上 下
11 / 22

11 : ユニ・ローレンス

しおりを挟む
少女をベットに寝かせ、目覚めを待つ間に枯死草を使ってスープを作る。  
 前回のように、味付けは塩だけで十分だろう。
 お湯を沸かしている間、この子について少し考えてみる。

 ーーこの場所がこの世界においてどの位置にあるのか分からないが、褐色岩を鑑定した際の説明に「果ての地方に多い」とあったので、ここはおそらく端っこの方に位置している、いわゆる辺境の地なのだろう。

 そんなところに、こんな上品な少女が1人で来るものだろうか?
 襲われた後魔物に運ばれてきたとか、そんな感じなのかもしれない。
 そうなると、彼女を家まで帰してあげるのに移動魔法とか必要になるな……。めうを通して女神に頼むか……?


「ふぅっ……うぁ……」

 色々と思案してあると、ベットの方から声が聞こえた。
 どうやら少女が起きたようだ。

「ん……ここは……」

 艶のある黒髪を揺らしながら、上半身だけを起こして辺りを見渡している。
 そして俺を見つけると、驚いた表情を見せた。

「あの、貴方は……?」

「俺はこの家の主人、藤峰卓人です。君が家の前に倒れていたから、勝手だけど家で介抱させてもらってたんだ」

「えっ、あっ、その……。ありがとう、ございます……」

 しどろもどろの状態で深々と頭を下げる。
 今の状況に混乱しているのだろう。

「びっくりしたよ。扉を開けたら君が倒れてたんだから。治癒魔法を使わせてもらったんだけど、どっか痛いとことか無い?」

「あ、はい、体のほうに異常はなにも……。介抱に加え治癒魔法を使っていただき、本当にありがとうございます。……その、最初は貴方に襲われたのかと思って身構えてしまい、申し訳ありませんでした……」

 や、やっぱりそう思われてたのか。
 まあでも普通そうだよな。
 気絶から目が覚めたら男の家のベットの上、なんて状況そう考えない方が無理がある。

「いや、別に大丈夫だよ。色々聞きたいことはあるけど。とりあえず、スープ、飲む?」

 枯死草スープを皿によそって、机の上に置く。
 彼女はお腹が減っていたのか、お腹をぐぅ~~と鳴らすと、恥ずかしそうに席についた。

「じゃあ俺から自己紹介させてもらうね。俺は藤峰卓人、18歳。ここでスローライフ……まあゆったりとした生活を目指して開拓をしてるんだ。君は?」

「私は……ユニ。ユニ・ローレンスです。年はタクトさんの二個下の16です。久々に散歩をしようとしたら魔物に襲われて……」

「目が覚めたらここにいた、と」

「はい……お恥ずかしい話です」

 顔を赤らめながらそう呟く。

「いや、魔物に襲われたのは仕方ないよ。無事だっただけ喜ばないとね。ユニの家はどこだい?出来る限り送っていってあげるよ」

「あ、家は、その」

 言葉が途切れ途切れになったかと思うと、顔をうつむけてしまった。

 もしかして、聞いたらいけないことを聞いてしまったのだろうか?
 謝罪をしようとすると、覚悟でもしたような表情で顔を上げると。

「わ、私、家出したんです!家に戻りたくありません!ここに泊めてください!!」

 精一杯の声でそう叫んだ。

「いえ、で……」

 どうやら異世界にも、家出少女はいるようだ。





      ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎




11話目です!ここまで読んでくださりありがとうございます!
よければお気に入り登録、感想をいただけると、作者が踊り狂って喜びます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る! #ハズワケ!

寝る犬
ファンタジー
【第3回HJ小説大賞後期「ノベルアップ+」部門 最終選考作品】 「ハズワケ!」あらすじ。 ギフト名【運び屋】。 ハズレギフトの烙印を押された主人公は、最高位のパーティをクビになった。 その上悪い噂を流されて、ギルド全員から村八分にされてしまう。 しかし彼のギフトには、使い方次第で無限の可能性があった。 けが人を運んだり、モンスターをリュックに詰めたり、一夜で城を建てたりとやりたい放題。 仲間になったロリっ子、ねこみみ何でもありの可愛い女の子たちと一緒に、ギフトを活かして、デリバリーからモンスター討伐、はては他国との戦争、世界を救う冒険まで、様々な荷物を運ぶ旅が今始まる。 ※ハーレムの女の子が合流するまで、マジメで自己肯定感の低い主人公の一人称はちょい暗めです。 ※明るい女の子たちが重い空気を吹き飛ばしてゆく様をお楽しみください(笑) ※タイトルの画像は「東雲いづる」先生に描いていただきました。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

最強の英雄は幼馴染を守りたい

なつめ猫
ファンタジー
 異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。  そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

千里の道も一歩から

もちた企画
ファンタジー
農家に生まれて親から野菜の育て方を教わった。春夏秋冬と季節をめぐり収穫できる野菜の種類もわかってきた。 一区画の畑を任され実際にやってみると問題点が出てくるのが楽しい。毎日畑に足を運んで雑草や土壌の管理をした。 俺は今充実している。 あとは畑の拡張と街へ運ぶ運搬をどうにかできれば次の年にはもっとたくさんの畑で野菜を収穫できるだろう。 これは野菜を作りたいある農夫のお話。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...