「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール

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9、遅れてきた反抗期ってやつなのです

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私は、その手に手を重ねる。

「用意して、朝御飯食べよう」

「うん。化粧する」

「すぐ、泣いちゃうのに?」

「泣いちゃってもするの」

「わかった!してきて!俺、服着替えるから」

「うん」

「凛、昨日のズボン嫌だろ?これ、履いたら?」

拓夢は、ウエストがゴムになってるズボンを渡してくれる。

「いいよ!大丈夫」

私は、そう言って笑って洗面所に行った。鞄から、化粧ポーチを取り出して化粧をした。マスカラとファンデーションと口紅と眉ペンしか入ってなかった。泊まるつもりは、なかったから…。

「はぁー」

もっと、バッチリメイクにしたかった。

「凛、ブラジャー」

「ありがとう」

拓夢は、私のブラジャーを持って現れた。

「つけたげようか?」

「自分で出来るよ」

「つけさせてよ」

「うん、わかった」

私は、拓夢に背を向けてTシャツを脱いだ。

「はい」

「ありがとう」

ブラジャーを受け取ってつける。

「ホック止めるよ」

「うん」

拓夢の指先を背中に感じる。

「出来たよ」

「ありがとう」

目を閉じて、ちょっとだけエッチな想像をしていたのは内緒にしておこう。私は、Tシャツを取って着る。

「凛、エッチな事考えてただろ?」

「そんなの考えてない」

「嘘だ」

「嘘じゃない」

私は、首を左右に振る。バレていたのが、恥ずかしい。

「ここ触られたら弱いからだろ?」

そう言って、Tシャツの上から背中を撫でられる。

「そんな事ないから」

「嘘!じゃあ、もうしない」

「意地悪」

「じゃあ、弱いって言って」

「弱い…」

「良くできました」

そう言って、拓夢は私をギュッーっと抱き締めてくれる。

「行こう」

「うん。行こう」

私は、拓夢の背中に手を回す。

「今日一日、俺と凛は恋人だから」

「うん」

「じゃあ、行こう」

拓夢は、私から離れると手を繋いで引っ張っていく。

「忘れ物ない?」

「待って!見るから」

私は、鞄を確認する。

「スマホ忘れてた」

「あっ!部屋だな」

「うん」

私と拓夢は、部屋に戻る。

「はい」

「ありがとう」

スマホを鞄に入れる。

「じゃあ、行けるな」

「うん」

拓夢は、珍しく斜めがけのバックを下げている。ボディバックってやつだ。

「どこで、ご飯食べるの?」

「駅前のカフェで食べようと思って」

「美味しいの?」

「美味しいよ!それだけじゃないけど」

私と拓夢は、玄関で靴を履いて、家を出る。

「それだけじゃないって?」

歩きながら話す。

「凛がいつか、懐かしいって思って食べれるように…。あっ!勿論。俺もね…」

「この街を離れるから?」

「そうだね」

拓夢は、私の手を握りしめてくる。

「駄目だよ」

「そうだな!あっちまで、これは我慢しとく」

そう言って、手を離した。そして、手が触れるか触れないかの距離を保ちながら、私達は歩いて行く。

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