孤狼に愛の花束を

柚子季杏

文字の大きさ
上 下
46 / 48

孤狼に愛の花束を (46)

しおりを挟む
 細い首筋に唇を寄せ、滑らかな陶器のようなその肌を優しく啄む。ふさりとした尻尾を揺らして裸身を刺激すれば、その度に痩身を震わせる小太郎の唇からは甘い声が溢れ出す。
「んっ、あ、あぁ」
 獣姿である時ならば、決して晒したりはしないだろう首筋へ、やんわりと歯を立てる。急所を曝け出しての行為。人間であっても時に恐怖を感じるであろうその個所を晒す行為は、俺たち獣人にとっては、互いに互いを信頼していなければ決して出来はしない。

 小太郎とは違い、こういった経験が皆無だったとは言わない。後腐れの無い相手を見繕って、その一時の快楽を追った経験はある。
 それでも、これまでの欲を発散させる為だけの行為として行っていた時には、俺自身は裸身を晒すことも無いままだった。相手を気遣うことも最低限に、ただ己の欲求を満たすためだけに行っていた行為。
 なのに今は、小太郎を相手にするからこそ、全身で触れ合いたいと思うのだ。

「あっ、銀、さ……っ」
「気持ち良いか? 下も反応してるな」
「ッ……言わな……あっ、や」
 僅かに身を起こして再びキスを交わしながら、片手で小さな胸の粒を弄る。指先で摘み、擽り、捏ね回し……小さなその粒が硬さを持って立ち上がるのと同じく、時折俺の腹筋に擦れていた小太郎の屹立からもぬるりとした愛液が滴り始めた。
「んんっ、や、ヤダ、銀さんっ」
「嫌なのか?」
「だって、だって――変だよ、そんなとこ、何で……」
「何も変じゃない、男なら誰でもこうなる…気持ち良いんだろ? 我慢せずに感じていれば良い」
「は、あぁっ」
 先ほどまで指先で丹念に刺激を与えていた粒を唇で挟み込む。もう片方の膨らみは指で刺激を与えつつ、歯を立ててはじゅるりと吸い上げ、舌先で弾くように舐め転がせば、小太郎がもう嫌だと身を捩る。
 何もかもが初めての小太郎にとって、乳首で感じるということが信じられないのだろう。
 真っ赤になる小太郎の可愛らしさにくらりとしながら宥めすかし、胸の尖りへの刺激は止めることの無いまま、先ほどから俺の腹の下でぴくぴくと震える小振りな屹立を、空いている手の平で包み込んだ。
「ぬるぬるだな」
「ふっ、あ……あっ、ヤ……駄目っ!」
 包み込んだ屹立をやんわりと数度扱き、はくはくと収縮する小さな穴に爪の先を立てただけで、未熟な果実は呆気なく弾けた。
 他人の手によって初めてもたらされた絶頂に、荒い呼吸を繰り返す小太郎が恥ずかしそうに視線を合わせて寄越す。
「……ご、め……オレ、こんな――」
「謝るな。何度でもイけば良い……これが、お前の味か……」
「ちょっ! 銀さん汚い! 舐めちゃ駄目っ」
「少しも汚くなんて無いさ。言っただろ? 俺にとってお前は、綺麗過ぎるくらいなんだ」
「ひっ、ああっ」
 手で受け止めた小太郎の欲望が手首へと伝い落ちてくるのを舐め上げれば、その様子を目に止めた小太郎が慌てて俺の行動を止めようと身を起こし掛ける。
 その肩をトンと押し返し、再び仰向けにしたところで、俺は躊躇なく小太郎のものを口へと含み込んだ。
「あっ、やめ、あ……銀、さ……んあっ」
 欲を吐き出したばかりで、くたりと萎えかけていた屹立へと舌を絡ませる。
 微かな抵抗を細腰に回した片腕で抑え込み、すっぽりと咥内へ収まった柔らかな昂りを丹念に舐めしゃぶれば、与えられる刺激にむくむくと再び兆しを見せ始めた。

 ふぁさりと尾を揺らして跳ねる身体を撫で回し、片手は胸の粒を弄る動きを止めることもしない。緊張による強張りがすっかり取れた小太郎の昂ぶりが育ち切ったところで、力の抜けた身体をひと息に引っ繰り返した。
「んあっ、あ――っんぅ」
 腰が浮くように持ち上げ、四つん這いの体勢を取らせる。とはいえ力の入らない腕では自身の体重を支えることも出来ずに、小太郎はまるで猫のように背を撓らせ、頭をシーツへと押し付けるような格好になっていた。
「教えてもいないのに、ヒクついているな」
「はあっ、あっ、あ」
 小太郎が我に返る前にと、立ち上がった尻尾の少し下、尻たぶを掴んで奥まった場所を空気に晒す。自らが零した愛蜜と俺の唾液とが伝わったその場所では、慎ましやかな蕾がヒクヒクと物欲しげな動きを繰り返していた。
 はぁ、と思わず熱い息が口から漏れ出た。
 絶頂へ駆け上がろうかという寸前で放り出された身体を持て余し、無意識に腰を揺する小太郎の秘所の上で、くるんと丸まった尻尾が同じリズムで揺れ動く。
「オネダリが上手いじゃないか、コタ……」
「ん、ふっ、ああっ」
 蕾の入口を指先で優しく揉み解しながら、小太郎の背に覆い被さるように寄り添う。
 頭の上でも尻尾と同じ色をした小さな耳がピクピクと動いているのに目を止め、傷をつけない程度の力を籠めて甘噛みしながら囁けば、その度に揺れ動く尻尾が腹に擦れてこそばゆい。
「あ、や……銀、さっ」
「まだ駄目だ――我慢すればもっと気持ち良くなれる」
「いや、やっ、おか…おかし、な、からっ」
 先ほどから放置されたままの小振りな昂ぶりからは蜜が滴り、シーツへの染みを広がらせていた。
 俺が触ることを止めているのが苦しいのだろう。耐え兼ねた小太郎の手が、自身の性器へと伸ばされるのを静止しつつ、俺はしなやかに撓る白い背へ舌を這わせた。
 冬だというのにすっかり汗ばんだ白い肌。石鹸の香りに交じる小太郎の匂いを吸い込みながら、浮き上がる骨に沿って項から徐々に唇を滑らし、反応を示した部分を吸い上げる。その度に赤い所有印が、小太郎の肌の上へと散って行く。
「ひ、ぃっ、んんぅっ」
「ああ……すごいな。ここを弄ると後ろのひくつきが増す」
「恥…言わ、な――んあっ、は、はぁ……」
 辿り着いた尻尾の付け根に軽く歯を立てれば、途端に小太郎の反応が激しさを増した。全身を震わせ、声にならない嬌声を上げる様子に、若干やり過ぎたかと様子を窺う。
 何もかもが初めて尽くしの小太郎には、快楽よりも辛さの方が勝ってしまったようだ。
「イって良いぞ、ホラ……」
「んっふ、は、ぁぁ、っ」
 きゅっとシーツを握り締めた小太郎の指先が、力を入れ過ぎて白くなっているのが目に留まる。
 ひくひくと震える背にくちづけをひとつおとしして、愛蜜を零し続ける昂ぶりを扱き上げ、先端の窪みを爪先で抉ってやれば、ほんの僅かなその刺激に、小太郎は再びの精を吐き出した。
「ぅ、ぁ……ぎ、さ――」
「良い子だ、そのまま力を抜いていろ」
「んんぅっ」
 小太郎の吐き出した蜜に濡れた指を、ヒクヒクと蠢く窄まりへと塗り付け、一本目の指をゆっくり挿し入れる。
 数度出し入れを繰り返し、愛蜜だけでは足らないと、その場所へ唇を寄せた。人型でいる時よりも若干長さを増した舌を潜り込ませ、奥まで唾液を送り込む。
 羞恥と擽ったさにヒクリと動く小太郎の背や腰を片手で撫でながら、狭い入口を俺が入り込めるように広げていく。
 初めて広げられた場所は二度の吐精のおかげか、想像していたよりも柔軟に俺の指を飲み込んでいった。
「は、はぁっ、んっ!」
「良い場所に当たったか?」
「ぁ、も……銀、さ……苦し――あ、あっ」
 三本目の指を挿し入れ、蠢く内部への刺激を送り続けるうちに、指先が内側にある小さなしこりを掠めたらしい。
 勃ち上がる力の弱まっていた昂ぶりが硬さを取り戻し、その先端からとろりとした蜜を吐き出した。首だけを捻った小太郎が、焦点のはっきりしない潤んだ瞳で俺へと救いを求める。

 いつもの小太郎からは考えられないほどの色香に、俺も必死に掻き集めていた自制心が焼き切れそうだった。
 ぶわりと立ち昇る甘い香りは、気持ちがそこにあるからこそ感じられるフェロモンなのだろうか。
「ああ……俺ももう限界だ。今度は一緒に……」
 十分に解れたとは言い難い窄まりに挿れた指を広げながら抜き取り、かぱっと開いた入口が閉じきる前にと、張り詰めた己の屹立を宛がう。
 森での興奮を引きずったままでいた俺にとっても、小太郎の予想以上の媚態は刺激が強かった。今まさに花開こうとしている蕾を前に、滾らなければ雄である必要性など無いだろうと思うほど。
 そしてその相手が、自分が唯一無二と認めた相手であるならば尚更に。

 屹立は先ほどから痛いくらいに脈を刻み、自身の先端から伝った滑りで濡れている。小太郎には凶器にさえ感じるかもしれない怒張を、収縮する場所に俺自身の形を覚え込ませるように、ゆっくりと挿入していく。
「んんぅ―――ッ!」
「くっ、コタ……」
 正面から顔を見たい欲求はもちろんあるけれど、少しでも小太郎の苦しさを和らげたいと、背後から腰を抱え少しずつ自身を埋め込んでいく。
「コタ、力むな……ッ」
 辛いのだろう、僅かに横を向いた小太郎の眦に涙が浮かぶのが見える。
 ハッ、ハッと小さく忙しない呼吸を繰り返す小太郎は、それでも行為を止めようとはしなかった。
 まだキツさを感じる入口を抉じ開けて少し腰を押し進めただけで、これほどきゅうきゅうと締め付けられたのでは、俺としても身動きの取りようが無い。強い締め付けに暴発させてしまわないよう、下腹に力を籠めて、込み上げる獣としての衝動を懸命に堪えた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣化の呪いを受けた騎士があまりにも可愛すぎる件

鈴元 香奈
恋愛
王太子夫妻を救うため、魔女の呪いを受け獣化してしまった騎士が辺境の町にやって来る。 騎士団独身寮の管理をしている一家の娘アニカは、不安を感じながらも、不幸な境遇の彼に少しでも快適に過ごしてもらいたいと思っていた。 ケモミミと尻尾が生えてしまったせいで地方に飛ばされた騎士と、長閑な町に暮らす娘の物語。 *小説家になろうさんにも投稿しています。 表紙人物イラスト:tatsukimeg様(イラストAC)背景:うどん様(イラストAC)よりお借りしております。

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

overdose

水姫
BL
「ほら、今日の分だよ」 いつも通りの私と喜んで受けとる君。 この関係が歪みきっていることなんてとうに分かってたんだ。それでも私は… 5/14、1時間に1話公開します。 6時間後に完結します。 安心してお読みください。

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

女性経験なしのオレ、夢に見たケモミミ様の居る世界へ転移、神にすらなれる能力をもらっていたみたいだけど、ケモミミハーレムを作ることにします。

たんぐ
ファンタジー
【ざっくりあらすじ】 何者かに転移させられてしまった。そこはケモミミの獣人や魔法がある世界だった。すべてはケモミミ様のために。のんびり冒険、魔物討伐、美女、主人公強い。そんなお話です。 【あらすじ】  林信希(はやし まさき)は夢にまで見た、ケモミミふさふさの獣人が居る異世界に転送されてしまう。最初に居た町でいきなりかわいい獣人たちと出会う信希だが、差別や迫害の対象になっていた彼女たちを救うために、彼女たちを引き連れて王都に向かうことになる。  徐々に自分が持っている強すぎる力を自覚する信希は、獣人たちを助けるためにその力を使っていく。現実世界では女性経験のなかった信希だが、どうやら生粋のスケコマシで同行する彼女たちは信希に惹かれていく。  彼女たちと冒険を続ける信希は、この世界のことを知っていき何を選択していくのか──。 【この作品の詳細情報】  R15指定は念のため付けています。  現段階ではタイトルの変更はありません。※文字制限のため多少の変更あり。  「カクヨム」さんにも重複投稿しています。  「小説家になろう」さんから重複投稿しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...