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第11記
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仄かなランプの灯りが影も作らず寂しく彩る村を通っているとき、前を歩くジョッサさんが教えてくれた。
「『驚いた』、というような意味ですよ。『コァン・テャルノ』は。」
「へぇ?」
アシャカさんが言った『精霊を、宿す』は直訳だろうか、意訳するとそういう意味なのかもしれない。
驚いたり感極まったら神様を呼んだりする言語もあるし、そんな感じなのかも。
「ジョッサさん、も詳しいんですか?」
「ええ、たまに使ってるので。」
「ん?」
「子供たちが遊ぶんですよ。みんな一緒に」
「ああ、」
「私も子供の頃はみんなと遊んでいましたし、」
ジョッサさんは目を細めて微笑んでいるようだった。
この村の子供の頃なんてみんな、共通語でも、独自言語でも、片言でもいいからみんな話したりしてるのかも、身振り手振りも交えて、きっと。
「みんな仲が良いんですね」
「ええ。」
ジョッサさんはにこっと微笑んでた。
「なんだかおもしろいとこですね、ここ」
って、ガイが言ってた。
「そうですか?私は、ここしか知らないので」
「興味深いって意味ですよ。いろいろ知りたくなる。」
「ふふ、そうですか」
ジョッサさんが笑ってた。
そんなジョッサさんとガイが笑顔を交わすのを、ミリアはちょっと交互に見ながら、みんなで今日泊まる簡素な下宿へと帰ってきた。
ガイがいつの間にか受け取ったらしい、金属製の鍵をドアの鍵穴に差し込んで開ける。
「ありがとうございました。」
「いえいえ、」
ミリアがお礼を言う間にも開く小屋に入って、ケイジやリースたちがベッドへ思い思いに向かうのを、ミリアも追って今日の寝床へ歩いてく。
案内をしてくれたジョッサさんは入口の近くで、荷物を適当に下ろす彼らに声をかけた。
「それでは、皆さん。えぇと、あ、お体をお拭きするための手ぬぐいと水を奥に用意していると思いますが、女性の方は村長さんのお家に来てくれれば御用意できますよ。どうしましょう?」
って、言われたミリアはジョッサさんと目が合う。
「・・あ、わたし?」
ミリアが何故か数秒送れて反応する。
「お前しかいないと思うが」
ガイが苦笑いしてる。
「大丈夫ですよ、こっちで」
ミリアはジョッサさんにそう伝えて。
「そうですか?一応、そこにも仕切りはあるので、使ってもらえれば」
「うん、それだけで充分ですよ」
「はい、わかりました。寝間着なども用意させてもらいました。洗濯もさせてもらいますよ。今受け取ります?」
着替えは、車両の方にこれと同じ支給された戦闘服が何着か常備してあるから、大丈夫だろう。
「あ、いいえ。ありがとうございます。必要になったときに言います。」
「わかりました。それでは、皆さんゆっくりとお休みくださいね」
「はーい」
にこやかに微笑んだジョッサに、にこやかに軽く手を振るガイ。
ジョッサが外へ出ていくのを見届けて、ケイジはベッドの上で寝転んだ。
既にリースは仰向けに寝て静かに目を閉じているが。
静かになって、ふーっと一息を吐く4人は、とりあえず少しまったりするようだ。
ミリアは、今日はなんだかんだ色々とあったな、とボロの青や赤色のツギハギ天井や壁を眺めながら思う。
そこのケイジはシーツの上で転がっているし、リースも同様、ガイも天井を仰いでいる。
ミリアだけがベッドの横に腰掛けて、天井を見ていた。
簡素な骨組みの見える天井、・・じっと見てると、染みのような物というか、変な色の汚れを見つけたりする。
「・・・さてと、身体を拭こうかな」
と、ミリアが口に出して言った――――――
―――――それまでの沈黙とはまた違う、妙な緊張が訪れたのは、ケイジ達の間だけだろうか。
別に、普段は何も考えていないし、意識もしていないのだが、妙な響きがある気がして、ケイジの心も何故かざわついたのである。
ミリアは、誰も返事をしないのを、ちょっと感じて、部屋の中を見たけれど。
何故か、4人の間に再び沈黙が落ちる。
「ん、あぁ、どうぞ」
ガイが今気が付いたようだったが、携帯をいじっていたのか、鞄からコードを引っ張り出していた。
それから、窓がカタカタと揺れるのが耳に障る。
・・・・・・。
「・・・・・・ていうことで、」
静寂の中に、ミリアの妙に透き通った声が染み渡っていった。
「・・あんた達、出てけっ!!」
「出んのかよ!結局!」
ケイジの声が上ずったのはこの際、誰も気にしない。
「いいから出るっ!!」
ミリアに凄まれたからには、ケイジとガイとリースの3人共、重く感じる身体を引きずって外へ出て行く。
砂が少々混じる、寒風通る家の外で彼らは震えながら、雲の隙間に僅かに覗く星たちを見上げる時間を過ごしていた。
星空が綺麗だ。
「・・さみ、ジャケット脱いぢまった。」
ケイジが寒そうだ。
「取ってくるか・・・」
「今は止めとけ」
ガイが制止してた。
「なんか、色々とむかつく・・」
ケイジが呟いてた。
「・・やっぱ女の子なんだな。」
ガイが遠い目で微笑んでいるようだ。
「つうか、村長の所で入れるって言ってたろ、」
「まあいいじゃんか、」
納得いっていないようなケイジに、ガイが宥めるようだが。
「・・・ふぁ・・」
リースがあくびをして、そこからは誰も口を開かなくなっていた。
数分後、もしくは長くても十数分後だとは思うが、冷えた心には一時間は経つんじゃないかと感じ始めた頃、家の中から顔を覗かせたミリアが。
「もういいよ」
と、小屋に入るお許しが出た。
「やっとかよ、」
主にケイジが不満を言いながら、3人が中へ入って行くわけで。
身体を拭いてさっぱりしたらしいミリアが少し機嫌よさそうで、ミリアが寝る準備をしている間も、追い出されていた3人は濡らしたタオルで身体を拭いている。
綺麗な水は貴重でお風呂に入れない環境なのはよくわかっているし、みんなが身体を十分に拭かせてもらえるだけでも村からの贅沢な持て成しだろう。
「仕切り使えば良かったんじゃねぇのか?」
ケイジが、衣服の隙間から入る砂がついた裸の上半身を拭きながら、ミリアへそう言えば。
「え、うん。まあ、そうなんだけど。」
「なんだよ」
「なんだか、・・ああした方がいい感じがした。」
「なんだそれ」
あのとき何かを感じたミリアらしいが、ケイジも普通につっこんでた。
「こっちは寒かったんだぞ」
「ふーん、そっか、」
「ふーん、じゃっねぇ・・っ」
「それより、車に忘れ物ないね?」
「ん、ああ、」
ガイが普通に答えてた。
「おい、」
「ここで寝るのは決定なんだよな?」
「まあ、不安だったら車でもいいけど」
「・・・こっちのが、のびのびできていいや」
ガイが、そう。
「・・まあ、大丈夫だとは、思うけどね」
ミリアも、そうガイに伝えてた。
「お前らも文句言えよ、」
ケイジが寂しくなったのか知らないけど、ガイたちに言ってた。
「言いたいことは大体お前が言った、」
って、ガイが口端を持ち上げて言ってた。
リースは端っこで背中を向けて身体を拭いていて、どこまでもマイペースだった。
そうして、みんながさっぱりした後、ミリアが指示する寝る前の歯磨きも済ませた4人はベッドに寝転んで、明かりを落とした中で、けっこう快適なベッドの居心地に目を閉じたくなるのを待つのみだ。
「いつもより寝るにはまだ早い」
とケイジはさっきまで寝れなさそうな事を言っていたが。
携帯をいじっていて、睡魔が襲ってくるのを待って・・・いや、もうケイジは『くかー』と寝息を出して夢の世界のようだ。
別に誰かが話をしているわけじゃなく、ガイもそんなケイジに気が付いてベッドの上から見上げたが。
自分の両手で腕枕していて、仰向けに天井を見ていたガイが口を開いた。
「なぁ、隊長」
ガイに呼ばれて、携帯の小説をうつ伏せに読んでいたミリアが顔を上げる。
「ん、なぁに?」
「俺たちとしては、明日から動くって事でいいんですかね」
「そうそう、そのつもり。村の人たちの様子見てると、今晩に何かがあるようには見えないし。この村でも警備があるみたいだから、異常があれば報せてくれるはず。私たちはすぐ駆けつければいいし。異常が無ければ、それでいいし。とりあえず明日は、この村の状態を把握しとこうかな。」
「今日の夜にかけては異常は起きないと?」
「そんな事、確信はできないですけどね。・・って言いたいけどね。ま、異常があればアシャカさんから連絡があるでしょう。ライフルは持って来てるし。」
「わかった、了解、じゃぁゆっくり休ませてもらうわ」
「はい、ごゆっくり」
静かになった部屋の中で、ミリアは、携帯の小説の続きをまた少し読み進めて・・・。
「そういえば、車を小屋の横に駐車しといた方がいいか?」
「・・そういえばそうね。明日よろしく、」
「りょうかい」
言われたミリアは、ガイへ伝えておいた。
また少し、暗がりの静かな時間を過ごしていて。
・・・寝息が聞こえてきている、誰かの低いイビキも。
だから、きりの良い所で・・ミリアは、携帯の小説に赤いサボテンのついた栞を挟む。
他の3人はもう既に眠りに入っているみたいで。
ミリアは手を伸ばして、最後のランタンの明かりを消した。
*******――――闇を感じる―――******
―――――・・一瞬、それは、・・一瞬・・・。
・・堕ちた・・ここは、どこ・・?・・・。
自分がどこにいるのかわからない。
暗闇の、中・・・?
・・けれど、静寂、微かに聞こえてくるのは・・それがなにかわかり始めたのは・・・数人の息遣いで、・・次第に私の瞳は、やっと、ようやく、開き始める・・・。
――――『コァン・テャルノ』・・だ・・・――――わたしの・・・『コァン』―――――
――――――・・おぼろげで・・息苦しい・・視界・・・、誰かが何人かそこにいる。
―――――何かを話し合っている人たちのぼやける声。
―――とても、とても不穏な空気で、――――いつも、こんな感じの雰囲気はとても、つらい事が起こるんだったのを、―――とても心細い気持ちを呼び寄せながら、そう思う私は、その呻くよう響く低い話し声へ、・・耳を澄ませる・・・。
『―――グレアが―――――』
――――形にならない声を、丁寧に聞き取る―――――――
『―――グレア、が、まだ嫌がっている―――――』
―――――1つ言、1つ言葉を・・形作る・・・私はそうしなければいけない。
――――息のつづくかぎり・・・・――――いつも、そうしてきた―――――――
「『驚いた』、というような意味ですよ。『コァン・テャルノ』は。」
「へぇ?」
アシャカさんが言った『精霊を、宿す』は直訳だろうか、意訳するとそういう意味なのかもしれない。
驚いたり感極まったら神様を呼んだりする言語もあるし、そんな感じなのかも。
「ジョッサさん、も詳しいんですか?」
「ええ、たまに使ってるので。」
「ん?」
「子供たちが遊ぶんですよ。みんな一緒に」
「ああ、」
「私も子供の頃はみんなと遊んでいましたし、」
ジョッサさんは目を細めて微笑んでいるようだった。
この村の子供の頃なんてみんな、共通語でも、独自言語でも、片言でもいいからみんな話したりしてるのかも、身振り手振りも交えて、きっと。
「みんな仲が良いんですね」
「ええ。」
ジョッサさんはにこっと微笑んでた。
「なんだかおもしろいとこですね、ここ」
って、ガイが言ってた。
「そうですか?私は、ここしか知らないので」
「興味深いって意味ですよ。いろいろ知りたくなる。」
「ふふ、そうですか」
ジョッサさんが笑ってた。
そんなジョッサさんとガイが笑顔を交わすのを、ミリアはちょっと交互に見ながら、みんなで今日泊まる簡素な下宿へと帰ってきた。
ガイがいつの間にか受け取ったらしい、金属製の鍵をドアの鍵穴に差し込んで開ける。
「ありがとうございました。」
「いえいえ、」
ミリアがお礼を言う間にも開く小屋に入って、ケイジやリースたちがベッドへ思い思いに向かうのを、ミリアも追って今日の寝床へ歩いてく。
案内をしてくれたジョッサさんは入口の近くで、荷物を適当に下ろす彼らに声をかけた。
「それでは、皆さん。えぇと、あ、お体をお拭きするための手ぬぐいと水を奥に用意していると思いますが、女性の方は村長さんのお家に来てくれれば御用意できますよ。どうしましょう?」
って、言われたミリアはジョッサさんと目が合う。
「・・あ、わたし?」
ミリアが何故か数秒送れて反応する。
「お前しかいないと思うが」
ガイが苦笑いしてる。
「大丈夫ですよ、こっちで」
ミリアはジョッサさんにそう伝えて。
「そうですか?一応、そこにも仕切りはあるので、使ってもらえれば」
「うん、それだけで充分ですよ」
「はい、わかりました。寝間着なども用意させてもらいました。洗濯もさせてもらいますよ。今受け取ります?」
着替えは、車両の方にこれと同じ支給された戦闘服が何着か常備してあるから、大丈夫だろう。
「あ、いいえ。ありがとうございます。必要になったときに言います。」
「わかりました。それでは、皆さんゆっくりとお休みくださいね」
「はーい」
にこやかに微笑んだジョッサに、にこやかに軽く手を振るガイ。
ジョッサが外へ出ていくのを見届けて、ケイジはベッドの上で寝転んだ。
既にリースは仰向けに寝て静かに目を閉じているが。
静かになって、ふーっと一息を吐く4人は、とりあえず少しまったりするようだ。
ミリアは、今日はなんだかんだ色々とあったな、とボロの青や赤色のツギハギ天井や壁を眺めながら思う。
そこのケイジはシーツの上で転がっているし、リースも同様、ガイも天井を仰いでいる。
ミリアだけがベッドの横に腰掛けて、天井を見ていた。
簡素な骨組みの見える天井、・・じっと見てると、染みのような物というか、変な色の汚れを見つけたりする。
「・・・さてと、身体を拭こうかな」
と、ミリアが口に出して言った――――――
―――――それまでの沈黙とはまた違う、妙な緊張が訪れたのは、ケイジ達の間だけだろうか。
別に、普段は何も考えていないし、意識もしていないのだが、妙な響きがある気がして、ケイジの心も何故かざわついたのである。
ミリアは、誰も返事をしないのを、ちょっと感じて、部屋の中を見たけれど。
何故か、4人の間に再び沈黙が落ちる。
「ん、あぁ、どうぞ」
ガイが今気が付いたようだったが、携帯をいじっていたのか、鞄からコードを引っ張り出していた。
それから、窓がカタカタと揺れるのが耳に障る。
・・・・・・。
「・・・・・・ていうことで、」
静寂の中に、ミリアの妙に透き通った声が染み渡っていった。
「・・あんた達、出てけっ!!」
「出んのかよ!結局!」
ケイジの声が上ずったのはこの際、誰も気にしない。
「いいから出るっ!!」
ミリアに凄まれたからには、ケイジとガイとリースの3人共、重く感じる身体を引きずって外へ出て行く。
砂が少々混じる、寒風通る家の外で彼らは震えながら、雲の隙間に僅かに覗く星たちを見上げる時間を過ごしていた。
星空が綺麗だ。
「・・さみ、ジャケット脱いぢまった。」
ケイジが寒そうだ。
「取ってくるか・・・」
「今は止めとけ」
ガイが制止してた。
「なんか、色々とむかつく・・」
ケイジが呟いてた。
「・・やっぱ女の子なんだな。」
ガイが遠い目で微笑んでいるようだ。
「つうか、村長の所で入れるって言ってたろ、」
「まあいいじゃんか、」
納得いっていないようなケイジに、ガイが宥めるようだが。
「・・・ふぁ・・」
リースがあくびをして、そこからは誰も口を開かなくなっていた。
数分後、もしくは長くても十数分後だとは思うが、冷えた心には一時間は経つんじゃないかと感じ始めた頃、家の中から顔を覗かせたミリアが。
「もういいよ」
と、小屋に入るお許しが出た。
「やっとかよ、」
主にケイジが不満を言いながら、3人が中へ入って行くわけで。
身体を拭いてさっぱりしたらしいミリアが少し機嫌よさそうで、ミリアが寝る準備をしている間も、追い出されていた3人は濡らしたタオルで身体を拭いている。
綺麗な水は貴重でお風呂に入れない環境なのはよくわかっているし、みんなが身体を十分に拭かせてもらえるだけでも村からの贅沢な持て成しだろう。
「仕切り使えば良かったんじゃねぇのか?」
ケイジが、衣服の隙間から入る砂がついた裸の上半身を拭きながら、ミリアへそう言えば。
「え、うん。まあ、そうなんだけど。」
「なんだよ」
「なんだか、・・ああした方がいい感じがした。」
「なんだそれ」
あのとき何かを感じたミリアらしいが、ケイジも普通につっこんでた。
「こっちは寒かったんだぞ」
「ふーん、そっか、」
「ふーん、じゃっねぇ・・っ」
「それより、車に忘れ物ないね?」
「ん、ああ、」
ガイが普通に答えてた。
「おい、」
「ここで寝るのは決定なんだよな?」
「まあ、不安だったら車でもいいけど」
「・・・こっちのが、のびのびできていいや」
ガイが、そう。
「・・まあ、大丈夫だとは、思うけどね」
ミリアも、そうガイに伝えてた。
「お前らも文句言えよ、」
ケイジが寂しくなったのか知らないけど、ガイたちに言ってた。
「言いたいことは大体お前が言った、」
って、ガイが口端を持ち上げて言ってた。
リースは端っこで背中を向けて身体を拭いていて、どこまでもマイペースだった。
そうして、みんながさっぱりした後、ミリアが指示する寝る前の歯磨きも済ませた4人はベッドに寝転んで、明かりを落とした中で、けっこう快適なベッドの居心地に目を閉じたくなるのを待つのみだ。
「いつもより寝るにはまだ早い」
とケイジはさっきまで寝れなさそうな事を言っていたが。
携帯をいじっていて、睡魔が襲ってくるのを待って・・・いや、もうケイジは『くかー』と寝息を出して夢の世界のようだ。
別に誰かが話をしているわけじゃなく、ガイもそんなケイジに気が付いてベッドの上から見上げたが。
自分の両手で腕枕していて、仰向けに天井を見ていたガイが口を開いた。
「なぁ、隊長」
ガイに呼ばれて、携帯の小説をうつ伏せに読んでいたミリアが顔を上げる。
「ん、なぁに?」
「俺たちとしては、明日から動くって事でいいんですかね」
「そうそう、そのつもり。村の人たちの様子見てると、今晩に何かがあるようには見えないし。この村でも警備があるみたいだから、異常があれば報せてくれるはず。私たちはすぐ駆けつければいいし。異常が無ければ、それでいいし。とりあえず明日は、この村の状態を把握しとこうかな。」
「今日の夜にかけては異常は起きないと?」
「そんな事、確信はできないですけどね。・・って言いたいけどね。ま、異常があればアシャカさんから連絡があるでしょう。ライフルは持って来てるし。」
「わかった、了解、じゃぁゆっくり休ませてもらうわ」
「はい、ごゆっくり」
静かになった部屋の中で、ミリアは、携帯の小説の続きをまた少し読み進めて・・・。
「そういえば、車を小屋の横に駐車しといた方がいいか?」
「・・そういえばそうね。明日よろしく、」
「りょうかい」
言われたミリアは、ガイへ伝えておいた。
また少し、暗がりの静かな時間を過ごしていて。
・・・寝息が聞こえてきている、誰かの低いイビキも。
だから、きりの良い所で・・ミリアは、携帯の小説に赤いサボテンのついた栞を挟む。
他の3人はもう既に眠りに入っているみたいで。
ミリアは手を伸ばして、最後のランタンの明かりを消した。
*******――――闇を感じる―――******
―――――・・一瞬、それは、・・一瞬・・・。
・・堕ちた・・ここは、どこ・・?・・・。
自分がどこにいるのかわからない。
暗闇の、中・・・?
・・けれど、静寂、微かに聞こえてくるのは・・それがなにかわかり始めたのは・・・数人の息遣いで、・・次第に私の瞳は、やっと、ようやく、開き始める・・・。
――――『コァン・テャルノ』・・だ・・・――――わたしの・・・『コァン』―――――
――――――・・おぼろげで・・息苦しい・・視界・・・、誰かが何人かそこにいる。
―――――何かを話し合っている人たちのぼやける声。
―――とても、とても不穏な空気で、――――いつも、こんな感じの雰囲気はとても、つらい事が起こるんだったのを、―――とても心細い気持ちを呼び寄せながら、そう思う私は、その呻くよう響く低い話し声へ、・・耳を澄ませる・・・。
『―――グレアが―――――』
――――形にならない声を、丁寧に聞き取る―――――――
『―――グレア、が、まだ嫌がっている―――――』
―――――1つ言、1つ言葉を・・形作る・・・私はそうしなければいけない。
――――息のつづくかぎり・・・・――――いつも、そうしてきた―――――――
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****************************************************『KBOC』を読んでくれてありがとうございました。そして、お話は『セハザ《no1》-(2)- 』へ続きます。ー>https://www.alphapolis.co.jp/novel/295123493/94640929
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