たとえ運命の番じゃなくても

暁 紅蓮

文字の大きさ
上 下
11 / 142
高校では… side悠

6

しおりを挟む
それに梨衣玲衣からもらった首輪も付けている。
それを考えたらそれこそ番なんて到底無理だ。

虚しさを覚えながらも和哉に助けてもらい、取り敢えず保健室に向かった。

「ありゃ、どうしたの?」
「あ、悠が発情期になっちゃって…」
「貴方‪α‬?少しはつらいわよね?私が面倒みるから大丈夫よ。教室に戻ってて」
「あ、はい」

胸元くらいまでのストレートな黒髪を1つで縛っている女性。
保健室の先生の名前は確か橘紗夜たちばなさよ
本人も‪α‬だが番がいると言っていた。

「えーと、新垣悠くんね?」
「あ…はい。1年の新垣悠です…」
「薬は?」
「打ちました。今は少し落ち着いています…」
「でもまだ匂いがするわね…私のフェロモンで囲っていいかしら?それともさっきの男前くんにする?」
「い、いえっ!これ以上和哉に迷惑かけられない…」
「分かったわ」
「先生番いるんですよね?」
「いるわよ?」
「…あの、大丈夫です。落ち着いてきているので。自衛もありますし」
「うーん、でも…」
「何かあっても首輪がありますから」
「…分かったわ。でも‪α‬は凶暴なものだから気を付けてね?」
「はい、ありがとうございました」

俺はそのまま教室を出た。
出た瞬間多分‪α‬であろう人達がギラついた目でこちらに視線を向ける。

大丈夫、大丈夫…何かあっても首輪これがある…。
このまま帰ってしまえば迷惑もかけない。

俺は教室に戻った。

「悠!?どうして教室に…!」
「和哉…俺帰るね」
「その状況でか?」
「うん。薬はちゃんとその後飲んだから大丈夫」

俺は自分が出している誘惑に気付いていなかった。

「悠」
「ん?」
「どれだけ視線を呼び寄せているか分かるか?どれだけ‪α‬達を、俺達を誘惑しているか分からないだろ」
「それは分からない…でも迷惑かけられないから帰るの」
「…じゃあ俺のフェロモンを」
「番じゃないのに申し訳ないよ。じゃあ梨衣玲衣と帰ればいい?」
「あいつらだってβだろ?」
「和哉心配性…親に迎えに来てもらうには住んでる所が遠いから親戚の人に頼む。それでいい?」
「…それならいい」
「じゃあ連絡するね」

親戚の人、叔父さんはこの学校からそう離れてはいない所に住んでいる。
叔父さんはΩで、俺と同じ。
そして番持ち。
番はいかにも‪α‬と思わせるような女性。
運命の番ではないけれど、一緒にいて楽しそう。

叔父さんに連絡を入れるとすぐに来てくれるということだった。

「すぐに来てくれるみたいだから校門で待ってるね」
「俺が…」
「この梨衣様が待っていてあげましょ~」

和哉が何か言っていたが梨衣の言葉に阻まれ聞こえなかった。

「ありがとう梨衣。じゃあ一緒に叔父さん来てくれるの待と…?」
「おっけぃ~」

梨衣が荷物を持ってくれた。
梨衣に支えられて校門まで向かう。
つらそうに歯を食いしばっている和哉には気づかずに。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。 新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。 年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。 *現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。 *初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

手の届かない元恋人

深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。 元彼は人気若手俳優になっていた。 諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

処理中です...