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3、両親に虐げられた過去
しおりを挟む「おいミレナ!私の部屋から見える庭園の雑草全てを始末しておけ!」
「え、お父様の部屋から見える範囲の庭、全てですか?」
「そうだ、草一本残すなよ!お前のように見苦しい雑草を見ていては政務が全く捗らん!」
「ですがそれはかなりの広範囲で……」
「貴様、口答えする気か!?誰のお陰で生きてられると思ってるんだ、この恩知らずが!!」
唾を飛ばしながらひたすら怒鳴り続ける父。
最後には思い切り殴られた。
殴られて終わりなのはいつもの事だけど、痛いのもいつもの事だけど。
その痛みはけして慣れるものではない。
「あらしまった、あの方からのお茶会の招待を忘れてたわ。これでは私の評判が……まあいいわ、いつも通りにミレナのせいにしてしまえばいい」
お母様はそう言って、謝罪の手紙作成をメイドに指示する。きっと私が我儘を言って……とか、私のせいにする内容を書かせるのだろう。
「お前はしばらく謹慎ということにしておくから。小屋に閉じこもってなさい。一歩も出るんじゃないよ!!」
そう言って追い出される。
だが一日も経たずに、用事を言いつけるために外に出されるのは……まあいつもの事だ。
そうなれば、お母様は必ずやってきて
「何の罰も与えないで外に出すのがバレるのもまずいわね。腕を出しなさい」
と言って、私の腕に、体に鞭を振るうのだ。
そんなのは嘘だ。言い訳だ。
誰も私に会うことなどない。誰にも会わせようとしないくせに。
それは一体誰に対する言い訳なのか?
毎日毎日。
理不尽な理由で折檻され続けた。
あまりに長いことそうして虐げられ続けてきた私の記憶には、両親に笑顔を向けられた覚えは全くなかった。
今の状況になる前から。
きっと生まれた時から。
両親にとって、私は愛すべき存在ではなかったのだろう。
最後に泣いた日の事は今も覚えている。
『父さま、父さま!いい子になるから……ミレナはいい子になります!だからお願いです、お願いだからどうか……!』
ぶたないで。
その言葉は最後まで言うことは出来なかった。容赦ない父からの平手打ちのせいで。
『ええい、寄るな触るな!お前など私の娘ではない!お前のような汚い色の娘など……!』
両親もかつては努めたのだ。私の髪を染め、出来るだけ外見を変えようと……。
けれど、この髪は何とも頑固だった。残酷なまでに。
染めても1日で落ちた。
何度染めても。何度も何度も。
遂には染まらなくなってしまったのだ。
闇色の髪は、何色をも受け付けなくなってしまった。
『母さま……お願い、どうかお薬だけでも下さい。喉が痛いの、頭が重くて痛くて……熱いの。大人しく一人で寝てるからお願いです……!』
『お黙り!お前のような汚い娘にやる薬は無いわ!そもそも誰が部屋から出ていいと言った!?モリアやカンナに風邪がうつったらどうするの!まったくお前という娘は……!』
『やめてお母様!ゴホッ、お願いぶたな……ゴホゴホッ!!』
『ああもう憎らしい、鬱陶しい!とっとと出てお行き!!』
そうして追い出された私は、高熱にうなされながら一人寂しく小屋に引きこもった。一週間くらいだろうか。最低限の食事は配膳されたけれど、それだけ。
誰も看病してくれる者など無く。
食事も喉を通らない状態で、私は泣きながら寝台にくるまっていた。
死ぬのかもしれない。
死ぬことを願われてるのかもしれない。
死んだら──父さまも母さまも、少しは悲しんでくれるだろうか。
涙を流しながらそんな事を考え続けた。
熱が下がり、徐々に回復していった時。正常な思考が回復する頃に、私は悟ったのだ。
もう、何も期待してはいけないと。
父も母も姉も妹も。誰も。
私の味方は居ないのだと──そう、理解した。
十歳の冬の日の事だった──
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