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しおりを挟む「公爵令嬢カタリーナ!俺の婚約者であるという立場を利用した悪行三昧の数々、もはやこれ以上捨て置くわけにはいかん!お前との婚約はこの場をもって破棄する!お前は国外追放だ!!」
今日は楽しい卒業パーティ♪仲良し学友たちと楽しく飲んで騒いで踊って、最後の思いで作りましょ♪
──な日なんですけどね。
みんな気合いの入ったドレスで楽しんでたところに、突然現れて叫ぶボンシュ王太子。
何言ってんだあれ。
「……は?私のことですか?」
「お前以外誰がいる!」
どうやら王太子は事実を捻じ曲げ、私の罪を捏造して婚約破棄を目論んできたようだ。
というのも、あの日の件で王様にこっぴどく怒られたらしく、側室は絶対駄目って事になったらしいから。
側室が駄目なら、じゃあ正室に自分の好みをもってこよう!単純バカな王子はそう思ったんだろうなあ。
案の定、わけのわからん事を言ってる王太子の背後には、ピットリくっ付いてる令嬢が一人。
肩から胸まで、そして腰に足。
全身の露出が半端ないドレスに身を包んだ女性。
まあ確かに出るとこ出てるわな、露出すげえわ。そういうドレスが似合う場もあるだろうけど、学園の卒業パーティにそれはないんじゃなかろうか。
そんな女性の頭は……どうした、髪、どピンクじゃないか。染めたの?それ染めたの?いい感じだと思って染めたの?きっと明日は髪がバシバシだよそれ。
もう王太子の言葉よりもそのピンク頭が気になっちゃってね。
思わず食い入るように見入ってたら、その視線に気付いたのだろう。ボンシュ王太子がビシィッ!て効果音が見えそうな勢いで私を指さしてきた。指さすな、別のもの刺すぞコラ。
「そしてカタリーナ!お前の悪行の中でも最も極悪なのが、ここにいるピレリへの嫌がらせだ!!」
ピレリと言うんですかそのピンクな令嬢。言いにくいし書きにくい、私泣かせで筆者泣かせですね、うん何言ってんだろ。
「聞けば水をかけたり殴ったり服や教科書を破ったりしたそうだな!更に階段から突き落として、大怪我させたと聞いた!お前ほどの悪女は国中探しても見つからん!本当は死罪にしたいところなのだがな!追放程度で済む事、ありがたく思え!!」
へええ、私って結構やる女なのねえ。自分の事なのに知らなかったわ。
王太子はまだ何か言ってるようだが、これ以上は時間の無駄。
私は想定内のこの状況に、予定通りの行動に出る事にした。
「えっと、その女性は誰ですの?」
その言葉にピタリと動きを止めた王太子。
顔を真っ赤にして更に大きな声で「ピレリだ!!」と叫ぶ。いやホントに知らねーよ、そんなピンクちゃん。
「申し訳ありませんが、記憶にございません」
「ふざけるな!あれほどピレリを苦しませておきながら!な、ピレリ!」
首を傾げる私にキレる王太子。そしてピレリ嬢に振れば
「はい~、とっても怖かったですぅ~」
と、間延びした返事が返ってくるのだった。なんだお前は、スローモーションの呪いでもかかっとるんかい。
いちいち突っ込んでいては話が進まないので、そこは突っ込まないことにして話を進めた。
「ですが……本当に記憶がないんです。それに……」
そこで一旦言葉を切って、私は王太子を真正面から見据えた。
その視線をどう感じたのか、王太子は一瞬たじろいで一歩下がったが、ピレリにぶつかって踏みとどまった。
そんな彼を見やりながら、私は首を傾げるのだった。
「貴方様は、どなたでしょうか?」
「──は?」
まあそういう反応くるよね。全ては想定内だ。
分かってはいたが、その間抜け面があまりに最高で。
笑わないようにするのに内心苦労しつつ、私は言葉を続けた。
「申し訳ありません、貴方様のことも記憶にないのです……」
そう言って、私は渾身の『困りました』な顔をするのだった。
「な、何を言って……」
「ボンシュ様、カタリーナ様のこと……大変な状況であらせられること、ご存知ないのですか?」
そこで声を出したのは、私の親友その1の令嬢。名前あるけど省略ね、けして考えるの面倒だったわけじゃないよ、だから何を言ってるんだ私は。
「なんのことだ?」
眉をしかめる王太子に、学友たちはこぞって驚いた顔をする。うんうん、みんな名演技!
事前の打ち合わせ通りなので、ここは笑わない。だが皆のノリノリな演技に、私はいたく感動する。
そんな私の目の前で、別の令嬢が悲しそうな顔で王太子に言うのだった。
「カタリーナ様は……記憶喪失なんです!!」
その言葉を聞いた直後の王太子の目が点顔。
私はきっと一生忘れられないだろう。きっと一生ネタにする!
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