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03 : セイン皇子
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その後、ノームに呼ばれて玄関先へ向かったところ。
長い金髪に凛々しく清廉な顔つき、さらにスラッとした長身というあまりにもオーバースペックな男性ーーセイン=ギルフォード様が退屈そうな表情で立っておられました。
そして私を確認するや否や、パッと顔を輝かせて。
「レイナ!!迎えに来たぞ!!」
屋敷に響くくらいの大声で、そう叫んだのでした。
「セイン様、声が大きいです……」
「おっとすまん。なにせレイナからの久々の手紙だったからな、ついテンションが上がってしまった。今日はデルトルト辺境伯との会談があったがすっぽかしてきたくらいだ!」
「それは是非行ってあげてください!」
皇子と辺境伯の会談なんて重大な事より私の迎えを優先させてしまったのに罪悪感を覚えますが、当の本人は軽快に笑っています。
そう、私がセイン皇子を頼りたく無かった理由。
それは彼があまりにも過保護だからです。
庶民と皇子とでは余りにも身分が釣り合わないのも理由の一つなのですが、この過保護っぷりというのが尋常ではなく。
今回のような会談の中止などまだマシな方です。
1番酷かったのは、私がまだ幼かった頃……と、これを語るのはまた後の方にいたしましょうか。長くなってしまいます。
私が回想に耽っている間に、いつの間にかアグル様が珍しく身なりを整えて玄関まで来ていました。
セイン様の服と比べると、かなり粗末に見えてしまうものですが。
「せ、セイン皇子!お初めにかかります、私、セファリッド家が長男、アグル=セファリッドと申します!この度は当家にお越しいただき誠に……」
「ああ、君がアグルか。私のレイナの『元』婚約者だね?」
ちょっと待ってくださいセイン皇子。
まだ私は貴方のものではありませんが?
それに元だけ強調して言っているのも、なにか嫉妬のようなものを感じますが……。
「レイナから話は聞いているよ。婚約を破棄したんだってね?それも君の方から」
「は、はい、そうでございますが……」
ふぅん、と畏まっているアグル様を一瞥すると、私の方に手を伸ばして。
「さあ行こうレイナ。どうぞ、手を取って」
素敵すぎる笑顔で、そう微笑みました。
庶民の出であるこんな私が……と気遅れはあるものの、差し出された手を取ります。
「ええ、セイン皇子」
余りにも過保護すぎるセイン様だけど。
でも、アグル様の元を離れてセイン様の元へ行くと思うと、やっぱりほっとする自分がいるのを感じます。
こうして私は、セファリッド家の屋敷を出たのでした。
長い金髪に凛々しく清廉な顔つき、さらにスラッとした長身というあまりにもオーバースペックな男性ーーセイン=ギルフォード様が退屈そうな表情で立っておられました。
そして私を確認するや否や、パッと顔を輝かせて。
「レイナ!!迎えに来たぞ!!」
屋敷に響くくらいの大声で、そう叫んだのでした。
「セイン様、声が大きいです……」
「おっとすまん。なにせレイナからの久々の手紙だったからな、ついテンションが上がってしまった。今日はデルトルト辺境伯との会談があったがすっぽかしてきたくらいだ!」
「それは是非行ってあげてください!」
皇子と辺境伯の会談なんて重大な事より私の迎えを優先させてしまったのに罪悪感を覚えますが、当の本人は軽快に笑っています。
そう、私がセイン皇子を頼りたく無かった理由。
それは彼があまりにも過保護だからです。
庶民と皇子とでは余りにも身分が釣り合わないのも理由の一つなのですが、この過保護っぷりというのが尋常ではなく。
今回のような会談の中止などまだマシな方です。
1番酷かったのは、私がまだ幼かった頃……と、これを語るのはまた後の方にいたしましょうか。長くなってしまいます。
私が回想に耽っている間に、いつの間にかアグル様が珍しく身なりを整えて玄関まで来ていました。
セイン様の服と比べると、かなり粗末に見えてしまうものですが。
「せ、セイン皇子!お初めにかかります、私、セファリッド家が長男、アグル=セファリッドと申します!この度は当家にお越しいただき誠に……」
「ああ、君がアグルか。私のレイナの『元』婚約者だね?」
ちょっと待ってくださいセイン皇子。
まだ私は貴方のものではありませんが?
それに元だけ強調して言っているのも、なにか嫉妬のようなものを感じますが……。
「レイナから話は聞いているよ。婚約を破棄したんだってね?それも君の方から」
「は、はい、そうでございますが……」
ふぅん、と畏まっているアグル様を一瞥すると、私の方に手を伸ばして。
「さあ行こうレイナ。どうぞ、手を取って」
素敵すぎる笑顔で、そう微笑みました。
庶民の出であるこんな私が……と気遅れはあるものの、差し出された手を取ります。
「ええ、セイン皇子」
余りにも過保護すぎるセイン様だけど。
でも、アグル様の元を離れてセイン様の元へ行くと思うと、やっぱりほっとする自分がいるのを感じます。
こうして私は、セファリッド家の屋敷を出たのでした。
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