孤狼に愛の花束を

柚子季杏

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孤狼に愛の花束を (46)

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 細い首筋に唇を寄せ、滑らかな陶器のようなその肌を優しく啄む。ふさりとした尻尾を揺らして裸身を刺激すれば、その度に痩身を震わせる小太郎の唇からは甘い声が溢れ出す。
「んっ、あ、あぁ」
 獣姿である時ならば、決して晒したりはしないだろう首筋へ、やんわりと歯を立てる。急所を曝け出しての行為。人間であっても時に恐怖を感じるであろうその個所を晒す行為は、俺たち獣人にとっては、互いに互いを信頼していなければ決して出来はしない。

 小太郎とは違い、こういった経験が皆無だったとは言わない。後腐れの無い相手を見繕って、その一時の快楽を追った経験はある。
 それでも、これまでの欲を発散させる為だけの行為として行っていた時には、俺自身は裸身を晒すことも無いままだった。相手を気遣うことも最低限に、ただ己の欲求を満たすためだけに行っていた行為。
 なのに今は、小太郎を相手にするからこそ、全身で触れ合いたいと思うのだ。

「あっ、銀、さ……っ」
「気持ち良いか? 下も反応してるな」
「ッ……言わな……あっ、や」
 僅かに身を起こして再びキスを交わしながら、片手で小さな胸の粒を弄る。指先で摘み、擽り、捏ね回し……小さなその粒が硬さを持って立ち上がるのと同じく、時折俺の腹筋に擦れていた小太郎の屹立からもぬるりとした愛液が滴り始めた。
「んんっ、や、ヤダ、銀さんっ」
「嫌なのか?」
「だって、だって――変だよ、そんなとこ、何で……」
「何も変じゃない、男なら誰でもこうなる…気持ち良いんだろ? 我慢せずに感じていれば良い」
「は、あぁっ」
 先ほどまで指先で丹念に刺激を与えていた粒を唇で挟み込む。もう片方の膨らみは指で刺激を与えつつ、歯を立ててはじゅるりと吸い上げ、舌先で弾くように舐め転がせば、小太郎がもう嫌だと身を捩る。
 何もかもが初めての小太郎にとって、乳首で感じるということが信じられないのだろう。
 真っ赤になる小太郎の可愛らしさにくらりとしながら宥めすかし、胸の尖りへの刺激は止めることの無いまま、先ほどから俺の腹の下でぴくぴくと震える小振りな屹立を、空いている手の平で包み込んだ。
「ぬるぬるだな」
「ふっ、あ……あっ、ヤ……駄目っ!」
 包み込んだ屹立をやんわりと数度扱き、はくはくと収縮する小さな穴に爪の先を立てただけで、未熟な果実は呆気なく弾けた。
 他人の手によって初めてもたらされた絶頂に、荒い呼吸を繰り返す小太郎が恥ずかしそうに視線を合わせて寄越す。
「……ご、め……オレ、こんな――」
「謝るな。何度でもイけば良い……これが、お前の味か……」
「ちょっ! 銀さん汚い! 舐めちゃ駄目っ」
「少しも汚くなんて無いさ。言っただろ? 俺にとってお前は、綺麗過ぎるくらいなんだ」
「ひっ、ああっ」
 手で受け止めた小太郎の欲望が手首へと伝い落ちてくるのを舐め上げれば、その様子を目に止めた小太郎が慌てて俺の行動を止めようと身を起こし掛ける。
 その肩をトンと押し返し、再び仰向けにしたところで、俺は躊躇なく小太郎のものを口へと含み込んだ。
「あっ、やめ、あ……銀、さ……んあっ」
 欲を吐き出したばかりで、くたりと萎えかけていた屹立へと舌を絡ませる。
 微かな抵抗を細腰に回した片腕で抑え込み、すっぽりと咥内へ収まった柔らかな昂りを丹念に舐めしゃぶれば、与えられる刺激にむくむくと再び兆しを見せ始めた。

 ふぁさりと尾を揺らして跳ねる身体を撫で回し、片手は胸の粒を弄る動きを止めることもしない。緊張による強張りがすっかり取れた小太郎の昂ぶりが育ち切ったところで、力の抜けた身体をひと息に引っ繰り返した。
「んあっ、あ――っんぅ」
 腰が浮くように持ち上げ、四つん這いの体勢を取らせる。とはいえ力の入らない腕では自身の体重を支えることも出来ずに、小太郎はまるで猫のように背を撓らせ、頭をシーツへと押し付けるような格好になっていた。
「教えてもいないのに、ヒクついているな」
「はあっ、あっ、あ」
 小太郎が我に返る前にと、立ち上がった尻尾の少し下、尻たぶを掴んで奥まった場所を空気に晒す。自らが零した愛蜜と俺の唾液とが伝わったその場所では、慎ましやかな蕾がヒクヒクと物欲しげな動きを繰り返していた。
 はぁ、と思わず熱い息が口から漏れ出た。
 絶頂へ駆け上がろうかという寸前で放り出された身体を持て余し、無意識に腰を揺する小太郎の秘所の上で、くるんと丸まった尻尾が同じリズムで揺れ動く。
「オネダリが上手いじゃないか、コタ……」
「ん、ふっ、ああっ」
 蕾の入口を指先で優しく揉み解しながら、小太郎の背に覆い被さるように寄り添う。
 頭の上でも尻尾と同じ色をした小さな耳がピクピクと動いているのに目を止め、傷をつけない程度の力を籠めて甘噛みしながら囁けば、その度に揺れ動く尻尾が腹に擦れてこそばゆい。
「あ、や……銀、さっ」
「まだ駄目だ――我慢すればもっと気持ち良くなれる」
「いや、やっ、おか…おかし、な、からっ」
 先ほどから放置されたままの小振りな昂ぶりからは蜜が滴り、シーツへの染みを広がらせていた。
 俺が触ることを止めているのが苦しいのだろう。耐え兼ねた小太郎の手が、自身の性器へと伸ばされるのを静止しつつ、俺はしなやかに撓る白い背へ舌を這わせた。
 冬だというのにすっかり汗ばんだ白い肌。石鹸の香りに交じる小太郎の匂いを吸い込みながら、浮き上がる骨に沿って項から徐々に唇を滑らし、反応を示した部分を吸い上げる。その度に赤い所有印が、小太郎の肌の上へと散って行く。
「ひ、ぃっ、んんぅっ」
「ああ……すごいな。ここを弄ると後ろのひくつきが増す」
「恥…言わ、な――んあっ、は、はぁ……」
 辿り着いた尻尾の付け根に軽く歯を立てれば、途端に小太郎の反応が激しさを増した。全身を震わせ、声にならない嬌声を上げる様子に、若干やり過ぎたかと様子を窺う。
 何もかもが初めて尽くしの小太郎には、快楽よりも辛さの方が勝ってしまったようだ。
「イって良いぞ、ホラ……」
「んっふ、は、ぁぁ、っ」
 きゅっとシーツを握り締めた小太郎の指先が、力を入れ過ぎて白くなっているのが目に留まる。
 ひくひくと震える背にくちづけをひとつおとしして、愛蜜を零し続ける昂ぶりを扱き上げ、先端の窪みを爪先で抉ってやれば、ほんの僅かなその刺激に、小太郎は再びの精を吐き出した。
「ぅ、ぁ……ぎ、さ――」
「良い子だ、そのまま力を抜いていろ」
「んんぅっ」
 小太郎の吐き出した蜜に濡れた指を、ヒクヒクと蠢く窄まりへと塗り付け、一本目の指をゆっくり挿し入れる。
 数度出し入れを繰り返し、愛蜜だけでは足らないと、その場所へ唇を寄せた。人型でいる時よりも若干長さを増した舌を潜り込ませ、奥まで唾液を送り込む。
 羞恥と擽ったさにヒクリと動く小太郎の背や腰を片手で撫でながら、狭い入口を俺が入り込めるように広げていく。
 初めて広げられた場所は二度の吐精のおかげか、想像していたよりも柔軟に俺の指を飲み込んでいった。
「は、はぁっ、んっ!」
「良い場所に当たったか?」
「ぁ、も……銀、さ……苦し――あ、あっ」
 三本目の指を挿し入れ、蠢く内部への刺激を送り続けるうちに、指先が内側にある小さなしこりを掠めたらしい。
 勃ち上がる力の弱まっていた昂ぶりが硬さを取り戻し、その先端からとろりとした蜜を吐き出した。首だけを捻った小太郎が、焦点のはっきりしない潤んだ瞳で俺へと救いを求める。

 いつもの小太郎からは考えられないほどの色香に、俺も必死に掻き集めていた自制心が焼き切れそうだった。
 ぶわりと立ち昇る甘い香りは、気持ちがそこにあるからこそ感じられるフェロモンなのだろうか。
「ああ……俺ももう限界だ。今度は一緒に……」
 十分に解れたとは言い難い窄まりに挿れた指を広げながら抜き取り、かぱっと開いた入口が閉じきる前にと、張り詰めた己の屹立を宛がう。
 森での興奮を引きずったままでいた俺にとっても、小太郎の予想以上の媚態は刺激が強かった。今まさに花開こうとしている蕾を前に、滾らなければ雄である必要性など無いだろうと思うほど。
 そしてその相手が、自分が唯一無二と認めた相手であるならば尚更に。

 屹立は先ほどから痛いくらいに脈を刻み、自身の先端から伝った滑りで濡れている。小太郎には凶器にさえ感じるかもしれない怒張を、収縮する場所に俺自身の形を覚え込ませるように、ゆっくりと挿入していく。
「んんぅ―――ッ!」
「くっ、コタ……」
 正面から顔を見たい欲求はもちろんあるけれど、少しでも小太郎の苦しさを和らげたいと、背後から腰を抱え少しずつ自身を埋め込んでいく。
「コタ、力むな……ッ」
 辛いのだろう、僅かに横を向いた小太郎の眦に涙が浮かぶのが見える。
 ハッ、ハッと小さく忙しない呼吸を繰り返す小太郎は、それでも行為を止めようとはしなかった。
 まだキツさを感じる入口を抉じ開けて少し腰を押し進めただけで、これほどきゅうきゅうと締め付けられたのでは、俺としても身動きの取りようが無い。強い締め付けに暴発させてしまわないよう、下腹に力を籠めて、込み上げる獣としての衝動を懸命に堪えた。


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