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第40記
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「――――ケイジさん!」
少女の声が聞こえた・・・。
「んぁ?・・メレキか」
ケイジは・・・まどろみの中から戻ったようだった。
砂漠をぼうっと見ていて、きっと徹夜した所為だ。
「探しました!あっちの黒い車の人達の中にもいなかったし、聞いてみても教えてくれないし、皆さんもう帰っちゃったんじゃないかって思って・・」
「ん、お、おう・・」
なぜかテンションの高いメレキだ、その勢いにケイジは少し押されてる。
「でも、皆がこの辺で見たって教えてくれて、やっと見つけられたんですから!」
息継ぎの為に、ようやく言葉を途切れさせたメレキで。
「おう・・、えーと・・、何か用だった?」
「皆さんにお礼が言いたかったんですっ!!」
「・・あ、ああ、」
「・・?なんですか?」
「いや・・なんか」
一瞬の剣幕が凄かったからとは言えない。
「本当にっありがとうございましたっ!皆さんがあんなに頑張ってくれたから、ブルーレイクは無事だったんだと思います!・・死んじゃった人もいるけど、仕方ないと思います。ケイジさんじゃなければ、絶対に・・あの・・・」
「・・ん?」
ケイジが怪訝そうにしたから、メレキは少し慌てていた。
「夢見るんです、いつも見ちゃう夢みたいの。」
「夢?」
「隠れてる中で、私寝ちゃったんです。その時、夢で・・ケイジさんたちが戦ってて・・・」
「・・夢見んのか。」
「・・・はい、そうです。」
「・・よく寝れんのな。はははっ」
「べ、別に眠いからじゃないですよ・・っ」
「ん、違うのか?」
「・・ふっ、と、気がついたら、眠っちゃってたみたい・・」
「ぷっははは、同じようなもんだろ」
「う~~~~」
少し顔を赤くしてむくれるメレキを見て、笑う。
それを見て更にむくれるメレキだが、それを見るケイジはやはり嬉しそうに笑ってた。
だから、メレキが諦めたように身体から力を抜いて、一息、吐いてた。
良い言葉は探せなかったらしい。
「そんな意地悪だとは知りませんでした」
で、またむくれた。
別に、意地悪していた気は無いのだが。
「そうか?わりぃな」
「・・う、うん。・・あ、他の皆さんはどこに?」
「他の?ミリアとか?」
「そうです。」
ふとケイジが横を見ても、さっきまでいた筈のリースがいなくなっている。
「あれ・・?」
「はい?」
「いや、」
ふらっとどっかに消えるのはリースのいつもの得意技だ。
そうか、リースはいなくなってたか・・・。
「何か用事?」
「はい!皆さんにもお礼を言おうと思って」
「ん、そうだな・・ちょっと無線使ってみるかね」
「え、いいんですか?」
「ん?いいけど・・ちょっと待ってくれよ」
「はい・・・!」
「おーい、誰か、応答してくれ」
『どうしたの?』
「ミリアか?いる場所どこだ?」
『今?今は、ラクレナイの中よ。あ、そろそろ用が終ったから私達は帰れるって』
「お、早いな」
『EAUの方からも言ってくれたみたい。だから、調整するし、戻ってきて?』
「了解、あ、そこにリースとガイもいる?」
『ガイはいるよ、リースは・・・?』
『・・呼んだ?』
「リースか、今何処にいる」
『・・散歩してる』
「散歩ってどこ」
『さぁ?』
「なんでだよ・・・。まぁいいか、そろそろ戻れよ、聞いてたろ」
『聞いてた、問題ないよ』
「どうでした?」
眼をきらきらさせて尋ねてくるメレキだ。
そういや、連絡とったのはこっちが目的だった。
「俺たちが乗ってきた車にいるってさ」
さっき『ラクレナイ』とミリアが言ってたが、確か前にミリアがつけた名前だ。
以前、車にもニックネーム付けるか、って話になって結局ミリアの案に決まった。
まあ、たまにその名前は使ってる。
「車ですか?もう帰っちゃうとか!?」
「まぁ、そろそろだって言って・・」
「あああ・・、早くしないと皆行っちゃう!私、走っていきます!」
「あ、ああ・・」
既に走り始めたメレキの背中に何とか頷いてみせる。
元気でいて、妙に迫力というか雰囲気?気勢で圧す子である。
ていうか、無線使えば良かったんじゃねぇかな、って思ったが。
それに、俺がここにいるからまだ出発しないだろう、とその慌てて駆けていく後ろ姿を・・・見送るケイジだ。
そんなぱたぱたと駆けていく後ろ姿を見ていると、少し微笑める。
なんか、不思議な子だ。
あれが、純真無垢な子ってやつなんだろうなぁ、とケイジは思いつつ。
ケイジは立ち上がり、寝そうになってた身体を、『うーっ』と伸ばす。
そして、歩き出してのんびり帰るのだった。
つうか、歩いてると村中の人達がこっちを見てくる。
少し居心地が悪かったが、傍でこっちを見ていた子供が声を掛けてくる。
『ありがとうね』って。
『ありがとー』って。
ケイジは苦笑いしながら、頭の後ろをぽりぽりと掻いてしまう。
「・・なんか・・むずむずすんな・・・」
そう1人で呟いてた。
「―――でもですね、大切なお客様をお見送りする時は、皆で丁重にしないといけないって」
「でも帰投命令出ちゃってるしなぁ・・さっき、挨拶はしたから、伝えといてくれないかな?メレキが代表ってことで」
お家の軒先の日陰の中で、メレキが足止めしたがってるのを、ミリアはちょっと困ってたけど。
「私がですか?」
「うん、色々お持て成しもしてくれてありがとう、って。ちゃんと挨拶できないのは悪いなって思うけど」
ガイやリース達も、そこの日陰でのんびりしている。
お持て成ししてくれるのはありがたいけど、ずっと長居していたらたぶん、警備部から新しい仕事を割り振られそうなので、それだけは遠慮したい。
それに、軽く汚れを流したとはいえ、早くちゃんと身体を洗いたい。
血の臭いもまだ残っている気がする・・・。
「いえ、悪いなんて。それは、大丈夫です。お父さんや、アシャカさんや、皆感謝してるし、みんなにも言っておきます」
「ありがとうね、メレキ。あ、これ、返しといてくれるかな、アシャカさんに」
ミリアは前に手渡された黒くてごつい無線機をメレキに手渡す。
「はい!」
返し忘れてたそれを受け取ったメレキは、ずしっと少し重たそうに両手で受け取った。
「よ、」
歩いて戻ってきたケイジが、メレキとミリアたちに声を掛けた。
メレキは振り返って、ケイジにはにかむような、でもそれから真剣な眼差しを見せた。
「・・あの」
「?」
「あのね、いつか、私もドームに行ってみたいって、思うんです」
「ドームに?」
「うん、いつか。・・その、見に行くだけじゃなくて、・・ううん、行きたいんです、きっと」
「・・そうか、行けるといいな」
「はい!・・でね、もし行けたら、訪ねていってもいいですか?皆さんのとこ」
訪ねると・・・。
「・・訪ねるね」
「・・・無理ですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが・・」
「リプクマを訪ねればいいんじゃないか?」
ガイが後ろから声を掛ける。
「そうか?」
「総合病院やってるし、いいかもね」
ミリアも賛成のようだ。
実際、リプクマは政府が支援する総合病院としてもリリー・スピアーズの社会に貢献している。
けれど、複雑にシステム化する一方、プライバシーは軽々と教えられない部分もあるらしく、EAUでは規則もあり許可も必要だろう。
一応、ケイジ達もリプクマのスタッフのような扱いにはなっているらしいが。
「どういうことですか?」
「ん-とな、」
「ちょっと正確じゃないけど、私たちには私たちのお家が無いの」
「気軽に会えるような、な?」
「そうなんですか・・?」
「うーん・・、よっしゃこうしよう。そのリプクマっていう所はドームで調べればすぐに場所がわかる。もし、それでも会えないなら、この番号に連絡してくれ」
「番号?連絡?」
「ん?アドレス、」
「あ、はい。知ってます。使ったことないけど」
「なに!?」
「・・すいません」
「ケイジ、怖がらせてる」
「あぁ・・、わりぃ。ここじゃ必要がないもんか。」
「ドームに知り合いがいなけりゃ、使わないだろうね」
「よし、じゃあ、それも調べろ」
「えぇ」
ミリアが驚いたような。
「ドームじゃみんな使ってるぞ。他にも面白いもんいっぱいあるしな。美味いメシとか、スタジアムとか、ゲームとか、他になんかあるか?」
「なんだろう?」
「女の子なら可愛い服とか、お菓子のお店とか」
って、ガイが。
「それだな。目に入った店から片っ端に入るといいぞ。面白そうだろ」
「えぇっと、・・よくわかりません・・・」
って、メレキは言ってたけど。
「だろうな。」
にっとケイジは、許容範囲を超えたのか頭を抑えているメレキに笑ってみせる。
「俺もよくわからんし」
って。
「適当に教えてんじゃないって」
ミリアがケイジに言っといてた。
「ま、わからないんだから、楽しんでいこうぜ」
「あ、はい!」
ミリアはケイジを呆れた目で見ているけども。
「あ、っていうか、携帯持ってる?」
「あ、その、ないです。」
「ああやっぱり、そっか。」
「携帯ないのか、つらいな。」
「あ、暗記します」
「紙とかボードがあれば・・」
「取ってきます!」
って、メレキが凄い急いであっちのお家に飛び込んでいった。
知り合いのお家に頼むんだろう。
「携帯ねぇのか・・・」
ケイジが呟いてた。
「この辺だと守秘義務があるからね。カメラ・通信とかで情報漏洩する可能性があるのは無理なんでしょうね。」
「そっか。携帯が無いなんて・・・暇でヤバそうだな」
「だな」
ガイもにっと笑ってた。
「友達とかは多そうだけどね」
ミリアはそう、村の景色に目を細めてた。
「じゃあ、車を回してこよう」
ガイがそう言って、立ち上がっていた。
「――――書いたのってケイジのプライベートのアドレスでしょ?」
「ん、そうだぞ」
「ふっふ、じゃ私も渡しとこ。メールしてね」
「あんだよ、それは」
「久しぶりの再会、果たしてどっちが先か、ふふっ。ガイたちも渡す?」
「俺の?いるのか?」
「あ、はい!」
「なに?出し渋るつもり?」
「はは、いや、俺のは欲しがらないんじゃないかと思ってな」
「いります!」
「ははは、今書くよ」
「リースは?」
「僕?」
「そっ」
軽装甲車のドアを開けっぱなしの、メレキが中の日陰で覗きながら笑ってる。
リースがミリアをぼーっと見つめる妙な間の後、それから端末を自分のバッグから取り出した。
「番号覚えてないのね」
ミリアがリースの様子を見守りながら悟ってた。
そんな風に、メレキと一緒にのんびり話してた。
周囲の軍部や警備の彼らの目も、何となく引いていていたようだったけど。
たしかに、ちょっと珍しい光景かもしれなかった。
物々しい事後処理が行われている村の中で、そんな少し楽しそうなお喋りたちは。
「――――ほいよ、記念だ。お前ら抜け駆けすんなよ?」
「ふふん、どうだか」
「おいおい」
「あ、ありがとうございます」
喜ぶメレキに、ガイは歯を見せて微笑んでみせる。
「失くすなよ」
「はい!」
そんなメレキを見てるガイもにこにこで、微笑ましそうだ。
「えーと・・」
そんなガイの横では、未だ端末とにらめっこしているリース。
「リース・・、もしかして自分の番号わからないんじゃ・・」
ミリアが聞いて見てた。
「・・んん、普段使わなくて」
「探してあげようか?」
「いい?よろしく」
「ねぇねぇ、ケイジさん、あれも携帯?」
「あれ?あれも携帯端末、俺の触ってみるか?」
「いいんですか?」
「ああ。」
ヒュィン、ヒュィンと、パネルタッチで画面を動かしているミリアの手馴れた手つきだ。
「リースって、一応、情報技術系も分野だよね」
「まあね。でもこれは違う。」
「あはは、はいこれ」
「ありがとう」
「ケイジ、」
「回線が重かったりで繋がらないとかも・・・」
ケイジの薀蓄をメレキがふんふんと聞いているが、あまり理解して無いだろうなと。
ミリアはその2人の様子を眺めてる、なんだかほんわかした光景だ。
「ケイジが偉そうだ。」
ミリアが悪戯げににやっとしてた。
「うっせ」
気が付いたケイジが照れたようだ。
「書いた」
「ほら、リースの終わったよ」
「はい、これ」
「ありがとうございます!」
リースは一つ頷いて見せて、奥に引っ込む。
「なんか、難しい事多すぎで、私の頭、混乱してます・・」
「こういうもんが溢れてるからな、注意しろよ、ドームでは」
「はいー・・」
ほんわかなメレキに得意げなケイジの様子だ。
「なに教えてたの」
「電車の乗り方」
「あー・・・。別に、ドームは危なくないんだから、構えなくても大丈夫だよ。あ、車にだけは気をつけて」
「くるま・・くるまですね。くるまなら避けれます。大丈夫です、はい」
「そういう意味と、ちょっと違うんだけど・・」
ミリアはちょっと、微笑んでた。
確かに、とケイジは、メレキなら車に轢かれる可能性もありそうだ、と思って頷く。
「ドームの事全く知らないのか?」
「ちょっとは知ってます。でも端末が村に3個しかなくて。」
「みんなでそれ使ってるのか?」
「はい。」
「なるほどな。」
ケイジがいろいろ納得したみたいだった。
「さて、と。これで4人渡したね」
ミリアはそれから・・・。
「・・そろそろ行くか」
ガイがエンジンをかける。
「話し残した事、無いな?」
「・・・それじゃね、ドームに来たら連絡してよ?また会いましょ」
メレキは『はいっ』と元気よく返事する。
リースは無表情で、ぱたぱたと小さく手を振る。
メレキも、手を同じように振る。
「じゃな、元気でいろよ」
ケイジはメレキににっと笑ってみせる。
だがすぐに何かに気付いたように。
「あ、頑張れよ、か」
そう言ってケイジは、目を細める。
メレキは睫毛を震わせて、綺麗な目を細めた。
とても印象的な微笑みだった。
別れの寂しさや、悲しみも、きっといつかまた会える日まで、そんな想いの、とても優しい笑みなんだろう。
「もう行こうぜ、ドア閉めろー」
ガイが運転席から振り向いて言う。
ケイジが気が付き、扉を閉める・・その前に。
「・・コァン・テャルノ(精霊が宿るもの)、」
呟き・・メレキの声、微かに聞こえたケイジが、ミリアが、顔を上げて。
見る彼女の姿は笑顔で、閉まるドアに途切れた。
少女の声が聞こえた・・・。
「んぁ?・・メレキか」
ケイジは・・・まどろみの中から戻ったようだった。
砂漠をぼうっと見ていて、きっと徹夜した所為だ。
「探しました!あっちの黒い車の人達の中にもいなかったし、聞いてみても教えてくれないし、皆さんもう帰っちゃったんじゃないかって思って・・」
「ん、お、おう・・」
なぜかテンションの高いメレキだ、その勢いにケイジは少し押されてる。
「でも、皆がこの辺で見たって教えてくれて、やっと見つけられたんですから!」
息継ぎの為に、ようやく言葉を途切れさせたメレキで。
「おう・・、えーと・・、何か用だった?」
「皆さんにお礼が言いたかったんですっ!!」
「・・あ、ああ、」
「・・?なんですか?」
「いや・・なんか」
一瞬の剣幕が凄かったからとは言えない。
「本当にっありがとうございましたっ!皆さんがあんなに頑張ってくれたから、ブルーレイクは無事だったんだと思います!・・死んじゃった人もいるけど、仕方ないと思います。ケイジさんじゃなければ、絶対に・・あの・・・」
「・・ん?」
ケイジが怪訝そうにしたから、メレキは少し慌てていた。
「夢見るんです、いつも見ちゃう夢みたいの。」
「夢?」
「隠れてる中で、私寝ちゃったんです。その時、夢で・・ケイジさんたちが戦ってて・・・」
「・・夢見んのか。」
「・・・はい、そうです。」
「・・よく寝れんのな。はははっ」
「べ、別に眠いからじゃないですよ・・っ」
「ん、違うのか?」
「・・ふっ、と、気がついたら、眠っちゃってたみたい・・」
「ぷっははは、同じようなもんだろ」
「う~~~~」
少し顔を赤くしてむくれるメレキを見て、笑う。
それを見て更にむくれるメレキだが、それを見るケイジはやはり嬉しそうに笑ってた。
だから、メレキが諦めたように身体から力を抜いて、一息、吐いてた。
良い言葉は探せなかったらしい。
「そんな意地悪だとは知りませんでした」
で、またむくれた。
別に、意地悪していた気は無いのだが。
「そうか?わりぃな」
「・・う、うん。・・あ、他の皆さんはどこに?」
「他の?ミリアとか?」
「そうです。」
ふとケイジが横を見ても、さっきまでいた筈のリースがいなくなっている。
「あれ・・?」
「はい?」
「いや、」
ふらっとどっかに消えるのはリースのいつもの得意技だ。
そうか、リースはいなくなってたか・・・。
「何か用事?」
「はい!皆さんにもお礼を言おうと思って」
「ん、そうだな・・ちょっと無線使ってみるかね」
「え、いいんですか?」
「ん?いいけど・・ちょっと待ってくれよ」
「はい・・・!」
「おーい、誰か、応答してくれ」
『どうしたの?』
「ミリアか?いる場所どこだ?」
『今?今は、ラクレナイの中よ。あ、そろそろ用が終ったから私達は帰れるって』
「お、早いな」
『EAUの方からも言ってくれたみたい。だから、調整するし、戻ってきて?』
「了解、あ、そこにリースとガイもいる?」
『ガイはいるよ、リースは・・・?』
『・・呼んだ?』
「リースか、今何処にいる」
『・・散歩してる』
「散歩ってどこ」
『さぁ?』
「なんでだよ・・・。まぁいいか、そろそろ戻れよ、聞いてたろ」
『聞いてた、問題ないよ』
「どうでした?」
眼をきらきらさせて尋ねてくるメレキだ。
そういや、連絡とったのはこっちが目的だった。
「俺たちが乗ってきた車にいるってさ」
さっき『ラクレナイ』とミリアが言ってたが、確か前にミリアがつけた名前だ。
以前、車にもニックネーム付けるか、って話になって結局ミリアの案に決まった。
まあ、たまにその名前は使ってる。
「車ですか?もう帰っちゃうとか!?」
「まぁ、そろそろだって言って・・」
「あああ・・、早くしないと皆行っちゃう!私、走っていきます!」
「あ、ああ・・」
既に走り始めたメレキの背中に何とか頷いてみせる。
元気でいて、妙に迫力というか雰囲気?気勢で圧す子である。
ていうか、無線使えば良かったんじゃねぇかな、って思ったが。
それに、俺がここにいるからまだ出発しないだろう、とその慌てて駆けていく後ろ姿を・・・見送るケイジだ。
そんなぱたぱたと駆けていく後ろ姿を見ていると、少し微笑める。
なんか、不思議な子だ。
あれが、純真無垢な子ってやつなんだろうなぁ、とケイジは思いつつ。
ケイジは立ち上がり、寝そうになってた身体を、『うーっ』と伸ばす。
そして、歩き出してのんびり帰るのだった。
つうか、歩いてると村中の人達がこっちを見てくる。
少し居心地が悪かったが、傍でこっちを見ていた子供が声を掛けてくる。
『ありがとうね』って。
『ありがとー』って。
ケイジは苦笑いしながら、頭の後ろをぽりぽりと掻いてしまう。
「・・なんか・・むずむずすんな・・・」
そう1人で呟いてた。
「―――でもですね、大切なお客様をお見送りする時は、皆で丁重にしないといけないって」
「でも帰投命令出ちゃってるしなぁ・・さっき、挨拶はしたから、伝えといてくれないかな?メレキが代表ってことで」
お家の軒先の日陰の中で、メレキが足止めしたがってるのを、ミリアはちょっと困ってたけど。
「私がですか?」
「うん、色々お持て成しもしてくれてありがとう、って。ちゃんと挨拶できないのは悪いなって思うけど」
ガイやリース達も、そこの日陰でのんびりしている。
お持て成ししてくれるのはありがたいけど、ずっと長居していたらたぶん、警備部から新しい仕事を割り振られそうなので、それだけは遠慮したい。
それに、軽く汚れを流したとはいえ、早くちゃんと身体を洗いたい。
血の臭いもまだ残っている気がする・・・。
「いえ、悪いなんて。それは、大丈夫です。お父さんや、アシャカさんや、皆感謝してるし、みんなにも言っておきます」
「ありがとうね、メレキ。あ、これ、返しといてくれるかな、アシャカさんに」
ミリアは前に手渡された黒くてごつい無線機をメレキに手渡す。
「はい!」
返し忘れてたそれを受け取ったメレキは、ずしっと少し重たそうに両手で受け取った。
「よ、」
歩いて戻ってきたケイジが、メレキとミリアたちに声を掛けた。
メレキは振り返って、ケイジにはにかむような、でもそれから真剣な眼差しを見せた。
「・・あの」
「?」
「あのね、いつか、私もドームに行ってみたいって、思うんです」
「ドームに?」
「うん、いつか。・・その、見に行くだけじゃなくて、・・ううん、行きたいんです、きっと」
「・・そうか、行けるといいな」
「はい!・・でね、もし行けたら、訪ねていってもいいですか?皆さんのとこ」
訪ねると・・・。
「・・訪ねるね」
「・・・無理ですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが・・」
「リプクマを訪ねればいいんじゃないか?」
ガイが後ろから声を掛ける。
「そうか?」
「総合病院やってるし、いいかもね」
ミリアも賛成のようだ。
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けれど、複雑にシステム化する一方、プライバシーは軽々と教えられない部分もあるらしく、EAUでは規則もあり許可も必要だろう。
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「番号?連絡?」
「ん?アドレス、」
「あ、はい。知ってます。使ったことないけど」
「なに!?」
「・・すいません」
「ケイジ、怖がらせてる」
「あぁ・・、わりぃ。ここじゃ必要がないもんか。」
「ドームに知り合いがいなけりゃ、使わないだろうね」
「よし、じゃあ、それも調べろ」
「えぇ」
ミリアが驚いたような。
「ドームじゃみんな使ってるぞ。他にも面白いもんいっぱいあるしな。美味いメシとか、スタジアムとか、ゲームとか、他になんかあるか?」
「なんだろう?」
「女の子なら可愛い服とか、お菓子のお店とか」
って、ガイが。
「それだな。目に入った店から片っ端に入るといいぞ。面白そうだろ」
「えぇっと、・・よくわかりません・・・」
って、メレキは言ってたけど。
「だろうな。」
にっとケイジは、許容範囲を超えたのか頭を抑えているメレキに笑ってみせる。
「俺もよくわからんし」
って。
「適当に教えてんじゃないって」
ミリアがケイジに言っといてた。
「ま、わからないんだから、楽しんでいこうぜ」
「あ、はい!」
ミリアはケイジを呆れた目で見ているけども。
「あ、っていうか、携帯持ってる?」
「あ、その、ないです。」
「ああやっぱり、そっか。」
「携帯ないのか、つらいな。」
「あ、暗記します」
「紙とかボードがあれば・・」
「取ってきます!」
って、メレキが凄い急いであっちのお家に飛び込んでいった。
知り合いのお家に頼むんだろう。
「携帯ねぇのか・・・」
ケイジが呟いてた。
「この辺だと守秘義務があるからね。カメラ・通信とかで情報漏洩する可能性があるのは無理なんでしょうね。」
「そっか。携帯が無いなんて・・・暇でヤバそうだな」
「だな」
ガイもにっと笑ってた。
「友達とかは多そうだけどね」
ミリアはそう、村の景色に目を細めてた。
「じゃあ、車を回してこよう」
ガイがそう言って、立ち上がっていた。
「――――書いたのってケイジのプライベートのアドレスでしょ?」
「ん、そうだぞ」
「ふっふ、じゃ私も渡しとこ。メールしてね」
「あんだよ、それは」
「久しぶりの再会、果たしてどっちが先か、ふふっ。ガイたちも渡す?」
「俺の?いるのか?」
「あ、はい!」
「なに?出し渋るつもり?」
「はは、いや、俺のは欲しがらないんじゃないかと思ってな」
「いります!」
「ははは、今書くよ」
「リースは?」
「僕?」
「そっ」
軽装甲車のドアを開けっぱなしの、メレキが中の日陰で覗きながら笑ってる。
リースがミリアをぼーっと見つめる妙な間の後、それから端末を自分のバッグから取り出した。
「番号覚えてないのね」
ミリアがリースの様子を見守りながら悟ってた。
そんな風に、メレキと一緒にのんびり話してた。
周囲の軍部や警備の彼らの目も、何となく引いていていたようだったけど。
たしかに、ちょっと珍しい光景かもしれなかった。
物々しい事後処理が行われている村の中で、そんな少し楽しそうなお喋りたちは。
「――――ほいよ、記念だ。お前ら抜け駆けすんなよ?」
「ふふん、どうだか」
「おいおい」
「あ、ありがとうございます」
喜ぶメレキに、ガイは歯を見せて微笑んでみせる。
「失くすなよ」
「はい!」
そんなメレキを見てるガイもにこにこで、微笑ましそうだ。
「えーと・・」
そんなガイの横では、未だ端末とにらめっこしているリース。
「リース・・、もしかして自分の番号わからないんじゃ・・」
ミリアが聞いて見てた。
「・・んん、普段使わなくて」
「探してあげようか?」
「いい?よろしく」
「ねぇねぇ、ケイジさん、あれも携帯?」
「あれ?あれも携帯端末、俺の触ってみるか?」
「いいんですか?」
「ああ。」
ヒュィン、ヒュィンと、パネルタッチで画面を動かしているミリアの手馴れた手つきだ。
「リースって、一応、情報技術系も分野だよね」
「まあね。でもこれは違う。」
「あはは、はいこれ」
「ありがとう」
「ケイジ、」
「回線が重かったりで繋がらないとかも・・・」
ケイジの薀蓄をメレキがふんふんと聞いているが、あまり理解して無いだろうなと。
ミリアはその2人の様子を眺めてる、なんだかほんわかした光景だ。
「ケイジが偉そうだ。」
ミリアが悪戯げににやっとしてた。
「うっせ」
気が付いたケイジが照れたようだ。
「書いた」
「ほら、リースの終わったよ」
「はい、これ」
「ありがとうございます!」
リースは一つ頷いて見せて、奥に引っ込む。
「なんか、難しい事多すぎで、私の頭、混乱してます・・」
「こういうもんが溢れてるからな、注意しろよ、ドームでは」
「はいー・・」
ほんわかなメレキに得意げなケイジの様子だ。
「なに教えてたの」
「電車の乗り方」
「あー・・・。別に、ドームは危なくないんだから、構えなくても大丈夫だよ。あ、車にだけは気をつけて」
「くるま・・くるまですね。くるまなら避けれます。大丈夫です、はい」
「そういう意味と、ちょっと違うんだけど・・」
ミリアはちょっと、微笑んでた。
確かに、とケイジは、メレキなら車に轢かれる可能性もありそうだ、と思って頷く。
「ドームの事全く知らないのか?」
「ちょっとは知ってます。でも端末が村に3個しかなくて。」
「みんなでそれ使ってるのか?」
「はい。」
「なるほどな。」
ケイジがいろいろ納得したみたいだった。
「さて、と。これで4人渡したね」
ミリアはそれから・・・。
「・・そろそろ行くか」
ガイがエンジンをかける。
「話し残した事、無いな?」
「・・・それじゃね、ドームに来たら連絡してよ?また会いましょ」
メレキは『はいっ』と元気よく返事する。
リースは無表情で、ぱたぱたと小さく手を振る。
メレキも、手を同じように振る。
「じゃな、元気でいろよ」
ケイジはメレキににっと笑ってみせる。
だがすぐに何かに気付いたように。
「あ、頑張れよ、か」
そう言ってケイジは、目を細める。
メレキは睫毛を震わせて、綺麗な目を細めた。
とても印象的な微笑みだった。
別れの寂しさや、悲しみも、きっといつかまた会える日まで、そんな想いの、とても優しい笑みなんだろう。
「もう行こうぜ、ドア閉めろー」
ガイが運転席から振り向いて言う。
ケイジが気が付き、扉を閉める・・その前に。
「・・コァン・テャルノ(精霊が宿るもの)、」
呟き・・メレキの声、微かに聞こえたケイジが、ミリアが、顔を上げて。
見る彼女の姿は笑顔で、閉まるドアに途切れた。
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たぶん、ミリアはまだ少し、のんびり過ごしたかったけれど、EAUの特能力者たちによる合同トレーニングが始まります。
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(10月2日の10時に完結しました。それからは見返しつつ、ブラッシュアップしていくつもりです。)
(SSTGを始めたので、なかなかできてませんが・・。いつかやる!)
=KBOC= 『セハザ《no1》-(1)- 』<:>《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』
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*****ちなみに*****
・この作品は「カクヨム」にも掲載しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】神様と縁結び~え、神様って女子高生?~
愛早さくら
キャラ文芸
「私はあなたの神様です」
突然訪ねてきた見覚えのない女子高生が、俺にそんなことを言い始めた。
それ以降、何を言っているのかさあっぱり意味が分からないまま、俺は自称神様に振り回されることになる。
普通のサラリーマン・咲真と自称神様な女子高生・幸凪のちょっと変わった日常と交流のお話。
「誰もがみんな誰かの神様なのです」
「それって意味違うくない?」
セハザ《no2EX》 ~ エルにアヴェエ・ハァヴィを添えたら ~
AP
キャラ文芸
ドアを開けて覗いた。
外は静かで、もう皆学校に行ってて、誰もいなくて。
私は外をちょっと覗いて、あっちの方もこっちの方も見て。
遠くの廊下の先では太陽の白い光が床に差し込んでるのが見えた。
私は。
私は・・・。
少しの間、静かな廊下の周りを見ていて。
それから、やっぱり、頭を引っ込めて。
部屋の扉をゆっくり閉めた。
《『あの子』と少女は少しずつ、少しずつ、変わって・・・いく?》
《取り巻く世界も変わって・・・いく?》
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*只今、他の小説を執筆中です。
*そちらが落ち着いてから、《no2EX》を再開しようと思っています。
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・この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
SONIC BLUE!〜極彩のロックンロール〜
森上ゆらら
キャラ文芸
自由を手に入れた瑠璃は高校入学を期に、それまで殺風景だった日常が色付いていくのを感じた。個性豊かな友達と、バンドをやることになったはいいものの、何からやればいいのか分からない。そんな時、瑠璃は父の遺した動画を見つける。題名からして瑠璃に宛てたものではあるようで、瑠璃はひとまず再生する。実はそれは、ギタリストとして名を馳せた父の、瑠璃に向けたレッスン動画だった。見よう見真似で父の言う通りに練習していく瑠璃は、瞬く間に上達していく。だがそれだけではなく、彼女の持って生まれたある才能が、音楽を通して更に開花していき——予期しない方へと、彼女を導いてしまうのだった。瑠璃は得た仲間と、思い描いた夢に辿り着けるのか。青春ガールズバンドコメディー! ※小説家になろうにも掲載しています。
《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』
AP
キャラ文芸
『SSTG』はセハザ《no1》の第3作目に当たります。<不定期ですが更新継続中>
*****あらすじ*****
路地裏、明かりの届かない建物の狭間で響く声。
人影が人を殴り倒す。
水に濡れ妖しく光る固い地面は、遠くのネオンの鮮烈な原色の灯りを朧気《おぼろげ》に反射させて。
――――――違和感・・・異様な感覚・・それは、水たまりに反射した、自分の顔の辺りだった・・僅かに緑色の光が、漂った一瞬の――――――おい、どうした?大丈夫か?チャイロ、」
肩を掴まれて起こされる、自分を見つめる彼は・・・。
「・・え、・・あ、ああ、大丈夫・・・、ウルク、」
―――――彼らを見下ろすような夜空に、白く孤高のリリー・スピアーズが常にそびえ立つ。
【SSTG 『セハザ《no1》-(3)- 』】
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不定期更新中です。
次話がいつになるかわかりません。
気になる方は、良ければフォロー等をお願い致します。
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以下は、説明事項です。
*****ナンバリング説明*****
・セハザno1の『no1』の部分は。主人公の違いです。(たぶん。
セハザシリーズに世界観の繋がりはありますが、話は独立しています。
前後の経過はありますが、基本的にはどのナンバーから読んでも大丈夫です。
*****ちなみに*****
・この作品は「カクヨム」にも掲載しています。
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