たとえ運命の番じゃなくても

暁 紅蓮

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それは、中学に出会った俺の恋の話。side悠

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「や、やだっ!やめろっ!」

それは俺が中学から全寮制のところに入り、半年経った頃のこと。

「いいじゃーん?‪α‬様の言うことさえ聞いていれば痛い思いしなくて済むんだよ~?」
「ちょっとヤラせてくれれば良いからさ~」

3人組の‪α‬に人気のない体育館の裏で襲われている時。

「やだっ!離せ…っ」

3対1で不利だとしても抵抗はやめない。

(こんな所でヤられてたまるかっ)

「ちったぁ大人しくしろ!」
「うぐ……っ」

1人が両手を片手で纏め、上で固定してお腹に1発パンチを喰らわす。

「ぁ……ぐ……っ」

俺は苦しくて前のめりになった。

「はっ、大人しくしていればそんな事しなかったんだぞ」
「これ以上痛くされたくなかったら大人しくしとけ」

3人で制服を破りながら脱がせる。

「ゃ…っ、やだっ!」

もうどうしようもできず、俺は目をギュッと瞑る事しかできなかった。

「お前ら何してる!」

ヤラれるのを覚悟した瞬間、声がした。
その直後、ドゴッと重い音がして、身体が自由になった。

(え、何……?)

そっと目を開くと、顔の整っている男が立っていた。
髪は短く切りそろえられており、つり目だった。

「大丈夫か?…‪α‬代表として謝る。ごめんな」

手を差し出してくる。
その手を取り、俺は立ち上がった。

「シャツ破れてるな…ズボンは大丈夫か」

悠のシャツは‪α‬の馬鹿力のせいでズタボロだった。

「ズボンは大丈夫だな。俺のカーディガンで申し訳ないが着ていてくれ。しばらくの間は俺のフェロモンが守ってくれるだろう。襲われることは少ないと思う」
「ありがとうございます…」

そう言ってその男は立ち去ろうとした。

「待って!名前を教えてください…」
「俺?俺の名前は壱城和哉いちじょうかずやじゃあ気をつけろよ」

そう言うと今度こそ去ってしまった。

「…壱城……和哉……」

その日、俺は恋をした。

レイプされそうになった所に現れた、心の美しい王子様に。
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