《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

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第2章 - Sec 2

Sec 2 第18話

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 ――――――なんで、あいつらの言う事を聞くんですか?」
壁際かべぎわに立ってタブレット端末たんまつを操作していた彼は、隊長らへ多少のおどろきと多少の不満ふまんとも取れる様な質問しつもんをしていた。
・・少し待ったが、返事がないので顔を上げて隣を見たが、その筋肉隆々きんこつりゅうりゅうでひげづら無骨ぶこつな先輩は向こうをながめていた顔をこちらへ向けて、太い肩を軽くすくめて見せただけのようだ。

『今回の場は交流こうりゅう側面そくめんがある。多少の変更も問題ないだろう。いつもと同じような訓練になっては今回の場の意義いぎうすれる。』
その耳元から聞こえた声は無線からのアイフェリア隊長の声らしく、つながっている彼女へすらすらと弁明べんめいする機会を与えたようだ。
むしろ、愚痴ぐちっぽいことを聞かれてしまったことに、彼は向こうの壇上だんじょうに立つ彼女の姿をちょっとおどろきつつ、やべっと内心ないしんで思ったが。
『あいつらの言い分も間違っちゃいねぇってこったな。』

『――――あまいっすね、』
そうそばの彼のひとり言のような声も。
『まあ、俺はそういうのいいっすね、って方なんすけど、』
苦笑にがわらいが混じるような声が無線から耳に入って、壇上だんじょうのアイフェリアはふと横目を向けつつ、横顔で少し笑った。
そして、正面に集まる彼らへしんの通った声をふたたび発する。
いては、さらなる募集ぼしゅうをかける。もちろん、演習中えんしゅうちゅうでも希望は受け付けるが―――――――」

――――――あいつらと?やんのか?」
「なんかぇえなぁ~」
「『C』にびびってんのか?」
「『A』かもよ?」
「どっちも気が引けるっつうか、」
「それな、」
「でも滅多めったにない・・」
「あん?」
「おいおいおい、どうすんだよ?デン、セイガ、」
「はぁ~、どうっすっかな~?――――――――」

――――――ヤルプ、お前だってむかしはあんな感じだったろ』
『いつのガキの頃の話っすか』
「それで。諸々もろもろ管理コントロールはどうするんです?」
彼が、檀上だんじょうのアイフェリアの背中を見ながら、少し声をひかえて隣のメンバーにたずねた。
『そのためのバックアップ支援スタッフだ。』
『大急ぎでやってるよ』
「えっ?システム作業さぎょうぜんぶ丸投げっすか??」
『お互いにメリットだろ?普段取れないようなデータも増やせる、奴らの仕事もできる』
『『C』のえらい人たちに怒られないんですか?勝手に予定変更して、』
前提ぜんていのデータ収集しゅうしゅうができるなら、あとはこっちにまかせるって、そういうことだろ?」
『いい感じの拡大かくだい解釈かいしゃく、あざっす』
『俺、そういう系の会話、苦手にがてなんですよねぇ、』
よろこんでるのはデータマニアの変態へんたい模擬戦シミュレータをやりたい奴らだけだよ」
『わかりやすい』
『いま、その『マニア』たちが嬉々ききとして再設定リセットしている、数分でできるそうだ。』
『ヤバいっすね、』
記録ログられてるぞ』
「あれ?会話もられているんですっけ?」
『耳に入ったらおこるぞ』
「もう何も言わないっすよ」
『へっへっへ、』
「我々はあとで詳細しょうさいを確認します。それでいいですね?隊長、」
『今日はお前らに一任いちにんしている。好きにやれよ、アイフェリア』
『はい、』
『自由にやらせすぎじゃねぇか?』
『へっへ。まあ、待たせ過ぎだな、』
了解りょうかい。あともう少しです。・・あともう少し―――――――』
――――――前へ出て行った彼らへ、離れた場所の檀上だんじょうに立つアイフェリアがアイコンタクト目配せで、会話していた彼らへまたしめし伝えたのを。

そばに立つケプロが目のはしに、彼らが動く様子をみとめていたが。

アイフェリアの冷静れいせいな目が、静かに前面の集団しゅうだんへ向けられると、彼らはまた少し緊張きんちょうを見せる。
アイフェリアが前を向いて再び口を開きかける。
「―――――度胸どきょうだけはあるな、生意気なまいきだが、」
と、ケプロが小声でぼそりと、つぶやいた愚痴ぐちが、近くて聞こえたアイフェリアは、かすかな苦笑いがまたれたが。
『ここは軍部じゃないっすからね?グーパンとかダメっすよ、』
「わぁかってるよ、」
少しは愉快ゆかいな会話に、ほんのわずかに口元を移した、無線からの声を聞き流してアイフェリアは、再びみんなへ口を開く。

『準備もじきにととのえられるそうだ。
希望者はあちらへ集まってもらおう。
演習えんしゅうの時間をけずって、実戦形式に近い模擬シミュレーター戦をやろうと思う。
だが、君たち4人だけじゃエリアが広すぎる。
人数を増やす。
こちらからもメンバーを出し、チームに・・・』

「ちょちょ、ちょ、ちょっ、ちょっ・・・」
って、提案ていあんを認められたはずの『C』の彼が少しあわてたように、まるで|小動物を呼ぶかのようなパチン、パチンと指をらして周りの目を集めた。
太々《ふてぶて》しい態度たいどには周りの目がまたきつくなるが、檀上だんじょうの彼ら、アイフェリアさんたちもそれには気が付いてはいるような目線の動きだった。
「――――逃げんの?」
そう、彼は。
さっき聞いたような言葉を今度も、もう1度。
ねめつける様な彼の顔を一瞬・・・それは、はっきりと挑発ちょうはつをする彼らの・・・。

『まだ不服ふふくか?』
でも、アイフェリアさんは冷静れいせいだ、表情をくずしもしない。
「言ったよね?俺たちは、最前線さいぜんせんに出てるようなのとヤりたいんだって・・!」
『・・なるほど。つまり、それは・・?』
1VS1タイマンだよ、タイマン!」
『・・・』
「負けんのがぇーのかよ~!?――――――
――――――――こういうときってさっ、タイマンなん?」
と、知らない声が聞こえた。
その声をかけてきた、『C』の彼らの背後に立つ彼の姿は。
「4人と4人でやるつもりなんか?1VS1タイマンって、そりゃ無理だろう?」
ニヤニヤと笑いながら、彼らのそばまで歩いてきていた彼の姿は、見覚みおぼえがある。
「ぁん?」
「誰だお前?」
「おん?『Class - B』のデンってんだ、」
そのデンと名乗った彼の後ろにも、その仲間らしい人たちもそれぞれの面持おももちで付いてきている。
ミリアは知っている、『B』と名乗った彼、さっき見た、募集ぼしゅうの呼びかけに手を上げかけた人たちだ。
まあ、さっき手を挙げかけたけど、『C』の人に邪魔じゃまされていたわけだけど。
その中にはたしか、前の合同トレーニングで上位の成績スコアだった人もいる。

デンと名乗った彼の後ろに3人、それが『C』の彼らのそば合流ごうりゅうするように立つ・・・、それは、まるで・・・。

1VS1タイマンするならけるもんが絶対ぜったい必須ひっす、だろ?」
って、デンはそう言って、檀上だんじょうのアイフェリアさんたちへ顔を向ける。
1VS1タイマンで、けか?』
「そういうもんじゃないっすか?」
デンのちょっと屈託くったくのない笑みは、『C』の彼らとはまた違う感じで太々ふてぶてしく見えたけど。

「勝ったらなにか良い事ないかな?ってさ、思わん?」
「それな、」
独り言のように言うデンを、ミリュモが言いアイディアだと指差して。
当たり前のように、仲間のを作った彼らは、『C』の彼らの傍に立っている、つまり、同じ方を向いて。
「ハハハっ、いーじゃん!?それ!」
急に、ガリナ・エルポがまるで、無邪気むじゃきな少年のように、大人おとなしそうだったけど、今はちょっと目をかがやかせていた。

「やろーよー!?」

―――――周りが目線で問うのはアイフェリアたちの方だ。
集まり終えたその視線らを受けて、彼女はなにか思案しあんをしていたのか。

「調子に乗り過ぎだな・・・」
ふと、周りで反感はんかんの声が聞こえてくる、けれど。
たしかに、けなんて、そんなの、訓練中だし、許可きょかが出るわけが・・・―――――――

『勝負か・・・』
アイフェリアさんの声が少しれたようだ。
壇上だんじょうで、そう・・・まだ何かを考えているようだったが。
誰かが動いて口を開きかける、けれど、それをアイフェリアさんは軽く手の平で制止せいししたようだ。
静かなたたずまいで、時折ときおり、周りの仲間たちに何かを伝える様な冷静な目線を送る。
口元が、無線むせん通信つうしんを通してわずかに動いていたようだ。
無線の向こうの彼らへ微かに口元を移したように、一瞬だけゆるめたような気がした。

『逃げはしない』

一瞬ひとまたたきで、そう、さらりと言ってのけたアイフェリアさんは。
彼らへ、かすかな微笑びしょう不敵ふてきに。
―――――で、何をける?』
そう、問い返した―――――――

―――――静かに、周囲がざわめく――――――その場のすべての視線の中心にいた。

「・・え、マジでっ?」
「ちょま、けって?」
逆に、ふっかけた方が、すごいおどろいているけど。
けるって?え?」
「普通あっちが決めるんじゃね?」
「欲しいもんなんかあるか??」
「欲しい・・?」
「新しいゲームが出るんだけど・・」
「おいルガリっ、そういうことじゃない―――――」

色めき立ってめる彼らのようだけど。

『負けた方が腕立て伏せとか、がいいか?』
「げ、ばつゲームか・・?」
「―――――『A』の編入へんにゅうを、」
そう・・・。
彼、マイヤーがその中で、1人、アイフェリアさんへ伝えていた。
『・・なに?』
「あぁそれっ!」
「それだそれ、それそれ」
「ちょウイいーじゃン!」
「っぶはっ、」
「え、マジで?」
「ぶぁっはっはっは・・、」

「それしかねーだろ・・」
そう、静かな声を、闘志とうしめた声で、前に立つディーが、そのするどい目つきでマイヤーを振り返る――――――――冷静なマイヤーは、ディーへかすかにうなずき返した。

―――――ぉお・・?
周囲のどよめきを余所よそにして。
―――本気で・・言ってんのか・・・?

―――――周囲の声に気が付く、ミリアは一瞬、周りを見回していた。
誰かが顔を見合わせて話す様子も、彼らが行こうとしている先を見つめている眼差まなざしも。

『・・君たちは『A』への異動いどうを希望か。』
アイフェリアさんは、そう受け止めたようだ。
「それしかないっす!」
「マジかよ~」
彼らの中でも意見はちょっとバラツキがあるかもしれないけど。
『・・その件は私の一存いちぞんじゃ決められない。
ただ、模擬戦もぎせんの結果はしっかり残し、報告する。
その上で君たちの希望をしっかりと上へ伝える、そんな形で、いいかい?』

どよめきが起きている、そんな中で『C』と『B』が混ざった彼らは、こぶしを強くにぎりしめた。
「おっしっ・・・、」
「忘れんなっよっ・・!」
「『A』に勝ちゃあいいってことか?」
余裕よゆうっしょ・・」
「ぶぁっ、はっはっ、やべーな、おんもしれーな、こいつら、」
「・・マジで、」

『その代わり。
こちらが提案ていあんするルールで多少は譲歩じょうほしてもらう。
タイマン勝負などはできないが、それに近い公平フェアなルールでやろう。
いいね?』

・・仲間を振り返るミリュモも。
頷くマイヤーたちも。
「・・・」
無言むごんしゃに立つエルポも。
・・見つめるディーも、・・アイフェリアを見据みすえるその顔のあごを引いた。
それは肯定こうていの合図なのか。

それらを少し傍観ぼうかんしていたような、可笑おかしそうに口端こうたんを持ち上げているデンも。
「デン、お前・・はぁマジかよ、」
その傍の3人の仲間たちに、多少はあきれられているようだったが。
「なんだよ、結果良かったろ?」
「何が良いのかもうわからん」
「良かったろ?なあセイガ?」
「・・・」
「っふ、もうワクワクが止まらないってヤツだな、」
「セイガはなんも言ってねぇぞ、――――――」

『――――――よし、話を進めようか』
アイフェリアさんの一声ひとこえは、そうやって、話がまとまったようだ。

『さて、そこの君たちも希望者にカウントするのに異存いぞんは無いな?
名前を。』

「うっす、俺は『デンシャラ・アズミック』でっす。うっす、『B』っす。」
「・・イガ・・・デ。」
って、彼は声が小さかった。
「はい、こいつは『セイガ・ギュウデ』って言ってます、『B』です。」
「『エリケ・デッサ』っす。同じ『B』っす。」
「『コリヴァ・イートン』だ、ぞ。『B』だ。」

―――――どこかで見た事のある、追って加わった彼らは以前のトレーニングの時間でも見かけていたような人たちだ。
確か、直近ちょっきんの合同トレーニングでも成績せいせき優秀者ゆうしゅうしゃたちだったはず。

立ち並ぶ彼らの横顔は、わずかに見上げるように壇上だんじょう見据みすえている。
各々のそれぞれの表情は対照的たいしょうてきだったりするけれど、中には口端こうたんを持ち上げていった彼もいる。
まるで、それらが不敵《ふてき》な笑みに見えてくる、それは気のせいなのか。
でもそれは、さっき見た、『C』の彼らと同じ、見据えるものが『そこ』にあると―――――――

『君たちも向こうへ。
これで計8人だ。上々じょうじょうだ。もっとやそう。』

って―――――まだ増やす・・・見守っていた人たちが、どよめき始めた。
模擬戦もぎせんの人数集め、9人以上は、けっこう大きな人数だが、相手チームも含めて総勢そうぜいで2ばいの18人以上が参加することになるはずだし。

『他にいないか?』
アイフェリアさんたちが見まわす中で、戸惑とまどっている人たちが多い気がする。
ず、私たちも出る。けの当事者とうじしゃが逃げるわけにはいかないからな。どうだい?』
アイフェリアさんたちも出るって・・・。
「おぃ、マジかよ・・・」
「お前ら、しあわせもんだな、稽古けいこつけてくれるってよ、」
「お前も手を上げろよ、」
「俺はいい、――――――

『他に希望者は?』

―――――――マジか、」
「隊長たちが戦うのを見れんのか?」
「遊びだろ?」
「あんな奴ら、くっと軽くひねられて終わりだ、」
「だろうな、」
「勝つかもしれないぞ?」
「そんなん、ありえねぇって・・」

「どんだけ差があるんだろうな・・?」
「『C』の特能力者って、どんな?」
かくし玉が多いっていうしな、『C』は、」
研究所リプクマ秘蔵ひぞうっ子たち・・・俺も見るのは初めてだ、」
「おりがいなくても、やれんのか?」

「――――――おい、いいのか?アイフェリア、」
彼らがざわつく様子を目の端に、一時的にマイクを切ってアイフェリアたちが顔を合わせて少し言葉を交わしていて。
「問題ない。あれだと収拾しゅうしゅうがつかないだろう、」
すでにだいぶ予定が変わってるぞ・・?」
「目的からはれていない。」
「そりゃあそう言えるのか?」
「・・・ですよね?隊長たいちょう、」
そう、アイフェリアは少し離れた場所で、高みの見物をしていたらしいエヴィン・バーダーと目線を交わし。
『ああ。面白けりゃそれでいい。だろ?最初に決めたとおりだ。』
耳元の無線から、彼がうなずき返したのも確認した。
『ま、俺も賛成さんせいっすよ、』
「お前『も』、だろ?お前『だけ』じゃない。」
『うるっせぇな、グランス、』
「勝ち目はないな」
「・・・ったく、しょうがない人だ。『C』のお目付めつけ役たちにはちゃんと話をつけといてくださいよ?」
『お?彼らならいま、隊長のとなりふるえてるよ』
『そりゃ、かわいそうに、―――――――』

――――――壇上のだんじょうアイフェリアが目の端に気が付く、人のれから前にあゆみ出た、1人の・・・――――――
「―――――――希望します。ロアジュです。『Class - B』所属しょぞく、」
『来てくれたか。』
わずかに、口元をやわらかくしたアイフェリアと、それを見上げ見据みすえるロアジュの、その後ろに続いてきた彼らも。
「うぉ、おま、ロアジュ、」
「ゃ、やんのか、おま・・」
『君たちもか?』
「ぁー・・」
「お前らは行かないのか?」
そう、肩越かたごしに振り返ったロアジュを。
「そりゃ・・、」
「行くに決まってんだろ。」
彼らも、ニヤっと笑った。
「『B』のラッド、でーす!」
「『B』のニール!でぃーす!」
『はは、元気がいいな。これで・・、君もか?』
そのさらに後ろに立った、彼女にも、アイフェリアは目が合う。
「・・フィジー、『B』の、です。」
『OK、計4名追加ついかだ。』

―――――彼らも――――――――優秀者たちだ。
見覚えがある、『B』の人たち、同年代、それに近い、訓練で見かけるとき、常に目立っていたような。

――――――これで、12人?」
「若い奴らばっかだな、同年代どうねんだいか?」
「『A』からも同じ人数出るってことだろ?」
「24人?マジか、やべぇな?」
「誰を出すんだ・・?」

「―――――――ま?・・え、本気?出んの?うわぁ~?」
「―――――」
『他に・・・?』
――――――横目にめて気が付いた、アイフェリアの声に合わせて、見つけた。
――――人をき分けて、前に出た、彼女たちも。
「クロ、『C』から、です」
アイフェリアが、その姿すがたたちを、真っ直ぐに受け止める。
「あ、うー、アーチャっ、同じくっでっすっ、以下、おなじくっ、」
「ぇ、えぇー?」
そのそばあわてていた彼女は戦闘員せんとういんじゃないから。
勇気ゆうきを出して手を上げたような彼女たちを心配しんぱいしているようだ。
『2名、追加ついかだ。』

希望者きぼうしゃが、今のところ計14名・・・―――――――――みとめられていくたびに、周囲の人たちがざわめく様子は、おどろいたり笑っていたり、困惑こんわく怪訝けげんな、いろんな表情や様子で・・・―――――――

――――その視界のはしに、気が付いた、ミリアが――――――アイフェリアさんが、集まる彼らをながめていたはず―――――少し目を彷徨さまわせるように。

――――――――何人もの人が集まる中を――――――――その目は―――――その双眸そうぼうと、正面で――――――
―――――――・・・正面と、衝突しょうとつした――――――――

『私を見た』―――――――ミリアは、ちょっと、どきっとしていた―――――――

ミリアが―――――どきっとした、のかもしれない。
アイフェリアさんが、こちらを見た気がして。

でも、気のせいかもしれない。
アイフェリアさんは、また別の場所を見ているから。
少し、どきっとしただけで。

瞬くミリアは、きょとんと。

食べかけのサンドイッチをまだ、持っていたことを、思い出した。
だから口へ運んで、かじって。
咀嚼そしゃくして――――――――

――――――ルールだ。』
そう、檀上だんじょうのアイフェリアさんが耳元を操作そうさしつつ歩き、周りへスピーカーを通して声を届ける。
集団戦しゅうだんせん
混成こんせいチームと『A』の選抜チームで戦う。
基本きほん装備だが、装備品アセット最低限さいていげんでいく、』
「ぇえ?『混成こんせいチーム』?ってなんだよ?」
「あん?」
「俺らは『Class - A』とやり合いたいって言っただろ?ばらばらになったら意味ないじゃんか?」
『大丈夫だ。
こちらが『A』の選抜せんばつチーム。
そちらが参加希望者きぼうしゃで分かれてやろう』

「なんだよ、そういうことかよ。」
「いいね、」
「タイマンに近い、かな?」
「んん?混成こんせいってぇと・・・?」

『既に『A』から出る者もだいたい決めてある』
――――――あはー」
無線通信むせんつうしんを通して聞いてた彼らの顔も引きつるが。
「あいつ、俺らも巻き込むつもりだ、きっと今も頭の中で参加リストを作ってるぜ、」
「俺もいや予感よかんしかしてねぇ、」
「こんだけやったら、負けるわけにもいかねぇじゃんか」
「はっはは、まつりらしくなってきたな」
「おいバーク、当然お前らは入るだろ。あれだけ息まいてたんだ、逃げるわけないよな?」
「んげぇ・・っ!」
「後先考えねぇからだぞ、バーク、」
「うっせぇ、こりゃあ、あれだ。バタフライ効果ってやつだな、」
「なんかちげぇ、」
「ルぅぅぅううおぉっしあぁーっ!」
「ロヌマがよろこんでるのは何でだ?」
「知るか、さっきのに持ってんじゃねぇの?――――――」

『――――――もちろん、参加者に合わせてこちらも人数は合わせる。
・・・そろそろ時間か。
・・もう一度だけ言おう。
この中から『A』の選抜せんばつと戦う希望者を、つのる』

――――――アイフェリアさんのその一声で、ざわつきから、静かになりかける、彼らは周りを探すように。

――――――――アイフェリアさんは、周りを見回しているから。
また、私と、ちょっと目が合う、気がする。
そんな気がした、だけで。
――――――本当は、どっちなんだろう?

『もう、いないか?』

それは、数瞬すうしゅん
ふと気が付いた、もくもく食べてたサンドイッチが、もう手には無くて。
最後の1口だった。
ミリアは。

ごくんと飲みこんだ。

「まだ人数がいるのか?もういらないんじゃないか?」
「『A』で評価ひょうかされるチャンスだってよ、」
「じゃあ俺も行ってみようかぁ?」
「お前じゃボコボコにされる」
「あんだと?」

――――――――ふむ。

サンドイッチが無くなった、と思ったら。
思いのほか、右手は軽くて。
手を広げたら、すんなり開く。
――――だから、だ。
ぐに。

緊張きんちょうはしていないと思う。
ミリアが、ただ手を挙げることに、なにも必要は無く。

ただ、手をばした―――――――

―――――すると、アイフェリアさんが私を見つけた。

ちょっとだけ、笑ったのかもしれない。
そんな気がした。

『所属と名前は?』

―――――その場のすべての視線が、私に集まったのを感じていた。

「ミリアネァ・C、『Class - A』所属です。あ、うちのチーム全員も。」

私の背後はいごで、ちょっとおくれて、『チーム全員』と聞いておどろいたのか変な声がすぐ聞こえてきた。

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