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探偵の門
青年は、探偵志望
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「お掛けになってお待ちください。コーヒー、紅茶、緑茶、ほうじ茶、ミルク、どれがよろしいですか?」
女性はコンビニ袋を事務机の上に置き、奥の給湯室へと姿を消した。
「えっと、コーヒーでお願いします」
青年はソファに腰かけて、緊張の面持ちで室内を見回す。
書棚には多くの本、バインダーが並んでおり、窓際に置かれた事務机には、今にも崩れそうなほどの書類の山が築かれていた。
なんだこれ。
この雰囲気にもいささか慣れてきた青年が、目の前の机上にあるもの発見した。
『三ツ葉第一銀行現金強奪事件』
『区縫連続殺人事件』
『MML交換殺人事件』
『嶺石・湯岳連続爆弾事件』
『くるみちゃん誘拐事件』
そうプリントされた大きなファイル。そして開かれたファイルには、『被害者 光鐘重蔵』という名前が見えた。
「お待たせしました」
給湯室から、カップを手にした女性が戻ってきた。
「あの、これ……」
「ああ、ごめんなさいね。今、片づけますから」
女性は手にしたカップを青年の前に置くと、机上のファイルを書棚に戻す。
「光鐘重蔵の事件、調べてたんですか?」
昨年起きた国会議員の殺人事件。当時は現職の国会議員、それも大臣経験者の殺人事件とあって大いに世間を騒がせた。
「いいえ。趣味みないなものかしら」
勝手にファイルの中身を見たことについて、女性が青年を責めることはなかった。
「あの事件の犯人って、確か、光鐘の支援者の息子でしたよね。でも、逮捕される直前で自殺しちゃったって」
「まあ、そうなってますね」
女性は青年の向かいに腰を下ろし、すらりと伸びた脚を組む。それを見て、青年は視線を逸らす。
「それより、依頼の件をお聞きしましょう」
「あ、そのことなんですが……」
思い出したかのように、青年の身体が固まった。
「そんなに、緊張なさらずに。コーヒーでも飲んで、気を落ち着かせてください」
青年は「はい」と頷くと、湯気の立ち上るカップを手に、コーヒーを一口すする。
「おいしいです」
「インスタントですけど、お気に入りのなんですよ」
女性も微笑み、カップにそっと口をつけた。コーヒーのおかげなのか、青年の頬に朱が差した。
「あの、これを見まして」
青年は手の中で皺くちゃになっていた一枚のチラシを、そっと机の上に広げた。
『探偵募集 アルバイト 時給1050円~
勤務日、勤務時間 相談
交通費支給
要普通免許
探偵実務経験者、二輪免許所持者優遇』
そういった内容があり、一番下には『朝霧探偵事務所』という言葉と、電話番号、簡易な地図が印刷されていた。
「あなた、探偵志望の子?」
女性はその大きな瞳で青年の顔、身体を観察し、「ちょっと意外でした」と呟いた。
黒髪、黒縁眼鏡、無地のパーカーにジーンズ、これといった特徴のない青年の見てくれは、確かに意外かもしれなかった。
「え、ええ。探偵志望です」
「ごめんね、失礼なこといっちゃって」
そこで初めて、女性は子供のような笑みを浮かべた。ちょっと気が緩んだのか、伸びもした。
そして人差し指で唇をなぞり、「それだったら、すぐに面接をしましょうか」といった。
女性はコンビニ袋を事務机の上に置き、奥の給湯室へと姿を消した。
「えっと、コーヒーでお願いします」
青年はソファに腰かけて、緊張の面持ちで室内を見回す。
書棚には多くの本、バインダーが並んでおり、窓際に置かれた事務机には、今にも崩れそうなほどの書類の山が築かれていた。
なんだこれ。
この雰囲気にもいささか慣れてきた青年が、目の前の机上にあるもの発見した。
『三ツ葉第一銀行現金強奪事件』
『区縫連続殺人事件』
『MML交換殺人事件』
『嶺石・湯岳連続爆弾事件』
『くるみちゃん誘拐事件』
そうプリントされた大きなファイル。そして開かれたファイルには、『被害者 光鐘重蔵』という名前が見えた。
「お待たせしました」
給湯室から、カップを手にした女性が戻ってきた。
「あの、これ……」
「ああ、ごめんなさいね。今、片づけますから」
女性は手にしたカップを青年の前に置くと、机上のファイルを書棚に戻す。
「光鐘重蔵の事件、調べてたんですか?」
昨年起きた国会議員の殺人事件。当時は現職の国会議員、それも大臣経験者の殺人事件とあって大いに世間を騒がせた。
「いいえ。趣味みないなものかしら」
勝手にファイルの中身を見たことについて、女性が青年を責めることはなかった。
「あの事件の犯人って、確か、光鐘の支援者の息子でしたよね。でも、逮捕される直前で自殺しちゃったって」
「まあ、そうなってますね」
女性は青年の向かいに腰を下ろし、すらりと伸びた脚を組む。それを見て、青年は視線を逸らす。
「それより、依頼の件をお聞きしましょう」
「あ、そのことなんですが……」
思い出したかのように、青年の身体が固まった。
「そんなに、緊張なさらずに。コーヒーでも飲んで、気を落ち着かせてください」
青年は「はい」と頷くと、湯気の立ち上るカップを手に、コーヒーを一口すする。
「おいしいです」
「インスタントですけど、お気に入りのなんですよ」
女性も微笑み、カップにそっと口をつけた。コーヒーのおかげなのか、青年の頬に朱が差した。
「あの、これを見まして」
青年は手の中で皺くちゃになっていた一枚のチラシを、そっと机の上に広げた。
『探偵募集 アルバイト 時給1050円~
勤務日、勤務時間 相談
交通費支給
要普通免許
探偵実務経験者、二輪免許所持者優遇』
そういった内容があり、一番下には『朝霧探偵事務所』という言葉と、電話番号、簡易な地図が印刷されていた。
「あなた、探偵志望の子?」
女性はその大きな瞳で青年の顔、身体を観察し、「ちょっと意外でした」と呟いた。
黒髪、黒縁眼鏡、無地のパーカーにジーンズ、これといった特徴のない青年の見てくれは、確かに意外かもしれなかった。
「え、ええ。探偵志望です」
「ごめんね、失礼なこといっちゃって」
そこで初めて、女性は子供のような笑みを浮かべた。ちょっと気が緩んだのか、伸びもした。
そして人差し指で唇をなぞり、「それだったら、すぐに面接をしましょうか」といった。
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