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 運命とはなんと歯がゆいものなのか。

 私は心の中でため息をつきながら、何とも言えない虚しさを感じるのだった。

 メリッサと第一王子が婚約してから数年が過ぎた。

 すっかり大きくなった私は貴族の学園へと入学し。
 そこには同時に入学した同い年の王子が居た。

 将来は親族になるのだから、と親し気に話してくる王子。けれど私はあまり近づきたくなかった。

 その最大の理由はメリッサの存在だった。

 まだ学園に入れないメリッサはやたらと私にうるさく言うようになったのだ。

「お姉様、今日はエディとお話ししてないでしょうね?」
「メリッサ……今日は偶然廊下でお会いした時に挨拶しただけよ」
「また会ったの!?偶然なんておかしいでしょ!待ち伏せしてたんじゃないでしょうね!」

 こんな会話は日常茶飯事。
 別の日は……

「あらお姉様、今日は随分とめかしこんでるのね。まさかエディと会うつもり?」
「まさか……今日はダンスの授業があるから、うっすらメイクをしてくるように言われてるのよ」
「どうだか、怪しいもんね!」

 また別の日も。

「ちょっとお姉様、どうしてお姉様がエディからのプレゼントを持ってくるのよ!」
「忙しくて渡す暇がないから渡しておいてくれって言われただけよ。そんな目くじら立てなくても……」
「本当は渡しておくからって強引にエディから奪ったんじゃないの!?最近あまりウチに来なくなったのもお姉様のせいなんでしょ!?」

 ああもう!
 毎日毎日……学園は楽しいけれど、毎日のようにメリッサからの詰問をうけていた私は、早く来年になってくれと痛む胃を抱えながら日々を過ごしていたのだった。

 そして今年の春。
 ようやくメリッサが入学してきた。

 入学式で妹を出迎えようと待っていると、まずそれで怒鳴られた。

「どうしてお姉様が居るのよ!」
「どうしてって……メリッサが緊張してるかと思って」
「そこはエディが出迎えるもんでしょう!?また邪魔したの!?」
「エドワード様は生徒会長として、入学式の準備や色々お忙しいのよ」
「そんなの聞いてないわ!入学してまで嫌がらせしてくるとか、お姉様って最低ね!」

 とりつくしまもないとはこの事か。
 何をしても何を言っても。
 メリッサにとって私は邪魔でしかなかった。

 昔はこんな子では無かったのに……。
 それだけ王子の事が好きなのかもしれないけれど、どうしても疲れを感じてしまって悲しくなるのだった。

「随分とキツイ子になったわねえ、あなたの妹」

 スタスタと一人で歩いて行ってしまったメリッサを見送ってると、不意に肩を叩かれた。友達のアイラだ。同じ伯爵令嬢で気も合う親友。

 その彼女に苦笑を返し、私はもう一度メリッサを見た。もうその姿は遠い。

「本当に……変わってしまったわ、あの子」

 恋をしたことない私には、彼女の気持ちはまだ分からない。

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