上 下
2 / 23

2 お姉様の代わりに……

しおりを挟む
 お姉様が公務を放棄して逃げ出した!
 今、国の衛兵たちが総力を上げて国中を探しているらしい。
 しかし、お姉様が見つかったという報告は未だになかった。

 あれだけの数を揃えておきながらお姉様1人見つけられないなんて、やはり衛兵たちは無能なのではあるまいか?
 最近戦いとか無かったからその間に組織が腐敗してしまったのではあるまいか?

 そんなことを考えてると、使いの人が部屋にやってきた。

 ついさっき頼んだ紅茶を持って来てくれたのだろうか?それにしては早すぎる気がする。

「クロエ様。王様がお呼びです」
「あら、お父様が?何の用かしら?」
「分かりません。すぐ参るようにとのことです」
「分かったわ。すぐ支度するから待つように伝えて」
「かしこまりました」

 そうすると私はいそいそと髪と服装を整え始める。
 いくら家族とはいえお父様はこの国の王様なのだ。
 謁見する際は娘の私でもある程度の礼儀が要求されるのである。

 そうしてお父様のいる部屋までやって行くと、使いの者がドアのノックして私がきたことを伝える。
 中から入室の許可が降りたので入ると、お父様は机の両サイドに書類の山脈を作りながら私を出迎えた。

 ヒョエー……

 その光景に、私は思わず心の中で悲鳴を上げてしまう。

「来たな。クロエ」
「お久しぶりです。お父様。今回はどういったご用件でしょうか?」
「シャルが失踪したことは知っているな?」
「えぇ、存じております。早く見つかると良いのですが……」
「そのことで頼み事なんだが、シャルがいない間、お前が代わりに公務を行なってくれないか?」
「えっ?私がですか?」
「あぁ。最近はな、国内貴族達のいざこざに加えて隣国との国境問題まであってな、とても私1人では手が回らんのだ」
「はぁ」
「その手が回らない分をシャルにやってもらっていたのだが、そのシャルが居ないとなると代わりに誰かがやらなければならん。……とは言っても王族の公務は国の一大案件。それを適当なヤツに任せる訳にはいかん。そこで最近暇そうなお前に白羽の矢が立ったのだ」

 いやいや、適当なヤツに任せておけばいいじゃん!どんな悪政を敷いても私の生きてるうちに滅びるほど脆い国ではないでしょ!

 そんな言葉が出かかったが、いかんせん相手は国王。なんとか言葉を抑えた。
 が、それでも私はなんとか粘ろうと試みる。

「……しかしお父様、私はこれまで一切公務とは無縁でした。これでお姉様の代わりが務まるでしょうか?」
「心配ない。この国には優秀な補佐官がいる。彼の言う通りしてれば大丈夫だ」

 しかしそれも無駄に終わってしまった……

 あぁ!何が優秀な補佐官よ!この国の官僚が皆んな無能だったらよかったのに!!

 しかしここまで言われたら流石に承諾以外の手はなかった。
 私は諦めて公務に向き合う覚悟を決めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。

拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。 一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。 残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました

山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。  でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。  そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。  長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。 脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、 「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」 「なりすましヒロインの娘」 と同じ世界です。 このお話は小説家になろうにも投稿しています

本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。 しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。 そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。 このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。 しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。 妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。 それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。 それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。 彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。 だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。 そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

処理中です...