幻想機動輝星

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序章 ある研究員の記録『ZERO』IS SLEEPING

第4話 異世界生活一日目(前)

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泣いている男の子がいる。
彼は虐められている。
「助ける」
同じように虐められても?
「助ける」
それは何故?
「友達だから」
あなたは彼に殺された。
「ああ」
あなたは彼の事を恨んでいる?
「いや」
何故?
「だって友達だろ」






「ん・・・」
目が覚めた。
時刻は午前4時50分。
いつもと同じだ。
横で寝ている茜を起こさないようにベットから出てそのまま浴室へ向かう。
洗濯機と洗面台が完備された脱衣所で服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
熱湯で、
頭からかぶる。
ふと、自分の左腕の義手・・・いや義腕と言うべきだろうか。
肩から下がすべて人工のものになっている。
しかし見た目は色が白い点をのぞいて人間の腕そっくりだった。
足も同様、すべて人工の義足になっているが、色を除いて人間のそれと変わらない。
ふと、鏡を見てみた。
右が焼け爛れいる。
大きな傷跡。
右目の黒い眼帯。
醜い顔。
自分の顔。
痩せきった体には、無数の傷。
「・・・弱くなったな」
そう思うと同時に俺はこんな醜い顔でも自分のことを好きと言ってくれる茜の優しいなと思った。
本当に、優しい奴だ。






学校の制服に着替え、食堂へ向かう。
途中何度か迷ったが何とかたどり着いた。
というか、こんな時間からやっているのかよ。
でもまあ朝早いので人もあまりいない。俺にとっては好都合だ。
カウンターにいくと、コックがいた。
茶髪の大男、小さな角があった。
「すいません。ここってコーヒーありますか?」
「コーヒーならあそこで飲めるぞ。ほら」
見ればなるほど、壁際にお茶のポットや紅茶の缶などが置いてあった。
「あ、しまった。コーヒーを入れるのを忘れていたな・・・待っていろ、今いれる」
「手伝いましょうか?」
「入れられるのか?」
「一応。鉄瓶ありますか?」
「あるのはあるが。ヤカンで入れるんじゃあないのか?」
「そっちのほうがよくて」
「わかった、今お湯を沸かす」
コックさんがお湯を沸かしている間、俺はフィルターをドリッパーにセットしコーヒー粉を入れる。
「ほう、ペーパードリップとは」
「インスタントより少々手間がかかりますけどおいしいんで」
「なるほど。おっと。お湯が沸いたようだ」
鉄瓶のお湯をフィルターの中に少量いれ蒸らし、まわすように再度お湯を注ぐ。
そして約五分後、ポッドの中はコーヒーでいっぱいだった。
コップに注ぎ牛乳をいれ、飲む。
「・・・うまい」
一体何日、いや何年ぶりだろうか、こんなにおいしいコーヒーを飲むのは。
うまい。
缶コーヒーやインスタントとはまるで違う。
早朝に飲んでいるから尚更だ。
「小僧・・・なかなかやるじゃないか」
見ればさっきのコックも俺が淹れたコーヒーを飲んでいた。
「昨日もあんなにうまそうにトンカツ定食を食っていたから只者ではないと思っていたが」
「そんなにがっついていましたか俺?」
「ああ、他のやつらとは比べ物にならないくらいな。ところでなんでこんな時間に食堂に?」
「なぜかコーヒーが無性に飲みたくなってしまってつい」
「そうか・・・おもしろい。お前、名前は?」
「朽木光男です。昨日戦略機動隊に入ったばっかりの新米です」
「朽木光男か・・・俺の名はジョナス・イーター。この食堂の料理長だ」
「料理長!?」
じゃあ、昨日のトンカツ定食は。
「そう、俺が考案した。それだけじゃない、ここの食堂のメニュー全てを考えた」
「おお・・・」
そうか、この人がこの山城基地の食を担っている人なのか。
「料理長、昨日はおいしいご飯、ありがとうございました」
「いやいや。俺もお前みたいな奴に出会えてうれしいよ」
「「ははははははは」」
「随分と盛り上がっているね」
見れば、レオス総司令がいた。
「おお、レオスか。聞いてくれ。というか飲め」
「このコーヒーか・・・なにこれうまい」
「だろう。こいつが作ったんだぞ」
「光男君。君なかなかやるねえ」
「いやいやそれほどでも」
なんだろう。この人たち食に関して凄くこだわっているような・・・
それよりも。
「レオス総司令、どうしてここに?」
「ちょっとコーヒーを飲みに来ただけだよ。まあこんなものにありつけるとは思えなかったけどね」
「・・・そんなにおいしかったですか?」
いや俺もそう思うけどさあ。
「ああそうだ。今日初登校だったよね」
「ええ、今日から」
「じゃあ学校が終わり次第戦技研に顔出してくれ。一応君、戦技研所属だから」
「ああ」
そういえば、俺は一応学校に行くけど書類上戦技研所属だったな。
「分かりました。学校が終わり次第行きます・・・あと、レオス総司令」
「うん?」
「後ろに副司令が」




「あなた血を・・・血・・・血をよこせえええええ」
「イエアアアアアアアアアアアアアアアア」





「・・・いつもあんな感じなんですか?」
「ああ、レオスの奴、メアリーに血をあまりやらないから月一でああなるんだよ。でもまあいつも通りといえばいつも通りだな」
「なるほど」
それであんな風に・・・
「さて、そろそろ朝食をつくるか・・・特別なものをつくってやろう」
「ありがとうございます」
そうして俺は朝食セットA(特別仕様)を食した。
朝からすでに総司令の首から血が吹き出て医務室送りになるという事案が発生しているが、その割には気分がよかった。
おいしい朝食を食べたおかげだろうか、力がみなぎる。
登校初日。俺は新たなる異世界生活の一環。異世界での学校生活に期待を寄せていた。
・・・もっとも、それは俺が教室に入った瞬間崩壊することになるのだが。




「あっ光男君。こっちこっち」
山城基地、ターミナルエリア。
七つの正六角形型プラントによって構成された山城基地の南エリア。
ここには近隣の基地や町を結ぶ交通機関の駅がある。
構内には多くの普通の通勤電車らしきものや、WGやコンテナをのせた貨物列車が停車していた。
いや、どちらかと言うと貨物列車のほうが圧倒的に多い。
見れば線路のほうも明らかに通常の2倍ほどの幅を持つレールが敷かれてあった。
よほど大きなものを運ぶらしい。
茜はすでに制服に着替えて待っていた。
食堂で聞いた話によれば山城基地で勤務する隊員はなにも山城基地内の寮に住んでいる隊員だけでなく、近隣の町から毎朝出勤(と言えばいいのだろうか)してくる隊員もいるらしい。
「やっぱり家族と一緒に住みたい人もいるからね」
「なるほど」
ターミナルエリアから発車した列車は、程なくしてトンネルに入った。
「これって東海道本線と同じルートを通っているのか?」
「うん。このまま山科盆地の北のほうを横断して琵琶湖へ行くルート。山科盆地のほうも町が出来ているんだよ」
「相当な人数が山城基地で働いているんだな」
「いや、山城基地だけじゃなく近くにある飛行基地やら観測所や企業の工場で働く人も多いって」
「・・・企業、確か戦技研と共同でWGを開発しているっていう」
「そう。浜大津総合学校にも親が山城基地や企業の工場で働いている人がいっぱいいるよ」
「そうか、賑やかそうだな」
「まあね、色んな種の人がいっぱいいるからね。もちろん普通の人間もいるけど」
「それはよかった」
すこしでも同種の奴がいる方が落ち着く。
「ところで、授業では何を?」
「国語、数学、世界史、WGの操縦、及び基礎魔法知識、体育、あと選択科目で魔法技術とか色々と」
「そんなもん習ってんのか」
「うん。やっぱり卒業した後戦略機動隊や企業に入る人が多いからね」
だからWGの操縦やら魔法を教えているのか。
少なくとも俺にとっては前の学校よりも俄然やる気がでる。
しかし、それはそうとだ。
「・・・友達ができたらいいな」
「大丈夫、今日は新学期初日だからね、クラスも新しくなっているよ」
「そうなのか?」
「うん。私も何日かだけ高等部の一年で過ごしただけで友達とかぜんぜん。だから私も友達ができたらいいなとおもっているよ」
「そうか・・・」
「何か不満でも?」
「いや別に。ただ」
「ただ?」
「どうしてお前は学校にサブマシンガンもって行くんだ?」
「・・・どうしてバレたの?」
「スカートの裾から弾倉見えてんだよ!!」
お前はあれか、戦争でも起こす気か。
「まさか、それを乱射して学校の生徒とまとめて俺を殺すつもりか!?」
「まさか、さすがにそんな事は」
「・・・そうか、それを聞いて安心したよ」
お前にも『自重』ができるようになったんだな。
「まあ、一応そういう事態になったときのためにプラスチック爆弾持って来ているけど」
「いますぐ捨てろ!!!」
冗談だよ、と言って茜はこういった。
「光男君を守るためだよ」
「・・・・・」
「葛葉みたいな奴と友達にならないようにするためでもあるけど」
「・・・そうか」
「それに、光男君を殺すのは、人間であるこの黒崎茜だから」
「気持ちだけは受け取っておくよ」
「それでいいよ・・・そうだ光男君」
「なんだ」
「言わなければ嘘じゃないよね?」
「・・・それってどういう」




デカイ
と、いうのが第一印象だ。
浜大津総合学校、正門前。
なんと表現すればいいか分からないがとりあえず洋風の建物しておこう。
その洋風の建物のでかさに俺はただただ驚いていた。
「こんなにでかいところが、学校?」
無論、世界をよくよく探してみれば同じような学校はあるのだろうが、
「じゃあ光男君はまず職員室に行って。私クラス分け見てくるから。じゃあ」
道案内もないのかよと言いたかったがそれを言うより前に茜は行ってしまった。
仕方なく俺は校舎に入り、職員室を探した。
約五分ほど探し、見つけた。
扉の上に職員室と書かれている。
思い切って扉を開けてみる。
中は意外と近代的だが、教師と思われる人が数人いる程度だった。
「失礼します、転入生の朽木光男です。挨拶しにきました」
何秒かの沈黙の後、答えが返ってきた。
「・・・転入生の朽木君?」
そういったのは金髪の女の人。エルフだ。メガネをかけている。教職員らしい。
「はじめまして。私の名前はルース・マイン。あなたのクラスの担任です」
「どうも始めまして。朽木光男です」
「えっと、朽木光男君だよね・・・ええと」
「朽ちる木に光る男と書いて、朽木光男です」
「ああありがとう。ごめんね。まだ君について書類をまだ読んでいなくて・・・」
「構いません。俺だって昨日こっちに来たばっかりなんです」
もっとも異世界からだが。
「そうだったの。これからよろしくね、朽木君」
「よろしくおねがいします」
「こちらこそ。じゃあ早速教室にいこうか」
そういってルース先生と俺は職員室を出た。
「教室は2号館の一階。高等部2年E組だよ」
「高等部の二年ですか?」
「ええ」
「俺の最終学歴については」
「高校2年生って聞いたけど。それがどうかした?」
「いえ何にも・・・」
最終学歴は高校一年のはずだが。
というか、俺は自分の学歴について話したことはない。
もし茜が話したとしたら、それはそれで間違う訳がない。
「ところでそれはどこから聞いたんですか」
「戦略機動隊の総司令官直々に」
「・・・総司令が?」
「ええ。本当に突然でね。昨日の夕方、直接君の転入を要請してきたの」
「直接学校に?」
「うん。『ちょっと訳ありの生徒を入れたい。理由は言えない」って」
「よくそんな要請が通りましたね」
「通るもなにもここには訳ありな人がいっぱい、ていうか私のクラスのほとんどが訳ありで。新人なのに・・・ごめんなさい、愚痴をいってしまって」
「いいです。続けてください」
「うん。先月の学期末にも訳ありの生徒が3人連続で転入してきて」
「三人?」
内一人は茜だろうが・・・残り二人はいったい。
「そう。全員戦略機動隊からの要請でね、三人とも今学期は私のクラス。だから朽木君と同じクラスだよ」
「そうですか」
茜と一緒のクラスになるという危険極まりない事態はおいといて、残りの二人については気になる点がある。
なぜかその二人対して俺の直感がヤバイと言っている。
嫌な予感。
「さて着いたよ。ここが高等部2年E組。君のクラスだよ」




高校一年の期末テストを受けてないのにも関わらず二年生に進級か。
なんだか特した気分だ。
「じゃあ先生、先に皆に話すことがあるから廊下で待っていて。中から呼び出すから」
そういってルース先生は教室の中に入ってしまった。
(さて、どうあいさつしたものか・・・)
第一印象が大事だ。
その内容によって今後の学校生活が大きく変わる。
よければクラスの中で友達を作ることがは容易だろう。
今回は異世界だ、コミュニケーション、学習、情報交換の場である学校は非常に重要な要素になるだろう。
俺はこの世界についてまだあまり知らない。
概要は聞いているけど詳しいことまではまだ分かっていない。
今後起こりうるあらゆる事態に対して、この世界についてのあらゆる情報が必要になってくる。
友達を作ればこれらの情報を得ることは容易い。
信頼性も高いだろう。
(と、もっともらしい理由をつけてみた)
本当のところはただ友達が欲しいだけだ。
ただ、それだけだ。
もっともその友達に殺されてここにいる訳だが。
「さて、ここでみんなに転入生を紹介します。入ってください」
来た。
俺はドアを開け、そのままの表情をたもったまま、きりっとした態度で壇上に上がり、言った。
「今日からこの学校で学ぶことになりました。朽木光男です。よろしくお願いします」
そういって一礼。
一応真面目そうな奴という好印象はついただろうからよしとしよう。
そういって頭を上げた。
俺はその時初めて教室を一望し、
驚愕した。
「・・・朽木君どうしたの」
「い、いえなんでも」
なにも無くはない。
「じゃあ朽木君、そこの窓際の席に座って」
「はい」
俺は窓際の前から2番目の席に座った。
となりには男子生徒、だが顔を合わせない。
いや、見せられない。
その時、ルース先生が言った。
「では、メンバーもそろったので、適当な順番でいいから自己紹介していってください。ではオール君から」
「はい」
オールと呼ばれたオークが自己紹介を始めた。
「オール・オートンです。オークです。科目はWG整備科を専攻しています。みなさんよろしくおねがいします」
(ふむ、見た目はあれだが悪い奴ではなさそうだな)
次に席を立ったのはチャラそうなお嬢様っぽい緑髪の女子生徒、背中から羽を生やしている。
「メルト・ランズデイ、サキュバス、航空技術科専攻、まあ、一年の間だけどよろしくと言っておきますわ」
(よくいるよなこういうお嬢様気質な奴、しかし航空技術科なんてあるのかここは)
次に席を立ったのは猫耳の黒髪褐色の静かそうな女子生徒、獣人だろうか。
そいつは端的に、平坦な口調で言った。
「タリ・タリヌ。航空技術科専攻。以上、よろしくおねがいします」
(あまりしゃべるのが好きな奴ではなさそうだな・・・)
次に席を立ったのは赤髪の活発そうな男子生徒、額に角がある。鬼だろうか。
「ザーフ・エンダーストン。航空技術科だ。よろしくたのむぜ!!」
(非常に性格がわかりやすい奴だなオイ)
次に席を立った男子生徒も同じように額に角があるが、静かで頭がよさそうな奴だ。
「アヴェント・アーサー、インキュバスです、航空技術科を専攻。一年間よろしくおねがいします」
(こういうクラスのまとめ役のような奴がいると助かる)
次に席を立ったのはメガネをかけた気弱そうな女子生徒、紫色の髪が特徴的だ。
「イラスク・アーノイド。魔女をやっていて魔法技術科を専攻・・・みなさんよろしくおねがいします」
(この世界にも魔女なんているのか)
次に席を立ったのは頭に角を生やし、背中に翼がある竜だった・・・って竜!?
「ザジル・バルボルド。見ての通り竜人だ。専攻は工業科。まあよろしく頼む」
(竜人も学校に通っているのか。やっぱり異世界だなここは)
次に席を立ったのはおっとりとした女子生徒、人間だろうか。
「イータ・ナシュトゥルゥ、精霊です。聖術科を専攻しています。皆様、よろしくおねがいします」
(妖精もいるのか、しかし聖術とはいったい・・・)
次に席を立ったのは金髪の爽やかな笑顔の男子生徒だった。背中から翼がでてる。
「やあ、僕は天使、名前はラビラトス・トラスナー、ラビーって呼んでね。一年間だけだけどみんなよろしく!!」
(なんかあれだな、乙女ゲーに出てきそうなやつだな)
次に席を立ったのは活発そうな茶髪ツインテールの女子生徒、額から小さな角が生えてる。
「私の名前はアリアス・イーター、航空技術科を専攻、みんなよろしくね」
(種族は鬼なのだろうか・・・というかイーターってどっかで聞いた覚えがあるんだが)
次に席を立ったのは・・・金髪ケモ耳幼女だと!?
「私、名前、リナイ、イナク、日本語、話す、難しい、聖術科、よろしく、おねがいしました」
(最後過去形になっているぞ・・・まあ日本語難しいのは確かだが)
次に立ったのは茜だった。
「みなさん始めまして、黒崎茜です。航空技術科を専攻しています。一年間よろしくお願いします」
(皆の安全のためにも殺し屋ということも付け足しておけ)
そう思ったが、しかし次に席を立った奴を見て、そいつに集中した。
黒髪の女子生徒、ショートヘアー、その顔はどこか茜とにていた
「皆さん始めまして、黒崎 浅葱(くろさき あさぎ)です。魔法技術科を専攻、よろしくおねがいします」
隠そうとしているが、その声は静かな怒りをこめていた。
その怒りは、の矛先は恐らく・・・
そう思ったとき、隣の男子生徒が立ち上がった。
その顔は、まだどこか幼さを感じさせる。
「はじめまして、交野 勝(かたの まさる)です。魔法技術科を専攻しています。よろしく・・・おねがいします」




その後、今後の授業内容などの説明(資料などは全て端末で行われた。ハイテクである)がされ、午前中に解散となった。
そのときルース先生から選択科目を決めるように言われて、俺は帰ろうとしたが、留まった。
授業は明日から始まるらしい。
ならば、それまでに話合う必要がある。
異世界生活一日目だというのに。しかし、原因は自分にある。
全て、
何もかも。
まだ一日目、今の内に、話し合おう。
そうしなければならない。
俺にはその義務がある。
俺は正門に向かう。
もう既に二人は来ていて、俺を待っていた。
一人は黒崎浅葱。
もう一人は、交野勝。
ふたりとも、真剣な表情で、待っていた。
俺は立ち止まり、相対する。
逃げてはいけない。
しっかりと、
目を逸らさず、
しっかりと、
見据える。
「ひさしぶり・・・って言ったほうがいいんでしょうか」
「それでいいだろうよ、一応20年くらいたっているようだから」
「そうですね」
男子生徒は、自らが死んだ原因の一つである俺に対して、
呼び捨てにしてもいいのに、敬称を付けて言った。
「お久しぶりです、朽木先輩」
そう、祇園高校歴史研究部部員 交野勝は言った。
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