輪廻転生

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池田夏菜子の愛

輪廻転生

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〈看護師〉「お母様!産まれましたよ!
よかったですね!体も健康です!」
初めての呼吸と同時に赤子が泣いている。
その赤子を喜びながら抱き抱える母親の
様子を僕は三人称視点で眺めていた。
母親はありがとうと繰り返しながら
彼女の額にキスをしていた。
人の誕生の瞬間を初めて見た気がする。
本来人の誕生は喜ばしいものなのだと
改めて認識する。
 脳内でカシャッと音が鳴り映像が
切り替わる。彼女の何かの式だろうか、
友達と手を繋ぎ古臭い校舎の前で写真を
撮っていた。先程までの赤子の面影は
全て消えて、立派な少女に育っていた。
その後彼女は母親の手を取り
夕陽を背にどこかへ消えていった。
カシャッ。。。カシャッ。。
 それから何度も何度も彼女の映像を
見続けた。どれも笑顔に溢れ、周りには
常に人がいた。友人、母親、そして何故か
僕もいた。彼女とはアルバイトで
何度か話した気がする。とてつもなく嫌いな
人柄であった。陽気に纏わり付き、
苦しい姿など見せはしない。何より
嫌だったのが、本来軽蔑されるべき僕にも
平等であったことだ。それがむしろ
見下されているのではないかと
いつも感じたからだ。
 いくつかの映像が移り変わり、
彼女はあっという間に少女から女性へと切り替わった。短い間だったのだが
僕は彼女の全てを知ることができた気がする
時に騙され、涙する彼女だったのだが
誰からも愛されていた。それが少し
羨ましいとも感じた。僕が彼女ならば、
などと願っても叶わない妄想をしたのだが
彼女はじきに僕の好奇心と微量の妬みに
よって殺されてしまう。彼女にとっては
願ってもない死に方であろう。
それでも僕は少しの愛を知ることができて
満足していた。もっともっと見ていたいと
思っていたのだが、もう時間らしい。
段々と残りの時間が短くなっている。
残りの数十秒でカシャリと音が鳴った。
 どうやら彼女は子供を授かり、
出産を控えていたようだ。汗を流し
奮闘する彼女。そんな多くの人が
覗き込むかのように集い、多くの声が
飛び交っていた。
次の瞬間彼女の目からは輝きがなくなり、
映像が途切れた。僕の頭は既に
混乱し、真っ暗になった。
 気がつけば朝を迎えていた。
痛いくらいの朝日が僕の顔を照らしている
この朝日をあの赤子は見ているだろうか。
見れていないかもしれないと考えるほど
胸が痛くなった。やはり僕は寂しいようだ。
目からは涙がこぼれ落ち後悔した。
それでもどこか物足りなかった。
殺めてまでも、心の穴を埋めたかった。
いまだに穴が開いているままである。
それでも僕は止まらない。
後悔を重ねてまでも見てみたいものがある。
それをみるまでは終われない。
〈?〉「なぁ。なぁ。取引せぇへんか?...」



 
 

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