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1 お姉様の失踪
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ティーファ王国の第二王女として生まれた私は今、何の制限も受けずに悠々自適に暮らしている。
お城では、いつも最高級のお料理が出され。
お菓子も一流の料理人が手がけたものだけを食べる。
王族の公務は全てお父様とお姉様により行われてるので私はすることがない。常に自由時間である!
まさに至福の生活!
ちなみに、お父様には男子がいないので、必然的にこの王朝はお姉様に継がれる流れになるらしい。
だからお姉様は次期最高権力者として今のうちからこの王国の現状を把握するために公務の一環を行っているのだ。
正直言って、今の姉様はとても大変そうだ。
なにせ、朝4時から公務を開始して深夜0時になってようやく床に着くような生活をしてるのだ。
いつも私とお城ですれ違う度に、
「あ~!いいなぁ!クロエ!私と立場交代してくれない!?いや、これマジで!!お姉ちゃんの称号譲るからさぁ!!」
とか色々言ってくる。
もちろん私はお姉様と交代する気なんてさらさらない。
というかまずもって不可能だ。
そんな哀れなお姉様には、終わりのない公務の中に自分の楽しみを見出してもらいたいものだ……
私はそういう意味でお姉様を応援してる。
さて、今日は宮廷音楽家が私のために作曲してくれた音楽を聴く日である。
私は胸をワクワクさせながらお城に備え付けられた音楽室へ向かう。
途中、お姉様の執務室の前を際に中から声が聞こえた。
「シャル様。こちらの書類をご確認の上、全てに署名をお願いします」
「えっ、ご確認って。これパッと見でも1000枚ぐらいあるんですけど!?結局はどうせ全部署名するんだから補佐官が代わりにやってくれない?」
「……シャル様。それだと署名偽造になってしまいます」
「えっ?もういいじゃん。署名偽造でもいいじゃん。王女である私が許す。以上」
「しかしシャル様、そういうわけにも……」
シャルというのはお姉様の名だ。
お姉様は相変わらず大変そうである。
あ~、長女に生まれなくてよかった!
この生活はお姉様さまさまだわ!
私はその会話を聞きながら中で起こってることを想像し、鼻歌を歌いながら音楽室に向かった。
……事件は、その帰りに起こった。
宮廷音楽家の素晴らしい音色を堪能した私は、午後のティータイムを楽しむために自室に戻るところだった。
すると、前方からお姉様が走ってくるのが見える。
「あっ、お姉様!」
「あぁクロエ!この国をよろしく!」
私が声をかけるとお姉様は謎の返事をして親指をグッと立てた。
そしてまた後ろに駆けて行ってしまう。
一体何だったのかしら?
私が微かな不安を覚え始めたその時だった。
今度は前方から衛兵の叫び声が聞こえた。
「何としてもシャル様を捕まえろ!まだ近くにいるはずだ!」
「「「はっ!!」」」
お姉様の名を聞きつけて、私は思わずその衛兵たちに話しかける。
「あ、あの。何があったのかしら?」
「これは、クロエ様!大変です!シャル様が公務を放棄して逃げ出しました!」
「……えっ?」
その時、私の思考は一瞬で固まった。
お城では、いつも最高級のお料理が出され。
お菓子も一流の料理人が手がけたものだけを食べる。
王族の公務は全てお父様とお姉様により行われてるので私はすることがない。常に自由時間である!
まさに至福の生活!
ちなみに、お父様には男子がいないので、必然的にこの王朝はお姉様に継がれる流れになるらしい。
だからお姉様は次期最高権力者として今のうちからこの王国の現状を把握するために公務の一環を行っているのだ。
正直言って、今の姉様はとても大変そうだ。
なにせ、朝4時から公務を開始して深夜0時になってようやく床に着くような生活をしてるのだ。
いつも私とお城ですれ違う度に、
「あ~!いいなぁ!クロエ!私と立場交代してくれない!?いや、これマジで!!お姉ちゃんの称号譲るからさぁ!!」
とか色々言ってくる。
もちろん私はお姉様と交代する気なんてさらさらない。
というかまずもって不可能だ。
そんな哀れなお姉様には、終わりのない公務の中に自分の楽しみを見出してもらいたいものだ……
私はそういう意味でお姉様を応援してる。
さて、今日は宮廷音楽家が私のために作曲してくれた音楽を聴く日である。
私は胸をワクワクさせながらお城に備え付けられた音楽室へ向かう。
途中、お姉様の執務室の前を際に中から声が聞こえた。
「シャル様。こちらの書類をご確認の上、全てに署名をお願いします」
「えっ、ご確認って。これパッと見でも1000枚ぐらいあるんですけど!?結局はどうせ全部署名するんだから補佐官が代わりにやってくれない?」
「……シャル様。それだと署名偽造になってしまいます」
「えっ?もういいじゃん。署名偽造でもいいじゃん。王女である私が許す。以上」
「しかしシャル様、そういうわけにも……」
シャルというのはお姉様の名だ。
お姉様は相変わらず大変そうである。
あ~、長女に生まれなくてよかった!
この生活はお姉様さまさまだわ!
私はその会話を聞きながら中で起こってることを想像し、鼻歌を歌いながら音楽室に向かった。
……事件は、その帰りに起こった。
宮廷音楽家の素晴らしい音色を堪能した私は、午後のティータイムを楽しむために自室に戻るところだった。
すると、前方からお姉様が走ってくるのが見える。
「あっ、お姉様!」
「あぁクロエ!この国をよろしく!」
私が声をかけるとお姉様は謎の返事をして親指をグッと立てた。
そしてまた後ろに駆けて行ってしまう。
一体何だったのかしら?
私が微かな不安を覚え始めたその時だった。
今度は前方から衛兵の叫び声が聞こえた。
「何としてもシャル様を捕まえろ!まだ近くにいるはずだ!」
「「「はっ!!」」」
お姉様の名を聞きつけて、私は思わずその衛兵たちに話しかける。
「あ、あの。何があったのかしら?」
「これは、クロエ様!大変です!シャル様が公務を放棄して逃げ出しました!」
「……えっ?」
その時、私の思考は一瞬で固まった。
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