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しおりを挟む「え、メリッサが婚約?」
「そうなのよ、どうしてもって先方がね!まだ正式ではないけれど、今日ご挨拶に来られるから。フィリアもちゃんと準備しておきなさいね」
言うだけ言って、母は慌ただしく部屋を出て行った。おそらく両親にとっても突然の事なんだろう。
屋敷中は準備でバタバタしていた。
「メリッサが婚約ねえ……まだ九歳なのに」
「先日のお茶会でいい出会いがあったんじゃないですか?お嬢様は恋より食い気……いや、水気ですものねえ」
「水気!?」
水気ってなによ!
そう反論したくとも出来なくて、私はメイドのサラを軽く睨みつけるにとどめた。
そう、先日……と言っても、もう一ヶ月前の話だけど。
もうすぐ次のお茶会の時期だってのに、まだその話言うか!
と文句を言おうとしても、確かにあのボロビチャな姿を晒した身としては強くも言えないのだ。
(だって仕方ないじゃない!あれは不可抗力と言うか人助けだったんだから!)
言いたくても言えない。
あの時の子がどうして溺れてたのか分からないけれど、助けたいと思ったから動いた。
けれどあの行動はけして褒められたものじゃないから。
きっと正解は大人を呼びに行くことだったんだろう。それくらいは分かる。
助けられたのも運が良かっただけ。普通なら二人とも死んでてもおかしくなった。
そんな危険な事をしたのか!と本来ならもっと怒られていた事だろう。
怒られるのが嫌で黙ってる……卑怯だけど、だって私は子供だもん。怒られるのは避けたいに決まってる!
そうして私は真実を隠していた。
(あの子、あれから大丈夫だったのかな……)
お茶会から戻ったメリッサとお母さま。けれど私は部屋から出ちゃ駄目と言われてたので話を聞けなかった。
謹慎が解けたのは昨日の事で。
メリッサと会ったのは今朝の朝食の時だけ。
さすがに両親の前で、あの後どうなった?なんてメリッサに聞けるわけもなく。後でメリッサに聞こうと思ってたのに。
まさかの事態に、話をしてる場合じゃないなとため息をつくのだった。
まあ仕方ない、全てが終わってから、夜にでもメリッサに聞くか……。
そうして私は準備に意識を向けるのだった。
※ ※ ※
「フィリア、こちらがメリッサの婚約者となられる第一王子、エドワード様だ」
「────へ?」
婚約者が到着し。
呼ばれた部屋に入った瞬間、私は息を呑んだ。
これ、と小さく親に注意されて慌てて挨拶の礼をして。
顔を上げた瞬間、父に紹介された。
「エドワードです。初めまして、フィリア」
その人は肩より長い金髪を綺麗に後ろでまとめて。
パリッと着こなした礼装の胸元には、王家の一員を現す紋章。
その人は紛れもなく、王族の一員だった。
第一王子エドワード。
それはあの日私が助けた、あの美少女だったんだ。
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