れた。
「でも無茶しすぎだよザーフ君…ベンチブレス600kgに挑戦って」
「無茶すぎんだろ!!」
え? え? なな何やってんの君! 500kg!? 500kg!?
「それって…相当な重量だよな…お前それに挑戦したわけ!?」
「ああ。竜人の兵士が持ち上げてんの見て俺もやろうって」
…こいつ、思ったことをすぐやるタイプだ。
「でもなんでそんな所を骨折したんだいザーフ君? ベンチプレスでの骨折って普通、腕とかそういうんじゃ」
「ああ、それは簡単だ…床が抜けて二階層ほど落ちた」
「「施設の問題かい」」
まあ、それはともかく…
「何でまた筋トレなんかを」
「前も言ったろ…世界を旅してみたいって。俺は世界中のいろんな所を旅して見たいんだ」
「何のために?」
「理由なんかねーよ。行きたいから行く、ただそれだけだ」
「…夢だけは大きいんだからザーフ君」
呆れた顔でラビラトスが救急箱の中から消毒液とガーゼを出し、傷の治療にあたるが、その動きがとても手馴れていた。
「まったく…ギブス作るのが面倒くさいから先にするって…傷に膿でもできたらどうするつもりなんだ…はい、終わったよ」
「おう、ありがとうな。さすがは医師志望。早い早い」
「医師?」
うん。と、頷いてラビラトスは言った。
「僕、医者になるのが夢なんだ」
「医者? 天使がか?…ていうか、なんで治癒魔法とかあるのに医者とかあるんだ?」
「魔法でも治せない傷はあるからね。高度な呪いとか…僕はそういったもの以外の、純粋な傷を治せる医師になりたいんだ。それに、魔法とか聖術とか、そういうの僕、あまり好きじゃないんだ」
嫌な思い出があるからね、と、ラビラトスは言った。
「だからこうやって戦略機動隊で修行している訳。ここが一番進んでいるから」
「そうだったのか…ああ、だからガサイ局長のオフィスに」
「うん。ガサイ先生、あの人はすごいよ。どんな傷でも魔法を使わずに治せる。プロだよ」
「それについては同意だな」
そう言うのはザーフだ。
「あの先生にはいつもいつもお世話になってるよ・・・あんな大ケガ、絶対に魔法じゃ治せない。あの先生はマジもんのプロだぜ」
「それはいいとしてあんな大ケガって何だよあんな大ケガって」
あ、そうだ。
「ラビラトス、これガサイ先生に渡してくれないか? うちの局長から」
「うわあ何この呪符の量…分かった、先生にしっかりと渡しておくよ」
あ、そうだった。と、ラビラトスは机の上に置いてあったダンボール箱を俺に渡した。
「これは?」
「ガサイ先生から、戦生研と医療局が共同開発した新型の眼帯端末だって」
「ああ。戦技研のスタッフが一部関わってるあれか、できたんだな」
というか、俺がその一部関わった戦技研のスタッフだし、
ダンボールを空け、包装を取ると、新型の眼帯型端末が出てきた。
三本の紐で固定するのは前とは変わっていないものの、覆いの所に色々と仕込んであるようだった。色は黒、さっそく試してみる。
「おお」
眼鏡に干渉しなくていい。目にしっかりとフィットしている。そして何よりも、
「右目の範囲が見える!!」
覆いの表面が、一種のバイザー型センサーになっていて、右目の分の視界も認識できるようになっている。
センサーで得た視覚情報を電気信号化し直接脳に送り込んでいるのだ。
(更に暗視モードや望遠モードなど、様々な仕様に変更可能…端末で得た情報を視界に表示させるタイプか)
端末の操作は思考で操作するらしい。よく作ったものだ。
「朽木君…いいかな?」
「あ、ああごめん」
機能は帰ってから検分するとしよう。
「さて、じゃあザーフ君。これ、松葉杖」
ラビラトスは壁に立てかけられていた松葉杖をザーフに渡すと、それを使ってザーフは立った。
「ああ、ありがとうよ…これ使うの何度目だか」
「何度も使ったことあるのかよ!!」
「まあな。じゃあ、俺はさっさと帰るぜ。またな」
「ああ、待って」
帰ろうとしたザーフをラビラトスが引き止めた。ラビラトスは机の中から小瓶を渡した。
「これ。ガサイ先生から。もうそろそろ切れるころだからって…用法を守って正しく使ってね」
「…ああ」
ザーフは一瞬、顔を曇らせてからそれを受け取って、部屋を出て行ってしまった。
「今のは?」
「精神安定剤の一種…とでも言えばいいのかな。ザーフ君の為に特別に作られたものなんだ」
「精神安定剤…あいつ、何か心の病気を患ってるのか? とてもそんな風には見えないけど…」
ラビラトスは、カルテを入れたファイルを元に戻そうとして、止まった。そして、
「…朽木君。ここだけの話をしていい?」
「あ、ああ」
ラビラトスは言った。
「―――ザーフ君は、お姉さんを亡くしているんだ」
「…えっ?」
「詳しい話は僕も聞かされてないけどね…でも、そのせいで、ザーフ君は精神的にもろくなって…自分でも分からないうちに、勝手に何かをやってしまったり…そして、自分もなんでそれをやってしまったか忘れてしまうとか…そんな事が多々起きるようになってしまって」
「!!!」
『三毛猫』の件
「…心当たりがある」
「…そうかい…とにかく、それを抑えるための薬だよ」
「……」
(あいつに、そんな面があったのか)
分からなかった。恐らく、いや間違いなく。ラビラトスが話してくれなければずっと分からなかっただろう。
外では、雨が降っている。
俺はそれを見ながら、おとといの件を思い出す。
あの後、俺と茜は襲撃された事を報告した。
結果、俺と茜は今週一週間、山城基地からの外出禁止を言い渡された。今回の件は、あきらかに俺と茜を狙っており、今も犯人が俺達を危険性が高い。だから、警備が厳重な山城基地で安全に過ごした方がいいとの判断だ。
まあ、俺も俺で、研究に集中できるからいいのだが、でも正直気が滅入った。
だから今日は表層部の運動場で、茜とキャッチボールでもしようかな考えていたのだが…この雨ではな。
「なあラビラトス…夢って、なんだと思う?」
「…いきなり何?」
「…なんにも。じゃあまた」
そう言って俺はガサイ局長のオフィスを出た。
(『セヴンズアイ』か…)
どうせなら、戦技研の手伝いが終わった後、図書館に行ってみよう。いつもは研究論文しか読まないが…今日はこの世界の伝承とか、そういった物を読もう。
そう思いながら、俺は医療棟の廊下を歩く。が、あることに気がついた。
「あれ?」
俺は記憶を辿る。確かに、小さいのはあったかもしれないが…もしかして、
「俺、この世界に来て初めて雨を見た?」
「いえ、特には。ああ、タリさんが作ったレーダー、あれ凄いですよ。半径十五キロメートルの目標を正確に判別できるんです」
「半径十五キロをか? それはすごいな」
レーダー関係強いって本当だったのか・・・
「分かった。コンデンサーの件だけど、もう少し待つように言ってくれないか? 改良したいところがある」
「分かりました。ナーバルさんにはそう伝えておきます。では先輩」
「ああ、わざわざありがとうな。帰り道気をつけろよ・・・俺が言えた事じゃあないが」
「まったくそうですよ・・・先輩の方こそ気をつけてください」
そう言って、交野は格納庫から出て行った。
それを見届けた後、俺は格納庫で作業している人たちと、横たわっている灰色の巨人を見た。
巨人、というよりか、鉄でできた騎士と表現する方が合っている。
全高約三十メートル。騎士の甲冑に似た装甲を持ち、背中に二対の、羽のような機構を持った、交野の『ミュートゥス・ギア』
『ヴィントシュトース』
(やっぱり、なんか似ているんだよな・・・モーターヘッドに)
5月15日 水曜日 山城基地Gプラント 戦技研特別格納庫 15時33分
俺は、戦技研の研究を手伝っていた。研究のサンプルが『ヴィントシュトース』であるため、交野も協力したが。その研究内容は。
(『ミュートゥス・ギア』の解析か・・・)
この世界の魔法技術の水準は高いと、改めて実感した。歴史研究部では絶対にできなかったことだ。
それでも、
「分からないことだらけ、か・・・」
いや、ほとんど分かっていないと言った方が正しい。この世界の技術でも、これの解析は容易ではない。
「おう、ここにいたか朽木研究員」
そう言うのは、
「局長、どうしましたか?」
「いや何も。解析班へのデータ転送が終わったので実物の姿を拝見しようと。後でこれはまた地下に封印されるからな」
「そうでしたね」
封印の理由は『明らかにヤバイ物だから』だ。 まあ、あながち間違ってはいないけどさ・・・
「しかし、こいつは一体なんだ? 装甲の材質、駆動系、操作系、何もかも分からん!!」
「やっぱり分からないんですか?」
「いや、用途は分かるんだ。ただその仕組みが分からない・・・僅かだが、フレーム内に術式らしきものがあることが確認された」
「術式が!?」
「ああ。だが、組み方が根本的に違うんだ。少なくとも過去四千年間の物ではない。もっとそれ以前の物だ。おかげで用途がさっぱり分からん」
「四千年以上昔・・・聖暦以前の物って事ですか」
「ああ、もっとも。君の元居た『世界』ではどうかは知らんが」
「!!!」
エルメス局長は『ヴィントシュトース』を見ながら言った。
「君が元居た『世界』ではどうか分からないが・・・少なくともこいつは、建造から五千年は経過している」
「五千年・・・」
いや、それ以前に、
「どうして俺がこの『世界』の人間で無いと?」
俺が、この『人間界が、西暦2016年に滅ばない世界』ではなく、『人間界が、西暦2016年に滅ぶ世界』の人間だと、いつ気づいた?
「・・・レオスは君の情報、いや、君達の情報が人間界に無い時点で、君達を別の『人間界と亜界(人間界とこの世界を対比する時に使われる、この世界の事)が繋がっていない世界』からきた人間達だと気づいていたよ。なかなか複雑な事になっているらしいな。まあ、この『世界』もこの『世界』で、人間界と、人間界の人間に言わせてみれば異世界か? それが繋がっていて、お互い大陸の形や地形、大きさがまったく同じという複雑な世界だが」
「それは同意します」
複雑ったらありゃしない…というか、
「君達?」
「そう、君達。つまり君と茜研究員。そして浅葱君と交野君。君達がこの『世界』の人間でない事は、とっくの昔にレオスが見抜いていたよ」
「……」
あの人、本当に何者だ? 俺だけならまだしも、他の面子の事まで見抜くって。
「まあ、詳しくは聞かない。色々と事情があるようだしな」
「…助かります」
まあでも、と、局長は話し出した。
「やっぱり何か関係しているんだろうな、君が元居た『世界』とこの『世界』は」
「? というと」
「あの『ミュートゥス・ギア』は、我々が、古代文明の遺跡で発掘してきた物と、多くの共通点がある」
「共通点、ですか?」
「ああ。『ミュートゥス・ギア』は君達の世界の物なんだろう?」
「ええ。そうですよ」
「そんな異世界の物が、この世界の古代文明の遺跡で発掘してきた物と多くの共通点がある。何か、この『世界』と、君の元居た『世界』は、何か関係しているとしか思えん」
「・・・そうですか」
この『世界』と、俺が元居た『世界』の関係。
それは恐らく、
(俺達がこの『世界』に来た理由)
「まあ、それはいいとして…この『ミュートゥス・ギア』、やはり交野の個人携帯型古代兵装と関連性があるな」
「局長も、『神の力』をそう思っているんですか」
「ああ。君達が『神の力』と呼称している物。あれは個人携帯型古代兵装も一種だ。聞けばその数は十三で、また『ミュートゥス・ギア』の数も十三だと」
「はい。最初は『ミュートゥス・ギア』も『神の力』の一つの形態なのかと思っていたんですけど…」
「どうも違うと」
「はい。『神の力』で具現化する武具とは何か違っているんです」
「それに関しては同意見だ。『ミュートゥス・ギア』は『神の力』の一形態ではない。別の物だ。ただし、関連性がある」
「さっきも言いましたけど。具体的にそれってどういう意味ですか?」
局長は仮想ディスプレイ型端末を起動し、図を出す。
「交野君の個人携帯型古代兵装。『ソニックブラスト』だったか? それに組み込まれた術式と、同じく交野君の『ミュートゥス・ギア』に組み込まれた術式だ」
俺は表示された術式を見た。確かに、今のような魔方陣などでは無く、平行線とそれを斜めに横断する斜線との組み合わせだった。今の術式は絶対に彫れない。組み方が違う術式だから『彫って』、『保存』ができるのだろう。
そして、気がついた。
「同じ?」
「そう、同じだ。ここで一つ聞くが、『ミュートゥス・ギア』は、『神の力』を使用できる『特定の個人』のみ使えるんだな?」
「はい。同じ『神の力』を使える人でも、自分の『ミュートゥス・ギア』にしか乗れませんでした」
「そうか…」
局長は、言った。
「仮説だが、『神の力』は『ミュートゥス・ギア』の起動キーではないだろうか?」
「起動キー?」
「ああ。もしくは制御するための物なのかもしれん」
「制御…」
まてよ、
「もしかしかしたら…それは『ミュートゥス・ギア』の力を封印するための物かもしれません」
「封印?」
「『ミュートゥス・ギア』の力は絶大です。その力をしっかりと制御する事を考えていたはずなんです」
「それが、封印?」
「はい・・・実際に俺は、封印を解かれた『ミュートゥス・ギア』を見た事があります」
「封印が解かれた!? 一体それはどういう物だ?」
「それは…」
炎。
叫び声。
破壊。
死。
そして、
「『神』」
「? それはどういう」
「そのままの意味ですよ…だから、『神の力』で封印し、制御した」
「もっと大きな力を出せるというのか?」
「その認識であっていますよ」
そこまでの説明しか俺はしなかった。が、それで局長は察したらしい。
「詳しい事は聞かないでおこう」
「そうしてくれると助かります」
でも、しかし、だからこそ、思う。
「どうして、こんなものを作ったんでしょうか?」
「どうして?」
「どうしてこんな、破壊兵器を」
俺は再び『ヴィントシュトース』に視線を向けた。
「一体、何をするつもりで、何と戦う目的で、こんなものを作ったんでしょうか・・・」
一体、なんのために。
「―――『七つの目を持った化け物』」
局長が、何か遠い昔の事を思い出すように、言った。
「『七つの目を持った化け物』?」
「ああ。一部では『セヴンズアイ』とも言われている。かつて、世界を壊した何か…私の叔母から聞いた話だ。もう何年も前の昔の話だ」
「おとぎ話ですか?」
「似たような物だな。いや、別に関係があるとは思ってないが…、ふと思い出したよ」
「そうですか…」
『セヴンズアイ』か、
(こんど調べてみるか)
「ああそうだ。ガサイにコレ届けてくれないか? 今の時間帯はオフィスに居るはずだ」
そう言って局長が渡してくれたのは、上に『極秘』と掛かれ、幾重にも呪符が貼られた封筒だった。
「これ、何ですか?」
「いやー、ちょっとヤバイ事について書かれたレポートだ」
「ストレートに言ってくれますね…まあ、いいですよ」
俺は言った。
「俺も、ガサイ先生に用があるんです」
「……」
「よ、よう朽木…なんでここに?」
「それは俺のセリフだザーフ。それも…」
俺は大声でツッコんだ。
「なんで大怪我負っているのかなあ!?」
Cプラント、医療棟。ガサイ局長のオフィス。
入ってみると、そこはオフィス…と言うより診療室だった。
狭い部屋にはベッドが一床とキャスター付きのイス。机の上にはパソコンとファイルが五個ほど。
プラント表層にあるため窓がある。が、今日はあいにくの雨だった。
そのベッドに右腕を血で真っ赤に染め、左足にギブスをして、ジャージ姿のザーフが寝ていて、学校の制服の上から白衣を羽織ったラビラトスがキャスター付きのイスに座っていた。
「…ラビラトス。お前がここに居る理由は知らんがまともそうだ。状況を説明してくれ」
「…筋トレ中に無理したらしい」
「オケ、把握した」
要はこの馬鹿がドジったんだろ。
「お前、今俺のこと馬鹿って思ったろ!!」
「ああ、思ったよ。それが何か?」
「くっ、アヴェントといい、なんでみんな俺の事馬鹿呼ばわりする!?」
「『三毛猫』の件忘れたとは言わせんぞ!!」
お前だったよなあ、『三毛猫』に大量の魔力ブチこんで爆発させたの。
「あれは実験だって言ってんだろ!!」
「ほう…じゃあなんでやったか言ってみろ」
「ええっと…なんだっけ」
「……」
もう慣れた。
「でも無茶しすぎだよザーフ君…ベンチブレス600kgに挑戦って」
「無茶すぎんだろ!!」
え? え? なな何やってんの君! 500kg!? 500kg!?
「それって…相当な重量だよな…お前それに挑戦したわけ!?」
「ああ。竜人の兵士が持ち上げてんの見て俺もやろうって」
…こいつ、思ったことをすぐやるタイプだ。
「でもなんでそんな所を骨折したんだいザーフ君? ベンチプレスでの骨折って普通、腕とかそういうんじゃ」
「ああ、それは簡単だ…床が抜けて二階層ほど落ちた」
「「施設の問題かい」」
まあ、それはともかく…
「何でまた筋トレなんかを」
「前も言ったろ…世界を旅してみたいって。俺は世界中のいろんな所を旅して見たいんだ」
「何のために?」
「理由なんかねーよ。行きたいから行く、ただそれだけだ」
「…夢だけは大きいんだからザーフ君」
呆れた顔でラビラトスが救急箱の中から消毒液とガーゼを出し、傷の治療にあたるが、その動きがとても手馴れていた。
「まったく…ギブス作るのが面倒くさいから先にするって…傷に膿でもできたらどうするつもりなんだ…はい、終わったよ」
「おう、ありがとうな。さすがは医師志望。早い早い」
「医師?」
うん。と、頷いてラビラトスは言った。
「僕、医者になるのが夢なんだ」
「医者? 天使がか?…ていうか、なんで治癒魔法とかあるのに医者とかあるんだ?」
「魔法でも治せない傷はあるからね。高度な呪いとか…僕はそういったもの以外の、純粋な傷を治せる医師になりたいんだ。それに、魔法とか聖術とか、そういうの僕、あまり好きじゃないんだ」
嫌な思い出があるからね、と、ラビラトスは言った。
「だからこうやって戦略機動隊で修行している訳。ここが一番進んでいるから」
「そうだったのか…ああ、だからガサイ局長のオフィスに」
「うん。ガサイ先生、あの人はすごいよ。どんな傷でも魔法を使わずに治せる。プロだよ」
「それについては同意だな」
そう言うのはザーフだ。
「あの先生にはいつもいつもお世話になってるよ・・・あんな大ケガ、絶対に魔法じゃ治せない。あの先生はマジもんのプロだぜ」
「それはいいとしてあんな大ケガって何だよあんな大ケガって」
あ、そうだ。
「ラビラトス、これガサイ先生に渡してくれないか? うちの局長から」
「うわあ何この呪符の量…分かった、先生にしっかりと渡しておくよ」
あ、そうだった。と、ラビラトスは机の上に置いてあったダンボール箱を俺に渡した。
「これは?」
「ガサイ先生から、戦生研と医療局が共同開発した新型の眼帯端末だって」
「ああ。戦技研のスタッフが一部関わってるあれか、できたんだな」
というか、俺がその一部関わった戦技研のスタッフだし、
ダンボールを空け、包装を取ると、新型の眼帯型端末が出てきた。
三本の紐で固定するのは前とは変わっていないものの、覆いの所に色々と仕込んであるようだった。色は黒、さっそく試してみる。
「おお」
眼鏡に干渉しなくていい。目にしっかりとフィットしている。そして何よりも、
「右目の範囲が見える!!」
覆いの表面が、一種のバイザー型センサーになっていて、右目の分の視界も認識できるようになっている。
センサーで得た視覚情報を電気信号化し直接脳に送り込んでいるのだ。
(更に暗視モードや望遠モードなど、様々な仕様に変更可能…端末で得た情報を視界に表示させるタイプか)
端末の操作は思考で操作するらしい。よく作ったものだ。
「朽木君…いいかな?」
「あ、ああごめん」
機能は帰ってから検分するとしよう。
「さて、じゃあザーフ君。これ、松葉杖」
ラビラトスは壁に立てかけられていた松葉杖をザーフに渡すと、それを使ってザーフは立った。
「ああ、ありがとうよ…これ使うの何度目だか」
「何度も使ったことあるのかよ!!」
「まあな。じゃあ、俺はさっさと帰るぜ。またな」
「ああ、待って」
帰ろうとしたザーフをラビラトスが引き止めた。ラビラトスは机の中から小瓶を渡した。
「これ。ガサイ先生から。もうそろそろ切れるころだからって…用法を守って正しく使ってね」
「…ああ」
ザーフは一瞬、顔を曇らせてからそれを受け取って、部屋を出て行ってしまった。
「今のは?」
「精神安定剤の一種…とでも言えばいいのかな。ザーフ君の為に特別に作られたものなんだ」
「精神安定剤…あいつ、何か心の病気を患ってるのか? とてもそんな風には見えないけど…」
ラビラトスは、カルテを入れたファイルを元に戻そうとして、止まった。そして、
「…朽木君。ここだけの話をしていい?」
「あ、ああ」
ラビラトスは言った。
「―――ザーフ君は、お姉さんを亡くしているんだ」
「…えっ?」
「詳しい話は僕も聞かされてないけどね…でも、そのせいで、ザーフ君は精神的にもろくなって…自分でも分からないうちに、勝手に何かをやってしまったり…そして、自分もなんでそれをやってしまったか忘れてしまうとか…そんな事が多々起きるようになってしまって」
「!!!」
『三毛猫』の件
「…心当たりがある」
「…そうかい…とにかく、それを抑えるための薬だよ」
「……」
(あいつに、そんな面があったのか)
分からなかった。恐らく、いや間違いなく。ラビラトスが話してくれなければずっと分からなかっただろう。
外では、雨が降っている。
俺はそれを見ながら、おとといの件を思い出す。
あの後、俺と茜は襲撃された事を報告した。
結果、俺と茜は今週一週間、山城基地からの外出禁止を言い渡された。今回の件は、あきらかに俺と茜を狙っており、今も犯人が俺達を危険性が高い。だから、警備が厳重な山城基地で安全に過ごした方がいいとの判断だ。
まあ、俺も俺で、研究に集中できるからいいのだが、でも正直気が滅入った。
だから今日は表層部の運動場で、茜とキャッチボールでもしようかな考えていたのだが…この雨ではな。
「なあラビラトス…夢って、なんだと思う?」
「…いきなり何?」
「…なんにも。じゃあまた」
そう言って俺はガサイ局長のオフィスを出た。
(『セヴンズアイ』か…)
どうせなら、戦技研の手伝いが終わった後、図書館に行ってみよう。いつもは研究論文しか読まないが…今日はこの世界の伝承とか、そういった物を読もう。
そう思いながら、俺は医療棟の廊下を歩く。が、あることに気がついた。
「あれ?」
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「俺、この世界に来て初めて雨を見た?」
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