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8 誘拐
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夜になった。
私たちの一団は、野営地を作り、そこで一緒にキャンプファイヤーを囲んでいた。
「私、野宿なんて初めてですわ!」
「え?嬢ちゃん!?今まで野宿したことないのかい?」
「えぇ、だって外に行く機会なんて今まであまりありませんでしたもの!」
「……マジかよ。一体どれだけ金持ちの生まれなんだか。……こりゃ王族レベルだぞ」
「ん?」
最後にゴニョゴニョとスラム街の人がなんか言ったが、私はよく聞き取れなかった。
「そういえば嬢ちゃん。今更なんだが、なんで人探しなんかしてるんだ?」
「お姉様がお仕事から逃げたせいで代わりに私がその役割りを振られそうになってるので、全力で捕まえに行かなければならないからですわ!」
「へぇ、ってことはさっきから探してる『あの人』っつーのは嬢ちゃんの姉かい?」
「その通りですわ!」
するとその人は驚いた顔をした後、「通りで似てたはずだ」とつぶやいた。
全く失礼ですわ。
お姉様と私は全然似てないのですわ!
お姉様は国一番の努力家で、
私は国一番の怠け者なのですわ。
だからお姉様こそ、公務をやる必要があるのですわ!
そんな理論を並べて、私は数時間後に眠りについたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
真夜中。
私はあまりの肌寒さに思わず目を覚ました。
うぅ、いつの間にか毛布を剥いでしまったのかもしれませんわ。
そう思いながらモゾモゾと毛布を探ろうとした瞬間、私は突然その手を拘束された。
「おい、動くな!」
動くなとは失礼な!
そんなこと言ったら私の護衛が黙ってませんわよ!
そう思いながら、私は声の主が護衛に捌かれるのを待つ。
……だが、一向にそのタイミングはやってこない。
なんてこと!肝心な時にいないなんて!
この国は護衛すらも無能に成り下がったのかしら!?
私は護衛への怒りのあまり、ついにジタバタと手足を動かして始める。
ついでに護衛を叱責しようとしたが、口元はなぜか縛られてて、上手く声が出せなかった。
「動くなって言ってんだろ!お前は人質なんだよ!これ以上動くようならこっちも容赦しないぞ!」
次の瞬間。私は固い何かでゴンッと頭を叩かれた。
いったぁ~~!!
コイツ。よくも私にこんなことを!絶対許しませんわ!!
ついに怒りが頂点に達した私は全力の叫びを上げる。
「ふぐぐーー!!ふぐぐぐぐーーー!!」
「っち!ジタバタした次は騒ぎ出すか!分かった!口は自由にしてやるからとりあえず騒ぐのはやめろ!!」
すると、声の主は根負けしたように、私の口元の縄を解いた。
「はぁ、はぁ。……一体なんのつもりですの?こんなことすれば、いくら私の護衛達が無能といえども黙ってませんわよ!」
「……無能?まぁいいか。あー、状況が理解できてなさそうだからもう一回言うぞ。あんたはな、ウチらに誘拐されたんだよ」
周りを見渡すと、確かにそこは野営地ではなく、脆そうな小屋の中だった。
「なんでよ!」
「身代金とるためだよ。あんた、見た感じいいとこのお嬢さんだろ?そしたら当然あんたの家族はあんたのためにたくさん金払えるよな?ウチらはそれが欲しいんだ」
「お金なんて、腐るほどありますわ!こんなことしなくても頼めばいくらでも恵んであげますのに!」
「いいや。あんたら金持ちは常に自分しか見てない。だからウチら貧乏人はこういう手段で必要な金を稼いでくしかねぇんだよ」
それは、どこか悲しそうな声であった。
私はその時、初めて声の主のことをはっきりと見た。
その月明かりの向こうには、まだ少女と呼べるほど幼い子供がいた。
屈強な男達が、付き従う様子を見せていたことから、彼女こそが私を誘拐した集団のリーダーだとすぐに分かった。
「……あなた。子供だったのね」
「子供じゃねぇ。これでも20は過ぎてんだ」
……訂正。彼女は子供ではなかった。
でも、そんな彼女の様子を見て、私はこれからどうするかについて、考えを巡らすのだった。
私たちの一団は、野営地を作り、そこで一緒にキャンプファイヤーを囲んでいた。
「私、野宿なんて初めてですわ!」
「え?嬢ちゃん!?今まで野宿したことないのかい?」
「えぇ、だって外に行く機会なんて今まであまりありませんでしたもの!」
「……マジかよ。一体どれだけ金持ちの生まれなんだか。……こりゃ王族レベルだぞ」
「ん?」
最後にゴニョゴニョとスラム街の人がなんか言ったが、私はよく聞き取れなかった。
「そういえば嬢ちゃん。今更なんだが、なんで人探しなんかしてるんだ?」
「お姉様がお仕事から逃げたせいで代わりに私がその役割りを振られそうになってるので、全力で捕まえに行かなければならないからですわ!」
「へぇ、ってことはさっきから探してる『あの人』っつーのは嬢ちゃんの姉かい?」
「その通りですわ!」
するとその人は驚いた顔をした後、「通りで似てたはずだ」とつぶやいた。
全く失礼ですわ。
お姉様と私は全然似てないのですわ!
お姉様は国一番の努力家で、
私は国一番の怠け者なのですわ。
だからお姉様こそ、公務をやる必要があるのですわ!
そんな理論を並べて、私は数時間後に眠りについたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
真夜中。
私はあまりの肌寒さに思わず目を覚ました。
うぅ、いつの間にか毛布を剥いでしまったのかもしれませんわ。
そう思いながらモゾモゾと毛布を探ろうとした瞬間、私は突然その手を拘束された。
「おい、動くな!」
動くなとは失礼な!
そんなこと言ったら私の護衛が黙ってませんわよ!
そう思いながら、私は声の主が護衛に捌かれるのを待つ。
……だが、一向にそのタイミングはやってこない。
なんてこと!肝心な時にいないなんて!
この国は護衛すらも無能に成り下がったのかしら!?
私は護衛への怒りのあまり、ついにジタバタと手足を動かして始める。
ついでに護衛を叱責しようとしたが、口元はなぜか縛られてて、上手く声が出せなかった。
「動くなって言ってんだろ!お前は人質なんだよ!これ以上動くようならこっちも容赦しないぞ!」
次の瞬間。私は固い何かでゴンッと頭を叩かれた。
いったぁ~~!!
コイツ。よくも私にこんなことを!絶対許しませんわ!!
ついに怒りが頂点に達した私は全力の叫びを上げる。
「ふぐぐーー!!ふぐぐぐぐーーー!!」
「っち!ジタバタした次は騒ぎ出すか!分かった!口は自由にしてやるからとりあえず騒ぐのはやめろ!!」
すると、声の主は根負けしたように、私の口元の縄を解いた。
「はぁ、はぁ。……一体なんのつもりですの?こんなことすれば、いくら私の護衛達が無能といえども黙ってませんわよ!」
「……無能?まぁいいか。あー、状況が理解できてなさそうだからもう一回言うぞ。あんたはな、ウチらに誘拐されたんだよ」
周りを見渡すと、確かにそこは野営地ではなく、脆そうな小屋の中だった。
「なんでよ!」
「身代金とるためだよ。あんた、見た感じいいとこのお嬢さんだろ?そしたら当然あんたの家族はあんたのためにたくさん金払えるよな?ウチらはそれが欲しいんだ」
「お金なんて、腐るほどありますわ!こんなことしなくても頼めばいくらでも恵んであげますのに!」
「いいや。あんたら金持ちは常に自分しか見てない。だからウチら貧乏人はこういう手段で必要な金を稼いでくしかねぇんだよ」
それは、どこか悲しそうな声であった。
私はその時、初めて声の主のことをはっきりと見た。
その月明かりの向こうには、まだ少女と呼べるほど幼い子供がいた。
屈強な男達が、付き従う様子を見せていたことから、彼女こそが私を誘拐した集団のリーダーだとすぐに分かった。
「……あなた。子供だったのね」
「子供じゃねぇ。これでも20は過ぎてんだ」
……訂正。彼女は子供ではなかった。
でも、そんな彼女の様子を見て、私はこれからどうするかについて、考えを巡らすのだった。
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