虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール

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裏4-1、国にざまぁ(1)

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 どうしてこうなったんだろう。

「罪状。この者、王家を謀り実の家族である公爵家を陥れようと画策した。その罪により、斬首刑に処す」

 初めて見る処刑場に私は拘束されていた。身動き取れない状況で、だが確かにもうすぐ落ちて来るであろうギロチンの気配を感じてどうにか体を動かそうとした。だが、全くといっていいほど動けない。──まあ、動けたところで何が出来るのか、だけれど。

「何か言い残すことはあるか?」

 王城の地下深くに存在するその部屋は、ジメジメとしてカビ臭い。およそ貴族とは無縁の部屋で、けれど見えないながらも確かに私の背後に気配を感じた。

 私の家族。
 ベニートとその家族。
 そして国王家族。

 三家族がそれぞれどのような顔で私の惨めったらしい姿を見てるのか知らない。

 だが確実に。
 両親と姉妹だけは。
 表面は知らないが、内心ニヤニヤしてるだろう。
 それだけは確信出来た。

 私はギリと唇を噛み締める。

 ──悔しい。
 散々虐げられて。酷い目に遭い続けて。
 ようやく解放の兆しが見えたと思ったのに。
 お家断絶になれば、少なくとも現状を打破できると思ったのに!

 そうでなかったとしても、私ももういい年だ。家出して自活という手もあった。

 だが全ては遅すぎた。敗因は、家出を躊躇してしまったことか。たとえ何であれ家族を捨てる事を躊躇ためらった事だろうか。

 分からない。
 考えても無駄だ。
 無駄な事を最後までするなんて馬鹿げてる。

「何も……ありません」

 何を言ったところで事態が好転するとは思えない。
 今この場にいるのは先の三家族と、刑の執行人。それと今罪状を読み上げた司祭のみだ。司祭だから何か祈ってくれるのかと思ったのだけど何も無いのね。お前要らないんじゃないか?

 心がかなり荒んできたところで、誰かが動く気配がした。

「公爵よ、娘にかける言葉は何かあるか?」

 王様か。
 何も真実を見ない、見ようとしない無能の王。こんなのが王で、この国大丈夫なんだろうか。

 ──どうでもいいか。

 この国の行く末なんて、私が考えるだけ無駄だ。何の意味もない。

 この場には私の味方なんて誰一人居やしない。
 いや違う。
 この国には、だ。

 光の国なんて嘘っぱちだ。私に光が差したことなど一度とてない。

 こんな国──滅んでしまえ。

「王よ、もはやこれは私の娘ではありません。このような罪人、私の娘だなどと……考えるだけで反吐が出る」

 私の心の闇の声が聞こえるはずもない父が、あまりにあまりな言葉を投げる。
 私も反吐が出るわ。
 お前なんかが父だなんて……

「おお恐ろしい。あんな恐ろしい事が出来る者がそばに居ただなんて。本当に恐ろしいわ」

 お前なんかが母だなんて……

「アルンド様ぁ、早く貴方の妻になりたいですぅ~」
「モリアぁ、私もだぁ~。この者を処刑すればお前の憂いも消えるだろ?最高の式になりそうだなぁ~」

 そこのお花畑カップル、もうどっか行ってくれない?
 王太子にしな垂れかかり、甘ったるい声を出すモリアに辟易する。
 お前なんかが姉だなんて……

「あ~だっる。面白そうなショーが見れるかと思ったんだけど、やっぱだっる。早く家帰ってお菓子食べたーい」

 もうお前帰れ!とっとと帰れ!
 お前なんかが妹だなんて……

「反吐が出るわ!!!!」

 負け犬の遠吠えと分かってても。
 私は心の底から叫んだ。

 瞬間、その場に居た者全てが驚いて息を呑む気配を感じた。私の口は止まらない。

「あなた達が家族だなんて、こっちから願い下げだわ!お前らと一緒に居るくらいなら死んで化けて出てやる方がよっぽどマシよ!!」

 叫んでから、それいいなと思った。
 化けて出るの、ちょっとかっこよくない?いいね、それ!

「呪ってやる……」

 折角思いついた嫌がらせ。
 最後の腹いせと、私は努めて低く暗い声で、絞り出すように言うのだった。

「お前らのこと、末代まで祟ってやる!!この恨み、晴らさでおくべ……」
「その処刑待ったあぁ!!!!」

 私の名演技に家族が恐れおののいている気配を感じ、最高の名言を言ってやろうとした瞬間!

 待ったの声がかかったのだ!

 ──名言最後まで言わせてよ!!!!




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